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猫の目
……静かだ。
何も見えず、何も聞こえない。
音らしい音が死んだ世界は、漆黒の闇に覆われていた。
ぼんやりと意識だけがあるが、自分の身体の形さえはっきりと知覚できない。
上半身と下半身が繋がっているのか、それすらも分からない。
感覚らしい感覚がない。いったいここはどこだ。
恐ろしさに叫び出しそうになるが、声は言葉にならない。
黒一色の無音の世界に、なぜか奇妙なほどの安心を覚えた。
無限の闇を照らすように、ちっぽけな月明かりが二つ。
おかしい。
どうして月が二つある。
二つの月は、まん丸になったり、細長くなったり。
くるくると表情を変える。
まるで、そう、猫の目のように。
猫の目。
……モシュ!
ああ、モシュだ!
二つの月はモシュの目だ、とようやく気が付いた。
音もなく、光もない世界を照らしてくれたのはモシュだった。
目もろくに見えない幼い日のミリクを庇護するモシュがいた。




