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僕らには関係のないハッピーエンド

 ここは? 広間だ、

 豪華な空間の消費の仕方をするだだっ広い造りだが、飾り気のない装飾の少なさ。隅に雑に収納されかけの椅子とテーブル……いや、収納しきっているのはスペースを多く取っているだけ? パーティ会場というよりは位の高い者もくるであろう会議場、かな。ここは、どこだ。

 えっと、周りに何も……クラーラがいない!? いや、僕の魔力を消費され続けているのは感じるこの量は……どっちの方向から引っ張られているんだ?

「急いで探さなきゃ、預言者も」

 だれか、扉を開いた。

 空間が静かだったせいでその音が部屋中に鳴り響くようだ。出てきた女性は文官のような衣服をまとってカバンを手にもった女性だ。

「あ、すみません。魔術で……ここに……勝手に入ってきてしまっ……ここ、入っちゃまずい場所でした?」

 落ちたカバンの中身が雪崩れたように紙束が漏れる。女性が僕を見て驚いている。まずいな、本当に入っちゃだめな場所だったか? でも、座標の先になにがあるのか分かる仕様じゃない魔術による転移だったからなぁ、ってか、僕がこの魔術使用しているわけじゃないし、最悪、クラーラを見つけて責任を――

「シグフレド……!?」

「えっと……」

 僕じゃない。預言者の名前だけど、その女性の人は会ったのか!? 後ろにも、いない。居るのかと思ったのだけど、彼女に

「戻ってきたのね……っ!」

 いきなり抱きしめられた。いや、これはおかしいだろう? 僕に向けられてない無償の愛に僕は何を言えばいい? 何も言うことなど

「違う、僕じゃない。僕は……シグフレドを送り返しに来ただけで……えっと、……あなたは」

「え?」

「僕はシグフレドじゃあありません、ジークフリートです!」

「そう……、それは、失礼」

 落ち着いて襟元を正す一瞬で目尻をぬぐったような彼女を負ってなんか、見覚えのある男がよってくる。

「彼は? 何者で」

「シグフレドを送りにきた別の世界の、シグフレドらしい……です。預言者シグフレドが言うには」

「預言者?」

「あぁ、それは……近くに居るはずだから、本人に聞いて……えっと、近くにいるはずなんですよ? この魔術を使った彼女も、まだ魔術が継続して使用されているはずなんですよ!」

 二人の男女を見合って、男は首を軽く横に振って剣を構えようとするが、文官のような女が軽く腕を添えて構えを解かせて首を縦にふるアイコンタクトを示す。

「私は、えぇ、私はこのサンヴィターレを取り仕切る……。いや、それよりも、えっと、それで、シグフレドは近くにいるんだな?」

「たぶん、近くに、少し待って魔術で探します。……見つけた。なにやっ! あぁ、……さっきまで殺し合いみたいなもみ合いになっていたので、転移先が一呼吸ずれたみたいです。そこの、壁の向こうの広間で、……なにを……なにか、してます。えっと、あぁ、そうだ! ここは、どういう施設なんです?」

「どういうもなにも、領事館というか、戦場跡に建て」

「まって、ギュヌマリウス……シグフレドはなにを」

「あんたギュヌマリウスなの!? なん――」

 少し冷たい空気が押し出される。空間転移で現れたそこにわずかに香ばしい美味しそうな焼き立ての肉の香りが含まれる。

「ジークフリート、良かったそんなに遠くに行ってなかったから……」

 魔術越しに切除していたのが見えたシグフレドの右腕が切断され、その切断面が焦げて雑に止血されたせいでおいしそうな感じになって、その切断された腕をクラーラが両手で抱え込んでいた。

「シグフレド……?」

「お前は、アンドロマリー……だよな? あと、ギュヌマリウス、お前も生きてたのか」

「シグフレド!」

 なにが……どういう関係なんだ?

「そうか、生きてたのか……生きてくれていたのか……他にも誰か」

「えぇ! 何人でも! あれから20年まであとちょっと!! 貴方のお陰で生きてきたわ。だから……待って……私は貴方を」

「待ってたんだ」

「えぇ、待ち続けたわ! この命のまま、この街で! なんなの! その腕は、転移の影響かしら!? 傷口から今千切れて止血したばかりって感じよね?」

「あぁ、……世界を渡る駄賃としては、こんなものだ」

 よくも歯を浮かせながら適当な嘘を、魔術越しに自分で斬ったことを見てた僕はだまるより他にないが、僕はどんな感情になれば良いんだ? 

「きれいになった」

「えぇ、貴方が帰ってきた時にがっかりしないように」

 シグフレドは……こっちのアンドロマリーとそういう関係だったのか? いや、まさか、僕たちの世界のアンドロマリーの後ろ盾にこいつがいたのって!?

「それよりも、シグフレド、アンドロマリー様にまず言うことがあるだろうに」

「え!? 言う事、……その、待たせて…………ごめん」

「違うでしょ! 私から言わせてもらうわ。――――――おかえりなさい」

「っ! そうだったな――――――ただいま」

 たぶん、これは僕らには関係のないハッピーエンドって奴なんじゃないかな?


「クラーラ、急ごう。僕の魔力はお前の魔術に消費され続けている」

「えっと……シグフレド様、私も、もういかなきゃ」

「がんばれよ。その……あぁ、そうだ。さようなら」

「さようなら、お父さん」

「ありがとう。私は良い部下をもった」


 ◆


「奇跡の子と呼ばれるものは、あの世界ではあまり研究がすすんでいなかったようだ。奇跡の子の『奇跡』とは『可能性が無限であることの証明』を意味する言葉としてつけられたそうだ。奇跡の子は虚弱体質や限りなく成長する性質のことでもあるが、それは本質ではない。奇跡の子の本質とは、『自由』だ。……自由である限り奇跡の子は負けない、だが、立場や義憤に囚われた……正しくあろうとする奇跡の子は長生きできないものだ。たやすく死ぬ。そういうものだ。私は自分正義を貫こうとした。幼いとは言え同じ天の奇跡の子が二人も勝手していては、はじめから勝ち目などなかったさ」

 ここがシグフレド様がいた世界とわかると、急いでまくしたてるような話し方をする。

「老いてなお自由な我々は無敵だ。……クラーラ、頭の片隅に留めておいてくれれば、たぶんお前は死なない。最後に、これだけは教えておきたかった」

 頷く。

「クラーラ、この後、どうするつもりだ?」

「そうですね。とりあえず…………、私がシグフレド様を殺したってことにして、逃げることにします」

「ん? なんでそんな真似を」

「シグフレド様がいない世界で、カルラが生きる理由はないから」

「他にやりようだって」

「それに、私がシグフレド様を異世界に追放した事実は変わらないから、たくさんの人が恨むでしょう?」

 苦々しくて、渋くて、本当に嫌そうな顔をされて頭を抑えて困った顔をさせてしまった。

「それは……そうか、だからって憎しみを生きる理由にさせようと? バカなことを考えたな、だが、私に否定する権利はもうない無い…………な」

 シグフレド様はいきなり自分の腕を熱をもった石の魔術で引き裂く。

「ぐっぐぅ」

 その石の熱で体から離れた腕の断面をこすり、血の流れを止めた。

「なにを!?」

「魔術で止血したさ。だが、この腕、右腕だ」

 投げ渡される。衣服ごと引きちぎった腕、

「私を殺した証明としては十分だろう」

「…………」

「本当にそんなことを言う予定があるのなら、効果的に使いなさい。この意味を、私が育てたクラーラならわかるだろう?」

 ……――。

「うん……ありがとうございます」

 




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