時間稼ぎが
地面がえぐられた衝撃波の粉塵で視界も悪い中、腹に刺さったやりのようなものの返しに魔力を感居る。
この腹を貫くこれが侵食しているものだから、水の魔力で毒を抑えながら、水の魔力を多用して使える闇の魔術で金属の蠢きを抑え込んで傷の広がりを無視しながら緑の魔力で作った糸をぐるぐる巻きにしただけの簡素なミトンで引き抜いて投げ捨てながら、
ショーテルを抜いてもう一方の腕で、風の魔力で当たるまで音の出ない振動波で斬り込む。ギザギザの返しの付いた構造の痛みをこらえてたからか、鈍っちゃいなかったと想うが力任せながらな一振りだったのがいけなかったのか、
――バキン。
金属が弾かれたものでない鈍く硬い音でショーテルの刀身の半分が折れて千切れ飛んだ。
「その毒を一瞬で無効化か、さすがかつて私だった者だ」
そう言うと、後ろに飛んですぐさまそこへ氷のやりが通り抜けて僕は預言者を一瞬見失ってしまう。
預言者のどこに当たった? 刀をどうやって防がれて折られた?
「瞬間移動って! そんな気軽に!」
離れた場所で打突音が聞こえた後、周辺へ長い反響音のような、一秒にも満たない間に途切れないような連続した金属を鈍いものとぶつかり合うようなガチガチとした連打の音がまるで途切れていないように移動して回る。
「さすが、クラーラ。私が育てた最強の戦士になることを断った娘! 武器も持たずにこの剣を無視して私を殴り続けるとはな!」
地理が晴れてきて、見切ることができて錬気で防御態勢に入ったはずの魔術で飛んできた針に眼前で交差させた両腕に数本、足にも数本貫通させられてきやがる。
他3人は立ち上がって、攻撃大勢に入っているっていうのに、僕は目を剥いてさっきよりも毒はたいしたことない癖に返しのギザギザが大きくなった針を引き抜く痛みを堪えるばかりだ。
「まずは一番た易いやつから始め!」
預言者の量の多い魔力を宿した魔術をもった脚先が迫っているのを見て死を予見した。(離レ水ノ月!)僕が使える最強の魔術を使用して、預言者の意識から一瞬だけ『奥行き』の概念を失調させ、真後ろに転がるようにしてギリギリその蹴りを避けた。直撃は避けたはずなのに、余波だけで僕はふっとばされて背中を地形に押し付けられ続けて胸の臓物が潰れてしまったようだ。
「幻覚……? いや、催眠かなぁ!?」
そう叫びながら、飛んできた水晶の弾丸が腕に刺さって、グツグツと片腕を融解させながら、換気の叫びを上げる。預言者は腕を融かす水晶も抜かずに融けかけの腕を水晶の飛んできた方向にかざして、魔力のなにかを放射する。
「そんな実用性の無い技をこの土壇場で使いこなすとは、見事!」
かざしていた腕の方向が爆弾がばらまかれたのかというほどのすぐそばから地平までの熱をもった爆発が敷き包められる。
アレクシウスは防御態勢に切り替えて、爆熱の中に自ら巻き込まれていく。
裏に回って剣を振り下ろすまでいったクラーラが見えたから、誘拐している腕の側で中折れしたショーテルで腹を裂こうと正面に振る。
「消えろ!」
意識をクラーラから奪うためにせめて声を上げていたら、足場が崩れていつの間にか落下していた。
「あ?」
加速する速さに息がつまされてここがはるか空中であることに気づいて大慌てで風を操って落下の緩衝を試みるが、初めからなにかで加速されていたらしく高さに対して明らかに早く地面に叩きつけられて腹と両腕両足から血液が吹き出して、痛覚の消失を感じ始める。
剥げきった地面のわかりにくい丘の向こう辺りの場所で電撃の次の大きな爆発が見えた。
「この魔力の圧倒、近くに落とされたのか?」
腕が自力で動かない。錬気の仕方を腕に対して干渉しない垂直の編み込みから、四肢の腱に並行した鎧に組み直す。
「やっぱこっちがやりやすい」
クラーラが腕の周辺で真っ赤に圧熱を放ち預言者の体幹を崩したところへ、腕から生やした熱を纏った水晶でシャノンが殴りかかるが、シャノンの水晶は預言者に届く前に黒ずんで砕け、拳を掴んでクラーラの放へ投げ放ち、とっさに着地をカバーしようとしたクラーラが腹を蹴られて吹き飛び、着地前に空間が歪むほどの圧力を放って預言者を牽制するが、涼しい顔をして圧力で着地地点をずらしたシャノンの脚を掴む。
「これで、二人目……」魔力が貯まるが、折れてない方のショーテルで預言者の背中を裂こうとする。
掴んだ腕を話して、魔術仕掛けの毒を解除して僕に爆熱を放つ。
「一人も殺してないで、二人目とは気が早いなぁ」
「その怪我でその腕って動かせるんだな」
呼気もまとめて蒸し焼きになって転がる僕をよそに、クラーラは二人の異世界人へ怒鳴る!
「お前ら! シグフレド様は私が止める! お前らはあの女をなんとか止めろ!」
「あ? あの女って」
「ぁぁゲハッホッ、僕も! 残る。説明する暇はないから、アレクシウスとシャノンは!!」
シャノンはアレクシウスにしがみついて、急かす。
「いくよ、アレク!! 飛べ!」
「っわかった!」
「いかせるか!」
「離レ、水ノ月!」
飛行を始める二人へ腕をかざした預言者シグフレドがなにかする前に届いた魔力で使った僕の最終奥義で『水平』感覚を失調させて妨害する。
「狙えない!? なにが」
「こっちを見ろよ預言者野郎!!」
安酒に頭を壊されたように脚をもたれさせながら僕のひとふりを素手で掴んでその圧倒的な魔力でショーテルをねじ切って僕を吹き飛ばして、腹の皮と肉が余波で一部千切れ飛ぶ。
「邪魔を」
「シグフレド様! 覚悟を!」
クラーラが両手持ちの剣を振り下ろして、頭蓋をかち割るかと思ったが、フェイントなのかいつのまにへ肩口に突き刺さって、剣を掴まれるとクラーラは後ろに飛んで避けていると、いつのまにか刀身が融解してドロドロになっていた。
「てぇな…………俺を傷つけられるようにいつ成長したんだよ……? あと、あのなぁ。お前ら、状況を分かっているのか?」
「知らん! よくわからんな!」
「はぁ?」
「シグフレド様に、虐殺をさせたくない! そのためなら、この命も惜しくはない!」
端的に意志を明示するとひどく失望した目の色で顔を歪ませる。
「はぁぁぁぁぁぁ、……お前ら、さぁ。お前ら、説明をし直す必要が有るようだな。もう良い。語らせろ。それで時間稼ぎができるなら貴様らにとっても悪いことじゃないだろう? 傷の治癒でも魔術でどうにかこうにか好きにすればいい。……それで納得できなかったら、もう一度私と戦いなさい。その時は殺してやるからな」
「二人を追わなくて良いのか?」
「追ってもいいけどさ、別に俺の目的はもう達成したようなもんだし、あの時空の切れ目にはもう到着するまでに追いつけるとも思えないしな。やるつもりは有っても、そんなにやる気は無いよ」
……クラーラは話を聞くつもりなのか、直立態勢だ。なら、同意して自分の傷を治療するしかない。僕一人で戦えるわけでもないのだから……、
「この地が腐乱群島と呼ばれるようになった理由がある」
◆
「まず、ユーリくんへ協力したことへ謝罪はしよう。本当なら俺がやりたいことは俺だけでやるべきことだったのだが、利害が一致してしまったために巻き込んだことは申し訳なく思う。この時間軸の私と同じ遺伝子を持つ者よ。申し訳なかったね」
頭を下げている……?
「協力っていつからしていたんだ?」
「エイリアンの保護地域がちゃんと隔離として運用されてるか、こっそり調べにいったときさ、ふふ、クラーラも私が目の前に来ていたなんて気づかなかっただろう?」
「えっ……!」
「まぁ、前にもなんとなく話したけど、私はこの世界とは微妙に違う世界から来た、本当に僅かな違いしか無い世界からきたエイリアンで……時間的並行世界という概念におけるもう一人の自分、というものが私にとっての君、ジークフリート君にとっての私、シグフレドというわけさ」
「シグフレド様がエイリアンの廃絶を訴えてたのは……何故です?」
「あぁ、うん。マシンを作ったエイリアンのような者は他にいるってことになんとなく気づいていたから、いちいち区別するよりエイリアンは全部殺した方がいいという極論の方が管理しやすかったんだ。それで、なんだが。すまない。クラーラには無駄な苦労をかけたね」
また、頭を下げる。だが、これはこころなしか重みのあるというか、さっきよりも深い気がする。
「エイリアンの廃絶を掲げた手前、私の正体に気づいたクラーラをそばに置くことはできなかった。適当な理由をでっちあげて私を恨んでしまうような形で追い払うことで、私に対して不利益な事実を言っても『恨み骨髄で奴の言う事は何もかも本当じゃない』ってごまかすつもりだったんだ」
「そんな、そんなこと」
「あぁ、しなかった。結局君は、私が目の前にきてやっと気づいた事実の確認を取った。だから……ごめん。君は恨んで、もっと私に不利益になる様々なことだってできたのに……」
「いいえ、いいんです。それでも、シグフレド様が――
「じゃあここからの話はよく聞いて、忘れないでほしい」
娘の想いを遮って、なにを言うつもりだ!
「クラーラを思いやってやれないのか? お前は」
「……、私は」
言いかけて、言い直す。
「私はかつてマシンを作り、その技術を複数の異世界に持ち込んだ世界を滅ぼした」
息を吐いて、息を吸う。
「向こうの世界にマシンを作る技術はない。だが、同時に、あぁ、そう。この土地」
「土地? 島のことか?」
「あぁ、かつでブリデン島と呼ばれたこの地を含めた今の腐乱群島。この地が腐乱群島と呼ばれるようになったのはこの土地でひどい汚染物質がばらまかれて、あらゆる草と肉が爆心地で焼け、腐り、今でも普通に生えているペンペン草を食べたら汚染物質の影響で食べた動物の体が耐えられなければ腐ったように死ぬこともあるという程度に汚染が残ったままなんだ」
「エイリアンが起こしたとされる腐乱爆弾の事件ですね」
「俺の世界ではこんなことは起きなかった」
「…………?」
「…………え、それ以外は起きたってことですか?」
「あぁ、……タイミングは前後するが起きたことは起きた。だが、もっと言うと、俺が滅ぼした世界にはこんな爆弾を使用する技術がなかった」
「それって!?」
「え、……何? どういうことです?」
「ユーリ・サトーの証言と、何名かの拘束したコンクエスターの話で確定した。奴らの出身世界は自由に異世界を渡る技術を持ち、核爆弾という兵器で腐乱群島のような災禍をいつでも引き起こせる技術力をもった文明を持つ」
「そうか、言いたいことは分かった」
「それって、とんでもないことなんじゃ……」
「あぁ、クラーラ、想像の通りとんでもないことさ。あの世界の指導者がとち狂ったらこの世界だけじゃない。あらゆる世界の生命が死に至らしめられる。俺はまさかと思って、いたが、彼女は100億未満の命の犠牲で一兆だって少ないほどの犠牲者を守れるなら、滅ぼすべきと主張してね。だから、核を発射しない限り、大量の水銀とマシンの群れを奴らの世界に押し付けるなんて真似はするつもりがなかった」
そういうことを言うってことは、
「つまり、やつらは実行したのだよ」
何も言えなくなる。僕も、クラーラも、
「先ほど、我々の世界に何発かの核爆弾を内蔵した飛翔体が確認された。運良く。その場にいたコルネリア子爵が全て到達前に破壊したもので、大事には至らなかったが。もはや、考える余地は私にはなかった。彼らが作った異界への移動口へ近づけたその飛翔体を私の持てる力をもって圧縮して送り返した。そしたら爆発する。そういう仕組だったらしいな」
預言者は語る。
「それでも私を止めたいと言うなら、君たちにも私は容赦しない頼む。私は君たちのような義憤に駆られた子どもと戦う趣味はない。大人しく帰るなら、私は見逃そう」
「……じゃあ、滅ぼさないとまずい段階にいつのまにか、もうなっていたってことですか?」
「あぁ、そうだ。聡明な私の部下なら分かるだろう?」
「……だったら、私も」
「ダメだ!」
「なんで!?」
「滅ぼしたら元の世界に帰れないかもしれないからさ」
「え……?」
「マシンの群れが送られているうちならまだ帰れるが、送り終わったら閉じる。それもそう時間がかかるものじゃない。来るなよ?」
「それじゃ、その世界を滅ぼしたらシグフレド様は……?」
「まぁ、一緒に死ぬよ。どうせこの世界に元からあった命じゃない。何も問題のない話さ」
「いかないで……」
「え?」
「いかないで、シグフレド様、この世界で私達と一緒に」
「ダメだよ。私は異世界人なんだ。異世界人はこの世界に居るべきではないというのは紛れもない本心だ。だから」
「いや! いかないで!」
「わかった。クラーラ、お前は必死でその預言者を止めろ。僕は、ユーリの元に行く」
「んん? なんで、行ってなにをするんだい?」
僕は、何を、ユーリに何を
「なにもしないよ。ただ、惚れた女の尻を追いかける男がそんなに不自然か?」
「ダッサいな」
「結構、並行世界ではお前もダサくなる。そういうことだ」
もう、武器はない。戦っても勝てるとは思えない。なら、
これまで生きてきた全てを賭けた、全力の追いかけっこだ!! 時間が無くなる前に!
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