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その目を

 跳躍して、魔力をまとって遠くへ消えていく兄貴分の今生で見られるおそらく最後の背中を目にやきつけて、散布した闇の因子に類する属性の魔力をッ準備しているからと、惚けていたら、茂みに左右に分かれて隠れる四人の内一人が呼吸を浅くしたのが聞こえた。

 センスが無いな。いきなりそんなことをしたらかえって目立ってしょうがないだろう。

 あったものがなくなる気配なんてのは、獣からしたら一番目立つ気配だってのに森に紛れる努力を感じられない。

 シャノンの手を引こうとするが穏やかな所作で払い除けられ、手を空にして数歩後ろに下がって、首から流れっぱなしだった血が止まったのを左手でベタリ。と、首を触って確認したアレクシウスは未だ警戒した態度で少しキョロキョロと周囲を目だけで見渡して口を開く。

「それで、……どうするんだ?」

「『それでどう』って?」

「……俺達と戦うつもりはあるのか? お前らの方は」

「いや……できれば避けたいけど……どうかな」

 クラーラに目をやると苛立っているようだが、どうも、飽きているようにも見える。いや、なんか魔力を身体から生成しているかもしれないような気配が感じられるけど、まさか、変なことをしないよな?

「できれば? ……そうか、じゃあ、質問を変えよう。『君たちにとって我々は何をしてはいけないのだ?』とでも、聞けばいいかな?」

「………………すでに、してないならね」

 迂闊なことを言うべきか、預言者のことを直接口にだした時、預言者と友好的に接していた場合、かえって預言者を逃して最悪の時代を引き起こすための手助けをさせてしまうのではないか? いや、どうか? 帝国解放戦線のテロリストたちとコミュニケーションを取れた時点でにべもなく話し合わないというわけじゃないことはわかったが、だとしたら、話し合う気がないのはこっちの世界の方なんじゃ、

「もういい。黙ってたんじゃラチが開かない。私が説明する! 帝国解放軍以外でお前らと接触した我々の世界の人間で、預言者や教導会を名乗る人間はいなかったか? いたとしたら、そうだな。……私とよく似た容姿の女の子とか、この男の親戚と言われたら信じてしまいそうな風貌の壮年の男、あとは……いや、ないな、言う必要も。そこらへんの見た目の人間はお前らのとこに来なかったか? と聞けばいいことだ」

「……いたとして、我々が素直に話すと?」

「そういつらがお前らの空間転移手段を使ってお前らの世界にとんでもない災害を起こそうとしているらしい」

「っ!?」

 反応を隠せてない? アレクシウスはなぜ予定を聞いただけ絵で驚いたんだ?

「なんのことかな」「核爆弾」「ぁ?」

「その方はそれの制御権を奪うつもりだ」

 アレクシウスは明らかに狼狽の色を顔に見せた。姿勢は僕たちへの警戒が臨戦態勢に限りなく近い重心の位置になる。

「……そうか、……待ってくれ、すぐに判断なんてできない。俺に何ができるか、連絡を」

 待たせる。か、一応釘を指しておこう。

「帝国解放軍の生き残りがいるな? そして今、向こうで身振してなんか言った人から、あんたはそれを認識したことを確認した」

「……なんで、そう思った?」

「じゃあ不誠実に質問を返させてもらおう。なんで、さっき跳んでった兄ちゃんはあんたらのマシンの中の人間の位置を正確に把握できたんだと思う? そして、そんな便利な技術を使える人間が一人きりだと思えるのかい?」

 警告。(嘘は通じませんよ)って意味のつもりだったんだが、

 一人、呼吸が完全に止まってどういう仕組みかわからないけど、一切の音を消して跳躍した。

 素質なのだろうか? 暗殺に向いた魔法を持っているというのに、まるでセンスがない。

 森の中で気配をいきなり消したら、あらゆる獣が存在する森で不自然の空白が生まれる。それだけで違和感を殺気として感じ取ることも容易いが、死角にいる自分を相手が認識している可能性があることを示唆しているというのにいきなり気配を消すというのは、目立とうとしてるようなものだ。

 たとえその呼吸を消したところで、気配の空白は森の風や、光の暖かさを遮る獣でない人間臭い気配を誇張してしまう。

 それに足音を含む気配を全部消してもその血潮が動く限り、臓物の循を証明し続ける心臓の音は消えないし、自分を中心に音を消しているから、普通はあり得ない気配がけたたましく、自分の位置を教えるのだよ。

 飛来したそれにショーテルの先を引っ掛けるように払う。

 熱を持とうとしたようだけど、僕の散布した魔力が魔法の発生を阻害して、発生をわずかに遅らせたのか、通り抜けてから彼の手は熱を持つ。

 斬るに至らないかすり傷。だが、そこに水の魔術を込められている。

「おい! 急いで判断しろ!! 魔術を解除しないと三分以内にこいつは確実に死ぬ! 形だけでもいいから、僕らと話し合うと言ってくれ! じゃなきゃ――――」

 男がかすり傷をかかえて悶え苦しむ。抱えた片腕の隙間から見えるもう一方の腕はわずかな時間で紫色に様変わりしていた。

「――――――――――――――――――!」

「バカ! やめろっ」

「――――――!?」

「――――――っ、――――――――――――――――――」

 隠れてた他の三人が雑に飛びかかってきやがった!

 僕に向かった二人は片方はシャノンが殴り地面に叩きつけ、もう片方は魔術で作った紐で森の木々に雁字搦めにして動きを止め、そのうちの数本を首に括って、威嚇しておく。

 一人はクラーラの前に現れ、彼女から発せられる力の属性の因子を多用した魔術を当てられ、弾き飛ばされ余波が周囲の木々を吹き飛ばし、見晴らしが良くなって直視できるようになった奴らのマシンの船の側面に大きな穴ぼこを開け、グラグラと不安定な平らな底面を斜めに……!

「――――――――――――!? ――――――――――――――――――」

「私の味方に攻撃する以上、貴方みたいな人たちを殺すことをためらうわけにはいかないんです。ごめんなさい。今は眠って……。えっ、あ!?」

 破裂するような音で地面に押さえつけられる男の後頭部を殴って意識を失わせると慌てた、シャノンはアレクシウスの状況を見て絶句する。

「おい、びっくりしたからって、これはないんじゃないか? ……ジークフリードもういい。シャノンの帰還手段はシグフレド様から融通してもらおう。そのシグフレド様にこいつらの技術が悪用される前に皆殺しにしようかしら」

「………………! ――――――!! ぐっっっ、……どう、すれば……。どうにか」

 シャノンに首を閉められるアレクシウスが膨大な魔力をもってシャノンに迫るが、魔法でもなんでもない。ただ、力任せなパンチを打ち出す前に、硬直した彼の身体の拳を撫でるように受け止めた。

「は……?」

「君、低気圧とそれに関連する魔法しか使えないでしょ? それさ、量はたしかにびっくりする規模だけど」

 ため息をはく。その呆れには強者の余裕というより、大人が幼い子どもの恥知らずに辟易とするような愛のない態度だ。

「もっと強いそれと同じものを、再現可能な技術として連発するバカよりは随分。のろまだ。それだけの魔力があればジークフリードの闇の魔力で防御の術を使われても力技で突破できるかもしれないけど、それじゃ、ただの人間爆弾だ。そんなしょうもない荒れた技なら、そんな魔力の量は要らない」

 悶えていた男が声をあげなくなったので、闇の魔力を消費させてなんとか、腕を壊死させる水の魔術を遠隔で解除させた。……死なれても良い気はするが、気絶したならもういいだろう。

「足りないのよ。なんというか鋭さというか、磨き上げられた金属の刃先のような明確な大きさじゃ測れない力が」

「それでいま、どうやって俺の」

「簡単なことだよ。感じないかい? 全身が、全身の、特に腹あたり、臓物とか柔らかい部分を特に見えないなにかで止まらずに釘を打ち続けられるような痛みを」

「…………」

「貴方達の身体の強化メカニズムは我々の世界の錬気とは違うんだっけ? あんまり痛くないってことは、……そうね。加減しなくても死なないってことでいいのかしら?」

「ゔあああああゔぇあゔううううああああ!!」

 削られるような打突の爆音、キツツキとかそういうのではない。メディテュラニスの怪しい聖騎士の攻撃で聞いたような暴力的な爆裂音の連射。

 そこまでではないものの、それとよく似た圧倒的に攻撃的音と同じものが大気圧だけで生み出され、それがアレクシウスの全身を叩きつける。

「ストップ」

 暗灰の墨をこぼしたような色の空間を闇の魔力で一旦形成して、爆裂的な循環から保護しつつ、虚空で浮遊させ魔力放出も阻害しながらクラーラから魔術のみで触れずに奪う。

「それ以上は死ぬ」

 闇の魔力を消費しきったこれ一回で、準備していた魔術的な防御手段はなくなった。あとは自力で凌ぐしか無いのは、しばらく鍛錬から離れていた身としては心もとない。

「……」

 ふまんげだが、実際にクラーラもそれで攻撃的な魔術を停止してくれる。

 見覚えのある、その目を彼女がしていた。その目がなにか、呟いたような気がして聞いてしまう。

「……シャノン?」

 制御できない感情がこぼれた……少し前に、父さんが死ぬ前の僕のしていた。その目を

「殺せばいいんですよ……そんな人、そう思ってないと言えば、嘘になるんです。だけど……そんな自分が嫌いになって……いえ、ごめんなさい」

 だが、いまは、先に

「あー…………」

「おい! しっかりしろ! 痛み止めのアヘンはないから勘弁してくれ! 消毒は魔術でやるから気合いでな!」

 先に下肢が壊死しきった兵士にかけた水の魔術を解除されているのを確認して、魔力で強制的に血餅と血清に分離させられていた血だったものを腕ごと切り裂く。

「ぎゃぁっああああああああああ!?」

「うるさいよ。切らないと死ぬから我慢しろ」

「お前! なにして!」

「腕くらい後で再生できるだろうがっ! 今はこうしないと死ぬんだよ! そういう魔術を使っちゃったよ! ごめん!!」

「再生? 俺たちにそんなことはできないぞ」

「は!? なんで!」

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