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鬱陶しいとは思っていた

 向こうの世界を滅ぼす……か、向こうの世界の事情など知らないのだから『ソレ等』がどういうものなのか理解できない限り是非を問うつもりもない。だが、それで何人死んで、こっちの世界にもの数多くの人々が死ぬことになることが容易に予想がつく。

「とめなくては」

 少なくとも……預言者を、あの男だけでも

 手早く着替えて、相談できる誰かを探すために下の階にいたユニーカにバツの悪そうな顔で挨拶をされて、もうどうでも良くなった僕は威勢よく「あぁ」と不遜な返事を返しておく。

「話がある。預言者の居場所について、だれか、詳しいやつはいるか?」

「いきなりなに、貴方はまだ、……もう少し休んでいなさい」

「時間がないんだっ!」

 なんで、そんな悲しそうな顔で……

「頼みがある。なに? ……樽から――――――」



 駐屯用の仮説キャンプ地に向かい、見知った村の広場に詰まる異物感のあるそれらに感じる良くないものを思いながら、見知った王国兵士に略式の挨拶で済ませて、その大きな天蓋の前で警備する兵士たちに儀礼的な挨拶をして、深々と姿勢を下げて報告する。

「緊急の報告がある!」

「……それは、なんです?」

 老練の兵士が視を屈めズイと頭を耳元に近づけ兵士らしい老けたオスの匂いに懐かしさを思いながら、周囲を軽く見回し小声で告げる。

「たった今、預言者が一度引き換えしてエイリアン・ユーリ・サトーを連れていった」

 老練の兵士が驚いているのか驚いていないのか、目を伏せて他の警備兵に

「私が出てくるまで誰も通さないように」と告げて「行きましょう」と目を僕に配り、天幕の先に掲げられた鈴を鳴らす。

「どうぞー」

 奥の方に聞こえたような天幕の中からの女性の声に入ると、取り次いでもらう目当てのクラーラ・ダングルベールだけじゃなく、その取次先を頼む予定だったアンドリマリー・ジラルデ閣下もおわせたときた。

「憩いの時間だったか? じゃなくても、すまない。大変なことになった」

「何があったのよ?」

 束に顔を寄せた変な姿勢でトランプのカードを握ったクラーラに目をやると、顔も向けずにトランプの観察を続ける。その先の彼女は既に神妙な顔で、トランプを裏側に手を離し両手を膝に重ねる。

「僕が寝ていたら預言者シグフレドがわざわざ僕の前にきてユーリを連れ去った。……いや、ユーリも合意だったようだから、わざわざ僕に挨拶しにきやがったんだ」

「なんで? ……本当にシグフレド様が?」

「本当さ、ついさっきのことだ! アイツらが言うには向こうの世界をたった二人で粛清するつもりらしい」

「んん? いや、そんなこといくらなんでも、いや、そうか…………そうか、ついに叶ってしまったのね。来てはいけない願いを叶えるチャンスが……だが、どうやって……」

 苦しそうにアンドロマリーが押し黙る。それに比例するように混乱していくクラーラは口走る。

「まさかとは思うのだけど、それが本当に二人だけだとしたら……! シグフレド様はこの世界から異世界人をなくす邪魔をさせないために……? まずい、いや、あの人は、そうか! 自分も死ぬつもりなのか……シグフレド様が? あぁ、そうとしか!!」

「……クラーラ! 落ち着きなさい」

「あっ、ぅッ!! クソ! 確かに実行可能な手段がある! だが、シグフレド様一人では物理的にできない手段だった。だから、あの人は教導会なんて組織を作ってまで戦力を……もし、シグフレド様が集めていたのが、纏まった戦力の数ではなく、たった一人の自分の代行者だとしたら、ユーリは選ばれたのよ! つまり、預言者と並び立って許される双璧となる存在として……?」

 怒り? 悲しみ? 呆れ? それは、クラーラのその顔は誰に向けた色なんだ?

「どんな手段を使うつもりか分からないが、会議場での口ぶりからするとコンクエスタ―の異世界へに侵入を利用してなにかするつもりなんだろう!? クラーラ、心当たりはないか? いや、あるんだろう? あるから、そんなことを言っているんだろう」

「えぇ、あるけど。そんなのわからない……分からないほうが良かったのに……ごめんなさい。知っているんだ。シグフレド様がどうやって向こうの世界を滅ぼす気なのか」

「なにをする気なんだ?」

「教えないよ!」

 震えている? クラーラ、なぜ目を伏せる。

「教えないよ……、そんなこと、たった二人でできるはずかない。それよりも急いでシュレージュムの地へ向かわないと!」

「……? あのキャンプ地になぜ」

 呼び鈴が再び鳴らされ「私が対応します」老練の兵士が応対へ回る。

「あそこに、……来ることが強く予想されているのよ。異世界人の空を浮く船団が、戦力をもって」

「おい! 勝手に話していいことじゃないぞ!?」

「ごめんなさい。アンドロマリー、私たちを行かせて、シグフレド様をこのまま見殺しにできないんだ!」

「見殺し!? え、いきなりなにを」

「えぇ、そうよ。私が知っている手段を使ったらシグフレド様とあの娘が死ぬわ」

 ……何も感じられなくなるほど揺れる。腕が、どうなったのかと思ったら、驚いた身体が大きく勝手にこの身体を震わせたんだ。死ぬ!? なんだそれ!

「火急の連絡です。すぐにご拝読お願いします」

 老練の兵士から受け取った書類を天幕内にある仕切りの裏側で封を切って数十秒。長くなるかと思ったが、僅かな時間で仕切りの向こうから戻ってきた。

 手に折りたたんた書類はなにも隠す気もないのか一部文章が見ようと思えば視られるほどだと思ったら、文字列が見えていたその部分を僕らに向けるようにしてため息をはいた。

「学術都市近くに保護していた異能力者、33名、全員死亡したわ」

 なにを

「………………は?」

 いって

「コンクエスターとの交戦と……侵入があって、コンクエスターに全員殺されたみたいよ」

 いる?

「しかもその場に、預言者様とユーリが居合わせたらしいわ。おそらく空間転移などの魔術で長距離移動をしてなにかしていた……この書類の運搬にかかる時系列から考えると全員死んだ後に貴方のもとに挨拶にきたのかしら」

 ……死んだ? 僕は、何もできなかったのか? 守れなかったということか?

 まだだ、まだ、守らなきゃ。

「まだ、シャノンを守らなきゃ……」

「……渡すものがあるわ」

 一つを奥の魔術やなか錠がかかった視たところ爆発機能のありそうな箱をから、もう一個を胸元から外して、二つのブローチを片手に一個下げてもう一方の片手には、箱から一緒に出したメモ帳の上に置くように僕とクラーラに突き出す。

「これ、前に一度……」

「このブローチをもって手帳に記載のある人達のところに行くと色々便宜を図ってくれるわ。メモの内容は私の関係者を調べる諜報のメモにしか見えないから、通じることがなくても私と敵対している間者と現場に判断されかねないようにしているのだから、注意はしてね。そのブローチさえ教えれば上に居るリストの人が取り計らってくれるから」

「そのブローチは……なんなの? 前に視たときも押し付けようとしてきたよね」

「私の関係者として裏で後見人をしている人に渡すことがあるものの上位の目印よ」

「だとしたら前に見た時は売ってもいいからとかかなりやばいこと言ってなかった?」

「リストがなければ役には立たないし、回収してくれるヒトもいるわ。そんなことよりも、シャノンも連れて急いでこの場から逃げなさい」

「逃げ、え? シャノンを? なんで」

「……時間は稼ぐわ」

「それって」

「ジーク! 急げって意味だ! 分かった。私達はシャノンを連れてシュレ―ジュムへ向かう! その後のことは、運が良ければまた会えるさ!」

「……そう、ね。もし、もう会えないのだとしたら」

「じゃあな! お前は鬱陶しいとは思っていたが、結構好きだった! 行くぞ! ジークフリート」

「え、えっと、もう二度と会えなかったらごめんなさい。全部終わったら会いに行くよ!」

「じいさんもじゃあな! 短いが迷惑をかけた」

「えぇ、本当に大変でした」

「情報漏洩もしちゃったし、次会う時、私はお尋ね者かもな!」

「させませんよ。マリー様の友人をそんなことには」

「たのむよ!」

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