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プロローグ3

 振った切っ先が敵の胴から遠ざかり、自分の姿勢の崩れを視てから、側頭部の痛みを認識する。

「撤退しろ! ここは俺に任せて総員撤退だ!!」

 蹴られたか、傷が多すぎて本能的に鈍麻された身体ではその動きを察ししそこねて、

「だれだ?」

 電圧を放とうとすると、相手から光の魔力の生成を察知して、

 ――――誘導の魔力を感じることもなく発射されたその閃光と熱に肩口から、既に焦げきった片腕を燃やされた。至近距離にいたのだから片腕で握った大剣で斬り返すと、消えるようにその場から消えた。

(高速移動しているのに衝撃波がない!? となると、高速移動できるのにさっきの蹴りの威力が俺をよろけさせる程度で済んだのは、そういうことかよ……俺は、運が良い!)

 聖剣の電圧に変換したことで光の熱を軽減したのだから、即死は避けられた。顎に、痛みを

「いってぇな」

 確認するより先に剣も握れない焦げた腕を錬気の保護の延長の姿勢補助で無理やり動かして刺すくらいのつもりで掴む。

「コイツ、枯れ木みてぇな腕を腹に突き刺してッ!」

「もはやこの焦げた腕では触ってるのかもよくわからないなぁ」

 そういう時のために感覚を鋭敏にする感覚操作を緑の魔術で無理にやっているのにな。コンクエスタ―の野郎が何をいっているのか、よくわからん。少なくとも知らん言語だ。

「やめ」「消えろ、侵略者」

 雑魚が逃げていく。大剣で魔力を吸収しながら胸に突き立てる。

「一撃で死んでくれよ」

 悶え、苦しむがどうなってんのか分からないが、この聖剣の前では錬気もできないはずなのにめちゃくちゃ硬くて弾力が強いのか突き立てて余波で地面が沈んで近くのレンガブロックも崩れ去っているのに、まるで聖剣が鈍くなったのかと思うほど突き刺さらない。

「追えないな。困ったよ。誇れば良い、お前が耐えたからお前の部下は生き延びた。誇りを胸に死んでくれ」

 突き立てる剣に魔術を込めて貫くための……

 こいつほどの実力者だとこの状態の俺の腕を軽く触ってもあんまり痛くないんだろうなと、思いはしつつも、掴む手が余裕がなさそうに俺の方に軽く添えられているだけなのはどういうことなのか。


 ◆


 「やめておきなさい。彼を捕虜にすると人質として効果的だ」

「あ、誰だ? なんだ、預言者か……あー、うん」

 悩ませてしまうよな。判断として殺すのは無しでないし、どっちでもいいんだができればね。

「いいだろう。アンドロマリー閣下が信奉なさる貴方様に反骨する理由も……まぁ、いいか」

「今、意識を失っているのだから、そのまま意識を取り戻さないように緑と闇の複合魔術をかける。…………よし、いいだろう。これで、半月は意識を取り戻すことはない。生命維持の処置を忘れないようにね。よくやったな! これを、アンドロマリーの手札にすれば交渉も進みやすいだろう」

「……なんだ。手柄を横取りするつもりかと思ってたが、今日は違うのか?」

「あぁ、今はそういう余裕はないんだ……」

「そうか? そうか」

 様子が変わり、礼節をもって取り繕った態度で胸に手を添える。

「わかりました。ならば客人としての丁重にもてな」「その必要もない」

「そうか」

 儀礼的な挨拶を断っていると気絶した敵の持ち物から声が聞こえた。胸元にひっつけた黒い構造物。音は小さいが、これで声を飛ばす技術らしい。

『こちら、E3-2(スリーフォー)ミサキ、3-2(スリーフォー)ミサキアオイ、目的地点で待機している。応答求む、応答求む、要救助者を確認』

 口に指を当て制す。

「…………」うなずく。

 慌てて向いたが、優秀な彼女の臣下だ。察してくれた。

『要救助者……おい! なにを』

 ガタガタと板作りの床を数歩走った音のあと、数秒の沈黙。息遣いは聞こえるのに何も言わない。

『……緊急事態、緊急事態だ! こちらE3-2(スリーフォー)ミサキアオイ! こちらE3-2(スリーフォー)ミサキアオイ! 要救助者35名全員死亡! 全員死亡! なんで……!?』

「おい、エイリアンはどこにいる!?」

 向こうに聞こえるかもしれないが慌てて、ギュヌマリウスに言うが、困惑される。

「なんだ? それはなんと言っているんだ!?」

「説明は後だッ!!」

 迷って首を横にふる。だから、

「死んだって言っている! 奴らが!!」

 聞くと彼は即座に翻して先行して走る。

「こっちです!」

『いや、違う。35名全滅は訂正! 訂正する! こちらE3-2(スリーフォー)ミサキアオイ、ヴぁあ!!』

 断末魔。それを最後に聞いて、

 同じ音が正面の建物に吐くと、誰かの叫び声が……女の声だ。

 バリバリと回数を分けて窓を割りながらその首を失った塊が建屋の窓枠から見せつけるように落ちる。

 扉から堂々と出てきた濡れたその赤い女が、片手に首の髪をつかんで悲しそうな目をする。

「あぁ、預言者の方、コイツのせいで、みんな死んで……。これも予言していたの……?」

「いや、……予言は想像されるほど便利なものじゃない。何があった?」

「そうなの? そう、安心して、貴方と話した契約は……成功した。その後、こいつのせいで、みんな死んだ。死んでしまった」

 忌々しげに生首を投げ捨て転がして、

「コレは……私の弟の一人だった。結果は、貴方の言った通りだったわね」

「いや待て! なにさも当然のようにユウリ、お前がここに居る!? お前はいまごろ王都からここに戻ってくる途中のはずだろうが!」

 ギュヌマリウスの怒声に申し訳なく思うしかない。

「すまない。違法行為だが、私がやった」

「はぁ? どうしてそんな真似を」

「空間転移など私にとって意識して瞬きするように容易いことだ」

「やり方を聞いた覚えはない!!」

 怒りをもって向き合われるが、戦闘態勢をとらずに問い詰めようという態度だ。ありがたい。

「すまないな……後で報告して問題にするといい。私もあまり後先を考える余裕も無いんだ」

「なにを?」

 空間移動で、私とユウリを座標移動してモウマドに戻り、最後の決断を述べに行く。


 ◆


 「ユーリこんなところにまで、おい! 待て預言者! なんでユーリと一緒にいる!?」

「私か? 私は」

「どうやってこの部屋に入ったか知らないが、アンタも今すぐさっさとアンタの娘たちのところに戻れ! 混乱しているぞお前の組織」

「別にいいさ」

「他がよくねぇよ!」

「……そう、だな。……俺が言っても仕方がないか、ユーリ、これから私達がする予定を聞かせてやればいいのかな」

「?」

「そうね。私が言ったほうが良いと思うわ」

「すまん」

「なんの話だ?」

「……フリッツ、ごめんなさい。私はこれから、彼と共に向こうの世界に粛清を果たすわ」

「あ?」

「腐乱群島、あの島で私達の世界の人たちがしたことをもうすぐ私達の世界の権力者たちは、この世界の全部に行おうとしている。……だから、私はこの世界を護るために私の生まれた世界に核爆弾を作るだけの技術と、異世界に侵入するだけの手段を失わせるための、強硬手段をとることにするわ。だから、行かなければならない場所があるの」

「おい、どこに行くってどこに」

「ごめんなさい。私達の後の始末は、私がつける」

「待ってくれ、待って待って! 待ってくれよ! 話が見えてこないぞ!」

「……ごめんなさい。私、初めて人を殺したの」

「それがなんだってんだ! 置いてかないでくれ、どうせなら、僕も連れて行ってくれよ」

「……、重要なことなのよ。……ごめんなさい。貴方にまで地獄にきてほしくないの」

「地獄だって良い! どうだって、僕をまた一人にしないでくれ!」

 居ない。病室として扱われたこの部屋から、僕以外の気配が消えて遠く感じる壁向こうから混乱のガヤガヤした音が耳の中で何度も木霊する。

「なんでどいつもこいつも……っ」

 めまいがまた酷くなる。頭が痛い。吐き気もする。気分がひたすらに悪い。

「なんで誰も、僕に護らせてくれないんだ!」



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