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感情的になっている

タニス王国の兵舎に近づくほど熱気のような人の気配の塊に向かっているよで、その本体が視界に入るとタニス兵舎に居たであろうほぼ全ての人員と、メディテュラニスの連邦の精鋭部隊と紹介された多くの隊員見える武装した騎士たちが数名を挟んで向き合っていた。

 魔術を使って兵舎を視たが、兵舎の中にはネズミのような害獣や虫けらはともかく、人型の生物はいないことが確認できる。

「クロヴィス様! 管理長を連れてきました」

 誰かと思ったら、聖騎士のおじさんが若い騎士に片手を上げて挨拶をのような態度をとってくしゃくしゃと子供をあやすように頭を撫でる。

「そうか、ポルカス。君が連れてくるとは意外だった。よくやった」

「どういう状況なんです?」

「それは」

「私が説明しよう」

 聖騎士のおじさんが今まで呼ばれていないクロヴィスという偽名になってることも気になるが、いままでの余裕綽々という雰囲気から怒気を纏った雰囲気で視線だけは王国兵士たちから外れないのが、危機的な状況であることを知らせてくる。

 聖騎士のおじさんがどれほど強いかは理解できないが、それがこの場の全員がまとまっても及びつかない圧倒的な強さであることだけは理解しているつもりだ。その事実だけで、僕は背中から冷たい汗が垂れる恐怖心の源を視認していると自覚するには十分であった。

「ます、あらかじめ謝罪申し上げて置きます。かの、ゼネト、シャノン、ユーリ、クーングンデ四名の緊急的な密告によりヴァロヴィング王国の捜査官どの方とともに、そのタニス王国の兵士に尋問をさせていただきました。これは越権行為でありますが、緊急故になにとぞご容赦を」

 数秒前まで憤怒の形相が消えた恭しい不適な挨拶。酷く落ち着いていながら、怒気を孕んだ静かな声。

 彼の刺した手の先には異世界より召喚されたエイリアンの3名が、派遣メイドのクーングンデさんを護るように囲んで立っていた。

「して、タニス兵のかのものは異世界出身の彼ら3名から異世界に関わる情報を聞き出そうとして、証拠隠滅のためにクーングンデ君を殺害しようとしたためエイリアン三名により拘束されました。そこへ緊急的に駆けつけた捜査官と共にタニス兵を除外し、我々がかのものの尋問に入らせてもらいましたところ、逃亡を図り証拠隠滅に書類を燃やしたため捜査官どのが、抜刀して取り押さえている。といったところです」

「え、お姉ちゃんメイドさんっ、怪我は!」

「大丈夫。私になにかされる前にお三方に殴られてたから」

 周囲の三人へ半回転するように三回礼をする。

「ゼネトさん、シャノン、ユーリ、そうなのか? ありがとうございます」

「いえいえ、当然の対応をしたまでです」

「フリッツ、こいつはお姉ちゃんさんを殺そうとしたの。兵士でもない私には殺さないように加減するのは苦痛よ。許せないわ」

「どういたしまして」

 壮年の男性は表情を変えないが、僕に気を許しているユーリの激怒にシャノンは驚きながら、挨拶でしかないように返事をする。

 聖騎士がそれでも漏れ出て恐ろしい怒気を抑えているような態度でユーリに声をかける。

「すまないね。これでも私は騎士の仕事についているのだから、ユーリ君、彼から情報を聞き出さないとならないから勘弁してくれ」

「すみません。こいつの、私達がこんなのがに味方すると思ってたというだけで腹立たしくて、できるのかぎりですが抑えておきます」

「やめてくれよ? 一応、抑えてる俺だっているんだから」

 中央の集団は数名のヴァロヴィングの騎士でその中心には見知った顔であるカヴィンが剣で脅す形で兵士を一人抑えている。剣でなく兵士の毛髪を掴む片腕が揺れるように力が入ったのが伺える。

「燃やされた書類に関しては捜査官たちどのが回収して復元作業に入っているようで、私には専門外なので何も言わないでおきましょう」

 タニス国兵士は同胞をいきなり傷つけられたせいなのか、怒りの感情をもって連邦の精鋭に今にも飛び掛かかろうとする気迫を帯びている。

「それは我々が対処しています。数日もあれば復元は難しないかと」

 そうか、

「ありがとう。じゃあ……タニス国よりの派遣隊隊長殿の言い分は、なにか」

 タニスの兵士たちの最前列に構える壮年の騎士になにか言ってもらわないと、対応も難しい。

「彼の処分は、一任します。捜査に関しても口を挟むつもりはありません。ですが、彼の凶行がタニス国としての意向でないことは理解して頂きたい」

 おや、兵士と比べて思ったより冷静。というか、青ざめて

「そんなはずがないだろう! 彼が証拠隠滅しきれなかった書類には君たちの本国との連絡に使った暗号文が含まれていることを我々が見抜いてないとでも思っているのか! 甘く見るんじゃないっ……! 馬鹿にしているんじゃないぞっ! 組織的でないと考えるのは不合理だ。ジークフリード・ラコライトリーゼ管理長殿! タニス国へ厳正なる対処を!」

 聖騎士さんの方がブチギレてんのかよっ……! いや、怒気はいやというほど感じいたが、

「すぐには決めません。だけど、一旦全員の言い分を聞かせてもらう。任せてもらっている以上は、そういう仕事もしないといけないからね」

「ならば、急いでくださってほしいものですね」

 厳正な処分とか言っても、あまりにも厳しいことをすると、タニス国が手を引くというか、事業からタニス国を排斥する流れになるのは不味くないか? 一応王様が言ってた便宜上の理由は『共同監視』が名目の一つだったはずだし僕の責任で処分とかできないし、だからといってタニス国の兵士の怒りの感情、連邦の盛んな血気を沈めるにはどこかに落とし所は必要だ。決めるためにも、まずは……話を聞こう。

「上級監査官どの、……メディテュラニス地方連邦が捜査に関わることは可能か?」

「貴方が許可すれば、可能です」

「わかった。異邦の聖騎士様、いまだ企ての全貌もつかめず、悪行を事前に見越せなかった我々にも至らぬことがないこを確認するためにも、連邦の騎士に我々の捜査を手伝ってくれることを頼めますかね」

 正直、考えすぎな気もする。だが、彼らが兵士だから訓練されて抑えられているだけで、彼らの感情の部分はいつ殺し合いになっても自然な雰囲気すら感じる。だから、かなり思い切った対処が必要なのは違いないとは思う。

 聖騎士はとなりの数名の副官になにか細かい身振りをして会話する。少しの声でしばらく、長いと言うほどではないが、怒りが落ち着いて考え合うくらい時間をかけて言い合うと纏まったのか、やっと落ち着いた聖騎士のおじさんが副官に頼むような仕草でまとめる。

「……わかった。送る人員は君に任せる。調査に関わらせるんだ」

「は、ではすぐにこの場では……」

 副官の中の一人の女性がキビキビと、弾けるような声の号令がなにかかけれ兵士が数名前に出てきた。アトス王国と違って女所帯ということはまずないが軍人に女性が少なからず存在し、全体的に肌が薄暗い帝国文化圏からすると、エキゾチックな雰囲気のする構成の人員だ。

「あと、十数名の候補を送ります。ヴァロヴィングに非礼のないようにな」

「助力……感謝します」

 僅かに困っているといいだけな顔で監査局の上級職員が儀礼的な挨拶を意味する礼を副官の女性に向けてする。流石に、適当に押し付けすぎて申し訳なくなったので、これ自体が問題とは言わないように、未来に対する発言として暗に僕ですら謝罪してしまった。

「すまない。苦労をかけると思うから」

「いえ良いんですよ? こういう苦労を任せられるために我々がいるので」

「ありがたい」

 心から。だが、これは連邦へ対する落とし所だ。問題はこの落とし所を切り崩さずにタニス王国兵士の心情にどうやって落とし所をつけるか、だ。どうやってごまかすか、とも言える。

「それと! タニス国の同兵舎の兵士は全員、まだ新築の別庁舎に移って謹慎してもらう」

 そのための建物があるから、しないという理由はない。これはどの道しなくてはならない宣言なのだから、印象が悪くなる後出しにならないようにまず最初にする。

「ジークフリード少年!? そこまでやるかいっ!」

「無論だ。異世界の技術は徹底的に排除しなくてはならない」

 かすかなどよめきが聞こえると、兵士の怒気の向き先が散らばるのが感じ取れる。

「誤解のないように! 私は君たちタニス国の潔白を信じている。故に、捜査の妨げとなる生活すら一部制限することで速やかに捜査が終わることを期待しているんだだから……」

 次の言葉が思いつかない。兵士たちの怒りを込めた視線。兵舎を出ろという横暴。

「頼むっ!」

 言い訳などしようがない。故に、頭を下げて頼むのだ。

 全方位からのどよめき、よし感情は動かせている。なら、あとは、タニス国としてもそれが不当という立場をはっきりさせれば兵士を、頭を上げて演説のような一方的な語りを始める。

「そして、問う! 君たちの騎士としての矜持ではなく同じ大陸に住まうタニス国民の一人として考えてほしい。君たちは、マシンを肯定するような蛮行と、その行いを視られた口封じに不良を騎士と認めるのか!?」

 静になる。この場のどいつもこいつもが、次の僕の言葉を待っていやがる。

「私は違うと信じたい。故に! 私は君たちに横暴な調査のために、兵舎から出ていけ! と急なこと言わざるを得ないのだ。これは、私の至らなさがそうさせている自覚もある。だが、我々はどんな立場でもマシンを容認するわけにはいかないのだ! そうだろう!? だから、頼む! 私に力を貸してくれ!」

 そう言ってもう一度頭を下げる。

 どうだ……? 誰かがなにか言い出すまでそのまま下げっぱなしにする。お願いするしか、できることがないんだ! なら僕は、お願いする。それだけだ。

「わかったね。みんな、ここは彼を立てて一旦押し黙るとしよう。では、我々が謹慎する庁舎へ案内してくれますか?」

「隊長!?」

 タニス国の隊長が言ってくれたので、流れるように答える。

「まだ立てたばかりの庁舎があります。クーングンデ、予備の布団などの搬入を頼んでくれ。まだ、中身は空っぽなのでいまから準備すれば夕方までには寝床くらいはなんとかなると思いますが」

「みんな! 聞いたね。野外で寝なくていいだけ結構な対応だ。ここは引き下がってくれ」

 これでやっとタニス国かた派遣された兵士たちの当該庁舎内に構えていたみんなは移ってくれて、派遣メイドたちと荷物運びをしてくれる形で収まったが、問題はまだ残っている。


 正直、隊長が簡単に引き下がってくれなかったらこの状態は生まれなかった。がだ、

 隊長があっさり引き下がった理由が後から分かってしまった。タニスの派遣隊には後で埋め合わせでもなんでも様子を視てケアをすればいいのかもしれない。隊長からしてみたらこれを、こんな地雷をケアしたくないから被害を押し付けるために引き下がったんだ。

 聖騎士が問題を起こした兵士に感情的になっていることだ。

 最初はタニス国が嫌いなのかと思ったが、全くそんなことはなく。引き下がる兵士たちに礼もして、隊長には浅く挨拶の角度で頭も下げていたほどなのだ。

 だが、地下の簡易牢獄内の尋問室でその怒りはあらわになった。片手で収まるペンのようなサイズの魔術で作った金属の棒の先端が真っ赤に染まり、兵士の指を焼く。否、接触したその皮膚、肉と骨も蒸発させで霧散させられる。

「やめなさい! 聖騎士様、話を聞く前に殺してしまうきですか?」

 焦げた肉の匂いが美味しそうに漂ってくる。晩御飯に豚肉がいいな。献立はなんだったかな、

「いいだろう。舌を焼いたわけでもなし、指を一本ずつ焼いて尋問に影響は出るか?」

 痛みで溢れ出る絶叫、失禁、涙、脱糞を見えない聞こえないふりをしながら、僕は聖騎士に耳打ちする。

「素質のない人は指を順番に斬った痛みでも死ねるんですよ」

「あぁ? 知るか、こいつは素質があるつもりなんじゃないか!」

「アンタを止めるつもりはないけど、殺したら責任取ってくださいよ」

「ちょ、管理長!?」

「しょーがないでしょう? この人止められる腕っぷしなんて誰にもないんだから」

 はっとした聖騎士は魔術で作った棒を消滅させて頭を掻く。

「……ぁっ、そうかすまない、そうだったな。一旦頭を冷やしてくる。少ししたら戻るから、治療と尋問を勧めていてくれ」

「はい。だそうです。カヴィン」

 食欲の失せる汚水が垂れ流しのきつい匂いにもなんの顔色も変えずにカヴィンは職務らしく、小テーブル越しの対面の椅子に座って尋問を開始する。

「では、俺はヴァロヴィング王国魔道監査局で捜査官として騎士をしている者だ。貴様の尋問を担当させてもらう」

「……聖騎士のおっさんが帰ってくるより先に全部吐いた方が良いよ」

 ちゃちゃを入れたら苦笑され、聖騎士の副官は「すみません」とつぶやく。

「はい、なんでも、なんでも話します。なので、もう」

「僕らに聖騎士は止められないから、戻ってこなくてもいいように質問に速やかに全部答えればいいよ思うよ」

「はい、私の命令主は」

「お前は俺の質問に『はい』か『いいえ』で答えろ。貴様が提示する全ては信用に足りない」

「え、いや、おれ」

「……尋問を一旦、停止する」

「『はい』はいい!! 答えます、答えますから! はいかいいえだけで答えますから!! なんとかっ!!」

「木材搬入業者のビル」

「…………! ……『はい』」

「枢密院のハイクラウン卿」

「……『はい』」

 質問2つで、問題の兵士は魂の抜けたような顔になる。きたねえし、臭いし、もう、後もないみたいだが、よくわからん。

「安心しろ。我々は貴様の暗号文を早見表を回収に成功し、解読完了している。俺がする全ての質問は貴様が持っていた情報に基づいたものであり、貴様の与えられ得た情報は笑われは全て抑えていることを前提で、貴様も持つ情報を聞き出すものだ……理解したか?」

「『はい』」



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