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天の魔術の

 「ユーリ、シャノン、程合いはどうだ?」

「研究者が楽しそうよ」

 寝ているシャノンがあくびを噛み締めて他人事のように眠そうだ。

「運動にはなったかな!」

 汗を残してクールダウンしているように息が上がっているユーリもどこか他人事のようだ。

「そうか、再現魔術の開発はどうなんです?」

 研究者に聞くと楽しそうな顔で唸って紙をペラペラめくって他人事の理由がなんとなく理解できてきしまう。

「芳しく無いですね。ある程度の法則の再現はできるんですが、数値の関係でまともに再現が成り立たない。といったところですね。ですが、新発見もありました。この技術がなんの応用に使えるかは全く思いつきませんが、魔道の探求者としては楽しいことこの上ないですね」

「そうか、……研究が捗っているようでなによりだ」

「そういえばジークフリートさんは魔道師と言っても研究より開発が専門なんでしたね。どうです? 見ていきます? 他分野の見解も聞きたいものです」

「とりあえず、再現に用いた式だけは見てみたいかな……」

 紙に記された仮説やメモ書きに目と通す。やばい、楽しい。そうか、こういうのは……。

「じゃあ、組み手でも再開します?」

「えぇ、我々としても物理法則に介入するタイプの魔法使いとの戦闘訓練はいい経験になります。では、行きますよ」

 軍人と会話するユーリを目端で捉えつつ記録で組み立てられた式を頭の中で組み替えて何ができるか、何が完成するかを夢想する。

「これの写しを書かせてもらってもいい? 圧力の数値の方は力の魔術でごまかして何かできるかもしれん」

「力の魔力属性因子を作れるんですか?」

「シンプルな念動力とか、ちょっとした錯覚をさせる精神感応ならできる」

「へぇ、珍しい」

「珍しい、かな」

 式の写しを書かせてもらって次の記録紙に目を通す。

「地元では結構使ってる人がいたんだがな」

「へぇ、確かシュレージュムの近くでしたっけ?」

「そうだな。確かに、割りと近かったかな。あの事件の時に難民がいくらか雪崩込んできたくらいだし」

 記録の他のメモを考察として整理してできるだけ写す。

「帝国文化圏か……ちょっと興味があるなぁ」

「そうは言っても僕の魔術の先生はセシリア教授だぞ。文化圏もなにもなかったりするかもだけどね」

「いえいえ、文化史っていうのはどこから繋がるかわからないものですよ。案外人が一人動くだけで変わる世界もありますよ。それに、魔道研究に民俗学を絡めた視点から考察するのは、私の研究テーマの一つですから、興味は突きないものです」

 民俗学など研究者の研究のための道楽みたいなものだ。学のあるものでも好きでもない民族史など興味もてないんじゃないか?

「あー、でもこれだと鋼の魔力が少し欲しくなるな。僕は鋼と炎は作れないんだ。まぁ、やるだけ試してみるよ」

「それまた珍しいですね」

「あぁ、珍しいな」

 あまり話したくないのでそっけなくしたつもりだが、まだ食いついてくる。

「作れないだけですか? 魔力操作はどうなんです」

「あ? 作れないのに魔力操作もなにも」

「あぁ、裏技があるのですよ。最近東の国で広まりつつあるんですが、実践で使うには不便なままですが研究に使うには流行っている技で、他人に魔力操作を委ねる術があるんですよ」

 儀式魔術でよくあるものかな? それとは別か、どうか。

「……後で聞かせてもらうか?」

「えぇ、役立ててください」

 視界を組みて渡渉して刃を潰した訓練用の剣を素手で弾き、細々とした魔術の放射を、跳ねたり、空間がネジ曲がったような奇怪な落下起動で避けるユーリを見て、兵士もユーリも本気を出してないような遊んでいるような表情で苦笑が漏れてくる。

「なんというか、普通に僕より強いな」

「そうなの? あんたも大概だと聞いてるけど」

「どうかな、鍛え方が足りないせいかシンプルな殴り合いとかそういうのは避けてばっかだから、切り合いとかなら、不意打ちとか、だまし討と、引っ掛けて落とすのが特技、かな?」

「だからショーテルを選んだの?」

 シャノンの合いの手に『ああそうだ』とうなずいて腰の剣を撫でる。

「これなら普段の農作業で使う鎌と同じ力の加え方で斬れるからね。普通の剣でかち合うよりよっぽど上手く立ち回れるし……、でも本当はあんまり武器にはこだわってないんだ。本当は武器なんてなんだって」

 いや、『武器を選ばない達人です』みたいな事を言ったらしらけるかな。

「いや、どうか、そうだな」

 ……考えたふりをして周囲の人を動向をある程度思い出す。

「この写しを使ってできる実験はどうしようか、第2演習場周りは今人は居なさそうだし……。そこで新しい魔術の実験してるから、またお昼にでも、また」

「あらそう! ついていって良い?」

「いや、うーん、危ないことするしな、人が居るところでは実験したくないからついてこないと嬉しいかな。あ、でも、演習場に誰か居たら部屋に戻って仕事少し進めてると思う」

「わかった! また後で」

「報告楽しみにしてますよ」

「えぇ、そのうちに報告します」



 ◆



 誰か、話している?

「額面通りと思っていいだろう」

 テロリストのスパイとか、アトスなどの東の王国の旧体制派じゃないといいが、

「確認しただけで5人、リストに乗っていた人物の生存を確認できた。あと四人いるらしい」

 息遣いを浅くして潜め、足音が立たぬように体重移動を意識して、気配を殺す。

「研究者や外交官が立ち寄るあたり、庇護は確約されているんだろう」

 独り言? いや、誰かと会話している。だが、もう一人は黙っている?

「手をだすことは推奨できない。できるだけ無視しろ」

 やり取りしている相手に問題があったら、たぶんこの後すぐに交戦となる。

「残りの確認も……そうだな」

 大丈夫だったら冗談めかして『驚かすつもりだった』と言って笑いかける。それだけだ。

「続け……」

「おい、それは、機械ではないか!?」

 建物の壁から視界の遮蔽を抜けて底に居た彼を見ると、手に持った黒い箱状の機械を頭の側面に掲げてなにかをしていた。

 驚いた顔のアレクシウスに僕は、焦りや、恐怖のような感情で作られているのに、怒りとよく似て全く違う感情が沸き立っていく。

「……見つかった……か」

「アレクシウス。それはいけない。機械を捨てろ! 命が惜しいなら、早くっ!」

 ややヒステリックになってしまった。こんな怒鳴り方をしたせいか、押し黙られてしまった。違う。頭を振って、押し黙っている異世界人に向けてできるだけ丁寧に言い直す。

「アレクシウス……済まない。これは見逃せないんだ」

「…………どうして?」

「我々は、……この世界にかつて機械を持ち込んだバカが居て。そのせいで2つの大陸が壊滅しちまった過去がある。説明したよね?」

 硬い表情のまま黙ってうなずくアレクシウスに笑いかけて続ける。

「そういう事情もあって、機械はすぐに破壊しなくてはならない。わかってくれるな?」

 不満……そうだな。自分のものを取り上げられて破壊されるんだ。そりゃ不満だよね。

「抵抗されたらお前を殺さなくてはならなくなるんだ。ごめん」

「万事休す、か」

 そうだな。だが、まだマシだ。

「だから、その機械を地面に置いて…………」

 動きがないもので、少し合意にしないとならないと思った。そうでなければ僕以外のここの兵士が迷わずにアレクシウスを殺すからだ。

「いったいどこに隠し持っていたんだ。見つかったのが僕じゃなかったらその場で斬り殺されていたかも知れないんだぞ?」


 奪い去ろうと右腕を伸ばして近寄ると乾いたしっとりとした冷たさが肌を伝った。

 一瞬だけ、寒い。

 寒気を感じたとおもったら腕が焼けていた。アレクシウスは僕の胸に掌底を当て神速の跳躍を持って、距離を取った。

 動きを見ればわかる。今、距離を取るより僕の首をへし折ったほうが確実と言えるほど身体能力のみでの実力差がある。言ってしまえば、僕を殺すだけなら距離を取ったほうが面倒だ。ならばなぜ、距離を取ったのか? そんなことは簡単だ。

 距離を取ったほうが楽に僕を殺せるからだ。

「離レ水ノ月!」

 防御態勢が間に合わなかったが、目で追えた動きで相手の位置さえわかればかけることのできる魔術を選択。

 やつの左右、広大な雑木林が一瞬にして霜に包まれ凍てついてしまう。

「魔法かよ!」

「外れた!? いや、違う!」

 よし、水ノ月は完璧に作用して困惑している。が、効果が切れたようでアレクシウスは正面に駆け出し、格闘戦を挑むようだ。

 このタイミングで、水ノ月の効果で認識失調させる概念を『前』から『剣』に変更する。

 格闘戦を挑むアレクシウスに魔術を仕込んだ一撃必殺の二振りのショーテルを抜き出し拳の進路を妨害しながら、構える。

 当たる前に、腕が、弾けた。僕のだ。腕の中に爆弾が仕込まれたように右腕が破裂して血を吹き出す。こいつ魔法、近寄ったらソレだけで危険だ!

 ショーテルを引っ掛け、切り傷を与えいてやつの行動が一瞬とまり、また距離を取る。先程まで晴れ渡っていた空に天気雨が降り始める。

 やつの周囲に蒸気のような霧が貼る。雨もやつの能力と関連があるのだとしたらあまり浴びるのもよくないか……

「ち、変な毒を使うな」

「……見切られたか」

 水の浄化のための魔術で血液を血清と血餅に分ける毒のような技も仕込んでいたが、アレクシウスが傷口を指でなぞると血溜まりと一緒に僕の魔力因子が振り落とされる。

視界一杯に蒸気が立ち込めた。離れたこの場が他の場所を見ることができない程度に濃い。いや、これは蒸気じゃない。水が霧状に消散しているのに全く熱を感じない。それどころか寒気すら感じてしまう。

 この霧の元は僕の魔力だ。故に、やつの能力によって水が霧にされたのは違いない。

 だがここまで広く霧散してしまえば僕の魔力に再置換して消すなんて器用な真似は難しくなってきやがる。

 うっすら腕に力が入った。なにかしようとしている。

血礫(けつれき)!」

 血を吹き出してる割に痛いだけで、全く問題なく動く右手を振るって魔力の源たる僕の体の一部を推力と硬度を持たせて射出してから突き出す。

風鑢(かぜやすり)

 進行方向への直角軸で高速回転させるう風が前衛進む魔術を殺す気でやつを狙う。世界を恨むような悲鳴が回転から漏れて鳴き、他になんの音も聞こえない。

 あっさりと回避して倉庫の壁がえぐれ、槍が刺さった!? 胸が焼ける。伏兵か!? いや、気づけなかっただけだ。後側から胸を貫通する細いそのやりが氷で形作られた造形物であることが、近くで見てやっとわかった。

啄木鳥(キツツキ)

 くそ、この霧じゃ僕の魔力すら邪魔で周辺の水分、魔力の察知がまるでできない!

 へし折った氷の槍の突端を掴んで、ヤツへ向けて高速回転する(つぶて)として狙う。まだ解除されす軌道を変えて戻ってくる風鑢の煩さに気を取られてそうだと思ったがそうでもなく、礫を回避して軌道を直角に変化させて加速を当てようと狙ったが、冷気をまとった手に掴まれて雨すら霧に置き換えられて止められる。

「霧……いや、蒸気?」

 風鑢が霧散する。風の魔力そのものは尽きてないはずでまだ魔術自体はまだ発動しているはずなのに、魔術がなんの効力も持たなくなっている。

「どうなってん」

 踏み込んだ。意識は反応できているのに、体が動かない。

 僕の側面から氷の魔力で形作られた骸骨の腕が現れ、闇の魔術を大量に練り込んだ氷の髑髏は巨大化して僕を守るために肋骨で囲う。ぶっ飛ばされながらかつて死神と呼ばれた氷の髑髏の腕でやつを砕くつもりで握り潰す。

 髑髏の腕に掴まれたアレクシウスは体の周囲に風を纏って壊そうとする。手の甲越しにひび割れるものだから粉々になる前に地面に全力で叩きつける。くだけた骨を闇の魔力の塊の氷で

再形成して防御態勢をとる。

 砕いただけで……氷は霧散させられない?

 この巨大髑髏(ドクロ)は氷でできているはずなのに水のように霧に変わらない?

氷礫(ひょうれき)

 試しに氷の礫を放つ魔術を髑髏の下腕部から発射させるが、闇の属性魔力の硬化範囲外にでたらあっさりと昇華して届く前に立ち消えてしまう。

 しかし、奴の周囲には霜が立ち上り、塊としての氷の塊が生まれだす。

「自分を優先した上で自分の能力以外の水分に影響する能力か……?」

 闇の魔力で生命力を削っているはずの何アレクシウスはピンピンとしたまま困ったような顔をする。

いま僕が出せる理論上の最大威力の魔術は『浄化』だ。これ自体は水の魔力因子のみで構成することができるが、それを広げるには他の魔術を使用する必要がある。

 冷気が広がって、霧が、あ? 体が重い、……胸に貫かれた氷が沸騰している? そうか! こいつの能力は、

 遅かった。理解することも、反応も、なにも自分では対処しきれる相手ではなかった。僕がするべきは一目散に逃げることだった。しかし、無謀にも挑んだ。

 だから、胸の中が沸騰して肌がめくれ上がった右腕から血液が噴出している。まずい、死ぬ。このままでは死ぬ。

「コロン様に、手を出すな!」

 アレクシウスがはぜた。次の矢が見えた。発射方向を探すと、メイドのお姉さんが、

「死ね!」

 次の矢を既に放って構えていた。矢が当たるとアレクシウスの肩口で爆ぜるが意にも介せず、冷気を纏って衣服から霜まで張った威力を確認するようにアレクシウスは放たれた矢を掴み、爆ぜたのを見て、真っ直ぐ駆ける。

「ダメだ! クーングンデ! 来るな!」

 体が動かない。あれ、これ、死ぬんじゃ? 体が、

「『お前』は『走れない』」

「足が!?」

「間に合え!」

 動きを止めた。水ノ月をかけて『水平感覚』を失調させて!

 でたらめな空の方向に冷気が放射される。

「逃げろ!」

 僕へ向かって掛けてくるメイドのお姉さんに向けて叫ぶが無視されて左腕を肩に担がれるように引きずられる。引っ張られたその瞬間、体は積み木のように支えられなったことで自分が立っているだけで満身創痍の体であったことに気づく。

「嫌だ! 連れていく!」

 洒落ていたメイド服が僕から垂れる血でベタベタになる。

「あ、こんなに血が……?」

「まさか、痛みを感じてない!?」

「……わからない」

 霧の向こうからユーリの立ち姿が見えた。軽く上げるように手を振ってユーリは独り言のような言葉を言い出す。

「『お前は異能を使わない』『お前は私に近づけない』『お前は息を吸いそびれる』」

 アレクシウスが懐から黒いなにかを取り出すと、乾いた破裂音の後ユーリに向かって何かが飛び出す。

「銃なんてかくしていたのね」

 ボウガンの……小さな塊を打ち出す形式のものか、小型の砲台にも見える。

「『誤射』が『貴方の眉間に当たる』」

 バリン。そんな音がして壊れた。ユーリの魔法の干渉でやつの持つ黒いボウガンは手元から溢れるように割れて、アレクシウスの眉間から血が垂れる。

「わかった? 私の能力はそういう、因縁、因果を操れるの……逃げるなら、今は逃すけど、『向かってくるなら、お前は死ぬ』」

 呼吸ができないせいで悶えような苦しみ方で胸を抱えてアレクシウスが地面を蹴り、衝撃波が巡る。

 いや、衝撃波の方向がおかしい、衝撃波に叩きつけられているのに奴に引き寄せられている。まだ新しい物置小屋の屋根がめくれて壁がボロボロと飛んでいく。

 まだだ。土の守りで間に障壁を

「伏せろ!」

 誰の声だ? 聞き覚えが、霧を纏った多量の水が打ち出され、余波で引っかかりにした土嚢腰に暑さを感じてこの水がほとんど気化している密度を保った湯気であることを悟る。

「ブラスト! スチームブラスト! あとは、こいつだ!」

 間欠泉が噴火するような爆発音がすると、周辺の霧は晴れ、遠くにいた多国籍の兵士たちが恐るべき速力で周囲を取り囲み、それぞれの武器を構えた。

「なんてやつだ。『異能をわざと使いこなせず』暴走させて、『相手を向かわせてくる』とか暴挙で因果の干渉を縫うやつが居るとは」

「ブラックバインド、だめだ。全然拘束になってない! 『減圧』の天候操作魔法だ! それとは別にパワーがおかしい!」

 闇の魔力で生まれた帯でアレクシウスをがんじがらめにした彼女が兵士たちへ向けて叫ぶから、兵士たちが身構えて動きを凝視する中、帯は溶けて消えていく。

 やつに対峙するユーリと、隣りに立っているのは前にゼフテロに両脚を斬られてそのままにされたはずのクラーラであった。

 にらみ合い。

 アレクシウスは余裕なのか、どういう感情なのか、険しい顔で首をかしげて頭を振る。

 近寄ってくる兵士が複数人、こちらに駆けて気を張る。

「治療します。前線を離れましょう」

 『心苦しいが』そう頭にのっけた台詞でも吐こうとして頷こうにも体が反応しない。

「フリッツのことは任せる!」

「ハイ! 任されました! では、急ぎましょう」

 後ろから、聞こえてくる。

「助かりました。この人は私からしても別格です。呼吸できない程度で死ぬような生物ではありませんので」

「助けたかな? だが、彼、あの熱波を食らって無傷だ。衝撃もそれなりだったはずだが、かなりの緩衝がほどこされている。さらに、一時的とはいえこれほどの広い範囲の濃い霧は私とシグフレド様くらいしかできない天の魔術の最高峰と遜色のない魔法だ。一同、油断の無いように!」

「…………!」

 なんとか動いた首から見えたものは、なにか言いたそうに口を開くが、明らかに苦しんでいるように悶えていたその姿に、一瞬だけ聖騎士のおじさんが突撃する影が見えた気がした。

 長く、鋭く、重厚な爆発音のようなものが鳴り響き続ける。

 なんだこれは、なんの音だ!?

「余力が残って良かった。その『怪我』は『致命傷にならない』その『失血』で『後遺症は残らない』」

 ユーリの声が聞こえると、意識がはっきりとしてきた。相変わらず長ったらしい爆音は断続的に聞こえ続けるがずいぶん遠いところまで音が離れている。この短い時間でどれだけ移動している? いったい、聖騎士はどんな攻撃手段で攻撃しているんだ!?

「え? なにを」

「おまじない。そういう能力」

「あぁ、魔法か、急いで運ぶ先導お願い」

「あ、ぐあぁ、いてて、いや、痛い。なんだ。気付け薬の代用? ぁ、痛い……」

「傷を見てもらいましょう。医者はどこに! 連邦の兵士さん」

「こっちです」

「頼みます!」

 連れて行かれる救いの一歩一歩のたびに振動が傷にしみて痛みを放ってきた。感覚ごとえぐられたような痛みだ。意識を周囲に割けなくなっていく。きつい。なのに意識ははっきりと保たれる。

 そして、爆音がどんどん遠ざかって、やがて、止まった。そこで酔ったような感覚を覚え、今まで地面が揺れていたことに気付かされた。

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