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燃える衣服を二人で囲って、しっかり燃えるように僕が薪を焚べたところで、彼女は口を開く。
「これからどうしよ……」
「そうだな……そりゃ、帰りたいよね」
考えなしの返事をした僕に、彼女は激高してまう。
「当たり前でしょ! こんな訳の分からない世界に連れてこられて、襲われるわ服を燃やされるわでっ! ……っ……! ごめんなさい…………! でもっ! ――!」
すすり泣くことを堪えるように鼻をすする音が聞こえる。
「そうか……だよね」
「私はただ、……逃げ出しただけなのよ」
逃げ出した。そうだよな。誘拐されて、逃げて、次は私物を燃やされて
「なら」
逡巡、それ以降は言いたいことを言い切るだけか。
「探そうか。帰る手段」
「……あるの?」
「わからない。だけど、昔は確かに存在して、運用されていた」
「昔は、ってことは今は?」
「旧帝国、今はプロギュス公国になってる。……って名前になった国に、プロギュス帝国だった頃に異世界と相互交流をする手段を持っていた。だけど、それを異世界の悪人に利用されて大陸を一つ、ぺんぺん草しか生えない荒野にされて、大陸をもう一つ、水銀とヒ素で沈めてしまった。だから、今はないことになっているけど、禁止するためには厳重に管理されてる場所があるはず」
「それって……」
「だけど、実際の所、管理なんてまるでできてない。入手する手段は少なくない」
「……そうなの、てっきり盗みに入るのかと」
「そんな必要は無いんだ。必要だとしてもカルトを襲うよ。事実として禄に兵士も揃えられない御使い信仰のカルト教団でも召喚術を使える。だから、旧帝国をくまなく探せば、方法だけなら簡単に見つかるはず。ただ、……問題が2つあって、需要もないのにリスクの伴う還送手段が記された魔導書がどれくらい流通しているかどうかってことと、公国が王国の植民地化されてから酷く治安が悪化したってことが……どうしようもね」
夜空を見上げて、そこに星が見えなくなるほどに薪を焚べて周囲を照らす。
「だからユーリ、一緒に旅に出ないか?」
彼女は考えて、首を横にふる。
「貴方と? ……ごめん、いきなり服を燃やすような人はごめんよ」
「そう、なら、傭兵も雇えばいい。近くの街の一つで、旧帝国軍人が傭兵をするのが流行って、そういうのが盛んな地域がある。それに、一度助けたからには僕もバレたら極刑だ。それに帝国にいくならどのみち護衛がいる」
「……運命共同体ってこと?」
「次に王国兵士が聞き取りに来るまでには逃げるつもりだ。利用できるから僕を騙す気できなさい」
考えた彼女が、……眉を潜めて僕を見る。
「いや……待って、貴方おかしいわ? 変よ」
「どれが? 一応、心当たりが複数あるんだけど」
「貴方はなんでそうまでして私を助けたがるの? ってことよ! 見捨ててもいいはずじゃない」
「ん? いや、だって極刑は嫌だなって」
「は?」
「納得出来ないんだ」
しばらく、だまって火を見つめた。
「何も知らない誰かを、助けたくなった。その理由なんて相手が理由を知らなさそう。それで、十分なんじゃないかな?」
夜のが少し寒さを帯びてきたところで熱を帯びで赤くきらめく灰が、なんの灰だったかを確認できなくなったことを確認した暗闇の中で、
「そう」
すこし、笑ったような息遣いが聞こえる。
その後に時間が経ってから聞こえた声色が少し楽しそうだったのは、たぶん、僕にとって嬉しいことだった。
「納得できないなら、仕方がないのよね。うん、一緒に、傭兵を探しに行きましょうか」
これで僕らは旅に出ることにした。
あっさりしてるかもしれないが、覚悟としては十分だ。助けた分の義務は果たす。
「ありがとう。僕に、無責任な真似をさせないでくれて……ありがとう」