曲がった断面
包囲の中へ通してもらい、背後の兵士たちへ礼をするため一度振り返り、向き直ると出口と入口で騎士が声を張り上げ、構成員と問答を始める。
……側面から侵入したコニアと僕は一目散にある方向へ移動を始める構成員たちの姿を見る。別に隠れているわけでもないので何人かと目が合いはっきりと認識されたのだから、交戦になるかと本来の方向と逆方向に大きく円曲した二振りのサーベルを構え、コルネリアも背中に備えた肉厚な大剣に手を添えるが、彼らは何もせず、何も言わずに走っていく。その方向は
「地下へ? ……建物の真ん中あたりになんか、泥みたいなうごめいてる。毒とか爆弾かも? 水分をもったなんかが流れてる」
彼らが向かう方向へ地下だ。地下には大きな空洞を利用した儀式魔術の祭壇と魔法陣があると、作戦説明でのギュヌマリウスから聞いていたが……秘密通路の逃げ道があるのかもしれない。
「上をまとめて吹っ飛ばすかもしれないって?」
「わかんないけど、可能性は充分ある。だけど、追うわけじゃないけどアイツらと目的位置は同じだから」
「うん、ついていく形になっちゃうわね」
コニアの言葉に言えることなんて他に――――壁を突き破って、建物の真ん中からザラザラとした銀色の柱がうねってぶつかってきた。
真横にいたはずのコニアが反応して正面で側面の筒に腰に4本下げた剣の一本を鞘から抜かずに殴って弾くが、その巨大な銀色の塊はうねって僕の体を大きく殴り飛ばす。
でかい、蛇? この金属色は
「まさか、マシン!?」
「いやー、これは違うわ。たぶん、もっと作りづらいゴミよ」
違うって? これが、
「すこし、手間な作り方ね。全部潰すには時間がかかるわ」
そう言って、無くなった壁の向こうを見ると銀色の巨大な蛇が何匹か、3匹はいる!
「ちょっと上に投げるから、この間に地下へ向かって」
そう言って倒れる僕の腕を引っ張り上げて起き上がらせると、背面から衝突した蛇のしっぽを掴み、握った歪みで触った場所を陥没させてその蛇が衝撃波を上げて視界から消える。
◆
不出来なイモムシ。――くすんだ金属色のそれに私が抱いた感情はその程度。
前に見たマシンが蜘蛛みたいな形だったせいか、マシンと勘違いしてジークフリートは怯えてしまっている。
だめだ。
これではこの戦場では使いものになんないな。衝突してきた銀色のイモムシの金属づくりの外皮を掴みその奥のグネグネした有機質を感じて適当に放り投げる。
「この間に地下へ向かって、全部潰したらすぐにフリッツに追いつくから」
促されて立ち上がったジークフリートを視界の隅にキープしながら、腰に据えた一本の直刀を鞘から抜く。まず、上方のイモムシに全力を出して粉微塵にならないように鞘を投げる。
ただ、鞘が飛んでイモムシに衝突した衝撃波でイモムシが壁を壊した建物の倒壊が始まる。
ギリギリかな、ジークフリートも地下へ侵入できたと思うので、まぁ、いいだろう。曇天の空模様に衝撃波が風穴を開けて太陽が沈んだ夕焼けの明るさが舞い降りる。
空のやつ、まだ死んでないな。
鞘を失った剣を構え、イモムシに一匹、突き。折れないように細心の注意を払ったというのに全力の錬気を受けた剣は、二度引き抜いただけで、折れてしまう。
一匹しか殺せていない。
剣を刺した二箇所はクレーターとなり、一匹を頭を潰したついでで3つに分断し一匹の頭に見えたしっぽを穿って2つに分断する。
わらわらといて、巨大だから数がわからないけど、あと七匹と、空中に一匹、居る。
塊の中に、一人の魔術師風の女が見えた。たぶん、こいつが管理者か……。
断面からあふれる脊椎動物みたいな赤い血からも分かる通り、異世界由来のマシンなどという完全に独立した生物でなく、魔術による生命維持が必要な合成生物であるようだし……、あまり殺すなとは言われていた。
「2つ」
婉曲した日本の刀を抜き錬気を刀にまとわせて両手に掲げられる二本の伸びた間合いで、作業的に術者らしき人物の位置を切り刻む。いや、これは丸太から要らない部分を彫って削るような攻撃だなので、斬っているとはあんまり言えないのかもしれないけど。
これだけ大きくなてしまったら十中八九ありないが、もしかしたら術者が離れたら死ぬタイプの合成生物かもしれないので、殺してしまった。
私の体から放たれた錬気により本来の長さを大きく逸脱して巨大な間合いとなった剣は、その力を受けきり削りきった鉛筆のように刀身は短くなり、持ちてしか残らなかった。
上空から落ちてくるゴミに、持ち手を投げつけると。その威力に、イモムシは爆発してしまった。
「なんだ。硬いのは表面だけか」
内側に柄を投げ入れられただけでこれってことは、硬さは人肉とさして変わらないそうだ。
降り注ぐ肉片の雨あられに打たれるが、錬気を万全にまとった私の体は毛髪から衣服の裾に至るまで汚れることなく汚物を弾いてゆく。
残りの蠢きはとまらず、表と裏で両陣営の戦闘が始まるのを感じる。
「これ、最初に入ったのが私で良かったな」
いや、私より前に入ったチームは居たはずだ。……言って、忘れていたことに気付いた。
「いや、『最初に交戦したのが私で』かな?」
五本ももってきたのに残り二本になってしまった剣の背中に掲げた肉厚な方を片手で握り、表へ移動しようとしたイモムシを一斉に潰す。
裏にも回ったやつが居たので、そっちへはねて一通り潰す。
……さっきより増えてるな。確実に当初見た九匹より多く潰しているはずなのだけど、
「はぁ」
力を加えすぎた大剣がネジ曲がった断面で折れた。
「本気を出したら、怒られるわよね」
たぶん、ここの味方も死ぬが、地盤沈下でジークフリートがいるから
「いやいや、そもそも絶対ダメね」
残り一本この剣が保ってくれなけば私は、戦線を離脱しなくてはならないかもしれない。
「いやだ。そんなの」




