12-2
「で?」
声に伴う僅かな反響が室内の静けさを教えてくれる。
「いったいアンタはなにを狙っているんだ?」
「なにも狙ってないよ。弟が誤解してたから」
「誤解? なにを言っているのやら」
「ねぇ」
「なんだ」
「また、昔のようにコニア姉さんと呼んでくれないのか? ジークフリート」
人気のない訓練用の道場に質問したかったことが溢れ出て反響する。
「何もなかったような態度で」
「流石に、引け目はある」
「だったら、さぁ」
怒りが、胸からこみ上げて頭を鐘のように叩きにくる。
「要らなかったんじゃないのか……?」
「あ?」
「あの時、言ったよな。お前は家族が欲しかったって、それで、僕は血縁ってわけじゃなかったし、欲しいものと違ったんだろ?」
「……?」
「代用品にもならなかったんだろ? 本当の弟に」
「いや、あれはそういう意味じゃ」
「家族になれなかったんじゃないのか!? 全部ウソだって言っただろうがっ!」
「なれなかったんじゃない、なりたくなったんだ」
「お前は!!」
嫌だ。間の抜けた反応ばかり、聞きたくない。
「僕を捨てたんだろうが!!」
「なんのことを」
「村を出ていった日、お前は僕を『家族になるべきじゃなかった』って捨てただろうが!」
「違う、そういう意味じゃ」
感情が溢れて息が震える。肩が揺れる。視界がぐらつく。
「じゃあどういうつもりで、『弟じゃない。両親に求められたから故郷へ帰れる。要らない子じゃなかった』なんて」
「そんなつもりはなかった。私はただ、『弟として見ていたのは間違いだった』って」
「なんだそれ……違わないだろ。全くもって」
「お前は、……! 喜んで言っていただろう。僕のこと、僕が、どんな気持ちだと思っていたんだよ」
「一緒に、よろこんでほしかった」
「裏切られておいて『本当に要らないのは僕だけだったんだ』以外に思うことなんてあったとおもうか?」
「そんな。いや、私にはフリッツ、貴方が必要なんだ」
「だったら! ……さっきみたいに引っ張り出してほしかったよ」
立てない。どうしても、感情が体を鈍らせる。膝をついて腕の感覚が痺れる。
「あの場所から、出たかった。結局いまに、村に居れない理由が作れるまで出るつもりになれなかった。僕も、どこかに連れ出してほしかったんだよ!」
鎮痛な静けさだが間に漂い、コルネリアはその場で地面に手を付き頭を下げた。
「ごめんんさい。すぐに戻るつもりだったけど、あまりに忙しくてそんな暇がなかった。貴方を傷つけたことも謝る。だから、訂正させてほしい」
なんで…………なんだそれ。
「ほしい言葉ばかり……なんで、そうやって今出してくるんだ! お前は、僕を」
ダメだ。絆される。騙される。また、捨てられる。わかっているのに、
「僕を弟としてなんか見てなかったんだろう?」
訂正されたら、また、僕は、繰り返してしまう。嫌だ。また、捨てられたくない。
「あぁ、弟として、じゃない……」
怒りより先に、安堵。そうだ。コルネリアは僕を捨てたんだ。という確認。また拾おうとしているわけでないという気分の悪い安堵に包まれる。
「……男として、見ていた」
次の句に感情がかき乱される。
「一人の人間として、恋をしたから、姉でいたくなかった。だから」
聞きたくない。なんだぞれ、何が言いたいのか理解できない。
「また会う時があったら家族になってほしかった」
「なんだそれ」
なにを言われた?
「なにを言ってるんだ?」
わからない。頭が痛い。単純に理解できない。
「お前に僕は、いや、家族に」
視界の明滅が始まる。床越しに這いつくばっているコルネリアと目が合う。
「おい。フリッツ!」
床に倒れているようだ。
「無事か! おい!」
いやだ。考えたくない。頭が痛い。捨てないで、




