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流石に血の気の引いたコルネリアが困惑を隠しもせず静止を促すように手を正面に突き出す。
「フリッツ、落ち着いて、ユーリの保護が私の腕で賄う! だから、早まった真似はやる」
「どうなさいますか? アンドロマリー殿下」
正面の騎士が早記しながらアンドロマリーの様子を伺う。
「……そうだね。命の保証を命じたら君は協力してくれるの?」
「王国の一般市民なりには」
「お前……まだ、質問2つ目だぞ」
騎士に半目で頭を抱えられるが、別にいい。
「わかった。じゃあ、貴方が私の直属の部下として、指定した街に住んでくれるならいいよ」
「え」「な」彼女の周囲に立っていた数名の男女混ざった騎士官と男性執政官が感嘆を漏らし、ざわめく。
「……なら、条件を追加だ」
「お前! 図々し」「異世界召喚術に関する魔道研究の許可を求める」
不敬への怒りを抱いていた騎士すら押し黙り、据えた目を僕に向ける。
「なんで?」
王族らしく威厳のある眼差しで押し黙らせるような彼女の声に少し涼しさを感じる。
「ユーリを送り返した自宅のベッドに眠らせるため」
流石にだめだな。……だが、ここで許可を受けられなくても僕の指針を告げる意味では重要な情報だ。僕の目的に対して極端に不快な感情を向けられたならここまでだ。
仮にここで押し黙ることで終わらなくても、先はない。
「いいよ。預言者の娘のグニシア一派が貴方と同じような魔道研究をしているから、みんなの反応ほどのハードルはないわ。あと、他になんかある? これくらいのことで貴方を引き込めるなら安いものよ」
……おかしくないか? いや、おかしい。
「じゃあ、質問がある。なんでアンタは僕が欲しいの?」
「え、だって、君。ほっといたらすぐに病死しそうだから」
……? 予想外。というか、予想と一切関係のない反応だった。
「あぁ、なんとかっていう要素を持ってるからとか言ってただろう。僕が聞きたいのは何故、その要素を欲しがってるのかって話で」
なにか納得したように「あぁ」と感嘆符。
「奇跡の子って性質を私や君は持っていてね。遺伝って言うより生まれつきの体質っていうか、要するの極端な晩生成長を見せる才能みたいなもので、魔導の探究で色々便利な性質なんだけどね。弱いんだよ」
「弱い?」
「体がね。病気にかかりやすくて、たいていは3歳になる前に死ぬんだけど。成長するとたまにその魔法にも片足を浸かったような性質により克服して成人できるんだけど」
僕を指さして、告げる。
「君、適切な処置をしないと余命半年もないよ」
「あー……つまり、…………いや、なんで?」
「衰弱してる。錬気が上手すぎるせいで気づけてないだろうけど、普通は療養に入る程度には栄養失調を起こしているわ」
「え、それ、ホント?」
困惑する。コニア姉さんが僕より先に質問する。
「事実よ。貴方ほどじゃないけど、彼、錬気が異常なレベルで上手いから気づいてないだけでね。まぁ、奇跡の子が味方に一人でもほしいのは事実なんだけど、奇跡の子にしかできないことって多いように思われる傾向もあるけど、実際は代用はわりとどうにでもなって適当に子供を雇って同系統の勇者因子を埋め込めばソレで十分よ。私の代行をギュヌマリウスに任せられたり、預言者のとこのクラーラの補助にカルラが入るのはそういう理由なのよ。だから」
一度言葉に詰まる。手元の書類をなにかつらつらと触る。
「本当はただの同族意識よ。利益が見込めるのは何一つ嘘じゃないけど、魔法ほどなんでもありな性質じゃないからね。これ」
そう言って、机から重々しい箱に入った判子を取り出し、赤い粘土と紙にこするようにこしつけ。席をたち執政官に手渡す。
「これ、出して」
「……拝承」
そう言って、席をたち何度か礼をして部屋をでる執政官を確認すると元の椅子に座りなおすのでもなく僕の隣に立つ。
「じゃ、命令出したから、部下になってくれる? 役職は、そうね魔道研究員でいいかな」
頷いた。
「はい。それでいい満額回答だ。今からアンタにつく。ユーリを見つけたのはモウマドからレクレーンの町へ向かう山道の途中だ」
「いきなりだな」
「もう一度いう。ユーリを保護したのはモウマドの村からレクレーンの町へ向かう途中の山道で、茂みの中で山菜を取っていたら保護した。加えてチンピラ3人に追われていたところで、彼らは戦闘訓練を受けたような実力ではなかったがしっかりとした武器は持っていたため、傭兵とか本来から戦闘員ではなくチンピラと表現した」
ページをめくり、線にしか見えない文章を記し、騎士は安堵からか、一息吐いて次の質問を告げる。
「では、旧帝都につながる地下坑道をどうやって見つけた?」
「発見自体は偶然だが、僕が開発した魔術で、自分の血が……――――――」




