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21/108

9-1 同じ

 それは当たった。間違いなく僕の頭に刺さった。ドコに疑いようがあるというのだ? 金属色の節足は僕の目と鼻の先から僕の背後へ直線的に貫いた。貫く軌道で僕は回避しそびれた。

 間違いなく直線軌道で移動したはずなのにそれは僕にかすることなく当たらずに、攻撃を外しバランスを崩して僕の腹に刺さった節足も外れる。

 いつ抜かれたかも分からない腹にあった節足はやたらと大きく振りかぶられ台形虫のバランスを崩して斜面を転がす要因となる。

「ぁ、ぁ! 登るぞ! はやく!」

 僕が落ちる前の位置に居る、斜面を登るようにかけるユーリに見上げた叫び飛ばし、台形の四つ足に、今できる魔術で

(ヤスリ)!」

 地面から無機質を集め棒状にまとめた礫岩の柱を高速回転させながら台形に貫くつもりで刺す。が、軽い。まるて傷がついていない。

「土の魔術だけではこんなものか……」

 鋼の魔力因子を使えたならもう少し威力を担保できたはずなのだが、台形の甲殻一枚削れてはいない。

「氷っ! らい、爆風!」

 氷の属性の魔力因子で拘束しようとするが体から生成できる氷の属性因子がカラカラで何もできない。元から僕の体から生成できる威力の低い雷ではどうにもなりそうにない、ならば、しかたなく、僕の体を風で斜面の上に飛ばす。

 血を振り飛ばして流しながら宙を舞う僕を振り向く台形の胴体から縦に四つ、瞳が現れ視線が合う。

「ま」

 不味いと思った時には虫の瞳が煌めき、光線が放たれていた。

「外れる」

「え?」

 ユーリがなにか言っていた。熱光線は折れ曲がった軌跡を描き、曲がり方を変えぐねぐねと編曲した光線は四つ足の立つクレーターののり面へ届き台形をクレーターの更に下へ降す。

「なにをし」

「はやく! 上がりきって」

「あぁ!」

 クレーターを先に登り切ったユーリに引っ張られてのり面を登り切ると所々点在する血痕に、視線を引かれる。……誰の血だ? この血の出処のそれは、何人分の死体だ?

「……っフリッツ、あたな!」

「え?」

 視界が崩れるように回って止まる。息づかいが聞こえるほど近づいたユーリに支えられている状態を理解して転んだのだと理解した。

「あれ、あ……ん? なぜ」

 支えながら自分で立ち上がろうとするが、意図せず膝が折れ曲がって立つことができない。

「血がっ! フリッツ、お腹から、血が、止まらない……ッ! 貴方、血を流しすぎて……冷たい。血が止まらなくて体が冷たくなってるわ!!」

 自分の異常を説明されて、心の中で焦り出す。ユーリは僕を背負って走り出す。

 彼女の背中が血に濡れる早さで僕の体から抜ける血の量をなんとなく感じて、背後でクレーターから飛び出した台形が僕らの上から落ちてくる。


 身を捩って見るその台形の輪郭が曖昧になっていこことで意識が抜けていく感覚がわかる。でも、この位置なら、

水鋸(ミズノコ)

 僕の体に残るなけなしの水の魔力因子を引っ張り出して、高速回転する流水の円盤を投げる。

 台形の四つ足はまとめて三本まで斬り伏せ、残った胴体を後ろから半分に両断する。高速回転に巻き込まれた空気は聞くに堪えない雑音を鳴らしたまま円盤と共に霧散して黙る。

 この技は通用するみたいだが、

「え、ちょっと……フリッツ!? フリッツ!?」

 背中越しになにか感じたのか、ユーリが悲鳴を挙げる。身体機能を維持するための錬気に使っていた魔力を水の魔力因子を捻出するために消費して使ったせいか、体が更に重くなる。

 空気すら重い。水中で呼吸しているように喉が重い。ユーリの体が焼けるような熱さに感じるほどに僕の体は冷めてしまっていた。

 視界の奥で台形の中から別の丸い足の付いた何かが這い出る。それも四つ。

「ぁ、……ぁ、」

「なに!? フリッツ、しっかりして、まってて今すぐ医者のもとへ」

 違う! 背後に現れた危険を伝えたいのに上手く声すら出てこない。

「はやく、……なんとか!」

 後ろ、後ろを見てくれ! 危ない! もう僕を置いていっていいから、速く逃げてくれよ!



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