彼女にできなかった事が彼女にはこんなにも容易い
またがって首を締めて、抵抗も何もせず要求を呑んだ僕に彼女が窒息して意識を失いかけて目が剥かれた瞬間、僕の理性が彼女を殺さないギリギリで喉から指を離し、嗚咽まみれて謝罪する彼女にまた僕が暴力的な感情をぶつけてしまう。
「おぇ、……ぁ、ぅあ……本当はぁ、殺すつもりなんてなかった」
暗い部屋でも苦しむみながら悶える彼女が見えて、人らしく野性的な感情で自分の感情を整理することもできずに攻撃的に出力する。
「邪魔な…………アレクシウスを殺したかった」
彼女の顔に攻撃的で断続的な愛で苦しみと快楽の入り混じったどうしようもない。お互いに諦めだけが残った感情で月明かりに睨まれる。
「失敗したんだ。私」
理解できなくもない。言い分も分かる。それが間違っていたとは決して言わない。だが、だからこそ、彼女にできなかった事が彼女にはこんなにも容易い。
行き場の無い憎しみとはこういう感情だったのか、僕が殺した悪党の家族にもこういう感情が胸の中を駆け巡っていたのか思うと、自分が生まれでた最初から根っこから『悪』に染まりきった虐殺者なんだと思い知らされて嫌になる。
「僕も同じだ」
彼女に言い訳を探している。そんな自分をどうしようもない悪党だって避けられない理解が頭をグラグラと殴りつけてくる。
「何も……できなかった」
その夜の殺し合いと相反した無意味な足掻きは、彼女の感情に何を残して、僕の感情をどうにかしてしまうことを理解していた。だが、無意味なものはやはり無意味な結末にしかならないのだ。
目を覚まし、シャノンの姿が無いことを確認すると僕は困りながらも、感情的になると首を締めるような男から逃げるわけが無いだろうと言い訳をして落ちていたパンツを履き直し、服をただし、朝の支度を念入りに終わらせて、頼んでいた資材の到着を待つ。
昼までには着くときいていたが、実際はまだ昼というのは早い朝に近い時間に姉貴は荷物をもってきた。
「コニア、……いきなり面倒をかけるね」
「えぇ、半分指名手配みたいな状態になっているクラーラが手紙をもってきた時は驚いたわ」
……そのもってきた荷物を確認しなが、テキパキと広い粘土質の土面に魔術の補助のための式を書き記し、式と式の間の隙間に魔力を通して儀式の準備を進めるクラーラが既にいた。
「弟のためなら、これくらい軽いってものよ」
うなずく。コニアに実際なんとかなるけど、大変なことを、なんでもないことにできるからなんでもないことのように言っておく。
「あぁ、そうだ。コニア」
「……ん?」
「シャノンが逃げた」
「え」
「は?」
「この掘っ立て小屋に他の気配ないなって思ってたらそんな理由!?」
「大丈夫」
「なにが!? 私の準備しているこの儀式魔術ってなんのためのものか分かっているでしょう?」
「シャノンの居場所は見えている。ほら、目に魔術を使っているのが見えるだろう? これで、探知できているよ。だから、シャノンを元の場所に帰そう」
僕の魔術は水源を探知する魔術で、水分の濃度や不純物の量を魔術の式の調整で、感度を変えて距離を縛れば血液のある人影を探すソナーにもなる。
だが、そんな遠くの人を探すには木々や大気中の水分、それこそ雨や川や水源が邪魔でろくにつかえるもんじゃなかった。
だが、ゼフテロに一度教えたらいつの間にが予想外の使い方を見つけた。
術者の水の魔力因子や、術者の体液を探知して低感度にするこで、かなりの距離の術者の体液を探すことができることを教えてもらった。僕が作った魔術なのに、
「コニア姉さん、連れ返すから、ついてきて」
「え? えぇ」
そんなに遠くにいないことも分かっている。
数十分走って、僕らは――――――




