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最後の一撃

「……滅ぶなら、お前一人で死んでろ! カスッ!」

「あぁ……ダメだよ。それじゃあ、誰も救えない……」

静寂を射抜くような発砲音、どこに着弾したのかそっちがわからないでいると煙幕が周囲に立ち込めて、動揺した俺の頭を掴んで叩きつける女に背中越しに肘を当てて、反動で体幹が揺らいだそこへ蹴りで追撃する。

 ――ブチン、……は? 蹴りを入れてなんで反応もなく、俺の脚が痛みで音を上げるんだ! いや、肘は打撃なりに有効打になったのに蹴りは反動がこっちに押し付けられる?

「増援? 『力が足りないなら、私に届く前に死んでしまう』でしょう」

「人殺しが救いを、語るなぁ!」

 臓物がたれていることを無視して正面向いて腕から異能仕込みの氷柱をはやして女に斬りかかるが、指先でつまむように受け止められる。

「もっと私がいらいらすることを言ってみてよ。君ほどの立場の男が言うのなら、私が人類を見限ったのが間違いじゃなかったって確信させ続けて欲しいんだけどものね」

 同時にはらわたの中に仕込んだ氷の欠片で痛む露出した体の奥底から踏ん張る。

「クソが……まとめて全部滅ぼすなんて雑な仕事してんじゃねぇよ。ノアの方舟の方がマシな選別だぞ!!」

 はらわたごと氷を突き立てるのではなく、はらわたを凍らせて引き裂こうと動かすと、自らの腹下出る臓物がやつの素手で千切れてちまうかわりに、手首に傷を負わせたられた。

「なあっ」

「効いた!?」

 態勢を立て直し、激甚の痛みをもたらしている腹部に手を突っ込んで付着した血を氷結した礫に見立てて発射して距離をとり、物陰にかくれると普通に攻撃が防御された。届く前に、不自然な軌道で曲がって全ての血の塊が外れる。

 その女も反射的に防御した腕に対して、一切の手傷を負わせられてないことを見ると、人体の一部で攻撃した事そのものがやつの能力を貫通してダメージを与える理由にはなっていないようだ。

 攻撃が当たったのは、反応できなかったことが理由? だとしたら……いや、だが、能力の規模の割に力を使っている感覚が全く感じ取れないのはどうなっているんだ。

「『雑な仕事』なんて、君たちは核で異世界をまとめて滅ぼそうとした癖によく言えるねぇ? 大変なんだよ。私はここからでもね。することが山積みなのに、卑怯なことばかり言うね」

 能力者でも目が痛くなるほど強力な毒が混ぜられた煙幕に突っ込んで、千切れた脚とはらわたにも染みる同仕様もない激甚の痛みを堪えながら女の死角を探してなおかつ、気配をギリギリ察知できる距離を保って息を殺す。

 女が、苛立たしげになる。

「最低でも人口は10億人まで減らさなきゃ、この世界の痛みは楽園すら踏み荒らすんだ。仕方がないだろう? 罪を、軽くするためには……それくらい必要なんだよぉ……」

(減らす? 目標があんのかよ!?)

 どうやら俺を見失っているらしく、空へ向けて叫ぶ。

「間引きが必要なんだ。今すぐに! じゃなきゃ、ここまで強化してもらった私の能力でも未来を決定できないんだよ! 間引きしなきゃ、お前らは存在しちゃだめなんだってなぁ!」

 奴が手を軽く振ると向いていた空の方で連鎖的な爆発が起こる。その爆発は地面にもつたう。戦闘機や飛行船感がことごとく空で自爆するように勝手に爆弾のなってしまったんだ。

(未来を決定? 因果律の操作に関連する能力か……いや、だが)

 これほど能力をつかっていればどこかで、エネルギーのリソースが切れて死ぬはずだ。というか、規模が大きいからそういう消費は激しいはずなのに、あの女はまるで疲れている様子を見せない。本当に余裕があるように見える。

 リソースを他から引っ張って制御だけ、自分でやるとしてエネルギーをどこから引っ張って……あの四枚羽の光の巨人か!?

 遠くの空で地上に向けて閃光をぱらぱらと発射しているのが見えるが、あの閃光が放射された真っ直ぐその先に当たっていることを真面目に受け止めると、あの浮いている巨人の下の地上はどうなっているんだ!?


 死体……軍服、うるさい。

 裏路地に何人か重なった死体の一番上に軍服を来た死体があった。その死体はまだ熱を保っているが全身が紫色に変色していて、血液が一瞬で固まった不自然な死後硬直でにぶく硬いが柔らかさを失いきっていない。血が機能を停止しているのに肉がまだ新鮮なままなんだ。

 うるさいのはなんだ? 端末、これは、俺の所属でもある――


《おい、おい! T3隊! どうなった! 返事をしろ!》

「こちら、ビッグファイブ・ゼロワン、叫ぶな。奴に気付かれる。この端末を持っていた指揮官は死んだ。応答頼む」

《奴? こちら、ビッグファイブ・ゼロフォー・ツー、アレクシウス、無事だったのか!》

「あぁ、いま交戦中、隠れている」

 端的に返すと興奮したシャットラッヘルから質問が返ってくる。

《我々は今何と戦っているんだ? 今日本にいるがアメリカから飛んできた炎の巨人で蒸発した土で外は真っ暗だ! 状況がまったくわからないで管制をしていた。状況の説明を、特に何と戦っているかだけでも教えてくれ!》

「女だ。異能力者の女。俺よりも強い」

《お前より強いだって!?》

「静かに、そうだ。奴は世界を滅ぼせるだけの力を世界を滅ぼすために真面目に使用している。仕組みはたぶん、因果律の操作……確率や運命を何かしらの法則性に則って書き換えているようだ。フェイズ5未満成長性と、レベル5未満の能力格付けの能力者は無条件で死ぬっぽい。強い能力だ。……繰り返すビッグファイブ級の能力者以外は強制的に死ぬ恐ろしい能力だ。しかも、運命の書き換えてそのものには一切のリソースを割いていない」

《……なんだって? 何も分からなかったが特に最後になんて言った……?》

 答えても虚しくなるから答えられなかった。

「俺以外に、お前でもいい。動けるビッグファイブは何人残ってる?」

《……ビッグファイブの4thナンバーは私とウルスラ以外全滅。ウルスラも向かったはずだが、空間移動の制御ミスにより連絡がつかなくなった》

「知っているのは4thナンバーだけか?」

《……お前の02の女はお前からきた生存確認以来まだ連絡がついてない。3rdナンバーは2から4まで全員死亡を確認。5thはラファエルを残して異世界で全滅。私も外が暗闇の中でなんとか連絡している状態で、自力脱出不可能な蒸発した……闇の中》

「蒸発した闇? そんなのお前ならなんとかなるだろ!」

《ならないよ。外は……何℃だと思ってるの蒸発したんだよ。首都が、地形ごと》

「蒸発って」

《あの炎の巨人が着陸した。たった、それだけで神奈川から埼玉までの東京が全部まるっと地形ごと蒸発したんだよ!! それで、外が煤で真っ黒になるほどの熱で……、煤の温度は推定一部7000℃を超えている。今は研究所の隔離用シェルターに……あぁ、くそ! 一応の記録だけは、残して……こんなものもう誰も……》

「……シャノンは確認できてないんだな?」

《ん、なんだ?》

「もう一度言う、F5-02-1は生死を確認できてないんだな?」

《……あぁ、お前が異世界では生きてるって言ったきりだ》

「わかった。それに賭ける」

《はぁ? どれだよっ、どれに賭けるって言ったんだよ!? あの薬漬けに何ができるって言うんだよ!》

「……連絡はここまでだ」

《おいまて今からでも追加の――》



 煙幕が晴れる。

 それに合わせて隊員の死体から奪ったもろもろといっしょに煙幕を散布して、声を掛ける。

「お前は……お前ッ……」

 心を無理にでも押さえつけて、落ち着かせて言葉を選ぶんだ。

「お前は……自分が人類を管理する側だとでも思っているのか?」

「いいえ、……それは君達の役割だろうと……何度言ったと私に思わせるの?」

「……何の話だ」

「もし、ビッグファイブが異能力者管理機構の尖兵でなく、異能力者のために抗ってくれたなら、全体ではなく、自分が責任を背負った見ず知らずの誰かの命ために戦ってくれていたなら、君達は勝利したでしょう、間違いない! だが、君達は逃げました。異能力者管理機構所属のビッグファイブのメンバーとして……何をした? なにをしかなっか? なにから逃げたかを考えてみてくれると、私としては嬉しいのだけども」

 抑えろ。煽るなら、感情的になるな。感情をださずに、目的を聞き出せ。

「『逃げた』だと……! 俺は、俺達は一度だって戦いから逃げたつもり無い!」

「それは嘘だとしか言えないといっているんじゃないかっ! 私達の苦しみを見て見ぬふりをして、『自分さえ良ければ』みたいなだらけきった感情で同胞の苦しみなど関係ないと、惰弱な精神で恭順を選んだんじゃん! お前らのような者が、世界をひっくり返す責任を、最強の異能力を持った君たちビッグファイブが抗うことをやめたからこそ、誰も無意味に死んでいく異能力たちに手を差しのばせなくなったって言うのにさア!!」

「知るかよ。そんなこと、俺は俺でできることをしてきたつもりだ」

「知っているはずだろう! 君達は最強だから、判るはずだ! 最強が世界を変えられなくしてしまったことも! 私も、この痛みに抗う手段があれば人類を絶滅させることも無かった。ただ苦しいだけなら、君達に殺されて終わりでも良かったさ!」

「だったら勝手に死ね、世界に絶望したなら一人さみしく誰にも知られない場所で自殺でもしてればよかったんだ」

「貴様ァア!!」

 掛かった。

「貴様らが代表者になりさえすれば我々は実験するだけの家畜にはならなかったってのに!」

 そこにあるのは、スピーカーになった通信端末と煙を巻き続ける散布装置と爆弾。


 粘性をもった爆裂。おいおいこれ、炎になにか液体火薬を入れ込んだ炎が持続拡散するタイプのナパーム弾って禁止兵器だろ……国に対する戦争じゃないから別にいいか、なんてもんをT3隊のあの兵士はもってたんだよ。

「ぐぅ、は、あっ……おぇえ」


 気管支にまで入った燃料で焼かれても即死できないようだが、いくらなんでも全身を丸焼けになって呼吸する生理的な機能を封じ続ければ能力で生命機能や身体能力がいくら強化されていても死ぬことは避けられない。


「痛い。強くなっても、これなのか」

 火が勝手に消えた。燃料もそれじたい劇物であろうに、汚れている様子すらない。それどころか、衣服の一つも汚れてなんかいない。せめて、裾くらいは焦げていてくれよ。

「そこにいたか、……で、痛みで落ち着いて頭が冷えたせいか質問の意図が分かったよ。私が人類を絶滅確定させる未来を確定させている理由が聞きたいんだよね?」

 見つかった。いつ後ろを取られた? 瞬間移動? 振り向くと、本当にそこにその女はいて、

「身体能力の強化はともかく、なんで服も汚れていなんだよ」

「あぁ、これは異世界で学んだ錬気って技術でね。私達の異能力の源にある力を魔力って定義して身体的な技術として操作することで……服や体を汚れや傷から守ってくれるんだ。これを上手く使えば化学兵器もなんのそのってね」

「…………そんなものがあったのか」

「話を続けよう。君達が向こうの世界に足を踏み入れた時点で、この世界は消さないといけないと気付いたんだ。危険すぎるんだよ。他人の世界まで巻き込んでみんなで死ぬんじゃない! 滅ぶなら、私達の世界だけで消えるべきだ。だから、『勝手に死ね』というなら我々は我々の勝手で滅ぶべきだろう? 一人でいい。我々の世界、滅ぶべき人類は我々一人でいい。だから介錯を果たすのが私だったってことだよ」

 ……? 消え

「この世界の辛苦を、今日で最後にするんだ! 1000億人の1人を救うために!」

「あああぁぁぁあああッ!!」

 た。は? 胸に、なにをつ突き立てられたんだ!? 女が振り抜いて、だが浅い。俺はまだ生きている。なぜ、認識できなかった? そうか、因果律の操作ってめちゃくちゃだ。なんで、こんなポンポン制御できるんだよ! 連発するような力じゃないぞ!?

「しぶといね。これだけやっても、届かない。君の首は……その胸から離れてくれない」

 俺が出した氷の槍が、俺のスネと二の腕に刺さる。 

「そうだ。いいぞ、その調子。そのまま抗って苦しんでお願い。貴方たちが強制した犠牲を無視した罪を理解できなくてもいいから頼む苦しんで」

 くそ、どうそ死ぬならまとめてこの全域消して、時間稼ぎを。――――――!?

「死んだら魂もその場で消えて、お願いだから人生最大の抵抗を私に見せて……この世界の罪を全部清算して消させてくれよッ!!」

「おい!? 今俺は、俺の能力はどこで発動したんだ!!」

「あぁ、わからなかったかい? ……まぁ、ユナイテットキングダムは無事じゃすまないね」

「くっそそおお、がっ、あああ……ぁぁ」

 能力を使ったら制御を奪われて勝手に使われる。なんだんだよ。こんなの、どうしたら……なら……力を……

「追い詰められたらどうするかと思ったら、霧を出すだけ? なにがしたいの?」

「……お前、今、力を溜めた一瞬、俺が攻撃すると思ったよな?」

「……まぁ、普通は」

「霧を出した瞬間、攻撃じゃないって断定したな?」

「…………」

「確認しただけさ、お前の能力は予想した現象に対してだけ自由自在に未来を書き換える。本当に意味のない行動や、意味不明の行動に能力が作動しないのに、想像がつかないからなじゃいか?」

「へぇ、じゃあ、攻撃以外の手段で私を殺そうってでも言うわけ? 残念。私は災害や、宇宙規模の災害とか、子供でも予想できるような未来なら簡単に回避できる。回避は難しくなんか無い。難しいのは、起こり得ない現象を起こすには他の現象も操作して、どんなに微小な確率でも起こり得ない未来には干渉できもしないよ」

「あぁ、…………そういう仕組だったんだ」

「もう少ししたら魔力も尽きて君も私の能力を回避できなくなるよ。もう手詰まりなら私が勝ってしまうよ」



「ユーリ!!」

「っ、フリッツがなんでここに――――――!」

 最後のチャンスだ。後ろを振り返ったこの女に最後の、一撃を、はらわたの隙間かわ湧き出る氷の塊で、お前の背骨を引き裂いてみせるぞ……!

 割れた。最後の一撃は砕けて、その俺の前を通り抜けていった赤く光っているというのに、真っ白な結晶からくろぐろとした蒸気が湧き出して、その結晶がそこにあった。俺は、結晶が砕いた俺のはらわたの痛みで限界にいたり、意識を失った。達成感は、なくはない。

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