私との婚約を破棄…ですか?
「今日も美味しいわ」
食堂でブイヤベースを堪能していると、ベティを連れたアラン様がこちらへやって来た。
「すまないが、少し時間をもらえないだろうか」
「構いませんが」
学園でも腕を組んでエスコートなさるなんて相変わらず仲の良いことだわ。
「君との婚約を破棄させてもらえないだろうか」
「…私との婚約を破棄、ですか?」
「もちろん私の有責だ。学園で彼女に会って、すぐに惹かれてしまった。彼女も同じ気持ちだと言ってくれた。君が了承してくれれば両親にも説明する。
きちんと賠償はするし、我が家で出来る限り新たな婚約者についても協力させてもらう。」
だからどうかこの通りだと頭を下げられて、困惑してしまう。
「お姉様ごめんなさい。」
ベティにまで頭を下げられてますます困惑してしまう。
「アラン様、あなたの婚約者は私ではありませんよ。」
そもそもどうしたらこんな風に勘違いできるのだろうか?
「ベティもどうしたの?貴女アラン様との婚約あんなに喜んでたじゃない。忘れたわけじゃないわよね」
そう、アラン様と私の可愛い妹ベティは婚約者である。
毎日ブイヤベースを食べながら、イチャつく2人を眺めるのがお気に入りのお昼の過ごし方だというのに。
学園が終わったあと我が家で話し合いましょう、と言って教室へ向かったけれど、案の定午後の授業は頭に入らなかった。
「どうして私と婚約してるなんて誤解を?」
アラン様が恥ずかしげに話すにはこうだった。
婚約が急に決まり、ろくに話を聞いていなかった。
顔合わせの日の朝、アラン様は眼鏡を落としてしまい、しょうがなく古い眼鏡を着けていた。そのため婚約者の顔が朧げにしか見えなかった。
婚約者からエリーと呼んで欲しいと言われたので、エレノア嬢が婚約者だと思っていた。
確かにエリーは私エレノアの愛称であると考えるのは自然である、が
「書類や手紙など気付くときはいくらでもあったのでは…?」
面目ないとすっかりしょげてらっしゃる。そうだ、この人眼鏡のくせに脳筋だったわ。
矛先を変えようとさっきから笑いを堪えている妹を睨む。
「貴女わかっててやったんでしょ。説明してちょうだい。」
「だってアラン様いつまで経っても気付いて下さらないんですもの。手紙と会った時とで同じ話をしても、姉妹は考えが似るんですねって。」
「愛称は?」妹の名前はエリザベス、仲の良い友人も家族も皆ベティと呼んでいたはずだ。
「夫になる人には特別な名前で呼んで欲しかったんです。」
お姉様の愛称はノラだから構わないかと思って、と悪びれずに言う。
「婚約破棄してまで結婚したいと思ってもらえてよかったわね。」
叱る役目はお母様にでも任せようと思って、見つめ合い始めた2人を置いて部屋を出た。




