実験体
(現在3月23日2時17分) 深夜を少し過ぎた未明。
未明の横浜赤レンガ街には、
【ABBA】工作員が多数配置され、それを監視する為、
横浜県警のパトカー10数台が辺りを警戒しに来ていた。
倉庫の外はそんな状況だったのだが、
重症を負い、気を失っている米倉を担ぐ増田は、
急ぎ足で地上に戻り倉庫を出ると、
地上配置の第二班に連絡を入れたのだ。
「こちら、先行班2名、内1名は重症です、
大至急医療班を倉庫前まで寄越して下さい。」
「こちら地上第二班、了解しました、
至急トレーラーを倉庫前まで移動させます。」
増田の要請に応じ、動き出したトレーラー
その動きを監視していた横浜県警の警察官が、
突然トレーラーが動き出した事に慌て、サイレンを鳴らし追いかけようと動き出す、
その時、パトカー装備無線から指示が送られて来たのだ、その内容とは!
横浜県警本部長からの指示だったのだ、
現在監視している武装グループへの手出しは絶対に行ってはならん!
我々は見守るだけで良い、そのグループは日本国の為に戦う者達である。
そんな無線連絡が入って来た為、この場に来ている警察官達は、
戸惑いを持ちながらも、元の位置へと戻り、
先程迄と同じ様に監視活動に戻る。
その無線連絡が入る少し前。 (時刻は2時12分)
横浜県警本部長の元に、✖〇党正論会所属
現内閣府に所属する真柄国家公安委員会委員長が飛び込んで来て、
「現在作戦中の者達は、倉庫地下に潜む中国から来た工作員を一掃する為に
動いてる者達であり、けっして日本国民に危害を加えようとする者達では無い、
それに私が知り得た情報では、倉庫の下に作られた地下基地に
日本人が監禁されていると言う物も含まれているんだよ、
これでも君は、彼等の行動を阻むと言うのかね?」
「そんな事がもし事実だとすれば、
私はどう対処すれば良いのですか? 真柄委員長!」
「今回の事で、本部長に責任がかけられた場合、
私が責任を負う事をお約束致しましょう。」
本部長はその説得に応じ、
真柄委員長に善処するとの、確約を明言したのだ。
この為、本部長は、現場の指揮をしている綱本課長に自分が知り得た
情報を流し、事の理由を掴ませたのだ。
「いいか、綱本君、現在君達が包囲監視してる相手は、
日本の為に戦う義勇軍だと理解してくれ、
対する、相手は、中国からやって来て、
倉庫の地下で何やら良からぬ事をしてる事だけは
私にも解っている者達なのだよ、そこでだ、
本音では君達には日本の為に何が出来るか考えて行動して欲しい、
だがね、下手に動く事は出来ない、
偶々、偶然の出来事で片付けられれば良いんだが。」
「本部長、分かりました、引き続き監視は行いますが、
皆にもこの情報は流しても宜しいのですか?」
「勿論だよ綱本君。」
「分かりました、善処します。」
こうして、第二班の周りを監視していた警察官達にも、
ある程度の情報が流されて来てたのだ、
その情報を聞いた警察官達は複雑な面持ちに成っている。
ある者は、監視していた武装グループに手を貸すべきだと言い、
ある者は指示通り監視してるだけで、見守るだけで良いと言う、
ある者は、どんな理由であれ、
我々の目の前で武力を使う事は許されない、
等々、様々に意見は別れていた。
そんな状態だったが、増田達の元へトレーラーがやって来ると
中から医療班が担架を抱え出て来た、直ぐに米倉を乗せ
トレーラーの中へと入って行く、増田も続いて入った、
トレーラーの中に設けられた医療ベッドに乗せられた米倉は、
直ぐに衣服を切られながら脱がされた、裸に成った米倉の
胸、腹、肩から血が溢れ出て来ていた、
直ぐに酸素マスクをはめ血液補充が行われた、次に
医療班は4Dエコーを使用し、撃ち込まれた銃弾を立体的に視認、
弾丸を素早く抜き取る準備に入った。
それから僅か3分の間に、3つの弾丸が取り除かれ、
傷は簡易に縫われた、傷は消毒され、薬品を染み込ませた
ガーゼを当てられると、その上にネットバンドが張られた。
「取りあえず応急処置は済みました。」
医療班の人がそう言うと、
もう、通信担当の工作員が、
「応急処置が済み次第、間もなくやって来るヘリで
負傷者と共にあなたは帰還して下さい。」
そう告げられたのだ、2分も待たない間に、
トレーラーの外に出て、やって来たヘリコプターに乗り
眠っている米倉と共に増田はこの場を後にする。
その心は、今も戦ってるであろう朝比奈隊長の事を思っていたのだ。」
「隊長・・・」 (時刻は2時30分)
時刻は少し前に戻る、(2時10分)
その頃。地下基地に降り、エレベーター前に陣取っていた
敵が設けた第一防衛エリアを制圧した、【ABBA】工作員第二班の者達は、
第二防衛エリアへ向かって進んでいた、
二班の者達は、先行班の活躍が幸いし、まだ一人の負傷者も出していない状態で
次のエリアに侵攻出来ていた、しかし、ここまで大掛かりな戦闘経験を
体験した事が無い者達が、大半を占めていた為に、
初回で得た勝利により、少し油断が生じてしまっていたのか?
かなり広く薄暗い地下倉庫エリアに入っていたのだが、
敵からの攻撃が無かった為に、
敵が作った第二防衛エリア中央付近にまで
達している事に気付く事が出来て無かったのだ。
12名の工作員の内、6名もの隊員が中央付近に置いてあった、
シートを掛けた何かに意識を取られ、そのまま近付いていた。
「何だ、このシートは?」
工作員の一人がそんな事を言いつつ、掛けられていたシートを捲る為に
行動を起こしたのだ、デカいシートだったので近くに居た者へ助力を頼み、
工作員3名の力で一気にシートを捲ったのだ。
すると、2つの大きな檻に入れられた毛深い人型の生き物が見える、
二つの檻にそれぞれ入った動物を、近くに居た者達がそれが何か、
確認する為、ライトを当てまじまじと見たのだ、
するとそれ等が人間だと言う事に気付き驚く!!
「この人達人間だぞ!」
「本当か、しかしこんなに毛むくじゃらな人間って。」
工作員達がそんな言葉を投げかけていたのだが、急にそいつが立ち上がり、
唸り声を上げ始めると、共鳴したのか、もう一つの檻に入って居た
人間まで唸り声をあげ立ち上がり、鉄格子を握ると檻を激しく揺さぶり始めたのだ。
「ぎゃわぁ。」
獣の様な雄叫びを上げ、ぐいぐい鉄格子を揺らす、
すると 格子がぐにゃっと曲がり大きな穴が出来上がってしまった。
近くの者達は慌てて、アサルトライフルを構えた、
すると、経験が少ない一人がトリガーを引き攻撃してしまったのだ。
ダダダダダダダダダダダダダダッ!
「何するんだ!」
「すみません、慌ててしまい。」
先輩風の者から窘める怒声があがり、
その工作員は攻撃を解除した。
「しかし、何て馬鹿でかい人間なんだ、
軽く2mを越えているぞ!」
その毛むくじゃらの人間が立ち上がった姿は、優に2mを越え
その腕の太さは、ゴリラと見間違える様な太さを見せている、
間近で目視した奴は、そんな事を口走っていたのだが、
檻から出て来た毛むくじゃらの大男は、次の瞬間には、
一番近くに居た工作員に襲い掛かって来たのだ!
遠くに散って異常を探知していた、ベテランの者達も一斉に
銃撃が起こった方を何事なのかと注視、
更に手練れの者は、瞬時に物陰にまで移動し、
警戒レベルを最大まで上げる...
経験の浅い者達のそんな行動に舌打ちしたベテランだったが、
次に引き起こされた惨劇に対応する為、後ろに下がり攻撃を開始したのだ、
檻に閉じ込められていた、人間と呼べるのか?
と疑問を持ってしまう容姿の者は、
アサルトライフルの弾を何発も受けたにも関わらず檻を破壊すると、
近くの者達に次々に襲い掛かり、
そいつの手で薙ぎ払われた者は、一撃で体を引き裂かれ
ぶっ飛ばされ、どう見ても即死だと思われる状態に成ってしまった。
慌てて、攻撃する工作員、だがこの敵に近付き過ぎて戦う
中央付近の工作員が邪魔に成り、ベテラン以上の者達は、
フルオートで弾を撃つ事も出来ず、単発での攻撃に!
バンッ バンッ
銃声が響いていたのだが、威力の高いライフル弾が当たっているにも関わらず、
毛むくじゃらな大男は、一向に怯む事無く、近くの者達を襲い、
瞬く間に6名もの工作員が倒されてしまったのだ。
「くそぉ、化け物め、此奴を食らいやがれ!」
檻から比較的離れた場に居た、ベテラン工作員の一人が、
中央近くで戦って居た最後の一人が殺られた事を見て、
化け物に向けロケットランチャーを発射!!
ロケットランチャーを発射しようと肩に乗せ
照準を合わせる者が居る事を認識した
工作員達は、瞬時に物陰へとダッシュしていた。
ドガァ~~ン!!
大きな音と共に衝撃と煙が辺りを覆ったのだ、
その光景を見る、慌てて伏せていた工作員達の目に映ったのは、
体の半分近くが消え去った毛むくじゃらな大男が、
まだ、よろよろとしながらも動き歩いてる光景だったのだ。
「何て事だ、何なんだこいつ!」
呆気に取られ、その光景に2秒近く意識を取られてしまった
工作員の一人は、もう一人の存在が、動いていた事に気付くまでに
若干の遅れが出てしまい、自分に襲い掛かって来た時には、
背中から鋭利な爪で切り裂かれ、感覚が無くなっている事に!
気付いた時には、手遅れに成っていた。
自分の体が血を流しながら立っている光景が目に映り、
そのまま意識が無く成り死を迎えていた。
7人目の犠牲者を出した【ABBA】工作員達は、
一斉に元気な方の化け物に攻撃を仕掛け始めた、
近くに居るのは死んだ工作員だけだった為、
各自判断し威力の高い装備を使用、
グレネードランチャーを持つ者はそれを使用したのだ。
アサルトライフルからの5.56ミリライフル弾に加え、
3方向からのグレネードランチャー一斉攻撃を浴びた
毛むくじゃらな大男は、その攻撃さえも堪えたのだが、
頭の一部分が欠損し、そこから血が滴り落ち、
両腕も千切れ飛び失っていたのだ、
身体全体の三分の一程が消えていた。
それでもやはりまだ動き出して来た、
戦闘意欲は失われては無い様だ、
残っていた片側の眼光には力がある事が見て取れたのだ、
工作員の一人に向かいよろよろと歩き進んで来る。
すると、そいつの頭の欠けている部分に銃弾が襲い始めた、
続けざまに弱ったカ所にぶち当たるライフル弾に貫通され、
みるみる頭が欠けて行き化け物は地面にぶっ倒れる。
流石に頭の大半を失ったそいつは動きを止めたのだ。
そいつを攻撃して来たのは、
追い付いて来たばかりの朝比奈カオルだった。
体の3分の1を失っていた死にかけのもう一体の方も、
第2班残りの者達が止めを刺していた。
しかし、かなりの被害を被ってしまっていたのだ、
負傷者が居ないか倒れた者達を一斉に確認したのだが、
倒れた者の中に生きている者は一人も居なかった、
その事を地上に連絡し、次の行動を決める事に成ったのだが。
「こちら地下第二班、工作員に多大な被害が出ました、
敵は恐るべき怪物の様な大男を我々に戦わせて来たのです、
その戦闘で工作員7名の命を失いました、現在は6名で現場を収集してます。」
「負傷者はいないのですか?」
「残り6名に負傷者はいません。」
「分かりました・・・・・・・」
数秒間、音沙汰が無く成ったのだが。
「地下第二班及び残りの先行班は、その場を死守
今から、地上班を応援に向かわせます。」
そう指示が入って来た、
すると。
朝比奈カオルが、
「こちら先行班、私は先に行かせて貰うわ、
先行班としての任務に当たります。」
「それは無茶です、一人で先行する何てどうかしています。」
「問題無い、今迄通りの仕事をするだけだ。」
「了解しました、お気を付けて。」
カオルの無茶振りには呆れていたが、
仕事をこなすと言い、okが出された。
残りの二班の者達は、
「我々は指示に従わせて貰う。」
地下二班の者達は、命令に従い、先ずは死んだ者達を
倉庫の端に寄せ始め、その後は防衛がしやすい
配置に陣取る事に成った様だ。
カオルは、第二班の者達から抜け出し、先に進み始める、
それを残った二班の者達は、奇異な目で見て居た。
(現在2時26分)
あれだけの怪物が出て来た地下基地で、
この先何があるか分からない場へ一人で先に進み出したのだから
命知らず何て言葉では生温く、変人と捉えられた様だ。
カオルが一人で先へ進み始めた頃、こちらでは、
第二防衛エリアに多数隠され設置されていた監視カメラを使い
【ABBA】工作員と、
遺伝子強化剤を投与された実験体との戦闘を見ていた
地下基地司令部に居る基地司令官 王凱と
【司懿仲達】特別監察官の両名は、
幾つものディスプレイに映し出された映像を見て話をしていた、
勿論、実験体と敵工作員との戦いを色んな角度から見て
疑問が出たその都度、その疑問を王凱に尋ねていたのだ。
「流石に敵の数が多過ぎましたな。」
王凱のその言葉に特別監察官は、
「ふむ、やられはしたが、素手で戦ったわりには、
まずまずの戦果と言えるだろう、所であの実験体は
どんなタイプの奴だったのかね?」
「はい、あれは身体能力強化に熊とライオンの遺伝子を掛け合わせ、
人間の遺伝子に変化を起こさせ生き残った日数8日目を超えた実験体です。」
「獣人タイプか、見たところ一体につき、兵士3体は倒せそうだったな。」
「いえ、先程のあれは、まだ実験途中の被験者でした、
次に用意されている、身体能力向上のみ施した、
完成度の高い実験体を見て貰えれば、
今までの人間兵士から進化した各段の進歩を見て頂けるかと。」
「ほーそれは楽しみだ。」
その頃、地上配置第二班の戦闘工作員を全て
倉庫へ集合させていた、
未だ監視中の県警達は、もう気にする必要が無いと言う指示が
本部から来てた為、問題無く動く事が出来たのだ。
新たに地下へ向かわせるのは9名だ、
先程地下で起った戦闘経験から得た実用性の高い
攻撃兵器を多数持たせ、地下へと向かわせたのだ、
その分、戦力を失った地上配置の為、
【ABBA】関東支部より補充人員が送られて来る事に成っていた。
朝比奈カオルは一人進んでいる、(2時34分)
7名もの工作員を失った第二防御エリアを抜け、
地下基地の者から第三防御エリアと呼ばれる地点に
一人で入って来て居たのだ、勿論その様子も監視カメラで
捉えられている、その様子が知らされると、
基地司令官王凱は、その舐めた態度に憤慨し、
先程 特別監察官と話してた、
実験体をその舐めた工作員にけし掛ける命を指示した。
「おい、研究者達に完成度の高い身体能力向上のみ施した
実験体を一体、戦わせる様伝えよ。」
「了解しました司令。」
その指示が送られると、間もなくして、
カオルの前に一人の人間が現れた、まだ程々の距離があり
直ぐには此方に来れない距離が残っていた、だが
ゆっくりと接近して来たそ奴が急にスピードを上げると
その人間は、装備してた日本刀を抜き
とんでもなく素早い動きでカオルに斬りかかって来た!!
「!」
先程まで、居た地点から一気に加速しカオルを斬り伏せに来たのだ、
カオルはその一撃を何とか躱した様に思ったのだったが、
左腕を切られていたのだ。
プシャ~!!!
「えっ、」
痛みが無かったが、血が噴き出して。
「うぐぅぅぅ。」
しかし、何も出来ないまま、次の攻撃が襲って来たのだ、
しかも、人間技とは思えないスピードでの攻撃だ。
カオルは片腕でバク転し、その攻撃を避け、ピョンピョンと
体操選手の如く回転しながら、相手との距離を取った、
急に来た痛みに堪え、片腕でアサルトライフルを撃ちまくる。
バババババ バババババ バババババ
その間も、斬られた腕からは血が滴り落ちていた。
「このままでは、何もしないまま殺されてしまう。」
フルオートで撃つアサルトライフルの弾はNATO弾と呼ばれる5.56ミリライフル弾だ、
日本刀を持つその男は、超人的なスピードで避け
凄まじい勢いで此方に迫って来た!
カオルは、全身全霊で銃口をこの敵が次に来るであろう位置に合わせ放つ、
予測撃ちで対抗、間近に迫ったその男にギリギリの所で
ライフル弾が連続でヒットした。
それでも、その勢いのまま刀を振るい、斜め上から振り下ろして来た、
その剣先はカオルの体を数ミリ切り裂き下へと流れる...
その間、5発ものライフル弾を受けていたその男は、
カオルの前で勢い良く倒れ転がり、止まるとピクリとも動かなく成った。
カオルの防弾ベストはバッサリと切れてしまっていて、
その下に着ていた戦闘用ボディスーツも
斜めに1mもの長さに渡り切り裂かれ、
体も薄皮一枚切られた状態だ、若干血も滲み出ている。
紙一重の所で命をひろったカオルは、「何て奴だったの、
人間の動きじゃ無かったわ、 しかし
最初の大男の様にタフでは無かったので助かった。」
そんな事を口走っていた。
その様子を指令室で観察していた、
基地司令官王凱は、たった一人の敵工作員に
実験体とは言え、遺伝子強化を施した強化人間が倒された事に驚き、
その様子を一緒に見てた特別監察官に、どう言えは良いのか
全く言葉が浮かんで来ない間が出来てしまっていた。
そんな王凱の狼狽に気付いてる
【司懿仲達】特別監察官は。
「あの敵、女工作員の順応速度は賞賛に値する、
あの動き、初めて会っただろう強化人間の動きに
何とか付いて行き、最後に競り勝った、ただの人間がだ。」
「そうです、まさか実験体とは言え、
ほぼ完成型の強化人間を一人で倒す人間が現れる何て、
しかも最初のタイマンだったのに。」
「王凱よ、私からの頼みは聞いてくれるかな?」
「? 」
「なに、大した事ではない、
あの女工作員を捉え、遺伝子強化を施し、私の僕にくれぬかと言う話だ。」
その命に驚く王凱だが、それも面白いかもしれぬと乗り気に成り。
「分かりました 直ちにあの者を拉致し、
【司懿仲達】特別監察官のお気に召す様、
強化洗脳してごらんに見せます。」
そう言うと、自ら指揮する為、指令室を後にした。
この相手が、第二防御エリアに出て来た
あの毛むくじゃらの大男の様にタフだったら
殺されていただろう、カオルは寸前の所で
命拾いしたのかも知れなかった。
カオルは、新たに出現した超人的能力を有した者の存在と、
自分の置かれた状況を地上二班に知らせてから、
負傷した左腕を治療していた、
邪魔に成る、戦闘用ボディスーツの左腕部分を
肩の辺りから切り裂き脱がすと、
最初にスパッっと切られた傷口から流れ出る血を
拭き取り、消毒液をかける、そしてバンテージの様な物で
包帯を巻く様にキツク何回も巻いたのだ、
更に先程切り裂いた戦闘用ボディスーツの左腕部分を使い、
それを傷口の少し上にぐるっと巻き、縛り上げたのだ。
「取りあえずこれで良いわ。」
左腕に負ったカオルの刀傷は、スッパリと切られた
深さ4㎝長さ7㎝程、上腕三頭筋と上腕二頭筋の一部が
切られていると言う状態だった為、
左腕は動かす事が出来ない状態に陥っている。
そんな状態のカオルの所に、
もう次の相手がやって来てしまった。
カオルはそれを察知すると、急ぎアサルトライフルを取り、
弾倉を交換、戦闘態勢に入った。(2時43分)
やって来る者の気配を追うカオル、
此方に近付いて来る速度は先程と同じかやや早い、
普通に近付いて来る、だが何故かまた一人でやって来た様だ、
そいつの他に、何者かが居る様な気配は感じなかったのだ。
どうして、また一人なのかと疑問に思う所はあったのだが、
今のカオルには、そんな事まで気にする余裕は無かった、
頭にあるのは、来た奴を殺る、ただそれだけだったのだ。
最後まで読まれた方、ありがとう。