入院生活
三上が入院生活に入ってから一月と言う月日が経とうとしていた、
今日は2025年3月9日、まだ朝晩はかなり寒いのだが昼間に成ると春の暖かな日差しが
三上が寝ているベッドへも注がれて来ていた、
その日差しを感じて見ようと、三上は非常に動かしにくく成った体を使い、
体に掛けられている布団を捲ろうと試みていた、今だ立つ事さえ難儀する体だったのだが
右腕だけは、そこそこ動かす事が可能だった、
そんな状態の一本の腕だけでは普通に布団を捲ろうとする行為だけでも
今の三上には、大変な労力を用いる行いだったのだ。
そんな三上の為、交代で付き添いに来てくれていた者達がいた。
久遠洋子と枝窪美彩の二人だ、 二人は三上の今後の事を話し合い、
二人で協力を約束し事を行うと決めたのだ、
二人は交互に必要な物を運んできたり、手続きを行ってくれたり、
一人で出来ない事等、更に下の世話まで手伝ってくれたりと、
勿論、下の世話等は、それは良いと断ってたのだが、
断固とした態度で、「そんな事言ってる場合ではありません。」
「そうよ刃、もうあんたは私達の手の平の上なの♡」等とあしらわれ、
残された三上のプライドは、ズタボロに引き裂かれてしまっていた。
そんな状態が一ヶ月も続いていたので、
そろそろ支払いの為のお金の事が気に成り出していたのだ、
大体、一人部屋に何時までも入院している事自体、
かなりの金額に成ってるだろうと予想がついていた、
三上の銀行口座にある資金は、精々500万に満たない金額なのだ、
後どれだけの期間、持ちこたえられるのか?
現段階で、全く把握出来て無かったのだ、
知り合いから格安で借りている事務所とガレージの家賃も
只今、無収入の三上には、気が重たい要因と成っていた。
この状態は不味いと思っても、今の三上にはどうにも成らない事だったのだ、
そんな憂鬱な状態だった所へ、今日も枝窪がやって来てくれた。
「は~い刃、今日も絶世の美女が来てあげましたよ♡」
「おう、美女のお出ましだな、早速だが、ちょっと俺を起こしてくれ。」
「分かった刃、ちょっと待ってね、
買って来た3時のおやつを冷蔵庫に入れてからね。」
そう言い、パパっと冷蔵庫に買って来た食べ物や飲み物を入れ、
医療用ベッドのスイッチを取り、動かし始めた
すると、寝ている三上の上半身がゆっくりと起こされて行く。
「うん、これ位でいいぞ。」
「ok」
起こして貰い、体勢を変えて貰ったのだ、同じ姿勢で長時間いると
とても体が痛く成って来るのだ、こうやって体勢を変えて貰える事が
とても有難い行為だったのだ。
「ありがとう枝窪、 楽になったよ。」
「そう、それは良かったわ刃。」
「所で、聞きたい事があるんだが。」
「何? 私で分かる事なら話すわよ。」
「うむ、今、俺が居る所は一人部屋の個室だよな。」
「そうね。」
「ここって高くねぇか? と言うか、入院費とかどうしたら良いのかと思っているんだ、
当座の資金は、ちょっとはあるが、何時までこうしてたら良いのか分らん今の段階じゃあ、
もっと大部屋なんかで、良いのでは? とか思っちまってだな...」
「あらら、刃ったらそんな心配してたのね、教えてあげるわ刃、ここの入院費は
洋子ちゃんが体を売ってでも払いますと言ってたからきっと大丈夫よ。」
「ぷっ 何だと、洋子が身体を売るだと!!」
「うふふふ、刃ったら心配しちゃったかな~♡
冗談よ刃、今のは冗談、心配しなくてもいいわ、
刃、あんたの事しっかりと調べ上げたのよ、それで発見したの」
「何をだ?」
「あんた馬鹿みたいに保険に入ってたわね、忘れちゃってるのかしら?」
「なにっ、保険だと!
そう言えば飲みに行った時に知り合った女が
何だかんだと根掘り葉掘り聞いて来て、ジャーナリストにピッタリの保険があるとか何とか、
そんな保険に入らされた事が何度かあった、確かにあったぞ!」
「思い出したのね、調べた結果あんたは合計で8つ適合する保険に入ってたわ。」
「8つだと!!」
「そう、だから心配なく思いっ切り個室に入ってなさい、
それに多少の事なら私がなんとかしてアゲルわ♡」
「そ、そうか、今は助かる。」
そう言う事で、取りあえず何とか成りそうな目途が付き、金銭的な心配は小さく成っていた。
そんなこんなで、更に数日が過ぎていた、
今日は朝から久遠が来て世話をしてくれていたのだ、
「こんにちわ~、 お昼のお食事をお持ちしました。」
そう言い、食事担当の方が運んで来てくれた、
その食べ物を久遠が、ベッドに備え付けられている移動テーブルに措く、
「さあ、三上さんしっかり食べて、元気に成らなくっちゃ。」
そう言われ、三上は久遠が見て居る前でも、ごく自然に食べる様に成っていた、
始めの頃は、人が見てる前で自分だけ何かを食べる事に抵抗感があった為、
中々食べなかったのだ、そんな時、久遠は、自分の分の弁当を持って来て
一緒に食べ始めると言う手段を考え出し、今でもそうする事がある、
しかし今日は作って来て無かった様で、
「三上さん、私も何か食べ物を買って来るね。」
「そうか、分かった。」 そう言い個室を出て行った。
それから暫くして、三上はまだ食事中だったのだが、突然、その平和が壊された!
三上の個室に、突然そいつが侵入、有無を言わさず銃を乱射して来たのだ。
プスンッ プスンッ プスンッ
突然入って来たそいつは、扉方面からの視界を遮る為の
ベッド周りを囲うカーテン越しから、ベッドへ向け銃弾を三発撃つと、
三上の状態を確認する為ベッドへ近付いて来た、
三上は危険を察知すると、咄嗟にベッドの脇に転げ落ち難を逃れていた、
しかし、簡単に起き上がれない状態だったのだ、
ぐふっ、くそったれが...
「どうしてドアが開いてるのかしら?」
そんな中、病院内にある売店で、サンドウィッチを買って来た久遠が
扉が開いてる事を不審に思いながら、三上の個室に戻って来てしまったのだ、
中の様子が見えた久遠が、ベッドに近付く不審者に、
「何をしてるんですか?」 そう声を掛けると、
そいつは久遠の方へと振り向こうと動き出す!
その声を聴き久遠が帰って来てしまった事を認識した三上は、
何とか、奴の注意をこちらに向けさせ、久遠を助けなければと、
中々動かない自分の体に苛立ちを覚えながらも、
昼食を乗せていたトレイを掴むと
ベッドの硬い部分に思いっ切りぶつけ大きな音を出したのだ、 バンッ バンッ
「ここだ、糞野郎!」
何とかこちらに注意を! と言う思いから出た行為だ。
こいつは自分が狙いの筈だと、そうやって自分の方へと誘導したのだ。
久遠の方へと向きを変えかけたこの暴漢は、三上の方から大きな音がした事に
反応し、また三上の方へ向きを戻した、そして男の声がした方へ銃口を向け
即発射、 プスンッ プスンッ 小さな音が二発したのだ、
その攻撃を予測していた三上はベッドより低い位置取りに身を屈め難を逃れている、
久遠は、その行為を目の当たりにして、部屋の入口付近に置いてあった日傘を持つと
暴漢に向け突っ込んで行く...
後ろから日傘で突かれた暴漢だったが、何事も無かった様に久遠の髪を掴み、
久遠を引きずってそのまま放り投げたのだ、 「きゃ!」
久遠は三上が居るベッドの反対側の位置に倒れ込んで来た。
それを見た三上が、「久遠!」
「くそったれがぁ~」
暴漢は、こちらの状態を認識すると、余裕の笑みを見せ、
サプレッサー付きオートマチック銃の弾倉を入れ替え始めた...
淡々とマガジンを入れ替えると、そいつは顔だけ三上の方を見て
銃口は久遠の方に狙いを向けたのだ。
それが分った三上は、
「おいっ、その娘は何も知らない、関係無い奴だ、
狙いは俺だろ、ほら、俺を殺せ!」
そう言葉に出したのだが、この暴漢は、ニヤッと薄笑いを浮かべ手に力を入れる、
その時、一瞬時間が止まった様な状態に成り、暴漢の手に力が入る様子、
『指先に流れる赤い電流の様な物が三上の視界に見えたのだ』
どんな事があってもあの娘は守らなければ!
その思いが、未知の【力】を引き出し暴漢の利き腕を捻じ曲げる、
拳銃を握る腕が突然グシャっと圧倒的な力で雑巾絞りの様にねじ曲げられると暴漢は、
「ぐあぁぁぁ」
悲鳴をあげ銃を床へ落としたのだ、
するとその銃が床に触れたか触れないかと言う段階で銃弾が暴発、
その銃弾が暴漢の股間を撃ち抜き内臓に突き刺さったのだ、
「ぐはっ・・・」
暴漢は堪らず股間に手をやってはいたが、溢れ出る血液を押さえつける事が出来ずに
その場に崩れ落ち倒れた...
その頃、個室で騒ぎが起こってる事を同じ階の患者達が、ナースへ報告、
何人もの人が個室の周りを囲んで中の様子を伺いに来ていた、
まだ何が起こったのか分からない久遠が立ち上がり、
三上の方へ駆けつけて来て、飛び込んで来た
久遠は三上を抱きしめながら泣き出していたのだ。
少しの時、そのままの状態だったのだが、
多くのギャラリーが集まって来てたので三上が、
「大丈夫か久遠?」
まだ震える体で三上に抱きついていた久遠も、
ハッと気が付き我に返った様で、「三上さん大丈夫ですか?」
三上の顔を見上げ、心配そうに聞いて来た。
三上は、久遠の首辺りの柔らかい髪の毛ごと、
久遠を右手で抱きしめながらなでなでとしていた、
「ああ、俺は何とも無い、それより久遠の方はどうなんだ?」
「うん、私も大丈夫、ちょっと髪の毛引っ張られた辺りの
頭皮が痛いかなぁって位よ。」
「そうか。」 三上は、今聞いた久遠の頭皮を見る為、久遠の髪の毛を避け
頭皮を見ようとした、 見ると確かに少し血が滲んでる。
「ああ、血が少し出てるな、後で先生に治療して貰うんだぞ。」
そう言うと、久遠は「うん」と甘え声を出し頷いた。
三上達が二人の世界を作って居たのだが、この状態を見に来た者達は、
荒れた部屋や血だらけに成り倒れている暴漢の有様に驚き、
慌ただしく騒めいている、
その中をナースが警備員を連れ三上達の元へとやって来たのだ。
「どうなされました三上さん、この状況は一体何事なんですか?」
「ええ、看護師さん、突然そこで倒れている暴漢が襲い掛かって来て、
そこに落ちてる銃を撃って来たんですよ、そこへ久遠が駆けつけたんですが、
暴漢に酷い目に遭わせられ、髪の毛を掴まれ投げられたんです、
その後の事は、良く分からない間に、そいつが倒れてしまったので...」
そう言い、警察官がやって来るまで、暫くの時間が過ぎ去っていた、
頭に怪我を負った久遠は治療を受け、今はまだ容体の悪い三上の為に急遽
別の部屋が用意された為、新しい部屋で三上が寝るベッドの側に座っていたのだ。
警察官達がやって来ると、三上と共に被害者と成った久遠は、
先程までいた個室へと連れて行かれる事と成ったのだ、
三上は容態を案じられ、新しい部屋で休んで居る。
久遠は、色々な質問を受け終わると、警察官を連れ三上の元へと戻って来た、
「三上さん、警察の方がお話が聞きたいとおっしゃってますが、大丈夫ですかぁ?」
「おかえり久遠、ああ、大丈夫だ、ベッドを起こしてくれるか。」
久遠はその言葉を受けると、手慣れた具合に動き、ベッドを稼働させ
三上を起こした。
座る姿勢に成ると、三上が。 「さて、何を話しましょう?」
質問をどうぞ、と言ったのだ。
「二人の警察官が、死んだ暴漢に心当たりは無いか? とか
自分が狙われる事に何か心当たりは無いか? とか
色々細かい事を聞いて来た。」
「襲って来た奴に心当たりは幾つかはあるが、病院に入院中の者を
襲って来る様な奴に、心当たりは無い、
一番怪しいのは俺を拉致したチャイニーズマフィアだろう。
狙われた理由は、以前にも警察に話したが、
敦森衆議院議員主催のパーティで行われた事が関係してるんだと思う。」
「その行われた事とは?」
「先程も言ったが、警察には以前全て話はしているんだ、
詳しい事は、神田警察署の嵐山警部に聞いてくれ。」
嵐山警部の名を出すと、二人の警察官達は、名前を知っていたらしく
即答で了解し、事情聴取は直ぐに終わったのだ。
その日の夕方、 昼間来た警察官から連絡が行ったのか、
三上の元へ嵐山警部がやって来て居た、
落ち着きを取り戻した久遠は既に帰宅している。
嵐山からの話では、襲って来た奴の身元は、
やはりチャイニーズマフィアだと言い、
偽造パスポートで日本に入国して居たらしく、
昔の台湾経由で日本に入って来たと言う事しか分からないと教えてくれたのだ。
その他にも以前頼んだ、敦森議員が開いたパーティー内で起った惨劇の調査結果も教えてくれたのだ。
三上からの連絡後一夜開けてから、
敦森衆議院議員が開催したパーティで起ったとされる、
只ならぬ事件の調査を実行して良いのか、否なのかと言う事を
警視庁長峰副総監派に位置する巻島部長に相談し、許可を得ようと
直接説得に向かったらしいが、中々その許可が下りずに2日間放置された話をしてくれた、
後で聞いた話では、巻島部長がかなり頑張って長峰副総監を説得し
動いて貰ったらしいが、✖〇党放置会系の議員連盟から横やりが入り、
警視庁のTOP 狭間官兵衛警視総監が待ったを掛けて来たらしく、
2日と言う時間、警視庁は捜査を実行する事が出来なかったと事情を話してくれたのだ。
当然2日後に嵐山が率いた部隊が向かった時には、何も見つからず、
三上が話した広間でDNA採取も試みたのだが、
確固たる証拠に成る様な物は出なかったと言う。
ただ三上が言った通り、あの晩、行方不明に成った複数の家族からの
捜索以来が警視庁の方に寄せられて居たらしく、
今はそっち方面から捜査は続いてると聞かせてくれたのだ。
その晩、眠れない三上は、今日起こった出来事を考えていた、
振り返り思い起こすと、信じられない様な激しい出来事が起こり
次々と沢山の人達と話をし、久遠までもを一歩の違いで死んでいたかもしれない程、
危険な目に晒させた事を思い出し、考えていた、
その中で、あの時、何故久遠が助かったのだろう?
あの暴漢は何故突然銃を落としたのかが三上には分からなかったのだ、
記憶を呼び起こして見ても、三上の目に映って居たのは、
倒れた久遠の後ろ姿に...
「確か、銃を久遠に向け、俺の方を奴は見て笑いやがった筈だったのだが。」
その先がはっきりとしなかった、
それに落ちた銃がはずみで暴発する何て、出来過ぎた話だと思えていたのだ。
「あれは奇跡としか思えん。」
三上は自分がやった事に気付いて無かった。
しかし取りあえず久遠が無事で良かった事や、
今後 久遠を自分から遠ざけた方が良いのかも知れないとの考えが
浮かんでは消え、浮かんでは消えてと思考がぐるぐると回っていたのだ、
そうこうしてると、何時の間にか眠りに入っていた。
入院中の三上襲撃事件が起こってから更に3日と言う日数が経っていた、
今だ満足に一人で歩けず、車いすで病院内を散歩中の三上と久遠の所へやって来たのは、
三上が頼む情報屋の一人、コアラ顔の相撲取りを小さくした感じの壷井と、
雑居ビルの一室で、診療所を営む通称ドクと呼ばれる凄腕の医者だ、
この二人がやって来てくれたのだ、 丁度車いすで散歩中に壷井が声をかけて来た、
「三上さ~ん、元気に成りましたか?」
「おう、壷井かぁ良く来てくれたな、ドクも一緒に来てくれたのか。」
「お久しぶり壷井さん、それとドクさんも。」 久遠は二人にペコリとお辞儀をし、挨拶をした、
「洋子ちゃんは相変わらず可愛いっすね♫」 壷井がお辞儀した久遠に目を奪われ、
三上の事は眼中に無く成ってしまった様だ。
「やぁ、洋子ちゃん、刃の奴が面倒かけるねぇ。」
「いえ、そんな事ないですよドクさん。」 久遠は照れながらそう言葉に出した、
「所で刃、今日はお前に話があってやって来たんじゃ、
壷井君、すまんが洋子ちゃんと二人で散歩して来てくれんか、
儂は刃と大事な話があるのでな。」
「分ったっす、じゃあ洋子ちゃん、暫くおいらに付き合って貰えるやんすか?」
「はい壷井さん、宜しくでやんす。」
「ははは、洋子ちゃんおいらのマネしたでやんすね♪」
二人は仲良く別の場へと歩いて行った、 二人に何処かで時間を潰して来る様に頼んだ
ドクは、三上の乗る車椅子を押しながら話を始めたのだ、
「刃自分でも解ってると思うが、
お前の怪我はそう簡単に歩ける様に成る様な代物では無いのじゃ、
儂は、お前の主治医をしている中村先生からお前のカルテを全て見せて貰っている、
はっきり言って、歩く所か通常生活を一人で行う事すら今後も厳しい状態なのじゃ。」
「待ってくれドク、そんな事、今、言われても
俺にはどうしようも無い事だろう。」
「慌てるな刃、儂が言いたい事を全部言わせろ、
話はそれから聞こうじゃないか。」
「分かった。」 刃は自分の置かれている立場を再認識させられたのだが、
こんな話をわざわざしに来てくれたドクに、何か考えがあるのだろうか?
と、それが早く知りたく成っていたのだ。
ドクは三上の乗る車いすをエレベーターに乗せ、屋上にある野外テラスへと向う。
エレベータを降り、屋上に着くと、テラスがある場へと向かって行く、その間に。
「刃、実はお前に施して見ようと思う手術があるんじゃ。」
「なんだと、どんな?」
「うむ、ここからが大事な話に成る、耳の穴かっぽじって良く聞くのじゃ、
実はじゃ、この手術は合法では無い、日本国、いや世界の何処の国へ行っても
違法な手術だと言えるじゃろう。」
「?」
「ざっくり言うと、サイボーグ化手術なんじゃ、
お前の体の半分をサイボーグに変える手術を考えておる。」
「何だと、俺をサイボーグにだと...
分った、もうちょっと具体的に教えてくれるかドク、
サイボーグと言われても、直ぐにピンと来ねぇ。」
「うむ、先ずお前の骨と言う骨は全て、
現在、金属の中で総合強度が高いとされるLPSO型マグネシウム合金に取り換える事に成る、
それからそれらを支える人口筋肉を各パーツ事に補強する、
失った左腕は、手の部分はタングステンを使用、人工皮膚でコーティング、
腕の部分はチタン製の機械式、ある程度その手は普通に動かせる物と成る、
勿論見た目は人工皮膚でコーティングし、人間の手と見た目は変わらん。」
「そりゃあ 凄げぇ手術だな、しかし、そこ迄やっちまったら
もう女は抱けなく成るんじゃ無いのか?」
「刃、そこは心配するな、チンポには何もせんぞ、
お前がインポに成らん限り大丈夫じゃろう。」
「そ、そうか それなら良いが。」
「それからな刃、これが一番難関に成る手術なんじゃが、
お前さんの頭に、あるチップを埋め込まないと駄目なのじゃ、
そうせんと、旨く体が動かせん、
この頭にチップを埋め込む手術は超難関とされていて、
まだ誰も成功した者が居ないと言う代物なのじゃ、こんな手術を推薦する儂も
どうかしてるとは思うんじゃが、まだ先があるお前さんの未来を思うと、
儂の胸の内だけで処理しきれん問題に成ってしまったのじゃよ、
取りあえず話をして、それで本人である刃、お前さんに決めさせようと思ったのじゃ。」
その話を聞き、三上は直ぐには返事が出来なかった、
ただ、ドクには改めて感謝の気持ちが沸き上がっていたのだ。
「すまんドク、この話を持って来てくれて感謝してるよ、
ただ、この手術をするかしないか、少し考えさせてくれ。」
三上がそう言うと、ドクは優しく頷き、
「そうするとええ、ゆっくり考えろ刃」
そう言い、話が終わると、三上の部屋へと戻って行った。
三上とドクの二人が、三上の個室に戻ると、
久遠と壷井が仲良くアイスクリームを食べ笑い声が聞えて来て居た。
「おっ、美味しそうな物食べてるじゃねぇか。」
「お二人供お帰りなさい。」
「ドクさん話は終りましたか。」
「ああ、言うだけは言ったぞ、後は刃次第じゃ、
儂の用事は済んだで、後はお前さん方に任せて儂は診療所へ帰る。」
ドクはそう言うと、壷井を置いて先に帰って行ったのだ、
残った壷井は久遠と余程馬が合うらしく、暫くの間、仲良く話をしていた
三上がベッドに横たわり、ドクが話てくれた事を、一つ一つ整理し、
どうすれば一番自分や久遠、周りの者達に良いのかを考え、
ぼ~と考えに耽ってたのだ、そうしているとあっと言う間に数時間が過ぎ去り、
そろそろ帰ると壷井が別れの挨拶をして来たのだ。
「おう、今日はありがとうな壷井、久遠がこんなに嬉しそうに
してるのを久し振りに見たよ。」
「ええ、三上さんこっちも洋子ちゃんと沢山喋れて
今日は幸せな一日でしたでやんす。」
「まぁ、壷井さん 私も幸せな一日でしたよ♫」
そんな風に今日と言う日は流れて行った・・・
読んでくれた方 ありがとう。