訴える女学生
今回登場する人物
三上 刃 一応、主人公
久遠洋子 三上のアシスタント兼 嫁に一番近い人。
坪井 三上が頼む情報屋の一人、見た目はコアラに似ているが、
それに反して結構素早く動くし、強さも併せ持ち役に立つ奴だ。
安土 この男も三上の情報屋の一人、結構マメに動き、何時も情報を集めている、
情報屋としての嗅覚はピカイチだ。
雲雀圭奈 ドローンに内蔵させる為の永久機関開発者。永久とは言うものの、壊れるまでは持つだろうと言う程度の物で、実際はどの程度エネルギーを出力させ続けられるのかは未知数。
三上の身体に埋め込むタイプの物は、7.2vを永続発生させ続ける事が出来ると雲雀博士は言っている。
里中 万里 家族を拉致され訴える女学生。
葛城 美智子 洋子の叔母
常盤 恵 美智子の会社のグループ企業の一つを率いている社長。
大学内に居る大学生達。
(2025年10月1日)
時刻は、昼の1時40分、三上と洋子の二人は三上の手術の時間まで
間が開いた時間を楽しむ為、新潟大学の大学内を見学する事にしていた、
暫く学内を見て回っていると、
ちょっとした野外集会場の様な場が見えて来て、
そこでは何やら騒ぎが起きてる様で、どよめきが聞こえて来ていた、
誰かがマイクで何かを語っているのだろう、
話す内容はまだ分からなかったが、何かを話す声が聞こえて来ていた。
そこでは他とは違い、多くの大学生達が集まっていた為、
好奇心旺盛な洋子が三上に、
「見に行きましょうよ三上さん。」
そう言いながら、洋子が、三上の腕を引っ張り向かったのだ。
洋子の好奇心が、学生達と同じように何の集まりなのか?
気に成った為だろう、近付いて行くと、
はっきりと何を言ってるのかが聞こえて来る様に成って来た。
マイク声で話す声の内容が、二人にも聞き取れ始める・・・
暫くその話し声に耳を傾け周囲の様子を伺っていたのだ、
段々話の詳細が分かって来た。
リンゴの空き箱だろうか? 木の空箱の上に立ち、皆に話し掛けて居たのは
女学生の一人だ、話し声からそれは分かって居たのだが、
かなり真剣な面持ちで皆に訴え掛けている、 その内容とは!
「私の家族が新潟県内で最近頻繁に話題にされていた【真夜中の失踪事件】
と思われる事件に巻き込まれ、昨夜襲われたのです、
周辺住民達と一緒に何処かへ連れていかれたのか?
今分かってるだけでも、辺り一帯80名以上の人達と共に何処かへ
連れ去られてしまったのです、
皆さん達も、ご存じでしょう、最近多くの県民が謎の集団にさらわれ、
何処かへ連れて行かれてしまう事件を、皆さんの中にも居るでしょう、
家族の誰かが突然居なくなった方が、それらは皆、ある組織の仕業と
噂されていたのですが、いえ、もうある組織等と言う、
はっきりしない言葉は使いません、中国が関わっている組織です。
その事を私は今朝知ったのです、私も自分の家族が被害に遭うまでは
遠い世界の話だと、意識も無く、そう言う話を頭の中で流して居たのです。
話の途中、数名から疑問が投げ枯れられていた。
「そんな情報持ってんなら、まずは警察に相談しに行ってからだろ!」
「そうだ、此処でそんな話をしても無駄だ、無駄、他所でやれ!」
こんな声も上がっている。
「勿論その通りです、事件の事は真っ先に新潟県警に相談に行ったのです、
所が警察は、証拠が無いだとか、他にも沢山の事件を抱えていて
手が回らないだとか、色々言い訳しはじめ、取り合えず調書だけ取り
後で調べると言って、直ぐに調べ様と取り組んでくれないのです、
こんな状態だったので、直ぐにでも家族を取り戻したい私は、
先に家族が失踪し、調べていた人達と知り合い、そこで多くの情報を
手に入れたのです、そこで知った事を皆さんにも共有したいと思いますので
どうか話を聞いていて下さい。
これも噂で言われてたのですが、×〇党大物議員と新潟県知事、
それに新潟×〇党県議員が、県警に圧力を掛け捜査を進ませない様に
してるとの情報があるらしいのです、 私は唖然としたし、疑問も持ちました、
何故×〇党や、県知事が自国民が拉致されて居るのに見て見ぬふりを
しようとするのか? 訳が分からなかった為です。」
それを聞いていた学生の中から、こんな声が飛び出して来たのだ!
「そんなの今の日本の情勢と、隣国の情勢を正しく知ってたら
直ぐ分かるだろう、簡単に言うと、大を生かす為に小を見殺しに
しようとしてるだけの事だ!」
そんな言葉が飛び出て来るとは思って無かった
お立ち台の女学生は!
「そんな・・ 私の家族は、あなたが言う、小だと言うのですか?」
「当たり前だろ、中国との停戦は、日本が何も手を打たず、
平和ボケ噛ましていた時間、着々と軍事力を高め、今や日本など
取るに足らない程にまで高めてしまってるんだ、中国様の慈悲のお陰で
今の停戦は成り立ってる、そんな中、たった数千や数万の人間の為に、
2026年2月6日まである停戦期限を壊す恐れのある事が出来ると思ってるのか!」
「そんな、国民を守る事が使命な筈の政治家が、国民を守らず
そんな事を考えている何て!」
「ばっか、人間なんてそんなもんだろ、だいたい近くに居る人達の事なら
まだしも、会った事も無い人間の事等、それ程意識せず損切し、
他の多くの国民を守ろうとする事も、間違った判断では無いだろう、
事件に巻き込まれた人達には悪いんだろうけどね。」
こんな事を言われてしまって、その場がしゅんとしてしまっていたが、
それでもマイクを握り話す事を辞めなかった女学生は!
「確かに私は、私の都合でものを言っています、ですが
誰でも自分の周りに居る人達が同じ様な目に遭えば、助けようと
動くのは当たり前の事ですよね、何もせず今まで通りの暮らしを
してろとでも言うのですか!
だから、お願いです、皆さんの中で私達、家族や知り合いが連れ去られ
途方に暮れている者達の為に協力して下さる方を募集します、
このまま放置しておくと、皆さんの家族も同じような目に遭います、
政治家も、警察も頼りに成りません、だから私たちは自ら立ち上がらなければ
いけない時が来たのです、
どうか皆さんの力も貸して下さい、お願いします。」
「おいおい、何をどの様に力を貸せと言ってるのか分らねぇぞ!」
「はい、ですから、まずは私たちで捜査して、
連れ去られた人達が何処へ行ったのか? 場所を特定したいのです。」
この様な説明をする
箱の上に立って話す女学生に、
辛辣だが、知りたかった答えが即返って来た。
「おいおい、寝ぼけた事言ってんじゃねぇ、
何が捜査だ、そんな事しなくても、連れ去られた人達が
何処へ連れて行かれたか何て大抵の者はもう知ってんだろうが!」
「ちょっと待って下さい、あなた
連れ去られた人達が何処へ連れて行かれたかご存じなの?」
「だ・か・ら・誰でも知ってんだろうと言ってんだろ!
三条だ、三条市、あそこに作られた工場に連れて行かれてる事なんて
大抵の奴は知ってる、知らなかったのはお前の様に、自分の身に
降りかかるまでは、他人事として捉えていた奴だけだろうよ!」
「三条、三条市に連れて行かれているのね、助かります
その情報、大変感謝します、それでは、その三条市にある新しい工場の
場所を調べに一緒に行ってくれる方達、出来れば家族を助ける為
手伝ってくれる方を求めます、特に自分の身内や知り合い等、
行方不明の方、一緒に捜査協力してくれる方を募集致します!」
野外集会場はこんな話が行われて居たのだ、
三上達は、中国独裁党の手の者が日本へ派遣した者達の手により、
丸朝薬品を使い日本国内で遺伝子強化人間の実験をしていた事を、
情報屋の一人、安土と共に調べた経験があり、
他の人達よりも、その情報に詳しかった、だからこの拉致事件は
間違いなく、独裁党が絡んでいるし、やってるのは丸朝薬品関係の者達だろう、
そう理解したのだ、 そこで三上は、今頃に成り思い出した
情報屋の一人、安土に電話を入れる事にしたのだ、
先程、話に出ていた、三条市にあると言われる拉致被害者情報を聞く為、
静かな場所に移動し、洋子には何か飲み物を買って来てくれと頼みつつ
携帯を使いTELを入れたのだ。
プルプルプル プルプルプル プルプルプル プツ。
「てめぇ三上かぁ、今頃連絡して来てどう言う了見何だぁ!」
「ははは、元気そうだな安土、 わりぃなちょっと連絡すんの忘れちまってた。」
「はぁ? ばっきゃろ~~~!!
俺がどれだけ心配したか、お前に分からんかったのかぁ!」
「まぁ、そう怒るなよ安土、俺も死にかけてたうえ、
何だか分からない間に、またアムステルダムに連れて行かれてて
麻酔やら、投薬の影響を受け、殆どの記憶が曖昧に成っちまってたんだ、
そんな事だから、俺が研究所で死にかけてた時、
お前が研究所から一人離れて何処かへ向かってた事とか、
そんな事も、全部覚えて無かったんだからなぁ。」
その三上の突っ込みは、先程まで怒っていた安土の怒りに
冷水をぶっかける事に成功し、黙らせる事に成ったのだ。
「うっ、 あれは悪かったと思ってる、
まさかお前がそんな状態に成ってたとは知りもしなかったんだ、
それに、研究所から大物が出て来たので後を付けるか残るか
悩んだんだけど、どうしても後を追った方が良い気がしてなぁ。」
「分かった、分かった、もう昔の事はお互い成しにしよう、
それより、三条市の話だ、何か知らないか?」
「はぁ? 三条だとぉ!」
三上から出た、三条と言う地名を聞き、直ぐにピンと来た安土の
微妙に変化した声のトーンと雰囲気を敏感に察知した三上は、直観が働き、
安土は何か知ってるなと、もう確信を得て、突っ込みを入れ始めたのだ。
「良しいいぞぉ、安土、これは多くの新潟県民を救う事に繋がる
お前はその役に立つんだ、良いな。」
「ちょっと待て三上、確かに三条市に作られた工場の事は、
丸朝薬品系の事を調べてる中で、俺も怪しいと目を付けたので調べてある、
しかし、いくらお前の頼みでも、調査費も多く掛かってるんだから、
ただで情報をやる訳にはいかんぞ三上。」
「勿論、金は出す、その工場をぶっ壊してからだけどな。」
「おいおい、後払いかよ、まぁ、今のお前は働いて無いから
仕方ないな、良し、先行投資と言う事で、金額だけは決めておこう三上!」
「良かろう、幾らでその情報を売る?」
「50と言いたいところだが、30までまけておこう。」
「分かった30だな、30のつけでよろしく頼むぜ。」
こうして、話が纏まると、安土が三条市に作られたと言う
表向きは、配送関係の会社として登録されているが、
中身は丸朝薬品系列の子会社が関わった会社だと調べが付いている事と、
その会社の位置、それにその中には、かなり多くの遺伝子強化兵にされた
拉致被害者達が居る筈だと言う情報が齎されたのだ。」
「おい三上、あの時死にかけたお前なら分かるだろうが、
あそこに手を出すのは辞めておけ、俺の調べではあの工場に
連れ去られた人達の数はもう万単位に成ってる、そこから計算すると
遺伝子強化兵の数も、凄い事に成ってるはずだ、
行くのはかってだが、行けば今度は間違いなく殺されちまうぞ!」
「そんなに居るのか!
情報は分かった、しかし行かない理由には成らん、
そっちも大ネズミ騒動等で大変だっただろに、良く調べたな。」
「ははは、話を聞いても行くのか、やはり三上だな、
まぁこっちもそろそろ日本を脱出する計画も立てている、
勿論、ぎりまで日本に残る積りだがな。」
「そっか、では情報提供に感謝する、それじゃあな!」
そこでやっと安土は、この状況はやべぇと気付いたのだ。
「ちょっとまて三上、お前が死んだら情報料は何処から?」
プチッ
既に三上は安土とのTELを切り、今度は安土の事で思い出した、
坪井にTELを入れたのだ。
プルプルプル プルプルプル。
「あれ、三上さんお久しぶりっす、体の方は大丈夫なんすかぁ? 」
「おお坪井、元気か、俺の方はもうバッチリだ、
所で、今俺は新潟に来てるんだが、お前はどうしてる?」
「おいらは、ドクさんから連絡が来て、名古屋に来てるっす。」
「名古屋だと?」
「そうっす、 美智子さんの会社のつてで、こっちに来たらしいっす。」
「美智子さんって誰だ?」
こんな話をしていると、温かいコーヒーを買って来た洋子が、
三上の声から、美智子と言うネームを聞き付け、言葉を発して来たのだ。
「三上さん、美智子おばさんの話を誰としてるの?」
「んっ、洋子、叔母さんだと?」
「そうよ、美智子と言うのは私の叔母の名前です。」
「それは偶々叔母と同じ名前と言うだけかもしれんぞ、
電話の相手は、坪井だ、それで今、ドクに呼ばれて名古屋に居るらしい、
そこで世話に成ってるのがその美智子と言う人の会社のグループ会社だと話しているよ。」
「あら、それじゃあドクさんや坪井君たちは美智子おばさんと一緒なのね。」
洋子は三上の話で確信したかの様にそう言ったのだ。
「んっ? なぜ叔母さんだと確信したかの様に話をするんだ?」
「だって、野口さんに叔母の事、助けてと頼んだのは私なんだよ。」
「えっ、そうなのか、野口に頼んだならドク達が洋子の叔母と
一緒に居る事もおかしくはない話だな。」
TELでの話が止まり、電話越しで、洋子と話す三上の声が
聞こえて来ていたので、坪井は気を利かせ、隣の部屋に居る
ドクの元へとやって来ていた、そこには、
ドクの他に、野口と美智子、それに美智子の友人でこのホテルを
手配してくれた常盤恵が居たのだ、常盤は美智子の会社の
グループ企業の一つを受け持つ社長だ、
この4人が居る所に、三上とTEL中の坪井がやって来たのだ。
「どうした坪井君。」
「ドクさん、今、三上さんから連絡が入り、
洋子ちゃんと共に新潟に来てるらしいっす。」
「それは本当か坪井君、刃の奴が日本に戻って来てるのか?」
「はい、今、このスマホで繋がってるっす。」
そう言うと坪井は自分のスマホをドクに渡したのだ。
「もしもし儂じゃ刃、
お主ら日本に戻ってると聞いたがどうなっとるんじゃ?」
坪井から交代したドクがそう三上に尋ねた、すると。
「ドクか、また大分と世話を掛けた様だな、
こっちに戻れたのはハインツ博士のお陰なんだ、
彼が、俺の脳の研究に、俺はもう必要では無いと未来研究機構へ
意見書を書いてくれたんだよ、それが受理され、
俺達は日本へ戻る事を許可されたんだ、
それでどうせ日本に戻るなら、俺のサイボーグとしての力を
しっかりと引き出せるモノにしたいと思い、以前から誘われてた話に
乗り、100%の力を出す為の改造手術を受けたんだ、
手術と言っても、以前に行った手術で大方の事は完成していたので、
それを補助する程度の手術だったんたが、その手術を終えると、
今度は、力を引き出し続ける為の電力が足らない事を告げられ、
それを補ってくれる研究をしている 新潟大学に居る、
雲雀博士の所へ行けと言われ、やって来た所なんだよ。」
「なるほど、ハインツの奴が手を貸したのか、
まぁ奴の事だから、もう十分お主の脳は調べつくし、
データも取ったじゃろうから心配ない、
それで、刃、お主らは何時東京に戻る予定なんじゃ?
それに合わせてわし等も戻ろうと思うんじゃが。」
これは使えると脳内で速攻で組み立てたドクは、刃達の
予定を掴み、一緒に東京へ戻ろうと動いたのだ。
そのドクの話を聞いていた周りの者達は、何も言わなかった、
今まで戻る事を希望してもまだダメと言われ続けていたのとは違う手応えを感じ、
どうやらこれはいけるとドクの機嫌はすこぶる良くなって行く・・
「それがだな、ドク、こちらでは今、遺伝子強化人間を大量に作り出す為に
多くの新潟県民が三条市に作られた工場に運ばれてると言うのを
先程知る事に成ったんだよ、それを何とかせんといかんと今考えてる所なんだ。」
「なんじゃと、そっちでもそんな事が起こっとるのか!
儂らも数日前に、強化人間に襲われ、連れ去られようとしたんじゃ、
まさか、同じ事がそちらでも起こっておるとは、一体今の政府は、
自国民の安全を守る積りがあるのか? 疑わしく成って来たのぉ。」
ドクの話し声を聞いていた周囲の者達も、あちらでも同じ事が
起こってる事実を知り、もう今の日本に安全な所は無いのだろう、そう思っていた。
そして、電話の先に居るだろう洋子の事を思い、美智子が。
「あのドクさん、そちらに洋子も居るのよね?」
「んっ、そうじゃった、お主の姪も一緒じゃったな。」
三上の電話の中から、美智子達のやり取りが聞こえてくると洋子も。
三上のスマホに近付き、声を出したのだ。
「美智子叔母さん、洋子です、
ドクさんや野口さん達と一緒だって知って安心してます。」
「洋子、あなたが野口さん達に私の事を救ってとお願いしてくれた
お陰で、間一髪助かったのよ、ありがとう洋子♫」
美智子はそれだけ言うと、ドクから離れる・・
洋子もそう言われ、嬉しさが倍増し、三上にくっ付く♡。
二人のやり取りが終わると、ドクは、これからの事をちょっとだけ
打ち合わせておく事にしたのだ。
「刃、こちら名古屋でも同じ事が起きておるのじゃ、
ちぃと、その変の事を調べてもらう為、坪井君に頼んだのじゃが、
こちらでは犬山市に、人を連れ去る工場があると言う所まで
分かっており、今日、そこへ野口君と共に行く予定に成っておる。」
「おいドク、それは辞めておいた方が良い、
話によると、飛んでもない数の強化人間が工場内には居るらしいぞ、
10体前後なら野口が戦いながらドク達を守る事も出来るかもしれんが、
幾ら野口が強いと言っても、数百、もしくは千と言う単位で居るかもしれん
強化人間が出て来てしまうと、逃げるだけも至難の業に成っちまう。」
「それがじゃな刃、儂は触らぬ神に祟り成しと言う考えなんじゃが、
こちらに居られる方達は、自分の所の複数の社員が捉えられ取ると
考えておってな、それを何とかしたいと、野口君を説得して
やっと今日、結構すると言う事に成っとるんじゃよ、
こちらの都合上、今更、辞める訳にもいかんのじゃよ。」
ドクが経緯を話すと、自分ももう行くつもりなのに人には
辞めろと言うのも筋が通らないと言うのもあり、説得は諦め、
お互いの無事を願う事だけする事にした。
「分かったドク、無事に船橋にあるドクの診療所で落ち合おう。」
「了解じゃ、そちらも無理するんじゃないぞ、
最近のお主は2度も死にかけておるんじゃからのぉ。」
「へへ、分かってるって、それじゃあな。」
思ってもみなかった三上刃からの連絡が終わると、
名古屋組の一同は、新潟でも同じ事が起こっていた事を知り、
この国の政府は一体何してるのか? 機能不全に陥っている事を
改めて知る事と成ったのだ、だが、政府にばかり怒っても仕方が無く
その他、メディアの流すあちら側に都合の良い情報を得、
今まで安穏と暮らして来た日本国民がそもそも一番呆けた民族だったのだから
今更、文句言っても仕方がないだろう、
痛い目に遭わないと誰でも実感出来なかったのだ、それは仕方ない事と片付け、
政府に頼れないなら、自分たちで何とかしようと名古屋組の者達
(ドク、野口、美智子、常盤、坪井)5名は、坪井が仕入れて来た情報を元に、
今から犬山市にある強化人間量産化工場へと向かい、どう言う状況なのか
調べる積りでいた、勿論、野口以外の者達は戦闘行為は出来ないので、
その情報を坪井経由でまた本当の情報を流してくれる
マスコミに流すと言う作戦が建てられ、今から決行する事と成ったのだ。
名古屋組がこんな状態に入った頃、三上と洋子の二人は、
先程話をしていた女子大生の元に来て、話をしていた。
「すると、君たちの家族は三条市にある工場に運ばれ
監禁されてる確率が高いんだね。」
「ええそうなの、これから私達は手伝ってくれる方達と共に
そこへ向かい、なんとか家族を取り戻す為の活動をしようと思っています、
あなた方も是非、ご協力いただければ幸いです。」
「しかし、一般人がそんな危険な場所へ向かって、
もし、その武装集団が君たち一般人を襲って来たら
君たちはどう対処するつもりなんだ?
どう考えても無謀な行為としか思えんのだが?」
「ええ、一応、今から決行する事を警察に伝えてから三条市へ向かう事にします。」
「そんな事ではダメだ、先程の話でも出てたが、
警察は政府の言う通りこの一件に手を出してこない可能性が高い。」
「はい、その事も考慮しています、だからこちらに居る
長船さんのお兄さんが、新発田駐屯地に勤務されてる
中尉クラスの自衛官をしてるそうなので、
はっきりとした証拠さえ手に入れば、自衛隊が助けてくれると思うんです。」
「いや、それも無理だと思う、そもそも自衛隊は
市町村の代表者が知事に連絡し、その知事が政府に要請して
大臣がその指示を出さないと動けない、これは災害の場合だけど、
当てはまるかは分からない、
今回の事は武装集団との闘いに成る恐れが高いからね。
それに、そこまで行くのに何時も反対する野党や、
他の議員達から反対活動されたりしたら事が終わってもまだ動かないのか?
と言う様にかなり遅れる事に成る。」
その様な事を言って来る三上に対し、必死の女学生は
段々と態度を硬化させ、怒りの様を見せて来た。
「そんな否定ばかりするのなら、ここから出て行って下さい!
私達はたとえ無謀と言われようとも、自分たちにやれる事をやるんです。」
怒りの矛先が、三上に向いて来た、そこで三上は。
「分かった、ではこうしよう、俺がそこへ行き、
中の様子を探って来る、君たちは遠くからそれを見るだけにする、
何かあったら直ぐに逃げ、警察、またはその自衛隊のお兄さんに相談するんだ。」
三上が、圧倒的に分の悪い事を引き受け、学生達には遠くから
見てるだけににしろと言う提案を出すと、一部の学生達は、
賛成の声を挙げ始めた。
「私は、この人の言う事は、間違って無いと思うわ、
だって、夜中に大人数を拉致する様な集団なんだよ、
建物の外だけならまだしも、中へ入って調べる事なんて
とても出来そうにないよ、それに万が一、私たちまで二次遭難的被害に
遭ってしまったら、一体誰が助けてくれるの?
来てくれるかはっきり分からない、長船さんのお兄さんを信じて
自衛隊が助けてくれる事を期待して待ってれば良いの?」
「そうだぞ、里中、この人は自分が中へ入り調べると言ってくれてるんだ、
取り合えず今回はこの人に頼み、俺達は遠くからの監視だけにしよう。」
等など、一人、二人と、そう言う声が出て来ると、アッと言う間に
全体の流れは、三上の言う通りの方向へと傾き、三上への支持が
集まって行く・・・
その流れに周りの者達の本音を知った里中万里は、
三上を凝視しながらも、三上の提案に乗る事にした様だ。
「分かりました、三上さんとおっしゃいましたね、
あなたの提案に今回は乗ります、ですが本当に一人で中へ入って
情報を取って来る積りなんですか? 無謀を通り越して馬鹿ですよ。」
「へへへ、そうだな、俺は馬鹿だろうな、しかしこれでも
ジャーナリストの端くれなんだぞ、情報入手に関しては素人とは違うんだ。」
ここでジャーナリストと言う事を知ると、
里中や周りの者達は先程までの態度を改め。
「へ~ あんちゃんジャーナリストだったんか。」
「マスコミ関係の人だったの?」
「それなら、どうしてこの事件を大々的に報じてくれないんだ!」
等など、色々な言葉が飛び交って来た、三上は。
「おい、ジャーナリストと言ってもピンキリ何だぞ、
俺のはしがない底辺ジャーナリスト、その代わり忖度無しで
物事を書く事が出来る、メジャーに成れば、何処かしらの団体やらの為に、
都合が良い情報しか発信しなくなるからな。」
「何だ、底辺かぁ、ちぇっ折角ジャーナリストと聞いて
期待したのに、まぁ、今頃こんなところに居る人が、
大物ジャーナリストである筈はないな。」
そんな事を言われてしまったのだが、何時までも雑談に付き合ってる間は無かった、
手術は16時からと言っていたので、突然の流れで今から三条市に行く事に
成ってしまったのだ、間違い無く手術の時間には間に合わない、
三上はもう後には引けないので、洋子を研究室へ戻し、
雲雀博士に詳しい事情を話させる事にした。
「洋子、頼みがある、雲雀博士にこの事を知らせに戻ってくれ。」
簡素に事を告げたのだ、本音は洋子を危険な場所から遠ざける事が
狙いでもある、その為、わざと簡素な言葉にしたのだ。
洋子はその事には気付かず、素直に
「分かった三上さん、無茶はしないで下さい。」
それだけ言うと、研究室へと戻って行ったのだ。
最後まで読んでくれ ありがとう。




