無秩序拡大
(2025年9月9日2時07分) 真夜中
西園寺と戸車の二人は、仙台基地の最下層にある
エレベーター入口を開け、エレベーターシャフト内に設置されて居る
ハシゴの所まで移動し、その梯子を使い
エレベーターが降りて来れない所まで下って来て居たのだ。
途中、エレベーターシャフト内で、戸車がバランスを崩し、
下に落ちかけたりとヒヤヒヤさせられる場面に遭遇したのだが、
何とか最下層まで辿り着き、今は隠し扉を開ける為、
この場の何処かに隠されていると言う
ボタンを二人で探している所だったのだ。
「無いわねぇ、何処に隠してあるのかしら?」
西園寺がそうぼやいていると戸車が。
「西園寺先輩ありました、ここに何かある様です。」
戸車が見付けたのは、壁では無く、コンクリートの床を指示していた、
そしてその床を戦闘用ナイフ(ケーバー 1218 USMC)で、カツン、カツンと
ほじくると、薄いコンクリートに似せた鉄板がはがれて、中にボタンが出て来た、
ボタンを発見すると早速、戸車がボタンを押したのだ。
すると、
壁の一部が後ろへ沈み始めると直ぐに止まった、
「ん?」
これで終わりなのか? と戸車達が思ったのだが、
間を開け、今度は奥へ下がった壁が横にスライドし始めたのだ、
丁度片引きドアの様にスライドすると、
中が暗く奥が見えない通路が現れた、西園寺はアサルトライフルを構え
サーチライトで中を照らすと、 突然攻撃が!!
バンバンバンバン!! バンバンバンバン!!
通路奥からの発砲が始まったのだ、西園寺と戸車は慌てて開口部から
体を移動させ、壁に伏せると、
「ちょっと待って下さい、私達は大宮基地から派遣され
あなた達を救助しに来たんですよ!」
西園寺が慌てて、そう大声を張り上げたのだ、
すると少したってから、銃声が止む事に。
「その話は本当かぁ?」
「本当ですよ。」
「なら、基地に攻めて来た化け物はどうなったんだ?」
「私達が到着した時には、殆どいませんでしたが、
先程、死んでるかと思われた一体に攻撃され、
私達の一人が重症を負ってしまい、この場へ来れなく成り、
私達があなた達を助け出して連れ帰るのを途中で待ってる状態です。」
「そうか、分かった、俺がそちらへ行く、
取りあえず此方も用心しないといけない事は理解してくれ。」
「分かりました、どうぞ。」
そう返事すると、一人の男が、アサルトライフルを
構えながら暗闇から出て来たのだ、西園寺と戸車は、
アサルトライフルを床に置いて待って居た。
その状態を見たその男は、
「いや済まなかった、とても恐ろしいめに遭った為
助けに来てくれた方達に発砲してしまったり、
疑ってしまった事をお詫びします。」
「いえ、あの化け物を間近で見たのなら、仕方が無い事ですよ。」
そう慰めると、
「お~い、大宮基地の方達が助けに来てくれたぞ!」
そう大声を出し救助が来てくれた事を喜ぶ声が沸き上がった。
全員、ハシゴを上がり、エレベーター最下層の扉へ
よじ登って地下9階の通路に出ていた、
最後の一人が出て来ると、はぁ はぁ はぁ と
息を吸い込み、しんどそうにして居たのだ、その為
もう暫く休憩させてから移動しようと思い、西園寺達は、
助け出した者達からの話を聞いて居たのだ、その内容とは。
やはり隠れて居たのは殆ど、戦闘には向かない人達だったのだ、
話を聞くと、助け出した29名の人達の中にこの人達の警護に当たっていた
戦闘工作員は3名しか居ないと説明された。
この様な状況だったが、上から増田隊長達が応援にやって来てくれた様だ。
「西園寺、戸車も、どうだ、問題は無いか?」
「増田隊長達も来てくれたのですか。」
「ああ途中、米倉が負傷して居たので焦ったけどな、
熊谷をあいつの所に残してある、さあ出発しよう、
後35分程で、脱出用のヘリが到着する筈だ。」
周りに居た、東北支部の工作員達も、その話を耳にすると、
脱出用ヘリの話に、安堵の溜息と、
地上に上がらなきゃあと言う力が沸き出て来て居た。
地上に戻る途中、米倉の所まで来ると、米倉を見てた
合気道3段と言う熊谷 茜が、米倉の肩を調べたらしく、
肩が外れていると言うのが分かると、その肩を元に戻そうと
心見てたらしいのだが、既に2度失敗して居たらしく、
二人が何か言い争ってる感じだった。
「米倉さんが怖がるから失敗するんですよ!」 等と
涙を流して痛さを我慢していた米倉に注文を付けている所だったのだ。
それから、
「今度は間違いなく入れて見せます、
ですからそんなに怖がらないで協力して下さい。」
そんな声が、皆にも届いて来たのだ。
「おいおい熊谷、俺は肩等外れた事が無いけど、
最初に外した時は、かなりの痛さだと聞いた事がある、
もちっと優しくしてやれないのか?」
「も~ 増田さんまでそんな甘い事を!
良いですか、中途半端な力で外れた肩を入れようとしても、
ちゃんと入らないんですよ、やる時は勢いでやらないと
ただ痛いだけで終わってしまいます、
覚悟を決めて頂かないと、また痛いだけで終わりますよ。」
熊谷がそう言うと、流石に男が廃ると米倉も覚悟を決めたらしく。
「分かった熊谷、思いっ切りやってくれ、これが最後だ。」
「分かりました、それでは3で行きますね。」
「1 2 」
「ぐぎゃゃゃ~~~!!」
何と熊谷は、2で思い切り米倉の肩を壁にブチ当てたのだ、
瞬間的に凄まじい痛みが米倉を襲ったのだが、直ぐに収まると。
「ぐぎゃあ~~~~!! あつつつ んっ? おお
痛みが引いて来た、マジ痛く無く成って来たぞ、すげぇ熊谷、熊谷俺やったよ♫」
米倉は激痛が和らぎ始めた事で、余りの嬉しさの為、
我を忘れ熊谷を引き寄せ抱きしめて喜びを表現したのだ、
すると熊谷に!
「米倉さん、これはセクハラですよね!」
等と言われてしまい、慌てて熊谷の体を離す事に・・・
その一部始終を見て居た、ギャラリー達は、ただ笑って二人を見てたのだ。
米倉の肩の状態もかなり良く成り、一行は
地上へと向かい始めるが、その通路の傍らには、
何とも悍ましい死体が転がっていたのだ、
そう、あの獣化人間の死体だ、体の3分の2程はぐちゃぐちゃに成り
ミンチと化して居たが、良く見ると、
細胞の塊がアメーバの様にヒクヒクと動いて居るのが分かり、
その気持ち悪さとグロテスク度は、
それを見た者達の本能にゾっとするモノを与えて来たのだ。
その死体の欠片を、ネズミがやって来て食べ始めているのを
何名かの者達は見てたのだが。
「あれっ、あいつ等、あんな化け物の死体食ってやがるぞ?」
「ネズミは何でも食べれるからね、地球上に最後まで
生き残ると言われている哺乳類生物の筆頭が彼等だよ。」
そんな会話をする者達も居た中、あの様な化け物を見た後では、
その行為にそれ程、違和感を覚えなかった様で、皆、何も考えずにその場を後にした。
生き残りの工作員達が、無事脱出して行った後の、宮城県仙台基地では、
体の大部分が半壊した後、動けなく成った獣化人間を同じ獣化人間に
共食いされた時に千切れた木っ端や、引き千切られ無造作に食われた工作員達の死骸の残りを、
競って貪り食う小動物が居たのだ、最初は数匹だったモノが、
数時間後には、数百匹もの規模に拡大したネズミ達が、
ほぼ全ての残飯を食らい尽くすと、狂暴化し始め、何処かへ散って行ったのだ、
最後まで死体を食らって居たネズミの目は赤いルビー色の光りを放ち、
口からは巨大化し始めた牙を突き出し涎を垂らしている、
普通のネズミとは思えない程の獰猛性を体全体から発したその姿は、
そいつと遭遇した者が居たなら、直ぐに逃げなければ成らない程に
恐ろしい生き物に変容を開始していた。
(9月9日8時30)
救出された東北支部の工作員45名は無事大宮基地へと一時的に避難して居た。
全国にある主要基地会議室では、今回の襲撃がどの様に起こり
どの様な対処をすれば防げるのかを基地司令と参謀を出席させ、
緊急リモート会議が行われて居たのだ。
ここでの内容とは、
どうすればあの遺伝子強化した化け物を効率よく倒す事が
出来るのかが、議題の中心に成って居た、
出て来る答えは、早期にプロテクションアシストスーツ及び、
パワードスーツの量産と操縦士の育成を早める。
遺伝子強化細胞に有効性のある、レーザー兵器やガス兵器、
VXガスやマスタードガス、あるいは催涙ガスで戦闘不能にしてから
倒す等の意見が出て居たが、この日本でそれらを使うには、
かなり政治的なリスクが伴うと言う意見が体勢を占め、
お流れに成ってしまっていた。
実際に遺伝子強化された人間と戦って居る【ABBA】の者達でさえ、
このままでは、遺伝子強化人間の大軍により【ABBA】は壊滅する
未来しか描けてい無かったにも関わらず、今だにそれ等の兵器を使用する事を
躊躇う等と言う、そんな甘っちょろい寝言を述べて居たのだ。
こんな事では日本国民達の平和ボケをとやかく言う資格も無いだろう、
そう大宮基地司令官 杉山 元史も思っていた。
工作員の防御力を高めるスーツ系の量産には、まだ時間が必要だと
言う事が再認識されると、現状最も早期な有効手段としては
全アサルトライフルへの擲弾発射器の取り付け位しか無いと結論が出ていた、
これでは、次に敵の襲撃が起これば間違いなく基地は落とされる事に成る。
こんな結論に達していたのだ、今出来る事は敵に襲われたら
如何に脱出を迅速に出来るか? また何処へ逃げるのか? 等
とてもじゃ無いが、何の為に【ABBA】が存在してるのか?
ここまで追い詰められた段階で、まだルールにより全力を出さない、
出せ無いと言う、日本国民を助ける事が出来ない存在に成り下がり、
その存在理由が無く成ってしまった【ABBA】も、
非常時と平時の区別が出来ない日本人の特徴の為に、
持てる力を全て使い国民を守ると言う【原点】まで忘れ、あれこれと人間が考え出した
良識や、ルールを守ろうとする余り、何やってんの?
何の為に【ABBA】に入って戦ってたの?
自分達でも何の為にこんな事してるのか分からなく成ってしまって居たのだ。
やらなければいけない事を放棄してしまった、この時点で
【ABBA】や日本の滅びは近くやって来る事に成るのかも知れないと、
先が見えて居た者達も多く居たのだ。
(9月9日9時12分)
仙台基地への強襲攻撃を呆気ない程、簡単に成し遂げた此方は、
新潟市に作られた、遺伝子強化人間量産基地の一つに、
【司懿】特別監察官が、戻って来ていた
強化人間達のデータ化された戦績表を研究員の一人、三宅から
話を聞かされ、説明を受けている所だったのだ。
「特別監察官、今回の戦闘では獣化人間の被害は21.7%に留まりました、
当初見込まれていた被害想定数値28.7%を上回り、かなり良い数値を
達成出来ました、この結果に伴い、次の戦闘も直ぐに行う事が出来ます。」
「それは素晴らしい、良くやってくれた三宅博士。」
「いえ、これだけの数を揃えられた事が勝敗を有利に導いたのです、
決して、遺伝子強化人間の性能だけではこの結果は得られませんでした。」
「そうだな博士、この勢いを持って更なる拡張を推し進める、
三宅博士等のグループも更なる独裁党への貢献を望もう。」
「勿論でございます、私達の社長である海原からも
重々話を聞かされております、私達の今やるべき事は、
量産化安定の為、遺伝子強化剤投与による死亡率の低下、
これを少しでも改善させる為に尽力しております。」
「明確にやるべき事が分かって居るのならそれで良い。」
「では私は仕事に戻らせて頂きます。」
そう言うと三宅博士は、一礼して部屋を後にした。
その場に残った【司懿特別監察官】は、背後に潜む
何の言葉も発しないカオルに向き直り、
「では私達は、次のターゲット【ABBA】呉基地がある
中国地方に近い姫路工場へと向かおう。」
そう言うと、関西の遺伝子強化人間量産工場とも言うべき
姫路に作られた工場へと二人は移動する事に成った様だ。
(2025年9月12日)
日本は外から中国からの圧力を受け、
内からは、自国民を売り渡す売国奴が多数出現してしまい民族滅亡までの
カウントダウンが点滅し始めていたのだが、相変わらずマスコミによる
情報操作(都合の良い情報しか国民には与えない)と言う、
何の為に存在してるのか分からない様な行いを繰り返して居た為、
日本国民は未だに、普段通りの日常を装っていたのだが、
一部、流石に今の日本はヤバイと気が付いて諸外国に避難し始めた者達も
出始めていたのだ、そんな中、自分と家族だけで逃げる者達の行動は早かったが、
一部には、知り合いの者達も逃がしてやりたいと思う思慮深い者達も居たのだ。
そんな一部の者達の中に久遠洋子の叔母、葛城美智子も居た、 この人は、元は京都の老舗着物店を代々経営して居た父から経営を譲り受け、
着物店を受け継ぎ経営していたのだが、
その伸びしろに限界を感じ、美術、芸術系ソフトウェア会社を
立ち上げると、それらの会社の良い所をミックスさせ、
新しく着やすい着物を作り出し大成功を治め、
現在ではグループ企業合わせ従業員5000名を超える大規模な会社の
筆頭株主兼社長に成って居た、そんな彼女だったが、
オランダに居る姪の久遠洋子から日本で行われている、遺伝子強化された怪物達の話や、
もう今の日本はとても危険な状況なので、直ぐにでも避難して欲しいとの
願いの電話を何度も受け、他の者達よりかは、
この日本の危ない状況を良く理解して居たのだ。
その為、先ずは従業員達の避難先の事を考え、戦略を練っていたのだ。
既にカナダのバンクーバー、マレーシアのクアラルンプール、
フランスのマルセイユに作った会社の規模を拡張させ、
そこへ家族共々行くと言う従業員には率先して日本を出立させ避難させている、
従業員達には、今の危ない日本の状況の事を、何度となく話し聞かせて居たので
結構な数の者達が手を挙げ移動していたのだが、それでも
日本が良い、日本に残ると言う者達も居たので、そう言う人達の事は
無理強いはせずに、放置する事にしていた。
それでも一応、会社の倉庫に地下シェルターを何カ所か造り、
一ヶ月分の食料や水も確保はして居たので
何かあったら其処へ逃げ込む事を伝えてはある、そんな中、事件が起こる事に。
此処は大阪船場の問屋街に作られた葛城美智子所有の高層ビルだ、
今は、昼の12時ちょっと回った所だったので、このビルに仕事に
来て居る者達の多くが、お昼の食事を取りに3階にある食堂へとやって来て居た、
そこへ突然、丸朝薬品所属の遺伝子研究者達により作られた
super兵士と呼ばれる10名の兵士がアサルトライフルを携帯し入って来たのだ、
ビルの外には、乗り付けて来たバンボディトラック以外にも
トレーラー2台が準備され、待たされていた、何をする為かと言えば、
突然入って来たsuper兵士達は、獣化人間とは違い命令された事には
従順に従い、その仕事を達成する為に効率よく思考し動く事が出来る、
完璧戦士の様な者達だ、そいつ等は、
命令された事を淡々と実行に移す事に成る、
人が大勢集まるお昼の食堂に入ると、先ずは近くに居た者達に銃口を突き付け、
数名を射殺したのだ!
それを間近で見た者達は恐怖に腰を抜かして地べたにへたり込む有様に!
それ以外の者達は、弾を撃った音に反応して、我先に後ろへと逃げようとしたのだが、
入り口付近には兵士が配置されて居た為に何処にも逃げ場が無く、
食堂内をウロチョロするだけと成っていた、
ただ音だけ聞いた者達は、何が起こったのかも分からなかったのだが、
逃げ惑う者達に吊られ、同じ様な行動をする事に・・
だが、直ぐに、何が起きたのか理解する事に成ったのだ。
super兵士の一人が、予め命令された言葉を口に出し始めた。
「お前達、静かにし、我々に同行すれば、この場で死ぬ事は無い。」
それだけ言うと、食堂に居た200名近くの者達を一斉に
外に待たせてあるトレーラーに誘導し始める。
こんな状態の所。食堂に入り損ねた者達がおかしな奴等が銃を所持して
食堂に居た人達に何かしてる事を、警察に通報してたのだ。
しばらくすると、通報を受けた大阪府警のパトカーがサイレンを鳴らして、
此方にやって来る音が、連れ去られそうに成って居る者達にも聞えて来て居た、
その民間人の人達は、パトカーのサイレン音を聞くと安堵の溜息を付き、
「やった警察官が来てくれたぞ!」
等と、もう助かったかの様に言葉に出す物も居た、だが
大声を出した者に対して、super兵士は何の躊躇も無く、ただ引き金を引いたのだ。
ババババ!
その者の体からドクドクドクと血が流れ出して倒れてしまった。
それを目の当たりにした人達は、騒ぎ出したのだが、
super兵士が空に向け発砲すると、恐怖に震えながらも大人しく成り、
またトレーラーに向け進み始める事に・・
サイレンを鳴らしやって来たパトカーを
外で待ち受けていたsuper兵士が狙撃を始めると、
やって来た早々から、パトカーの中で額を撃ち抜かれしまったのだ。
次から次にやって来たのだが、サイレンを鳴らしていた為に余計に
super兵士達には来る事が分かりやすく、皆カモられてしまったのだ。
10台以上のパトカーがやって来たのだが、
何もしない間に死体にされてしまったのだ、
無線からからは何が起こったんだ? との本部からの
通信が入って居たのだが、誰も返事せずただ、何が? 何が?
との 無線が入って来るだけと成って居た。
ほぼ無抵抗な状態のまま、こんな真昼間に堂々と200名を超える人達が拉致され、
姫路に作られた遺伝子強化人間、量産化工場へと運び込まれる事に成ってしまったのだ。
捕食者である中国独裁党の者達は、自分達を止めれる者が居無く成った事により
人が集まる日本の都市を中心に彼方此方で、大量の人間狩りを
大っぴらに荒々しくやり始めたのだ。
そんな状態にも関わらず、【ABBA】主要基地に居る工作員達は、
今は、自分達の基地を守るだけで精一杯に成ってしまっていたのだ。
仙台基地に続き呉基地も壊滅させられ、反撃するにも
パワーアシストスーツの量産が追い付かずに十分な戦力が整わない為、
無駄に工作員を死なせず今は力を蓄えて措けと言う
本部からの指示通りに動く事はしなかったのだ、
多くの工作員達は、歯ぎしりをしながら待つだけと成って居た。
葛城美智子の方も、自分が所有する高層ビルで起った、
自分の会社の社員達の大量拉致事件を知り、自分の甘さが招いた結果だと
ショックを受け、直ぐに行動を起こす事に、まずは自分の家族の
移住先を確保、次に親戚、知人の場、社員達の避難場所等を、
今、自分が在籍して居る東京に作った会社の者達を使い、
一時仕事を後回しにさせ、大至急避難場所の確保を急がせたのだ。
(9月20日)
此処は、JR船橋駅近くにあるドクの診療所が入ったボロい雑居ビルの一室だ、
ここには、夜の店が多く入って居たので22時を過ぎてからも、
カラオケ等の音が診療所にも良く響いて来るのだが、
少し前からその音がしなく成って居たのだ、その事に最初に気付いたのは、
三上達と別れてから、診療所に居候して居る
元【ABBA】大宮支部の隊長格として工作活動を行って居た野口だった。
この男は宮城県富谷市にある丸朝薬品研究所調査の折に摑まり
遺伝子強化実験に使用され生き残った被験者の一人だ、
そんな中、他とは別格の能力を示した為【稀種】と認定され、
工作員達から研究所を守る為の兵士として活用されていたのだ、
その間、多くのABBA工作員を殺害していたのだが、
その時の記憶を保持して居た為、戻る事を躊躇い
今は、殺し合いの中で偶然知り合った三上の口利きで
ドクのボディガードをしながら過ごしていた。
その野口が、ボロビルの様子が何かおかしいと気付くと、
直ぐに行動に移したのだ、大好きな焼酎を飲みながら、
テレビを見て居たドクの部屋に入ると、ドクに。
「ドクさん、周囲の様子がおかしい、
こりゃあただ事ではありませんよ、
何時でも逃げる準備をして居て下さい。」
そう声を掛けると、診療所の外へと出て行った。
焼酎を何杯も飲んで居たドクは、
「何じゃ、何事じゃ、人が気持ち良く酒をかっ食らってるってのに邪魔する奴は。」
そんな文句を言いつつ、何の曇りもない言葉を掛けられたドクは、
言われた通り、適当に必要な物を鞄に詰め込み
何時でも移動出来る準備をして措く為、動き始めた。
野口は、診療所の忘れ物に置いてあったバットを片手に持つと、
音が聞えなくなった上の階にあるラウンジへとエレベーターに乗り移動したのだ、
音のしないラウンジの玄関ドアをそっと開き、ゆっくりと中を見たのだ、
すると、中で変な音がするのが聞えて来た、まるで何かを食ってる様な
音だったからだ、見ると人間の子供程度の大きさがある毛むくじゃらな
何かが、人間を食らって居たのだ、一瞬、獣化人間か?
と野口は考えたが、周囲を見ると一匹だけでは無く、
5体居る事を発見、獣化人間を獲物にしていた野口にして見ると
久し振りの獲物に少し興奮してる事が自分で感じられ。
「おいおい、もうあの頃の俺とは違うんだぜ、
もっと理性的に殺してやろうじゃないか。」
そんな独り言を述べると、勢い良く手に持ったバットで
巨大化したネズミの脳天を叩き割って見せたのだ、
するとそれに反応を見せた、残りのネズミ達が一斉に、
野口に襲い掛かって来た! 野口は戦いは久々だったが、
軽くバットを振ると残りの巨大ネズミ達の脳天を悉く叩き割り
動かぬ巨大ネズミにしてやる事に、だが、頭を叩き割られた筈のネズミ達の
肉体は、まだヒクヒクと動きを止めず、まるで体だけでも生きて居られる
様な状態だったのだ、そんな状態を野口が暫く見て居ると、
恐るべき事に、この死体の一部分が別個体として死骸からピョンと飛び出すと
小さなネズミの形に肉体を作り始めたのだ、更に次々と、大型のネズミの体から
外に飛びたす肉傀が、小さなネズミの形へと変形し、
また活動を再開させ始めたのだ、
見て居た野口は、その毛も生えて無い小さなネズミに向け
バットを振るい叩き潰し始めたのだが、凄い勢いで
ピョン ピョン出て来てしまい、あっと言う間に何処かへ逃げてしまう為
とても全部は潰せ無く成ってしまっていた、
だが潰せるだけは潰した野口は、
「なんじゃありゃあ、気味が悪いネズミだったのう!」
「しかし不味いな、あんなのを外に蔓延らせてしまったら
一体どうなるのか? 見当も付か無い事に成っちまうぞ。」
取りあえず潰せるだけの個体は始末した野口は、
他の階の店もこんな状態なのかと考えたのだが、
先ずは三上に言われたドクの護衛を優先する事に決め、下の階へ戻って行った。
最後まで読んで下さり ありがとうございます、
引き続き、出すのが遅く成りますが、また見かけたら読んでみてください。




