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明日を憂う事なかれ  作者: 不可思議
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RISING SUN

もうちょと何とかならんのかと日本の事を想いつつ、

ファンタジーを書いてみます。

時は西暦2025年2月、現在の日本国にはもう後が無かった、以前から不審な動きをしていたロシア軍の動きを

観察していた在日アメリカ軍と自衛隊情報部からの度重なる忠告を日本政府が無視し続け、対策をして来なかった結果、今が領土拡大のチャンスと見たロシア軍により強襲を受け北海道はロシア軍に不法占拠、時を同じく動いた中国軍に呆気なく沖縄までもが陥落させられてしまったのだ、何故この様な事態に陥ったかと言と、


原因は複数あったのだが、一番の原因は平和ボケし過ぎた国民の多くが自分達の国を『守る』と言う

当たり前にある筈だと思っていた意識の欠如だろう、誰かが何とかしてくれるだろう、アメリカが守ってくれるだろう、自衛隊は何してるんだ、政治家は何してるんだ! 

等々、平和を維持する為には『攻撃兵器を持たず持ち込ませず作らせず』の

スローガンの元、決して多くない左よりの者達が一部マスコミと連携し

多くの国民の無関心に付け込み、(ことごと)く日本を守ろうとする行い、

{例、憲法改正、自衛隊の行動制限、技術流失阻止する為の対策}等々、

敵勢力からの指示の元、工作活動を盛んに行っていたのだろう、

また、その中の多くには、平和を唱えれば何時までも今まで通りの平和を維持出来ると思い込み

多数の日本人を危険に晒している事を知覚出来無い者達の存在も大きかった。



この様な状態の日本に大切な兵士達を無駄に死なせる事は出来ないと、

同盟国アメリカはロシア、中国の動きを察知すると、早々に沖縄から撤退してしまったのだ、

この事に怒った日本国民だったが、長い日々を無駄に過ごし、

批判を受ける事柄を殆ど先延ばしして、しっかりとした対策を行って来なかった付けが

とうとう来てしまったと言う事なのだろう...


     

    

何をしても『遺憾の意』を述べるだけで、一向に反撃して来ない日本の態度に

舐め切ってしまった中華帝国は更に九州、四国、本州をも元々は中国の領土だったと主張し

更なる圧力を仕掛けて来たのだ、そして日本国民には、無条件降伏を促し、

1年以内に中国国籍を取得するか、他国へ出て行くかと言う選択を迫って来ていた。


そんな状況下であったのだが、相変わらず他国並みのスパイ防止法さえ作れない

日本国の国会議員達はと言うと、

与野党の中に居る右寄りの議員の中でも比較的声が大きかった議員達の何名かが、

敵対国等からの活動員や、パヨクと呼ばれる通常では考えられない思考をする者達による

ソーシャルネットへの書き込み、テレビ報道により膨張され捻じ曲げられた情報に踊らされた

一部の者達から【無敵者】と呼ばれる者が出現、その者達により暗殺が頻発、 

残っている議員の多くが縮んでしまい、売国議員達がやりたい放題する状況へと変わってしまい、

領土を侵略して来る敵でさえ、日本は攻撃しては成らないと強く活動し、

日本国は世界の平和国家の見本と成らなければならなく、

最後まで人殺しの為の兵器は使用しては成らない、認めないと

平和憲法と称する憲法を改憲させない為に尽力していたのだ、

だが、その為に今まで暮らして来た土地から離れたくないと

最後まで北海道に残っていた100万を超える道民の多くが、

今、支配権を握ったロシア軍の略奪や慮辱に遭い命を落とす事と成っていた、

そんな状態にもかかわらず、日本の多くの議員は現実を見ず、今だに平和、平和と

耳障りの良い事を口から吐き出し現実を見れない国民からの支持を得ていた。

  

 

そんな中、


自称、中道右派

 中年フリージャーナリスト(43才)

 【三上(ミカミ) (ジン)】が日本国首相に現状の打開策を考えて居るのかと、

 官邸で行われている定例記者会見で首相に質問を投げ掛けようと手を挙げていた、位置取も良く前列だった為か、三上が使命される事と成った。


「では、其所の君。」



「はい、compact通信の三上です首相。」



「質問をどうぞ。」



「首相、北海道と沖縄が占領され、今度は九州、四国、本州まで差し出せと迫って来ている状態で、

日本国民をどう守って行く覚悟なんですか? 具体的に何をしようとして居るのか教えてください。」



「平和を願う日本国としてはだね、中国やロシアに対し、余り刺激を与える行いは出来ないんだよね、

話し合いで解決する為、只今ね全力で取り組んで居る所なのだよ。」 



「そんな、首相、今更話し合いって、一体何を話し合うのですか?

中国からの要求では、日本国民は中国籍を取得するか、本年度中に、

この日本を出て行けと要求して来てるんですよ、そんな呑気な事で良いのですか?  

国民の命と財産をちゃんと守って下さいよ首相!!



「・・・」



「今からでも遅くはありません、せめて自衛隊に攻撃兵器の使用許可を...」 



「それはだね、君~ 、憲法に違反する事に成るから簡単にはいかんのだよ。」



「そんな、首相、もう国民には後が無いんですよ!」



「分かった。分かった、党内で再度『検討』してみよう...」



「な.... 検討って 今頃・・・」



自国がこの様な事態なのに、他人事の様な首相の反応に、つい文句が自然に出てしまった、

すると、警備の一人が前に立ち塞がり、こう言って来た。  


 

「君~ 首相に失礼じゃ無いか!

 下がらないと、官邸への入室許可を取り消しますよ。」


 それは困ると思った三上は..


「わ、分かりましたよ。」


 は~ と溜息を一つ付き外へ出て行く事にした、

 三上(ミカミ)(ジン)がトコトコと外に出て行く後を追って来る者がいたのだ...


学生時代、三上の事務所を手伝いその活動で得た経験により三上に影響され

大学卒業後直、大手マスコミに入社、正式にジャーナリストに成り三上と同じ土俵に立つ事に成った

久遠(クドウ)洋子(ヨウコ)現在24才が小走りに近付いて来て話し掛けて来た。



「三上さ~ん。」   


 後ろから自分の名を呼ぶ若い女性の声に反応し振り返った三上は、


「んっ? 久遠(くどう)じゃないか

 君も来てたのか!」  

       

「はい、最初から居ましたよ、でも三上さんが首相にアタックを仕掛けようとしてましたから

 声は掛けれませんでした。」


「そうか、しかし、久遠(くどう) 新人の君が官邸に出入り出来る何て

 どうやって許可証を得たんだい?」

       

「へへへ♪ それは内緒です。」


「何だってぇ!

 マスコミで働く君が、情報を隠して良いのかぁ、 

 しかも、先輩であるこの俺に対して・・・」


 むっと怖い顔を見せ久遠の顔に近付くと、へへへと笑いながらあっさりと白状して来たのだ。



「わっ 分っかりましたよ三上さん、そんな怖い顔しないで下さい~♪」


「知り合いのツテで○○新聞のモチモチさんの力を借りて手に入れたんです。」


「なにぃ、あの○○新聞のモチモチだとぉ~

 奴は根っからの左巻で親中派、中国からの指令で動いているとも言われている奴だぞ!」


「そんな事どうでも良いじゃないですかぁ、目的は私が官邸に出入り出来る様に成る事だったのですから」

           

「久遠、お前は、モチモチの様な売国ヤローに借りを作っちまっても良いと言うんだな!」


「借りは作ってませんよ、同時に等価交換出来ましたから。」

  

「えっ、一体何と交換したんだ?」


「えへへ、秘密ですよ。」   


 その怪しい答えに、変な想像が浮かんでしまった三上は、

「なっ、まさか...」


 おかしな事を考え、目を合わせなく成った三上に対して久遠が、 


「違いますよ、三上さん、そんな事してませんったら!!!」



「そんな事って何だ久遠、そんな事って言うのは!」



「んっ もう! 変な事したと思われたままではあれなので、白状しちゃいますぅ~!

 モチモチ記者と同年代の叔母に相談したんです、

すると叔母がモチモチ記者の事を調べてくれたんです。」


「それで?」  

 

「はい、モチモチ記者は大変な釣り好きで、その中でもクロマグロを追っていて何時かは重さ300㌔超えの超大物を釣りたいと言う夢があったらしく、その願いが叶うかは分かりませんが、叔母は漁業組合の理事に知り合いが居るらしくその方に頼んで、一本釣り名人、羽生(はぶ)大魚(たいぎょ)さんへの紹介と船を一隻チャータ―すると言う特典を用意してくれたんです、それを交換条件に交渉したんです、

とても喜ばれ直ぐに取引は成立したんです。」       


  

 話を聞いた三上は少しほっとしてから、


「そうか久遠、事情は理解したよ、君が枕営業して無くて安心したぞ。」


 久遠は顔を赤くしながら、「そんな事する筈ありません!!」


「ははは、そんなに怒るな久遠、久し振りに会ったんだから、

 こんな所で立ち話もなんだ、お茶でも飲みに行くか?」    



「はい、 と 言いたいんですが、フリーの三上さんと違って私、縛られてるんです、

 残念だけど仕事にもどらなくっちゃ!」


「分かった、ではまた何処かでな。」 

  

「は~い♪」 


 久遠洋子はそう言うと足早に、建物内へと戻って行った...




ひゅ~ ひゅ~るり~~  とても冷たく吹き付けて来る真冬の風を受けながら、とぼとぼと帰って来た場所は三上が借りている虎ノ門にある広さ60平米程の住みか兼事務所だ、事務所に入ると真っ先に石油ストーブの元へと駆け寄り、早速スイッチを押す三上、しかし プスッ プスッ と一向に火が付かない...


「くそっ、灯油が入って無いじゃ無いか! 」


そう文句を口にしても今は誰も居ない、去年までは久遠(くどう)洋子(ようこ)が、お手伝いさんと言う名目で働いて居たのだが、大学卒業と共にこの事務所も卒業し去って行った、それ以後誰も雇っては居ない、そもそも久遠の場合も偶然通りかかった場で、チンピラに絡まれていた久遠を助けた事が切っ掛けで知り合うと、通っていた大学の帰りにちょくちょくうちの事務所に現れる様に成り、何時の間にか掃除やお茶汲み等を始めてしまったのだ、始めのうちは「何をしても給料等出せないんだぞ!」等と言い聞かせて帰らせようとしていたのだが、他人が勝手に何かをしてくれる事に何とも言えないほのぼのとした気持ちに成ってしまい、つい甘えてしまって居ると、自然にジャーナリストの仕事にも付いて来る様に成っていたのだ、そうこうしているとあっと言う間に4年近くの歳月が過ぎ去っていた、今から考えると久遠が居た頃は、まるでこの事務所に春が来た様に爽やかな風が吹いて居た、しかし今はどんよりとした雰囲気に包まれ、何処もかしこも散らかったままに成り予備の灯油も切らして居ると言う荒れた状態に(おちい)っている・・・                 



冷たい風が吹く寒い外から帰って来たばかりの三上は、今から灯油を買いに行くのもおっくうだと思い、コートを着たままの恰好でソファに寝転ぶと、ソファに置いてあったPADを持ち上げ電源を入れた、何を始めたかと言うと、その道の知り合いに頼んでおいた情報メールを読み始めたのだ...


新着に3通のメールが受信されていた、一通目、壷井(つぼい)からのメールを読み始めた。


「なになに。」


「三上さん、あんたに頼まれていた集会に関して新しく知った事を書いて措くでやんす。

 ✖〇党放置会主要メンバーの一人 敦森(あつもり)衆議院議員の後援会会長を務めている気長(きなが)(おさむ)この人物が今回の集会の主催者をしており、本日公開された出席者名簿の中に中華系マフィアとの関係が深いと噂されている二人の大物議員の名も書かれていたでやんす、

二人の名は、衆議院議員、小林(こばやし)一颯(いっさ)と 衆議院議員 三船(みふね)太蔵(たいぞう)、    

三上さん、これはあっしの勘なんですがね、今夜の集会はかなり胡散臭い匂いを撒き散らしてやんすよ、あっしは引き続き匂う大物議員の片方、三船(みふね)太蔵(たいぞう)を追ってみるでやんす、それと今夜のパーティ会場は目黒区代官山・・・でやんす  

追伸 最初に貰った手数料は使い切ってしまったでやんす、至急追加料を振り込んでくだされ、ヨロシクでやんす!」          


「ほ~ もう隠す必要も無く成ったと言う事なのか?  中華系マフィアと繋がってると噂が広がっている

小林一颯や三船太蔵などを自分の資金集めに堂々と参加させるとは、敦森の奴何を画策している!!


 なんだ、もう前金を使っちまったのか、

壷井の奴、早過ぎだぞ!

 

 此方の懐事情を知らんのだろうなぁ、仕方無い、後で5万程入れておいてやるか...」      

  

 

     

「えっと、2通目のメールは安土(アズチ)からだな。」          



「よお三上、先週お前から頼まれていた九州地方における第一教会の気に成る情報報告だ、 数日前から監督官(ビショップ)級メンバーより上位の者達が一斉に日本から出国しているとの情報を得た、

これは九州地区だけでは無く、日本全国からも同様だそうだ、とうとう奴等も日本に見切りを付けたんだろうよ。」 

       

  

「ふむ、第一教会の奴等、信徒を残して日本を去るのか、流石に中国に占領されちまったら、カルト教団等、ぶっ壊されるだけじゃ済まない、上層部の者なら無条件で死刑にされちまうだろう、しかし清き信仰を謳い信徒を信じさせ金だけはしっかりと巻き上げた挙句、危なく成ったらさっさと上の者達だけでトンズラかぁ、所詮人間のやる事等こんなものだよな、 まぁあの宗教の事はもう放置で良いだろう。」


            

 三上は安土からのメールは眼中に無く成り、次のメールに目をやった、情報屋の一人、枝窪(えくぼ)からのメールだ。


「三上君お久~♪  洋子ちゃん居なく成って寂しいでしょう?

今度私が温めに行ってあげましょうかぁ? えへへ、ジョーダンはさておき、  

 うぉっほん、頼まれていた経団連主催の会合の結果と得た情報を短く纏めておくわね。             

今回、経団連副会長に就任したのは海原(うなばら) 和人(かずと)丸朝薬品工業社長兼会長よ、経歴は東京大学を卒業後、北京にある聖華大学大学院で研究中、遺伝子治療研究開発チーフに抜擢されその過程で博士号を取得、その後、丸朝薬品重慶支部に在籍、あっと言う間に中国支部のTOPに躍進、現在は東京本社の社長兼会長に、異例の大出世の秘密は聖華大学大学院時代に独裁党との間に裏取引があった様だと推測されてるのよ、何故そう言えるのかと言うと、取引が在ったと推測された後の独裁党から海原(うなばら)への支援は誰が見ても驚く程の優遇処置だった様ね、全面支援を得て中国に措ける丸朝薬品のTOPへと押し上げられたと言う訳ね。  

では今回はこの位にしとくわ、風邪引かない様に またね~♪  」

 

     

「成程ねぇ、ここで中国との関係がある丸朝薬品の海原社長をねぇ、しかし今更 中国べったりな者を立てた所で、占領されちまったら結果は同じだろうにな...」


メールを読み終えると、暫くは寒さに耐えながら色々と考えに耽っていたのだが、

足元から冷え込んで来る冷気に耐え切れず負けを認めると。        

    

「しかし寒い、寒すぎる、このまま寝てしまうと事務所の中で凍え死んでしまう危険があるな、 

この状況はやばい、仕方ないから買い出しついでに敦森の集会へ向かうとしよう。」


三上は、ソファから起き上がると、自分の机へと向かい引き出しの中から車のキーを取り出した、辺りを見回し目星を付け、物だらけの中を漁り灯油用20Lポリタンクを二個見付けると、両方の手に抱え外へと出て行く、そのままガレージまで歩いて行き措いてある20年以上前の老車、レガシィGTに乗り込みガソリンスタンドへと向かって走り出したのだ。


車で走り出した三上は、忘れる前にやる事をやって措こうと、灯油とガソリンを入れ、スタンドと一体に成っていたコンビニに入り、資金切れだと訴えて来た情報屋 壷井(つぼい)の口座に5万を振り込んで措いたのだ、適当な飲み物とウインナー スパチキ等を買うと、そのまま今度は目黒で行うと言う敦森議員の集会(パーティ)会場へと向かったのだ...


    

目的地に着いたのだがまだ夕方の5時を少し回った所と早過ぎる様なのでそのまま通り過ぎ、目星を付けていたパーキング場へと向かう、駐車が完了したのでタイマーをセットし仮眠する事に、



ピコン ピコン ピコン ピコン ピコン  

             


「う、う~ん もう20時か」


周囲はもう暗くなっている、窓から差し込んで来る電灯の明かりを頼りに

タイマーに手を掛けスイッチを切った、そのままノビをし、体をほぐす、 

すると丁度のタイニングで壷井(つぼい)からの電話が鳴り始めたのだ!


ジャジャジャジャーン ジャジャジャジャーン.....  ベートーベンの交響曲第5番が成り出したのだ。


     

「もしもし、何か分かったか?」    

   

      

「三上さんも会場に来てるでやんすか?」      

 


「ああ来てるぞ、今は近くのパーキングだ。」



「じゃあ合流するでやんす。」

 壷井はそう言うと、近くにあると言うパーキングへと小走りに移動を開始した。


電話が切れると三上はポケットから7star.rightを一本取り出し火をつけた、 

カシャッ!  

「ふ~」 旨い 暫くの間、窓からの冷たい風を受けながら世間から悪者役に仕立て上げられた【毒煙】を胸いっぱい吸い込み、思いっ切り(くつろ)いでみせた、そうしていると

コンコン!  反対側の窓をコンコンして来る者が現れた、壷井だ。 三上は乗れっとばかりに手でクイクイっとゼスチャーを送る、 

 

ガチャ ガチャとドアを開けようとしているが、どうやら鍵が掛かっている様子で、此方を見てプンプンしている様だ、それを見た三上は吸い終わったタバコを窓からポイッと放ってからドアの鍵を開けたのだ。


「も~ 三上さん相変わらずでやんすねぇ!」

軽く不満を口にしながら壷井(つぼい)が助手席に乗り込んで来た、この男との付き合いはもう10年を超え、 長い付き合いだと言えるだろう、初めて出会ったのは一部の財務官僚が出入りしていると噂されていた銀座のナイトクラブでだ、三上は情報収集の為に来ていたので、官僚っぽい奴を見付けると近付いて何を喋っているのか? 聞き耳を立てる、そんな行いを何度か繰り返して居た、それに気付かれ不審に思われた様で、集まって来たクラブのボディガードなのかゴロツキの様な者達に裏部屋に連れて行かれてしまった、そこに居たのが、コアラの様な丸顔で身長は余り高く無く160㎝弱、体重は90㌔はありそうな小太りなのだが、ただのデブでは無く小さな相撲取りの様に頑丈そうな男が壷井だった、 後で聞いた話だが何故裏部屋に居たかと言うと、此奴も仕事で色々と工作してる所、(いか)つい団体さんがお越しに成り、有無を言わさず

裏部屋へと連れて来られ1時間程閉じ込められて居たと言う、 

最初に暴れ出したのは壷井だった、この男は連れて来られた三上の後ろからぞろぞろ入って来たゴロツキ達に向かって猪の様に突進すると、下からカチ上げて一人目を頭から天上に突き刺してしまったのだ、

天上に突き刺さった仲間を見て慌てるゴロツキ共に三上も強襲、

ローリングソバットを顔面に叩き込み一匹撃破、目を合わせた二人は阿吽の呼吸で意思疎通を図ると、

残りのゴロツキを次々に叩きのめしクラブの外へと脱出したのだ、その後二人は、

三上の(おご)りで飲みに行き互いの情報を得たと言う、

それから一年に数回は仕事を頼む間柄と成っていると言う訳だ。       

                


「ごくろうさんだ壷井、どうだ奴等は? 何か分かったか?」  

       


タバコの煙が少し残っていたのか、大袈裟に手で払う仕草をしながら壷井が。

  


「では追ってた三船の方から、今夜の三船は8人の黒服に守られながら来たんでやす、

その黒服達の様子を調査してたんでやすが、どうやら私服警官の様で、

あっしの見立ては警視庁から派遣されたSPだと思いやすね。」



「何だと、三船は大物議員とは言え、今は閣僚に入って無い、

そんな奴に警視庁からのSPが8人も付くっておかしいな。」 

        

「そうでやんすよ、あっしも最初は普通のボディガードかな? と思い調査してたでやんすが、傍受した話や動きを見て警視庁からのSPだと判断したでやんす。」


壷井はそう言うと、手のひらサイズの暗号解読機器を取り出しSPから傍受した暗号化が解除された通信データを三上に聞かせた、三上は暫く耳に意識を集中しその通信を聞いていた、しばらく後...



「そうだな、奴等は警視庁の奴等だろう。」


そう結論ずけた三上は、  


「ここでコソコソやってても仕方ない、会場に行って見よう。」

三上がそう言って車から降りると、壷井が懐から一枚のチケットを取り出し三上に渡そうと寄って来た。


「三上さん、会場に入るのにチケットが要るでやんす、

一枚はGET出来てるやんすからどうぞ三上さん!」 

そう言い、三上は手渡された、


「んっ、一枚だけか?  お前の分は?」


「へい、一枚だけですぜ、そのチケット3万もしたでやんす

三上さんから追加で送られた資金では一枚買うだけで精一杯だったでやんすよ。」


そう言われた三上は、何も言えないのでこの話をスルー



「分かった、じゃあ俺一人で入って来る、

 壷井は外で様子を見ててくれ。」


「その積りでいたでやんす。」


話も終わり二人は会場の方へ歩いて行った。

 

周囲を薄い月明かりが差し、所々に立つ街灯の明かりに映る木々が見え隠れしている、

この辺りはちょっとリッチな住宅街だ、

今向かって居る会場も旧帝時代の爵位を持った者の住まいだった洋館跡だ、

周囲1.5㎞はあろうかと言う敷地を3m近い高さの塀で囲われている、

出入り口は二カ所あるらしく来る時見た南門と、西門がある、

三上達がやって来たのはガレージから近かった南門の方だ、

ざわざわとまだ小さいが大人数が出す重厚な音が聞えて来た、

門は解放されていて木々に囲われた巨大な建物の窓等から外に放たれる光が

夜の洋館に華やかさを醸し出させて居た、そこへやって来た三上達に注意を向けたのは

一般守衛では無く、怪しい雰囲気のする黒服ガードの一人だ、

そいつが此方に近付いて来る...それに気付いた壷井(つぼい)は自然な態度で、 


「じゃあ、あっしは西門の方へ行って来るでやんす。」 そう言うと、三上から離れ歩いて行く、三上はやって来たガードにチケットを見せると、ガードは一礼し玄関の方へと手で(うなが)した、そのまま南門を通って中へと入って行く...


まるで美術館の様に大きく豪華な玄関から中へ入って行くと、

赤い絨毯が似合う長い廊下が待っていた、所々に高価そうな美術品が飾られて居るのだが、

三上の意識はそれらには向けられず別の方へと向けられて居た、

同じ様に廊下を進んで行く客達に混ざって奥へと進んでいるのだが、

その足取りが何か他と違う違和感を感じさせる足取りだったのだ、

三上はそいつに意識の大半を持って行かれていたのだ。


メイン会場と成っている巨大な部屋に辿り着くと、バニーガール姿の美女が飲み物を運んで来てくれた、

さっとグラスを受け取りその飲み物を口に流し込む、後に残ったチェリーを口に入れ枝をグラスに戻し

飲み終わったグラスを別のバニーガールに渡した、この会場には、ざっと100名程が集まって

ビッフェを楽しみながらザワザワと雑談していた、こうして見ると何事も無い平和なパーティの様だ、  

こんな状態の中でも、三上の意識の大半は、先程見付けた違和感を放つ存在へと向けられていた、

その人物の見た感じと言うと、20代から30代だろう、スリムな女性で背丈はヒール込み170㎝程はある、

着ているドレスは紺色を主体としていてこの様なパーティに出席する女性にしては地味だと言えるだろう、

まるで目立たない様にしてる様だ、そんな観察をしていると、マイクを使った声が聞えてきたのだ、


「皆さま、只今より本日のパーティの主役、✖〇党放置会 衆議院議員 敦森(あつもり)英次(ひでつぐ)

から皆様にご挨拶があります、どうぞそのままの態勢で結構ですので、話は静かにお聞き為さって下さい、

では、敦森議員どうぞ。」   

         

   

「ごほんっ!

皆様、本日はお忙しい中、パーティへの御出席、誠に感謝いたしております、

本日お越し下さった方達には後程【必ず】出席されただけの【満足】をご提供出来ると思っております、

楽しみにしておいて下さい。」

 

「何だ、何だ、その満足ってのは!」


出席者の中からその様な問いが聞えて来た、すると敦森議員が、


「ははは、 それは先に言ってしまうと楽しみが減ると言うものでしょう、

料理等召し上がりながら、少しだけ待って居て下さい。」



ここからの敦森議員の話は何時もの政治の話に切り替わり、取り立てて目新しい話は聞こえなく成っていた、 三上は、軽く料理を取りながら周囲に溶け込み何気なく周りを観察していたのだ、しかし

三上の意識を察知したのか?  先程違和感を感じた紺色のドレスを着た女性が三上の元にやって来て声をかけて来た...



「貴方、先程から私に注意を向けてましたわね。」


三上は、女性の方から探りを入れて来た事にちょっと驚いたが、直ぐに立て直し。 

       


「ええ、バレてしまいましたか?  お美しい方だとつい。」



「あらお上手ね、でも嘘は良く無いわ、貴方から感じた気は、その様な物では無かったわよ、

そうね、例えるならネズミを観察する鷹の様な...」     

   


「ちょっと待って下さい、すると僕は君を鷹の様に狙っていたと。」 



「あら、違うとおっしゃられるのかしら。」

   

    

「食べ物なら、ほらここに幾らでもあるし...」 

三上は、置いてある食べ物の容器を示した。



そんな言い訳は無視して、目の前の女性が言って来た


「あくまで(しら)を切る積りなのね、では彼方にご報告いたしましょう。」


所々に配置されている黒服ガードを指差しそう言ったのだ、

三上は両手を上げ降参の意思表示をしてみせる



「分かった、正直に話そう」


そう言うと、自分はフリーのジャーナリストで、

此処へは記事に成るような情報が無いか探しに来ていると

説明したのだ、 すると



少し怖い顔を見せ、こう話をして来た。


「そう、ジャーナリストだったの、でも今夜は帰った方が良くってよ。」      

     

冷たく、もう帰れとあしらって来たのだ、舐められたのかと思った三上は。


「何だ、帰れだと。」  

 

 

「そう、命が惜しのなら帰りなさい。」

とても冷淡な物言いで、そう告げて来たのだ。



「それは出来ない、此方としても何かを掴まないと死活問題になるのでね。」    


三上がそう言うと、 


「お金の為に命を捨てるなんて愚かな事ね。」   

そんな言葉を残し、その場から去って行った、三上は何だか釈然としない気持ちに成っていたが、

気を取り直し、また周りを観察し始めた、しかし此処に居ると命の危険があるのか? 

何なんだろう、頭の中に長く居座り続ける内容だったのだ...

      



遠くまで周囲を観察しても、先程の女性は見当たらなかった、何処に行ったのだろう?

そんな事を思いながらも、今度は先程迄散った位置に配置されていた黒服ガード達が移動を開始した事に気付いたのだ、

何かあったのだろうか? 

奥の通路へと入って行くのが見えていた。


残された客は、長々と演説する敦森議員の話をまだ聞いている。



「さて、そろそろ皆さんに私からのプレゼントをお配りいたします、

 これから此方のバニーガール達がこの小箱を皆さん御一人、御一人に配りますので、

 どうぞ受け取ってやって下さい、そして私が開けて下さいと言うまでは絶対に箱を開けないで下さい。」       

そう説明すると、6名程のバニーガール達が一斉に小箱を麻で出来た入れ物に乗せ配り始める...



バニーガールの一人が三上の元へもやって来て小箱を手渡した、ソフトボール程の大きさの小箱を

受け取った三上は、中が気に成り耳元に寄せ振ってみる、しかし何の音もしない、

何だろうと思いつつ、開けて良いと言う敦森議員の言葉を待つ事と成っていた。     


全員に配り終わるまでには、しばしの時が掛かっていた、その間、待ちきれずに小箱を開けようとする者も居たが、

周りの者がお互いを監視する状態に成り、怪訝な目で見られた為か、実際に開けるまでには至らなかったのだ、 

そして ようやく全員に配り終わったと言う合図が、

敦森議員達に送られると、勢い良くお立ち台に登った

敦森議員がマイクを握り締め、


「さて皆さん、今夜私共の主催するパーティにお越し下さりもう一度感謝を述べさせてさせて頂きます、

此処にお集まりの皆さんは、勿論私、敦森英次を温かく応援して下さってる方達であると思っております、

皆さんは、現在の日本の状態はお判りいただいておると思っておりますが何も心配する事はありません、

この敦森を応援して下さっている、あなた達は非常に幸運な方達なのです、

さて、皆さんに行き渡ったと思います小箱、今から5つ数えますから0で一斉にお開け下さい、では


5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・0   どうぞお開け下さい。」



ざわつく会場の人達は一斉に小箱を開け始めた、

三上も同じ様に小箱を開けて見た、すると 

香水入れの様な銀色をした筒だ、

それとも携帯吸い殻入れか?」


そこに入ってたのは筒状をした携帯型吸い殻入れの様な代物とチョコレートクッキーだった。

三上は吸い殻入れの様な物を取り出し良く見てみた...


すると、それは吸い殻入れではなかったのだ、確かな事は

分からなかったが、小型の医療機器なのかと思えた。



周りの人達も、何か分からなかったらしく、ざわざわとした話し声が彼方此方から聴こえて来る、

暫くすると敦森議員から説明が開始されたのだ。


「では皆さん、携帯遺伝子検査機、valorを手に取り、どこでも良いので、

この様にして針を出して手に五ミリ程プチっと刺して下さい。」


誰も状況が解らないまま議員の言われる通りの事をしていたのだ、

三上もやってみた、出した針を手に刺すと、携帯吸い殻入れの様な筒がピコン ピコンと光だし、

何か通信を送った様に三上には感じられたのだ。


「皆様、valorを使い皆さま方の遺伝子情報を自動的に然るべき場所へと保存させて頂きました、

採取した遺伝子情報は今後、あなた様方の優遇処置の為に使用されます。」


「どの様な優遇処置なのか?」


「それはですね、今後、此処にお集まり頂けた皆さま方には、

中華帝国統治が始まって以降も現日本国に日本古人として住める権利だと思って貰えれば良いかと。」


どうですか皆さん、外国に出ていかなくても現日本国に居続ける事が出来るのですよ、

もっと嬉しがって下さい。


平然とした態度で中華帝国統治を受け入れた内容の未来を語る

敦森議員に此処に来ていた参加者達も驚きの声を上げている、

一部の者は、


敦森さん、それはちょと早計なのではないのかね?


そうだ、まだ日本は降伏したわけではないのだぞ。


あなたは、日本国国会議員なのだぞ、今、言葉に出して良い事と悪い事ぐらいの判断が出来ないのか!

等と、批判する者達も現れた、敦森はそれを一蹴、笑みを浮かべ、


「全く愚かな方達だ、今、手を打たずして一体何時、手を打つのかね、

日本が降伏してから動いてたんじゃあ、手遅れに成るんですよ皆さん!

皆さんは今夜、この日本で一番早く独裁党幹部、(チン)龍敬(リュウケイ)さんの威光に乗る

切符を手に入れられたのですよ、さあ 喜んでください。」   

 

手を叩き、拍手をしながら独裁党幹部、陳龍敬にマイクを手渡す敦森議員。

敦森と交代してマイクを手にした陳は、中国なまりの発音のする日本語で話を始めたのだ。



「皆さん、敦森先生から紹介された陳龍敬です、どぞよろしく、

早速ですが、皆さんにお願いがあります、今夜ここで在った話は他言無用でお願いしたい、

もし、お話される事があれば、速やかに我々の組織は動きます、ですから、皆さんは何も語らず

ただ普段通り生活して下されば良いのです、

それでは、先程敦森先生から説明があた通りvalorから得た遺伝子情報は此方で保管する事と成ります、

この遺伝子情報は皆さんが中華帝国内で生活するのに今後必要と成ります、何処に移動するにも、

checkが入ります、移動制限ランクと言うシステムがあり、独裁党への貢献度で幾らかはupする事が出来ます、皆さんのランクは、日本人の中から最初に我等に加わった貢献度を加算し、Fランクからと言う事に成ります、このFランクと言うカテゴリーでは、現在居住している各都道府県単位までの自由な移動が保証される事と成ります。」      


まだ、日本が降伏してもいない段階で、この様な話が進み出し、三上も最初は驚きを隠しきれ無かった、

だが。三上は親中派の敦森なら裏でこう言う事をして居るかもしれないと睨んでたので、現在は冷静に周囲を観察していた、だが、この突拍子もない話を聞かされた周囲の者の中から

数名の者達が、行き過ぎた敦森議員の売国振りに!



「何て事を、敦森議員、あんたは私達を売り渡そうとしてるのか!」


「そうだ敦森、今までお前を応援して来たのは我々だぞ、親中派なのは良い、私も中国に友も居る、今後も親交を深めたい、だが、国を売り渡す様な事に加担したくは無いぞ。」


「そうだ、そうだ、

 敦森議員に後援会長の気長(きなが)さんからも、何か言ってやって下さいよ。」


パーティ客の中からそんな声が上がると、後援会会長を務める気長がマイクを取り、



「皆様、今の様な発言はお控えした方が良いです、此方に居る陳さんに失礼に成りますので。」

    

後援会会長が、そんな事を口にし、敦森議員を応援する為に出席していた客に対し威圧的な口調でそう言ったのだ、

すると ますます反発する声が上がり始めた、


その騒ぎを聞き付けたのか、先程奥の通路へと移動してた黒服ガード達がサブマシンガンの様な物を構えやって来て

声を挙げていた者達を威嚇し、

後ろに下がらせその者達だけを引き離したのだ、


そして



バババババババッ ババババババッ   


後ろから激しい音が続けざまに鳴り響いた!



「キャー!!」



「マジか!」


額から汗が流れ出す、三上の心臓はドクドクドクと激しく脈打っていた.....







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