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嫌いな二人

 HRが終わった後にまずこいつらがしたのは俺を妬む男子への牽制だった。

「「私の健太(ちゃん)をアイツ呼び(ですって)?一回死んで(くれる)?」」

 実際に黒いモヤモヤが立ち上っているように見えるほど二人は怒っていた。鬼の形相というのがどういうものなのか一発でわかった。しかもあの二人はこの学校内であれば本当に一人の進退を左右できるほどの力があるのである。怖すぎんだろ。あの妬みや僻みが混じった反応が気に入らなかったらしくこんな感じで圧をかけてまわっていた。いや、実際俺パッとしないというレベルではなくもはやヒエラルキー最下位といっても差し支えない人間なんだけど。おんなじ状況になったら俺も「なんであいつなんかが」ぐらいは言うよ。

 もちろんそんなことを言ってあの二人の理不尽な暴走を止めたりはしない。だって怖いから。高垣さんだけでも頭痛いのに内田さんもとなるともう考えたくない。俺記憶喪失したことあったっけ?もうそういう話だよね。そんな記憶喪失を医者に言われたとか覚えまったくないんだけどな。俺と同姓同名でそっくりさんがいるのか、いつの間にか記憶喪失を喪失していたのかというどちらもあり得ない択である。

 どうやら教室を制圧する作業は終わったらしい。一目散に終わったら向かってくると思っていたが、そのまま廊下に出て行った。頼むから学校を破壊しないでくれよ。


   *


「どうやってわかったの芋虫。」

 私はなぜか健ちゃんを嗅ぎつけてきた芋虫に苛立っていた。今度こそ私と健ちゃんだけのラブワールドが作り上げられると思ったのにまたこの女か。

「脳内ピンクには教えてあげな~い。健太記憶喪失なってから戻ってないみたいだね。」

「えぇ、そうね。かなり強固なプロテクトが掛かっているみたいだわ。"幼馴染の私"が話かけても全く思い出す素振りがないもの。」

 相変わらず一々癪に障る女である。嫌味たっぷりな返答に私も嫌味たっぷりな返答を返す。実際に私の方が一緒に長く居た訳だし思い出す可能性は高い。

「まあ小説とかでは必ず負けるような幼馴染が声かけてもね?私みたいな最近知り合った女の子がかっさらっちゃうのが常だし。私みたいな"新しい女"が話しかればすぐに記憶を思い出すよ。それでさっさとゴールインしちゃおっと」

 私は思わず廊下の壁を思いっきり殴る。やっぱりこの芋虫嫌いだ。生理的に。努力しなくてもすいすいなんでも出来るし、私はあんなに苦労しているのに!あと性格が無理。小悪魔系気取って健ちゃんにベタベタ触りに行く。まだ男と付き合ったこともないくせに。あ、あと胸がデカいのが気に食わない。

「私、やっぱりあなた嫌いだわ」

「私も大っ嫌いだから安心して?負けフラグさん」

 私はもう一度壁を思いっきり殴った。


   *


 おい、廊下からすごい音がしたけど大丈夫か?今朝の様子だと絶対にバチバチやってるよな。八つ当たりなのか余波が当たったのかはわからないがヤバすぎだろあれ。ここで見に行ったらもう二度と恐怖でまともに会話できなそうなので見に行かない。触らぬ神に祟りなし。あいつらよりも俺の大事な友達二人との関係修復の方が大事に決まってる。

「淫夢、御太郎。今朝のことなんだけど……」

「「うるさい、リア充」」

「おい、淫夢、御太郎!!」

 有無を言わさずに席を立たれて逃げられてしまった。まあ陰の者で固めたグループだったから裏切られたと思ってしまうのは無理はない。確かに俺もどちらかに急にこういったことが起きたら同じことを思ってしまうだろう。話を聞いてくれれば俺が可哀そうなことをわかってくれると思うんだけどな。

 いつの間にか二人を追って廊下に出ていたらしい。二人が対面している。一応の対決は終わったらしい。念のため周りを見渡してみるが壁や床に穴が開いている様子はない。なんか高垣さんの手にコンクリの破片っぽいのがついてるしすごい音がしたから絶対穴が開いたと思ったんだけど幸い穴は開いていないようだった。どうせ権力で封殺できるから本人は問題はないんだろうが、俺が嫌だ。毎回毎回通るたびにこれができる女が引っ付いているという事実を認識しないといけないから。

「健ちゃん~~」

「健太~~」

 こうこの状況だけを切り取ればタイプの違う美人を両手に花で最高なんだけどな。一手でも間違えれば粛清されたり、抹殺されたり、物理的に殺されたりしそうで怖い。というかそれができる連中なんだよな。幸い他にしゃべる女子すらいない。この二人のバランスをうまくとることだけ考えていれば嫉妬や恨みで殺されることはない。間違ってもどちらかとお近づきになろうとは考えてはいけないな。片方と付き合うには片方を納得させないといけないからお互いこんなに嫌いなら無理だし、絶対に両方付き合うとかは納得しないだろう。

 って、いつの間にか片手に柔らかな感触が!

「なに、腕掴んでんだよ!当たってる!当たってるよ柔らかいのが!」

「当ててるんだよ健太~」

 うわ~~めっちゃドキドキしたいし、顔を赤らめ恥ずかしながら言っているだろう内田さんに指摘してイチャイチャしたいけど、めっちゃ高垣さんに見られてる~~ひょっとしてあの般若みたいな高垣さん見えてるの俺だけ?なぜか幸せそうにしている内田さんには見えてない感じ?

 結構力を入れて離そうとするが、離してくれない。まずいって、これじゃ俺の腕がなくなるッ!ていうか、お前も怪力キャラなのかよロリ巨乳なのに!

「離して欲しそうだから離してあげなよ内田"さん"」

「チッ」

「もう健太恥ずかしがっちゃって。しょうがないから離してあげるよ。」

 内田さん今舌打ちしなかったか?腹黒タイプなのだろうか。内心何考えてるんだろうな。二人とも怖すぎるだろ。まあなにはともあれなんとか両方に角が立たないようにこの状況を持って行けたらしい。こんなの毎回毎回やってたら心臓持たないぞ。

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