〈第六話〉我が部屋でスイーツタイム
明日から入学式が始まるということで
特待生専用室に案内された。ここで暮らすらしい
特待生専用の部屋はかなり豪華だった。
ダブルベッドに大きな机と4つの椅子。
キッチンや冷蔵庫まで取り揃えられている。
僕、ここで暮らすの?広くない?
本当に1人で住むには勿体ない、ルームメイト
くらい入ればいいのにと、そう思う。
荷物の整理が終わった頃、ノックの音が鳴った。
ドアを開けるとそこには知らない女子が。
「あー、部屋間違えてますよ?」
「いや!そうじゃない!挨拶に来たんだよ!
ほら、ご近所付き合いって大切でしょ?」
引越し先の隣の方に挨拶回りで食べ物やらを上げるあの行事か。
「私の名前はシャープ=アルカナル!
あなたと同じ一般試験からの特待生よ!
本の色は水色、好きな食べ物は・・・」
「あーわかった、わかった。もういいから。
僕の名前はラート=ホーバル。一般特待生だ。
本の色は灰色、よろしくな。」
まぁこんな感じでいいだろう。
「嘘!劣等書!?すごいじゃない!使用魔術は?どうやって戦うの?教えて!」
劣等書とはそんなに物珍しいのだろうか。
まぁ劣等書が特待生に入ってるのが珍しいのか。
「相手の魔法を乗っ取って、攻撃した。」
「なるほど・・・操作系の魔術かな?」
「違う、反魔術の応用だ。まずは相手の術式をしっかりと見て要となる式を探す。」
「な?なるほど?」
「それからその式を書いて相手の術式に上書き
そして暴発しないように波長を合わす。」
「う、うん?(プシュー)」
「それで乗っ取りは成功するからあとは操る。」
簡単だろう、このくらい。
「とりあえずすごいんだね!うん!
なんか中から美味しそうな匂いがするけど・・・」
その一言でハッとする。
ヤバい、お祝い用のケーキ焼いてたんだった。
そしてこれは食事に誘うチャンスなのでは・・・
「ケーキ焼いてるんだ。良かったら食べてかないか?ほら、挨拶ってやつだ。」
「それじゃあ、お言葉に甘えちゃって。」
僕が作っていたのはまだスポンジなので
スポンジを真ん中から切る。
そして冷蔵庫にて冷やしていたクリームを塗る。
そしてスポンジの間と上に苺をトッピングして
「ケーキ出来たぞ。」
「え!ほんと!わぁ!美味しそ!おっきい!」
我ながら上手くできた自信がある。
作ったスイーツを褒められるのは凄く嬉しい。
作った時はまた呼んでやろう。
シャープがヨダレを垂らしながら聞いてくる。
「た、食べていい?」
二つ返事でいいぞと答えると
いただきます、という声と共にケーキの一切れを
自分の皿へと持っていく。
僕もケーキの一切れを自分の皿へ持っていった。
うん、美味しい。
スポンジも上手くできている。ふわふわに仕上がってよかった。
苺もわざわざ高いものを買ってよかった。
甘みの中に程よい酸味が広がり後味もスッキリする。
クリームは・・・まだまだだろうか。
少し硬かった、混ぜる作業を少し少なくしよう。
次は何を作ろうかと考えながら食べていると
シャープが話しかけてきた。
「あのさラート。超美味しい。ありがとう。」
「お粗末さまです。口元にクリーム付いてるぞ。」
そう言いながらシャープの口元を舐めとった。
少し硬直したシャープだったが、顔を真っ赤にして伏せてしまった。
「どうした?喉に詰まったか?」
「バカラート・・・」
「お前よりかは頭が良い自信がある。」
「うっうるさぁい!だまらっしゃい!」
その一晩、シャープはこっちに泊まっていき
話すことがないという気まずい状況になった。