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血戦の始まり

「そ、それは危険でございます、チャーチャ様。どうか陛下と一緒に奥でお待ちください」


 チャーチャというらしいその少女は、どうやら天上帝ではないらしい。


 しかし、「陛下と一緒に」とは、この少女は天上帝に会える身分であるということであろう。何者なのだろうか? 娘か、孫とかだろうか。


『トモエよ、よいではないか。貴様が結界を張りチャーチャにも戦いを見せてやれば』


 どういう構造かは謎だが、部屋に声が響く。


 声を聞く限り男性なその声こそ天上帝のものなのだろう。


 ユメたちはこれでナパジェイでも数少ない天上帝の玉音を聞いた者たちになった。


「陛下! はっ、御意のままに!」


 そう言うが早いがトモエは胸の前で手を組み、なにやら術式のようなものを編み始めた。


「もともと塔を壊さぬために結界は張るつもりでいました。ただし、チャーチャ様の安全を第一に考えるなら最硬の結界にする必要があります。チャーチャ様、扉側際にお寄りください」


「やったー!」


 チャーチャは無邪気にトモエに言われた通り奥の方の扉まで走っていく。


『プロテクション・フィールド!』


 先ほどまでのトモエの声とは違う、壮年の男性の声で魔法が発動された。光のドームが広い空間の内側に作られた。ご丁寧に足元の床にまで結界が張ってある。


「これで戦う前に魔力をかなり消耗してしまった。そなたらはかなり有利になっただろう」


 言うまでもないが、ユメたち七人は全員光のドームの中側にいる。


「来い! 陛下は余興と言ったが、私は久しぶりに全力を出せそうで楽しみなのだ」


 トモエが低い声で言うがいなや、その体に変化が現れた。皮膚が人のそれから爬虫類のものに変わり、顔もドラゴンに変わっていく。


 額からは角が生え、不思議なことに服は破れることなくすうっと消えていき、巨大化した手足の指からは牙を思わせる長い爪が生えていく。


 ユメたちが圧倒されている間にトモエはもう完全にドラゴンへと変貌を遂げていた。


 その様子を見て結界の外のチャーチャは「久しぶりに見た~」とかきゃいきゃいはしゃいでいる。


「フォーメーションA、前衛中衛後衛に分かれて!」


 ユメはさっそく女子力バスターズが最も得意とする三列の隊列を組むよう指示を飛ばした。


 ヒロイ、ヨルが前衛。ユメ、オトメ、そしてアストリットが中衛、スイとハジキが後衛だ。


「まだ迂闊に近づかないで! ドラゴンの一番の武器はブレスよ! 守りを固めるわ!」


 オトメがそれに反応して早速SS級の宝石を飲み込む。


 そして、七人をすっぽり覆い隠すオーラウォールを張る。


「ちょ、ちょっとオトメちゃん!?」


「これくらいしないと彼のブレスは防げませんわ!」


 ユメはそのオーラウォールに被せるようにダークウォールを張った。これで並大抵のブレス攻撃では全員ダメージを受けないはずだ。


 しかし、トモエのブレスの衝撃はユメの予想をはるかに超えていた。


 トモエの口から吐き出された火炎はオトメとユメが張った二重の壁を障壁ごと押し、後衛陣を先ほどトモエが張った光のドームの壁際まで追いやる。


 守ってばかりでは勝てないと思ったか、ヒロイが飛び、ドラゴンの顔目がけて刀で斬りつけた。


 だが、まったく切れないどころか、皮膚で刃が止まっている。トモエは左前脚を振りヒロイを吹き飛ばした。

 そして、そこに火球を放つ。


 だが、ヒロイはその火の塊を刀で真っ二つにした。並大抵の剣速でできることではないが、とにかく彼女はドラゴンが口から放った火球を切り裂いて見せたのだ。


 そこでユメは確信した。


 ヒロイもすでにユメが渡したSS級の宝石を飲んでいる。彼女は竜人だからユメたち人間ほど寿命への影響は小さいかもしれないが……。


 そこにヨルが二刀流でドラゴンの胸辺りを十字に斬りつける。だが、これもカキンと弾かれてしまう。


 いけない!


 防御は回っているが、まるで攻められていない。相手の防御力が高すぎるのだ。

ヒロイが炎を斬った元ネタは漫画「ダイの大冒険」の海波斬習得のシーンです。

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