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未知の民との交渉

間が空いて申し訳ありませんでした。

「なら、『カムイの民』とやらの交渉が終わったら一回帰ってみませんこと? 帝都に」


 ユメが本当に寂しそうにしているように見えたのか、オトメが心配そうに言う。


「……というか、開拓ってどこまでやれば終わりなの?」


 相変わらず銃の整備をしていたハジキも口を開く。


「んー……」


 ユメは唸ってしまった。


 ゾーエをナパジェイの国土にすること。それが北伐の目的。


 アストリットの言う先住民、「カムイの民」とやらに自分たちをナパジェイの民と認めさせれば、後の開拓はもう政府の仕事なのではないだろうか。


 正直、それができる程度にはホクト地方は整った。


 翌日、久しぶりに酔った夜を明け、ユメたち七人はまた北上を始めた。


 そういえばリモーアからの開拓民が馬車を一セット持ってきてくれたので、やや荷台は狭かったが、借りた。


 開拓民を乗せて連れてくる船もだんだん大きくなってゆき、最近では単なる観光にゾーエのスターホール城を訪れる者たちもいるくらいだ。



 とにかく、女子力バスターズ+1はカムイの民たちと出会った、仮名新町あたりを再び訪れた。


 やはり歓迎は強烈な矢の雨だった。


「エアプロテクション!」


 もうどういう対処が来るのか分かっていたのですでに準備していた風の魔法で矢を自分たちの周りから逸らせる。


『私たちはあなたたちと敵対する意思はない! 攻撃をやめてくれ!』


 矢が止むとすぐにアストリットが耳には聞こえないが脳に直接響く声でカムイの民たちに話しかける。


『あなたたちの代表と話がしたい! 我々に攻撃の意思はない!』


 すると、意外なほど素直にカムイの民は矛を収め、念話にて応対してきた。


『そちらにも自然に祝福された民がいたか。これは失礼した。なにせこの頃突然行方不明になる者が増えていてな。こちらとしても警戒していたのだ』


 その行方不明の犯人ってもしかして……。


 と、ユメは思ったが、ややこしくなりそうな上に、こちらから意思を伝えることはできないので黙っておいた。


『自然に祝福された者よ。なぜ、そなたがイムカの民と行動を共にしている? イムカは自然に感謝せず、ただ搾取を続ける者たちだぞ。話次第ではカムイの民ではないそなたとも戦わねばならぬ』


『あなたたちはナパジェイという国の名に聞き覚えはあるか?』


『聞かぬ名だ。海を北に渡ったところにある国はヴィエト、その南に広がる国はネテルシシとして最近統一されたはずだが、ナパジェイなどという国は知らぬ』


『このコンサド島の南にある島国がナパジェイだ。我々はこのコンサド島をナパジェイの国土とする使命を帯びてここに来た』


『それは我らカムイの民にもナパジェイとやらの国民となれと言っているのか?』


『ナパジェイという国は亜人も魔族も、モンスターやアンデッド、ありとあらゆるものを差別しない。無論そなたらカムイの民もだ』


『随分と大層な理想を掲げた国だ。そして、その後ろの者たちがナパジェイとやらからの使者という訳か』


『うむ、代表はユメという。耳慣れはしないだろうが、冒険者と呼ばれる者たちだ』


『冒険者のことは知っている。北方のラフトカムイの民がヴィエトで冒険者を名乗る者に会ったという』


 ユメたちにも脳に会話が入り込んできて助かる。いや、アストリットが意図的にそうしてくれているのだろう。


「アストリット、わたしたちはあなたたちを差別しないから、せめて交易という形で共存できないか提案してみてくれない?」


「わかった」


 アストリットは頷いて、念話で告げた。


『ナパジェイの代表はそなたたちとの共存を望んでいる。物々交換で交易を図りながらお互いの領域を侵さないと約束してもらえないだろうか?』


 そこでカムイの民の代表の男性は豊かなひげを蓄えた顎に手を当て、考え込んだ。


 アストリットはそれ以上念話を送らず、相手の反応を待つ。


 やがて、これまでよりも厳かな雰囲気でカムイの民の代表が念話を送ってくる。

世界観補足


地名の由来

ヴィエト:ソビエト、いわゆる旧ソ連から。

ネテルシシ:中国のこと。大陸の大国。かつて各国が清王朝を「眠れる獅子」として警戒していたことから。

ラフトカムイ:樺太から。大陸にもカムイの民は住んでいるという設定。

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