表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/104

アストリット合流、そして……

最近投稿ペースが落ちてしまい申し訳ありません。

「アストリット!」


「ごめんね、遅くなって。ウッドフォークの種は充分採れたよ」


 会話に入ってきたのは北伐トーナメントの決勝で戦った、あのエルフのアストリットだった。そういえばウッドフォークの種を育てるため数週間遅れてコンサド島に来ると言っていたんだったか。


 顔を合わせるのは一か月ぶりくらいになる。これで、トーナメントで選ばれた北伐メンバーが揃ったわけだ。


 アストリットは変わっていなかった。相変わらず、フード付きマントで姿を隠した格好のままだ。せっかく美少女なんだから顔を晒して歩けばいいのに、とユメは軽い嫉妬と共にそう思う。


「わたしたち六人に、アストリットを加えて七人か。良いわね、北斗七星から取って、ここの地名はホクト。ハジキちゃんの案でいいんじゃない?」


「よっし、今日からここは“ホクト”だ」


「あとは乾杯ができれば完璧なのにな。酒がねえし」


 ヨルはやはり長い間禁酒しているせいで夜になると酒が恋しくなるらしい。


「酒なら森で山ブドウでも採ってきてくれれば醸造してやるが? まずは足で踏みつぶす手間がかかる以上、雑用くんらの足を借りることになるが」


 ツーコンが偉そうに話に割り込む。ガールズトーク中だというのに空気の読めない奴だ。


 しかし、その内容はヨルには聞き逃せないものだったようで、


「なに? てめえ酒が作れるのかよ!?」


「ちょうどよい木の実があればね。木の実を発酵させて酒を作るくらい、森の猿でも行うことだ。君たちは本当に無学だね、酒の製法も知らないとは」


 馬鹿にされたにもかかわらず、ヨルはその話に食いついて「是非作ってくれ」とせがんだ。


 ツーコンは「すでに確立されている製法を試すなど時間の無駄だ」などと言って渋ったが、今後雑用に薬草採取をさせない、ネズミも持ってきてやらない、などと脅すとイヤイヤながら酒の作り方を雑用たちに教えることにしたようだ。


「山ブドウなどの木の実がうまく森で採れればの話だがね。酵母は吾輩が何とかしよう。それよりそんなに酒が欲しければ耕作でも始めて米から作ったらどうかね」


「耕作……」


 ユメが呟くと、アストリットが反応した。


「それなら、本島からコメの種籾でも持ってこさせる? リモーアまで戻れば可能よ」


「おおっ、アストリット! 来たばっかりで申し訳ないけど、ひとっ走り頼めるか?」


 ヒロイがそれを聞いて思いついたように言う。


「それならスターホール城の周りに田んぼを作らねえとな。人手がいくらあっても足りねえぜ。開拓って奴は」


「そろそろ本土から移民を募るべきね。最近雑用たちも働かせすぎだわ」


 ユメもうなづき、本格的にゾーエフロンティア化の計画を立て始めた。


 それから立て続けに話は進み、アストリットが持ち帰った米を育てるための農民、ユメたちを中心としたホクトから北へ開拓を進める民、に分かれ、コンサド島のホクト地方は急速に発展していった。


 道を作り、開けた土地に村を作り、田を耕し、人を呼びに、ときに本島に戻り……。


 そして、また数か月の時が流れた。



 とんとん拍子に開拓が進むかと思われた頃、ユメたち女子力バスターズはとうとう、本当の脅威に出くわした。


 ユメたちがまだ「新町」と呼んでいた大きな平野部を開拓していた時のことだった。


「**********、****、イムカ」


 急に耳慣れない言語で話す民族に出くわしたのである。


 そして、ユメたちを「イムカ」と呼び、攻撃してきた。


 どういう意味かは知らないものの「よそ者」とかそんな意味だろう。


 彼らの主な武器は石の矢じりのついた弓や投げ槍で、何を言っているかは分からないが、とにかく「ここから出ていけ」と言っているのだけは分かった。


 ユメたちは戦闘では防御に徹し、まずはこれ以上の開拓を止めた。先住民たちを殺してしまっては共存の余地がなくなる。


「退くのよ、スターホール城まで退いて考えをまとめるの!」


「しょうがねえ、リーダーがそういうならよ」


 せっかく本島から呼び寄せた開拓メンバーも引き連れて戻るのは癪だったが、勢いに任せて開拓を進め、島の先住民を丸ごと敵に回してしまってはナパジェイの国益にならない。


 それに、時折野生化したヒグマやオオカミの群れを退治したことはあったが、彼らはモンスター化しているのか、死ぬと宝石を残す。だから、殺すことにも意義があったのだ。


 先程襲ってきたのは紛れもない、人間だ。モンスターではない。


 今いるメンバーは、ユメ、ヒロイ、ヨル、そして本島から呼んだ開拓民数十人だ。


 ユメたち三人はそう簡単には倒されはしないだろうが開拓民はそうはいくまい。


 仕方なく三人は開拓民を守りながらまずはツーコンの洋館まで撤退した。

世界観補足説明

ホクト地方:北海道には函館の近くに市町村合併でできた「北斗市」が実在します。ユメたちが北上して開拓しているあたりは札幌辺りを想定して書いています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ