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表彰式

『さて、ゾーエ遠征パーティ選考試合は完了しました! 後はどのパーティがゾーエへ北伐パーティに選ばれるかですが! 解説のトモエさん、予想はどうでしょうか?』


『実況さん、ここからは“解説のトモエさん”じゃないわ。ナパジェイ帝国魔法顧問長、トモエよ。魔法顧問長の名においてゾーエ北伐パーティを任命します』


 トモエは急に真面目な言葉使いになると、話を始めた。


『…………』


 当のトモエから「黙れないのか」とかと言われていたハイテンションな実況もさすがに口を挟まない。


『まず、表彰式を始めます。ゾーエ北伐パーティ選考試合、三位はゴブリンヒーローズ、代表者、前へ』


 試合会場で全員並ばされていたユメたち出場者は困惑した。


 ゴブリンヒーローズの代表こと、ゴブリンキングのカエサルは他のメンバーに頤を立てることもせず、意気揚々と前へ歩み出た。


 そして、表彰台の三位の台に複雑そうな顔でのぼる。


『ゴブリンヒーローズ、選手全員に太刀級の冒険者の称号を与えるとともに、帝都キョトーの防衛の任を与えます』


 ぎおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!


 カエサルが銅のトロフィーを受け取ると観客席から、ゴブリンのものと思しき大きな歓声が上がる。それはそうだろう。最弱モンスターであるゴブリンがここまでの健闘を見せたのだ。


 しかし、帝都キョトー防衛の任を任されたということはゾーエへの北伐パーティからは外されたということである。


 それでカエサルは悔しがるでも、表情を変えるでもなかった。


 元々、彼の、彼らの目的は「ゴブリンでもやればできるんだぞ」というところを国中にアピールすることだったのだろう。

 そして、それは大成功に終わったと思える。


『さて、続く二位はアストリット選手、表彰台へどうぞ』


 腕の傷による動揺からはとっくに落ち着いたらしいアストリットが表彰台の二位の台に乗る。


『アストリット選手に、大太刀級の冒険者の称号を与えるとともに、ゾーエへの北伐の任を与えます。必ずや陛下の御為、成果を上げて帝都に戻ってくることを期待するわ』


 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!


 アストリットが銀のトロフィーを受け取り、そしてゾーエ北伐メンバーに選ばれると、観客席からまた大きな歓声が上がる。


 そして、


「頑張って来いよー」


「死ぬなよー!」


 などの、ファンからの熱いメッセージが投げかけられた。


『そして、最後にゾーエ北伐パーティ選考試合、優勝パーティは女子力バスターズです! 代表者、前へ!』


 ユメは一瞬当惑した。


 果たして、女子力バスターズの代表者として自分が前へ出ていいものだろうか。


 すると、ヒロイとヨルがポンとユメの両肩を叩いた。そして、ドン!とスイがユメの背中を両手で押す。


 オトメが微笑んでいる、ハジキまでもわずかに微笑んでいた。


 どうやら、ユメが女子力バスターズの代表で誰も文句はないらしい。


 緊張しながらも、前へと歩いて行く。


 そして、やや高い表彰台の一位の台に登る。一足では登れなかったので、なんとカエサルが一歩どき、足場を譲ってくれた。なんとできたゴブリンだろう。


『女子力バスターズの全員に大太刀級の冒険者の称号を与えるとともに、ゾーエへの北伐の任を与えます。陛下の御為、ゾーエの民をナパジェイの民と認めさせること、そしてゾーエの地をナパジェイの領土にして帰ってくることを命じます』


 うわあああああああああああああああああああっ!


 ユメが金のトロフィーを受けとった瞬間、今までの歓声よりも一際大きな声が観客席から上がる。


 これで、後には引けなくなった。誰のためでもなく、自分たちのために、ゾーエの地を踏み、ナパジェイの国土とせねば、帰るに帰れない。


 それに、ナパジェイの普通の冒険者としては最大級の大太刀級の名誉までもらってしまった。


 これ以上上を目指そうとすれば、ゾーエへの北伐を成し、妖刀級か名刀級を目指すしかなくなってしまったのだ。


 いや、そこまでの栄誉が与えられるのはトモエを討ち、天上帝への謁見を果たした後か。


 自分たちは、間違いなくこの場で、ナパジェイで最高の冒険者になったのだ。

世界観補足説明


この世界でもオリンピックのように3位は銅、2位は銀、1位は金というイメージが根付いています。

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