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邂逅

この次もまた間が空くと思います。続きを待っている方がいらっしゃればすみません。

 アストリットはこちらをちらりと見ると特に声をかけるでもなく、そそくさと逃げるように立ち去ろうとした。


 これは勝利への手がかりを引き出す好機かもしれない。


「待ちなさいよ、これから戦う者同士、『いい試合をしましょう』くらいの挨拶があってもいいんじゃないかしら?」


 ユメは少しでもいいからこのエルフの少女から何か情報を引き出したかった。


 すると、アストリットは微かにほほ笑んだのち、こちらに握手を求めてきた。


「準決勝、見事だったわ。そうね、決勝ではいい試合をしましょう」


 意外なほど素直にこちらの健闘を称え、握手してきた。


 ユメは握手したまま、ずっと疑問だったことを投げかける。


「大陸出身ってことだけど、どうしてナパジェイに? あなたほどの腕なら大陸のどこでも冒険者としてやっていけるんじゃないの?」


「答える義理はないわ。もし一緒に北伐することになったら道すがらにでも話してあげる」


「そ、そうね。一緒に戦うパートナーになる可能性もあるのよね。対戦相手としか思ってなかったわ」


「戦うまでは、お互い、手の内を晒すような真似は避けましょう、ね」


 そう言って、アストリットは随分長い間だった握手をほどいた。


 その口元には余裕か親しみか、ずっと微笑が浮かべられている。


 ハジキのように、他者と交わるのが嫌いなタイプかと思っていたが、意外とそうでもないらしい。


『それではー、休憩を終わります! 皆様大変お待たせしました! チーム・ゴブリンヒーローズVSチーム・ラストアライブの三位決定戦をそろそろ始めたいと思います!! 両者前へ!』


 どうやら、アストリットと挨拶している間に、三位決定戦が始まろうとしているようだ。


 ユメとしてはどちらが勝っても良かった。それより、フードで素顔を隠したアストリットの持ち物に宝石袋のようなものや腰のナイフ以外の武装が無いかなどをよく観察しておく方が大事だ。


 結論から言うと、よく分からなかった。マントで覆われた体躯にもさっき見えたように草色の普通の服を着ている。

 宝石袋を分かりやすい箇所に持っていないのは明らかだった。


 アストリットが奥へ立ち去った後、入れ替わりで控え室に順にヒロイ、ヨル、オトメ、ハジキ、スイが入ってきた。


 アストリットとすれ違う際にヒロイかヨル辺りが喧嘩を吹っ掛けたりしないか心配だったが、そういうこともなく無事に女子力バスターズ六人は合流した。


 さすがに全員アストリットが通ると驚いて目を見開いていたが。


 そこで意を決し、ユメは対アストリット戦の作戦を皆に説明する。


「――――」


「――――」


「――――」


 正直、自信はない。

 仲間たちも、ユメが考えたやり方で本当に大丈夫なのか、と口には出さないまでも不安を感じているのが素振りで分かった。


 しかし、この作戦で彼女のウッドフォークによる物量攻撃を防ぎきれなければ、こちらの負けだ。

そのときは、素直に準優勝という結果を受け入れ、運よくゾーエ北伐に選んでもらえることを祈るだけである。


 ☆


『決まりましたーーーっ! 接戦でしたが、三位決定戦はゴブリンヒーローズの勝利で終わりました! ラストアライブ、アストリット選手との戦いで出し切れなかった実力を見せるかのように粘りました! しかし、先に膝を屈してしまいました!! 解説のトモエさん!?』


『おそらくナパジェイ、いえ大陸すべて含めてさえ、あそこまでのゴブリンのチームはいないでしょうね。ただし、彼らがゾーエへの北伐に向いているかはまた別問題。交渉事は苦手そうだからヘルウォールズあたりと一緒に帝都の防衛に残ってほしいわ』


『おーっと、この試合の目的を忘れかけていました! 私などもう誰がナパジェイで最も強い冒険者なのかを決める大会なのかと!!』


 ハーピーの亜人の実況はあまりに正直に自分が試合に没頭していたことを認めた。

実は小説に出てきていないベテラン冒険者チームもたくさんいるんですが、みんな途中で敗退しています。

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