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初戦開始

ちなみにイニティウムとはラテン語で「最初」って意味です。

 さて、試合前日の様子ばかり描写していても何なので、時間は移り翌日の正午。


 ユメたち「女子力バスターズ」は巨塔一階中央のコロシアム真ん中で歓声を浴びていた。


 今日に限っては一般市民も巨塔の観客席に入れてもらえたようである。


「うおおおおおっ! ユメちゃーーーん! 結婚してくれー!」


「ヒロイちゃーーーん! 俺が勝ったらお付き合いを真剣に!」


「ヨルの姉御―――っ! 俺たちの潤いのためにもカーサォに帰ってきて下せえ!」


「オトメ様! 我ら、オトメ様の勝利を唯一神にお祈りさせて頂きます!」


「ハジキさん! 冷たく見下ろしてください! あんたは俺らの心を射抜いたんだ!」


「スイたーんハァハァ、あうあーえんじぇぇええる! ぃえすろりぃたのぉたぁーちっ!」


 どうやら女子力バスターズを応援する観客どもにはアホしかいないことを確認しつつ、ユメは思考を停止した。


 そして、まるで歓声を浴びていない一回戦目の対戦相手を見やった。


 見たところ、「女子力バスターズ」と同じ六人組のようである。ただし、メンバー全員が人間の男の様だが。


 面子は戦士魔法使いのバランスを取った組み合わせに見えた。


『戦いは敵を視界に入れた瞬間から始まっている』


 これは母も、クリス師匠も教えてくれたことだ。


 まずは敵の戦力の見極め、自軍の状況。それらを正確に把握すること。


 敵を知り、己を知れば百戦危うからず。


 しかし、今のユメの場合、敵の戦力はある程度読めても、自分たちの戦力をまだ把握しきっていない。一緒に修行したスイはともかく、他の四人はどのように成長を遂げたのだろうか。


「さって、アタイは前に出させてもらうぜ。ヨルも一緒にな」


『さて、本日より開催された北伐選考試合、第1回戦は女子力バスターズ対チーム・イニティウム! いずれも物理・魔法のバランスを取れた6人組です!』


 妙にハイテンションなハーピーの亜人の、無論女性の実況者が応援席から自分たちの紹介をしてくれる。年齢は二十台前半くらいだろうか。

 ハーピーは口から超音波を発するだけあって、その亜人の声量もかなりのもののようだ。ただし、手が羽根ではなく普通の人間と同じになっており、背中に退化した羽がある。


 そしてどうやら、相手のチーム名はイニティウムというらしい。


 実況が続ける。


『解説のトモエさん、今回のカード、如何に見ますでしょうか?』


『うーん、そうねえ。ひいき目なしで言っても女の子たちの方が有利じゃないかしらあ』


 そこでユメはズッコケかける。

 何やってるんだあのアホドラゴン。


『女子力バスターズの方は今のキョトーの冒険者たちの中でも伸び幅だけで言えばトップと言われているわ。対するイニティウムの方は前から堅実に安全策を取ることで有名な冒険者グループ。この戦い、機先を制した方が勝つわよ』


 そんな実況は気にせず、ヒロイがのっしのっしとヨルを連れ立って敵がひと固まりになっている十メートル手前くらいまで歩いて行く。


「敵の攻撃はアタイは受ける、ヨルは避ける。お前ら後衛まで届かしゃしねえよ」

「でも待って、念のために二人ともに補助魔法を。リーンフォース二人がけ!」


 ユメは白の宝石を二個取り出し光の祝福で身体能力を上げる魔法をヒロイとヨルにかけた。


「ついでに武器に雷の魔法の属性を、サンダー・エンチャント……」


 そこにユメの肩を叩く手が一つ。

 ハジキだった。


「……それ、私の銃にも頂戴」

「わかった、サンダー・エンチャント3人がけ! これで普通の鉄製の鎧や布の服だとダメージを防げなくなるよ」


「ではわたくしはブレッシング・ソウルを全員に! 神の魂の息吹よ、彼の者たちを守り給え!」


 オトメもユメに続き敵の魔法から味方を守る風を掛けていく。風の様だがこれも光の魔法だ。ユメはこの魔法のおかげで目の前の相手が使うくらいの魔法ならほとんどダメージを受けなくなるようになるのを感じた。


「おい、あいつら試合開始前から補助魔法かけまくってるぜ……」


 相手の六人組はこちらの行動を見ながらひそひそと話している。


 ちょっとやりすぎただろうか。


 魔法で補助を積みまくって、自分たちに有利な状況を作ってから戦うのは冒険者としての常套なのだが、相手はそんなことも知らないほど素人なのだろうか。


 それとも、実戦と試合ではルールが違うのか。


 ともあれ、ここでハーピーの亜人の実況がまた異様なテンションで試合開始を告げる。

 うーむ、敵に回すとあのかしましい超音波も実況に使えば便利と抜擢されたのかあの実況。


「第一試合ぃぃぃぃぃ! かあーーーーいしぃっ!!」


 と、同時にヒロイとヨルは相手の前衛の前にいた。


 いくらリーンフォースで身体能力が上がっているとはいえ、二人の動きの速さは尋常ではなかった。


 特にヒロイは重装備で固めている。にもかかわらず軽装のヨルと変わらない速度で相手の前衛目がけて刀を振るっていた。


 敵の前線は崩れた。


 と、同時にハジキのマスケット銃から発射された弾丸が相手の中衛を襲う。

 服装から判断して、回復と補助役だろう。それなりに武装していたが、さっきユメがかけた雷の魔法のおかげで金属を貫通して麻痺させることに成功したようだ。


 その後の展開は一方的だった。

世界観補足説明


ハーピーの亜人の実況:今後誰からも名前を呼ばれないですが、名を「トーリ」といい、普段は大声で帝都中にお触れを出したりする仕事をしています。名前はまんま鳥からです。なおサガと並ぶ作者のお気に入りの脇役です。

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