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我らの名は……?

今回ネタに走ったせいか他の回より長くなってしまいました。

 サガの台詞に、ユメたちはお互いに顔を見合わせた。


 自分たちはもう、パーティ名を名乗れるほどの段階に来たのだろうか。


「なんだったらあたしがアイデア出してやってもいいにゃ?」


「いえ、結構です」


 サガからの提案をユメは一蹴した。この女のセンスでパーティ名なんかつけてもらったらろくなものにならない予感がする。


「だったら、アタイら六人で案を出し合って、全員が納得する良さそうなのが出たら採用、でいいんじゃねえか?」


 ヒロイが妥当な案を出す。

 まあ、そんなところだろう。


「はいはーい! じゃあ、『スパイスガールズ』!がいいでーす」


 ノンアルコールエールを飲み干して泡で白いおひげを生やしたスイが無邪気に手を上げる。


「却下」


「『キラークイーンズ』にしようぜ。すっげえ強そうだろ」


 酔いが回ってふざけているのかの判断に迷う顔色をしたヨルがニヤリと笑いながらそんなことを言う。


「色々問題だから却下。元ネタのないのにしようよ」


「……『ラブ・デラックス』。あとおつまみ頼んで」


 ぼそりと、ハジキまでもがそんなことを言う。


「だから、『ジョ〇ョ』から離れなさいって! あ、とっつぁん、チーズスティック追加で」


「あいよ」


 亭主が返事する。と、パーティ名の話にも口を挟んでくる。


「お前らはうちの酒場の稼ぎ頭だからな。なんなら、俺が付けてやっても……」


「いいからさっさとおつまみ持って来て」


「さっきから他人のアイデアに文句ばっかりつけやがって、じゃあユメにはいいパーティ名の案があるのかよ」


 ヨルが不機嫌そうにジョッキに残っていたエールを煽ってから言ってくる。


「だって……」


「わたくしは皆さんが決めたパーティ名でいいと思いますわ。正直、ネーミングセンスには自信がありませんもの」


 オトメが遠慮がちにそう告げた。


「まー、なんでもいいから、決まったら教えてにゃ、ばははーい!」


 会計は済ませていたらしいサガが、言って猫の姿に戻って出ていく。

 とはいえ猫化人は猫と人、どっちが本当の姿なのかなんてユメは知らなかったが。


「とにかく、慌てる話でもなし。一旦この件は保留! 打ち上げの続きをやろう」


「異議なし!」


 パーティ名にはこだわりはなかったのか、ヒロイがユメに賛同してくれる。

 そして、ウラカサを討ったことを労うパーティが再開され、夜は更けていくのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ユメは二日酔いにならない程度に呑んだ翌日、数週間前に母に出した手紙の返事が返ってきていないことを思い出していた。


 帝都に着いて、オトメが仲間になった頃に出した手紙にはほんの数日で返事が返ってきた。


 ユメの母は筆まめな人なので、手紙を滞らせることなどあまり考えにくいのだが、同じナパジェイの国内にいるならもうとっくに返事が来ていてもいい頃だ。


 そこで、ユメは昨晩サガが言っていたウラカサが帝都へ行き来する馬車を魔族でないという理由で無差別に襲っているという話を思い出した。しかも、目に付くほど動き出したのは最近だという話も。


 もしかしたら、ユメが出した手紙を乗せた馬車、もしくは母が返事を出してくれた手紙を乗せた馬車が襲われたのかもしれない。それなら返事が来ないことにも辻褄が合う。


 たとえ、母が返事を出すのが遅れていただけだとしても、六人パーティが正式に決まったという一大イベントがあったのでそれを伝えるのはそれほど不自然なことではない。


 パーティ名の相談もしてみよう。


 ユメたち六人でアイデアを出し合っていってもいいパーティ名が決まるとは、昨日の様子を見ていると、思えない。


 そう結論付けると、ユメはあの写本騒動以来久しぶりに手に取る万年筆を握りしめた。


『拝啓 パパ、ママへ


こんにちは。


元気にしていますか?


こちらはとうとう六人パーティを組むことになって、大きな仕事を一つ終えたところです。


その仕事というのが帝都キョトーへ行き来する馬車を襲うという一種のテロリストを退治するというもので、もしかしたら、ママが私に出してくれた手紙も届いていない可能性があるので改めてこうして手紙を出させてもらっています。


そういえば、先日知人から「そろそろパーティ名を名乗ったらどうか」と言われました。


わたし達も帝都では割と有名になってきたらしく、パーティ名が無いと名指しで仕事の依頼をしたりするときも不便なようです。


すでに紹介した人もいますが、もう一度うちのパーティを紹介しておきます。


角なし竜人の女剣士、ヒロイちゃん。

忌み子の二刀流剣士、ヨルちゃん。

唯一神教の神官、オークの亜人、オトメちゃん。


ここまでの三人は以前の手紙に書いたメンバーです。

ここから初めて紹介するメンバーですね。


魔族の銃使い、ハジキちゃん。

最下級魔族に生まれてしまったせいで魔族の親から育児放棄されてしまい、色々あって銃と出会って、銃を撃つ才能を開花させて今ではパーティの頼れる後衛を努めている女の子です。

一旦仮加入でパーティに加わってくれていたのですが、コンプレックスを解消してからは正式メンバーになってくれました。


アンデッドハーフの魔法使い、スイちゃん。

リッチと人間の間に生まれた娘で、両親が帝国の魔法顧問をしているので親の仕事の邪魔にならないように孤児院に入っていたそうです。

メンバー中唯一の未成年で、パーティの可愛いマスコットみたいな存在です。


この五人にわたしを含めた六人のメンバーでパーティを組んでいます。


ただ、パーティ名が決まらないことだけが目下の悩みです。


ユメは元気でやっています。毎日新しい刺激だらけで楽しいです。パパとママも冒険者時代はこんな気持ちで日々を過ごしていたのでしょうか?


では、またお手紙します。

                                                        草々』


ユメは手紙を書き終え、蝋で封をすると、少し出かけてくる旨を亭主に告げた。


そして、キョトーの街からガサキの街への定期便の馬車停へ行き、手紙を渡し、代金の宝石を支払うと馬車の御者に道中気を付けるように言って魅惑の乾酪亭に帰った。

パーティ名の案はみんなジョジョのスタンドからです。ちなみに作者はジョジョの大ファンです。

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