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涙、そして笑顔

正直、もう少し百合っぽく描くつもりだったんですが、女同士の友情ってのものアリですよね。

「お、終わったのかよ、ヒヤヒヤさせやがって」


 まだ回復しきっていないヨルが苦笑し足を引きずりながら言う。


「後はぶっ殺した魔族どもから宝石を回収して……、この、ウラなんとかってボスの死体を持って帰れば終わりだな」


 そこで、ユメは「しくしく……」という泣き声を聞いた。


「……うっ、ううう」


 ハジキだった。

 ウラカサの額から発した、真っ黒だがそれでも眩く輝く宝石を取ると、それを胸に押し当てて、涙を流していた。


 正直、彼女の今の気持ちはまるで推し量れない。

 親を殺してしまった悲しさなのか、やっと復讐を果たせた嬉し涙なのか、それとも、産まれてからずっと使えなかったという闇魔法を使えた喜びなのか。それとも……。


 ぱつりと、ハジキの口から言葉が漏れる。


「……今日から……、ちゃんと仲間だね」


 その言葉に、ユメは思わず立ち上がりハジキを抱きしめていた。ハジキは驚きはしたが、振りほどこうとはしない。


「うん……、うん……、わたしたちは仲間だよ、友達だよ」


「……ありがとう、ユメ、ヒロイ、ヨル、オトメ、スイ……」


 それからしばらく、ハジキはユメを抱きしめ返したまま、泣き続けた。


 誰一人、「早く帰ろう」とは言わなかった。ハジキが泣き止むのをただひたすら待ち続けた。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 事後処理が全て終わり、六人は「魅惑の乾酪亭」に帰ってきた。国から渡された大量の宝石が入った袋をテーブルの真ん中に置いて、六人はジョッキを持った。


 ちなみにウラカサが発現させた大粒のブラックダイヤはハジキに譲ってあげた。彼女はもう二度と闇の魔法を使うことはないかもしれない。それでも、そうするのがいいと思ったのだ。


「それじゃあ、依頼達成と、スイちゃんの加入、ハジキちゃんの正式加入を祝して……」


「おい、待てユメ」


「何よ、ヨルちゃん。今すっごくいいところなんだから水差さないでよ」


「このチビすけ、どさくさに紛れてエールを掲げてやがるぞ」


「なによー、いいじゃない!」


「よくねえ、未成年が。乾杯には混ぜてやるから水にしとけ、水に」


「ヨルお姉ちゃんのケチー! スイだって今回の功績でみんなと同じ脇差級の冒険者になったんだし!」


 そこへ、亭主が苦笑しながら助け舟を出す。


「ヨル、もともとスイが持ってるのはノンアルコールだよ」


「えー、おいたん、これお酒じゃないの?」


「お酒はさすがに成人まで待とうな」


「うちの店が未成人にも酒を出してる、なんて評判が立っちゃ困るんだ」と、笑いながら奥へ引っ込んでいく亭主。


「ぶー」

「……ぷっ」


 その瞬間、噴き出した本人を除いて、五人が呆気にとられた。


「今、ハジキちゃん、笑った……よね?」


「初めて見た……」


「ハジキお姉ちゃん、笑った方が可愛いよ。もっと笑ってよ」


「……機会があれば」


 ハジキはまた元の鉄面皮に戻り、ユメが仕切り直す。


「それじゃ、改めて、依頼達成と、スイちゃんの加入、ハジキちゃんの正式加入を祝して……」


「「「「「「「乾杯」」」」」」」


 ごくごくごく……。

 ユメは成人してからエールを嗜むようになったが、今日ほど美味しく感じたのは初めてかもしれない。


 ……あれ?

 乾杯の声が一つ多くなかったか?


 無口なハジキもさすがに乾杯くらいは言う。逆に増えるのはおかしいのだ。


「おめでとうにゃ。これで正式に六人パーティ結成にゃ」


 気が付けば、人間形態のサガがテーブルについていて、ミルクで乾杯に加わっていた。


「サガ! いつの間に!?」


「いつでも気配を絶って、こっそり近づくのがあたしの流儀にゃ。あんたらも今回それに助けられたんじゃないにゃ?」


「それは……情報は、ありがたかったけど」


 それはそれとして。


「あんたが用事もなく現れるとも思えないんだよな」


「にゃはははは」


「サガさん、わたくしたちになにかご用事が?」


「一つ目は、今回のウラカサの罪状を教えておこうと思ってにゃ。あんたら、あいつがなにしたかも知らないまま、殺る気まんまんで出発しちゃったから」


「反帝国思想を持ったからでしょ」


「さすがに考え方を持ってるだけで国から討伐依頼なんて出ないにゃ。奴はキョトーへの交易便を『魔族でない』ってだけの理由で襲ってることが判明したから討伐されることになったにゃよ」


「『魔族でない』、ってことは人間もモンスターでも見境なしに襲ってたのかよ」


「それが先日足がついたにゃ」


「……呆れた」


 ハジキが言う。

 恩もなく、ついさっき、自分たちの手で殺したとはいえ、父親がそんなことをしていたら呆れるのも無理はないだろう。


「で、二つ目は、『あんたら』のことにゃ!」


「えっ、わたしたち?」


「あんたら大分有名になってきたにゃ。さらに今回の討伐依頼のスピード解決はそれに発車をかけるはずにゃ」


「それがなんだよ、結構なことじゃないか」


 酔いが回って、若干目が据わったヒロイが問う。


「そのうち、ご指名の依頼が来るかもしれないにゃ。というか、あたしのところにもあんたらの情報を買いに来る冒険者が増えてきたにゃ」


「なんだと? それで、売ってやがるのか」


「相応の金を出されれば情報は売るのが情報屋にゃ」


「否定しないのな……」


 次のサガの台詞は六人とも予想だにしていない内容だった。


「あんたら、なんか『女の子だらけのパーティ』『種族ばらばらの女の子たち』とか呼ばれててややこしいにゃ、そろそろ、正式に『パーティ名』を名乗ってほしいのにゃ」

世界観補足


パーティ名:冒険者としてパーティを組んで、ある程度箔がついてくるとパーティ名を名乗るパーティが多い。ちなみに大仰な名前を名乗るパーティほど早死にしやすい傾向がある。

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