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次なる依頼は家族殺し?

 種族差別を捨て去り、自己責任にすべてを任せたナパジェイの総本山である帝都キョトーで国から討伐依頼が出るほど目立つ背信行為を働いたのだろうか、そのウラカサとやらは。


 それだけの実力と自信があるということか。


「ヨルちゃん、魔族の拠点に攻め込むにはそれなりの戦力と戦略がいるよ。少なくともここにいる四人だけじゃ無理」


「じゃあ、無口女をまた臨時で誘うのは確定だな」


 無口女――もちろんハジキのことだろう――は、この依頼を見てどう思うだろう?

 それに、私たちにハジキを加えただけの五人で戦力は足りるだろうか。

 レイドを組む、とまでは言わなくてもせめてあと一人、フルメンバーの六人PTを組んで戦いたい。


「後はサガにでも戦場視察を頼む? 戦ってるとこは見たことないけど、そういうことに関してはあの人、というかあの猫以上に頼りになるのはいないよ」


「戦力にしようとすると、めっちゃ吹っ掛けそうだよな。あの猫スケ」


 あーでもない、こーでもない、と四人が議論を交わしていると、ウェスタンドアが開いた。


 入ってきた人物はユメたちの方を見るでもなく、亭主に声をかけた。


「……こないだユメが勧めてくれたなんとかいうパスタ」


「カルボナーラだな、待ってな。今作るよ」


 水兵服風の服装に、薄暗い店内を照らすかのような美しい銀の髪、切れ長の赤い瞳。


 見まがうはずもない。たった今噂していたハジキその人だ。


「ハジキちゃん!」


「ちょうどよかった」


「……何?」


 剥がしてテーブルまで持ってきていた討伐対象、「反帝国思想家の魔族、ウラカサ」の人相を見せて、ヨルがいきなり問うた。


「こいつはお前の親父か?」


 なんという無遠慮さだろう。


 ユメはヨルのそんな図太さが羨ましくもなり、怖くもなった。


「……ウラカサ」


 ぽつりと、ハジキはつぶやく。


「……父」


「やっぱり! そうじゃないかなって今皆で話してたのよ」


 そのユメの言葉を聞くと、そこでハジキはその人相描きが討伐依頼の対象者のものであると気が付いたようだ。


「……殺すの?」


「やっぱり、肉親を手にかけるのはお嫌ですか?」


「……ううん、ついに国から殺されるほど大っぴらに自分の考えを表に出し始めたか、って思っただけ」


 やはり、ハジキは銃のことと、魔族の掟についてのことだけはよく喋る。


 オトメの問いにも眉一つ動かすことはなかったが、多弁になった。


「……元々、『我らが天敵たる人間と共存などできるか』『いずれはこの国に自らの愚かさを思い知らせてくれる』っていつも言ってたもの。本格的に動き出したんだなって」


「じゃあ、この依頼にハジキちゃんをまた臨時メンバーとして誘うか迷ってたんだけど、オーケーしてくれるって思っていいの?」


 そこで、ハジキは黙った。


「…………」


「そうよね……、迷うよね」


「……違う。冒険者・ハジキとして、このパーティに依頼を出したいって考えてただけ」


「え? それってどういう意味?」


「……父を殺すのを、手伝って欲しい」


「おおう、そりゃまた大胆に出たね」


 ヨルが茶化すように言う。


「……報酬は、私自身。親、いえ、一族を皆殺しにするのを手伝ってくれたら、臨時じゃなくて正式にパーティに加入してあげる」


「ハジキちゃん! それ、本気で言ってくれてる? 正式メンバーになってくれるの?」


「…………」


 ハジキは、返事の代わりに黙ったまま、コクリ、と一つ頷いた。


「パーティに入るってえことはどんなヤな依頼が来ても一緒にやらないといけないってことなんだぞ? 住むのもこの宿になるぞ」


「……それで、連中に弾丸を撃ち込めるなら、構わない」


 ユメとしては願ってもない展開だ。


 これまでは、敵の強さに合わせて誘ったり誘わなかったりしていたハジキがいつも一緒に戦ってくれる。


 言葉には出さなかったが、ヒロイも、ヨルも、オトメも、同じ気持ちでいた。


「よっし、これで五人。だが戦力的にはまだ欲しいところだな」


「……ウラカサは自分の実力に絶対の自信を持っていたから、他の魔族の氏族みたいにモンスターを配下を従えてる可能性は低いと思う。魔族以外は見下してるような感じだったから」


「ん。昔のこととはいえ、ハジキちゃんを通じて敵の情報が手に入ったのも大きいね。わたしはやっぱりサガに現状の戦力を探ってもらうのは必須だって思うけど」


「で、六人目はやっぱりサガにするのか?」


「……こないだ」


 ユメとヒロイの会話に珍しくハジキが割り込んだ。


「……孤児院のあの子、イビルブックとの戦いでかなり活躍してた」


「おい、ハジキ、まさかあのスイをメンバーに加えようってんじゃないだろうな」


「……確かに、まだ子供。けど、戦力には、不足じゃないと思う」


「そうじゃなくて!」


 ヒロイが大きな声を上げた。


「アタイらがこれからやるのはてめえの親殺しだぞ。あいつがどれだけ自分の親に懐いてるか、それを知ってなお誘うのかって訊いてるんだよ!」


 たしかにスイはアンデッドハーフという特殊な出自ながら、両親に愛されている。そんな「子供」に、親殺しの手伝いをさせるのか、とヒロイは言っているのだ。

世界観補足


ちなみにサガは脇差級のユメたちより上の太刀級の冒険者です。

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