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ドタバタ孤児院 出会ったのは……!?

うまい切りどころが見つからず長くなってしまいました。

 ユメたちは院に入ると、まず院長に挨拶し、本日はよろしく頼む旨を告げた後、孤児院の子たちを二種類に分けた。


 一組は五歳未満の子たち。

 彼ら彼女らにはさすがに今日は院長先生に面倒を見ていてもらおう。


 もう一組は訓練を受ける五歳から十五歳までの子たちだ。


 とはいえ、この孤児院では十歳を過ぎたくらいになるとどこかの店などで下働きに出るらしいので、いるのは年齢が一桁の子たちばかりの様だ。


 その子たち一人一人に希望を訊いて行き、魔法の勉強がしたいか、剣の修行がしたいか、それとも銃の扱いを覚えたいか、で、班分けをしていく。


「はーい! スイは魔法がいいでーす!」


 班分けを始めた途端、一際元気な声が上がった。


 前述したとおり、十歳未満くらいの子ばかりかと思ったが、声を上げた水色の髪をツインテールにしたこの子は見たところ十二~三歳に見えた。


 アメジストを思わせる紫色の瞳が特徴的で、青い色のTシャツとスカートの快活そうな少女だ。


「ああ、スイちゃんはちょっと特別な子なんですよ」


 魔法の先生と名指されたユメは、院長から耳打ちされた。


 とりあえず、スイと名乗ったやや年かさの子は魔法使い志望のようなのでユメの班に入れ、各班五~六人くらいでまとまってくれてほっとした。


 全体的に剣でビシバシ戦いたい男の子はヒロイやヨルに着いていった子が多く、未知への憧れがある子はハジキへ着いていった感じだ。

 そして、魔法に興味がある子は女の子が多い印象だ。特に一見優しそうで穏やかな物腰のオトメには女の子が何人も着いていっていた。


 さて、ユメの元に残った男二人、女四人の子たちだが、まずは魔法とはいかなるものか見せてあげなければならない。


 部屋を一つ借りて、その中でF級宝石を使って指先に火を灯したり、風を起こしたりして見せてあげる。


「いい、魔法は一人一人得意不得意があるんだけど、基本は、『手』よ。手のひらに魔法を発現させられなければどんな魔法も使えないわ。それを確かめるためにこうやって六色の宝石を手に載せるんだけどね」


「お姉ちゃんはどの色の宝石が得意なの?」


「ふふん、お姉ちゃんはね。六色とも使えるの。すごいでしょ?」


「すっごーい」


 ユメは全員にF級宝石各色を六つづつ渡してやり、石に向けて意識を集中させるように言っていく。


 これで、どの魔法の属性に素質があるかおおよそ分かる。


 赤の宝石が発光する子。


 青の宝石が発光する子。


 様々だった。


 そんな中、驚くべき発言をする者がいた。


「お姉ちゃん、スイ、宝石要らないよ」


 さっきのスイという少女が目を赤く変化させながら、手のひらの上にオレンジ色の炎を発現させていた。


「え? は? 魔法を、使ってる?」


「うん、スイ、もう魔法は使えるの。ママから教わったから」


「ちょっと待って、そんなことしたら命を削ることになるから、とりあえず止めて!」


「わあ、スイちゃんすごいなあ」


 男の子の一人がスイの芸当を見て、自分の集中も忘れて褒め称える。


「えっと、ごめん。スイちゃん。宝石はあげるから、ちゃんと宝石を使ってやって」


「うん……、宝石を使ってやったことないから、やり方教えて!」


「分かった。まず、宝石が小さくなっていくなるところをイメージするの。その代わり、魔法が発動するから」


「こう?」


 スイが言うと、緑の宝石がパァン!と砕け散り、残り五個のF級宝石がスイの手のひらの上でぷかぷかと宙に舞い始める。


 その様子を見て、ユメはポカーンと口を開けてしまう。


「今度は光でやってみるね、えいっ!」


 今度は光の宝石が砕け散るとスイの手のひらが淡く発光した。


「えへへ、スイ、光の魔法は苦手なの。やっぱり宝石を使っても難しいね」


「いや、ちゃんと使えてるじゃない」


 と、ここでユメはこのスイという子ばかりにかかりきりになっていたことに気が付き、他の子にも構ってあげることにした。


「ああ、黒の宝石が光ってるわね。じゃあ、あなたは闇が得意みたい。次は他の色の宝石は預かるから。闇に集中して。やり方は石が小さくなるところをイメージして、手のひらの上に闇を浮かび上がらせるのよ」


「はい。お姉ちゃん。でも、闇って正義の味方っぽくないなあ」


「ふふ、この国で、正義の味方である必要なんてないのよ。自分の味方であればいいの」


 そこで、また件のスイがビックリするようなことを言ってくる。


「お姉ちゃん。もらった六つの石、全部使っちゃった」


「え?」


「全部魔法発動できたよ」


「でも、目の色を変えると宝石を使わなくてもできるよ」


「待って待って! 新しいのあげるから、自分の命使って魔法使うの止めて」


(この子、一体何なの……? 瞳が宝石の代わりをしている?)


「そ、そう。とりあえず、今渡した宝石を使い切るまでやってみて。お姉ちゃん、ちょっとトイレに行ってくるから」


 ぴゅー。

 と擬音が出そうな勢いでユメは部屋を出て、五歳未満の子たちの面倒を見ている院長先生のところまで走った。あまり時間はかけられない。


 途中、左手に持った木剣だけで子供五人の攻撃をいなしている大人げないヨルや、実際刃物を使って木剣の作り方を指導しているヒロイのいる部屋を通った。


 できればオトメやハジキの様子も見たかったが、それより先に院長先生が幼い子の面倒を見ている部屋に辿り着いた。


「院長先生! スイちゃんって子について教えて欲しいんですけど!」


「あらら、やっぱり?」


 院長も、ユメの反応は予想通りだったようで、足に子供をまとわりつかせ、哺乳瓶の中身の温度を確かめながら苦笑した。


「あの子は奇跡の子なんですよ。本来生まれるはずのない子供だったんです」


「目っ! あの目はなんですか!?」


「あれは、遺伝です。あの子の父親が宝石を使わなくても魔法を使えるように体に永久宝石を移植したんです。それが目だけには娘にも遺伝してしまいまして」


「A級宝石を移植? その父親は何者なんですか!?」


「A級ではなく、永久です。あの子の父親は自分の命を無限にしてしまったんです」


 ユメの脳内にはそこでありえないことが浮かんだ。


(自分の命を無限にして、その無限の生命力を体に埋め込んだ宝石に供給して魔法を使う……?)


 とある「アンデッド」の手法だ。


 高位の魔法使いが自分の魔法力に限界を感じたとき、自らをアンデッド化してしまうことがあると母に習ったことがある。


 大陸では、アンデッド化そのものが邪法なので、そんなことをしたら即討伐対象だが、「力」を得るためならなにをしても罰せられないこのナパジェイなら……。


「そう、スイはアンデッド化した魔法使い、リッチと普通の人間のハーフなんですよ」


 あまりに非現実的なことを、院長先生は、言った。

世界観補足説明


スイの外見:イメージはアニメ、ゾンビランドサガの星川リリィから。ただしこっちはちゃんと女性。なお作者はあのアニメでは純子推しです。

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