銃の遺跡、新たな仲間を加え再挑戦!
前回人殺しをしてまで遺跡を再度調べようとしたユメたちですが、はてさて……
さて、ちょっとしたトラブルはあったが、ようやく洞窟の奥を調べられる。
ユメはちょっといい土の宝石を使って周りの岸壁から土と石の混じったゴーレムを作り出した。
「クリエイト・ゴーレム」
そして、闇の魔法をかけて、簡単な命令を聞くようにする。
「真理よ」
ユメがゴーレム作成を担当したので、オトメがライトの魔法で光源を用意する。もう入り口付近には何があるか分かっているので扉の周りを照らせるように前回より大きめの光の玉を灯した。
ヒロイはずっと馬に余計な負担を強いていた鉄の板を荷台から取り出す。これの防御力を魔法で上げて盾にすればしばらくは耐えられるだろう。
後はその隙間からの流れ弾に注意しながらハジキが幽霊銃を撃ち落とすだけだ。
「行くよ、みんな」
「おう」
相変わらず鎮座している鉄製の扉が光源に照らし出される。
ヒロイが鉄板を構えながら、そっとゴーレムに扉を開かせると、やはりものすごい勢いで銃弾の嵐が飛んできた。
ゴーレムは銃弾を浴びながらもまだ崩れ去ってはいない。隙間は盾を構えたヒロイが埋めている。
その後ろから、マスケット銃を構えたハジキが幽霊銃の一つに狙いを定めた。
バキューン!
カラ。カラ、カラーン。
何か金属が地面を転がる音がした。
しかし、銃弾はまだ止まない。
ゴーレムが少し扉を開け、ハジキが幽霊銃を撃ち落とす!
何度かそれが繰り返された頃、ヒロイのほうから苦情が来た。
「おい、盾は保つけど、ゴーレムの腕の方がもう使い物にならないぜ」
「一旦出て、作り直そうか」
そんなやり取りを四、五回は繰り返しただろうか。
すると、とうとう、扉の奥から銃撃が来なくなった。
弾切れか、それとも怨念を持った銃は全て撃ち落としたのか。
それを見計らって、ヨルとオトメがユメの補助魔法を受けつつ、扉を完全に開ききって中へ踊りこむ!
どうやら、扉の奥は銃の保管庫だったらしい。箱に入れられた銃が所狭しと積み上げられている。
これらの一部が付喪神となって、ユメたちの侵入を阻んでいたのだ。
そこに、オトメが言う。
「では、念のため、『リ・バース・アンデッド』を一つづつにかけていきますわ」
「……必要ない」
手を差し出して制したのはハジキだった。
「……この子達の未練は、戦えなかったこと。そして、今、扉に入らせませいと必死で戦った。だから、もういいの。この子達の望みは、果たされてる」
自分が撃ち落とし、床に転がっている銃をまるで慈しむ様に拾い上げながら、ハジキははっきりとオトメのほうを向いて、言った。
「じゃあ、他の銃は全部戦利品か?」
「まるまるあのジャンク屋に持っていったらどれくらいの値がつくかなぁ」
「……あの店、こんなにたくさん買い取れない。持って行くなら、無傷のものは軍に持っていくほうがいいと思う」
「なぁるほど。けど、軍が金出して買い取るかねえ?」
「待って。ここの銃を持ち帰るのは確定として、まだ奥がありそう」
ユメがそう言って、扉の奥にあるさらに扉を指差した。
その奥は、工場のようだった。
おそらく、戦乱の時代にサーカイやネゴーロにあったような鉄砲鍛冶場がそのまま残されているのだろう。
この情報を軍に売り、もしうまく生産ラインを復活でもさせられれば大手柄だ。
ちなみに、銃は一度はナパジェイの戦乱の時代を席巻したものの、その戦乱の混乱のさなかで製法も技術もうやむやになってしまった。
だから、軍としては何とか情報を得てかつての銃の隆盛を取り戻せないか情報を必死で集めているのだ。
「戦乱の時代を一変させたという火縄銃がまたナパジェイに蘇るかもしれないぜ」
「銃の詳しい製造法は半ばロステク化してるからな。うまくすりゃ褒賞もんだ」
「……見て。銃の図面が一杯ある」
ハジキの言葉に、皆が振り返ると、確かにそこには火縄銃の図面らしきものが山ほど散らばっていた。
「戦乱時代後期に改良に改良を重ねられ、量産化にいたらなかった銃の図面。これらは価値がある」
「ホントだ。量産化って文字にばってん書いてある」
「……これらの図面、軍に渡しちゃう前に、書き写しても……いい?」
珍しく、ハジキが上目遣いで、淡々とした態度ではなく、お願いするように言ってきた。
「それは、ハジキちゃん個人のお願い? それとも傭兵としての、依頼の範疇?」
「……お願い」
「だったら、いいよ。一旦ウェッソンさんのお店に持って帰って。銃を軍に持っていくのも、書き写しが終わってからでいいから」
そういうと、ハジキは初めて目元を微笑ませる表情を見せた。
やはり、この子の人生は銃とともにあるのだ。
なんとか、ハジキが心の真底から笑うために、魔族うんたらの偏屈なコンプレックスを取り除いてあげることはできないだろうか?
ユメはそう思った。
そして、荷台を戦利品で一杯にして、代わりに御者台に二人、馬の背に一人座ることでスペースを作り、ユメたちは帰路についた。
これだけ調べて帰ればサガも文句は言うまい。
あるタイミングで、ユメは御者台でハジキと隣になったので、軽い雑談をしてみた。
「ねえハジキちゃん。ハジキって名前、親からハジかれたからって言ってたけど、それってもし違ったらどうする?」
「…………?」
「『ハジキ』って銃のことでしょ? 親御さんがハジキちゃんの銃の才能を見込んでつけてたら、すごいと思わない?」
「……多分違うと思う」
「違っても、そう考えようよ。わたしの名前のユメだって、親がなに考えてつけたかなんて訊いたこと無いんだし」
ハジキはユメの言葉に返事を返さなかった。ただ、自分の長い銀髪に指を通して、すき始めた。
「その魔族の証の綺麗な銀髪だって、親御さんからもらったものでしょ? 恨んでばっかりじゃもったいないよ。少しはいい方向に考えないと」
「…………」
それきり途切れてしまう会話。
ただ、最後にぽつりと、ハジキはこう言った。
「……パーティ、傭兵じゃなくて、仮加入ってことにしてもいい?」
「もちろん! 本加入したくなったらいつでも言って。ヨルちゃんも仮加入みたいなもんなんだし」
「……そうなの?」
「うん。『稼ぎが悪いとすぐ抜ける』っていつも言ってるよ。今回ででっかく当たったからしばらくはなさそうだけど。じゃあ、仮加入で、よろしく!」
「……しく」
そうして話しているうちに、御者台のメンバーが交代になった。
世界観補足
地名の由来
サーカイの鉄砲鍛冶場:言うまでもなく大阪の堺にあった鉄砲鍛冶場が由来。織田信長が銃欲しさに直接統治したことで有名。ネゴーロは今の和歌山にあった根来寺から。




