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私たちは正義の味方じゃない

 翌朝、以前の四人のメンバーに魔族の銃使い、ハジキを加えた五人は、一週間ほど前に借りた馬車より少し荷台が広めの、やや豪勢なものを借りて出発した。


 道中、ハジキはずっと銃を磨いているか、整備をしているばかりでメンバーとは一言も口を利かなかった。


 流石に夜の間の見張りなどはしてくれたが、それらの話をするときの反応も頷くだけだったり首を振ったり、とにかく口を開くことが好きではない様子だ。


 それにしては、銃に関してのことと、魔族の掟についてだけには多弁になっていたが、それを蒸し返しても気を悪くされるだけだろう。


 正直、ユメは今回の作戦の成否はハジキの銃の腕にかかっていると思っているのだ。


 作戦はこうだ。


 ユメが今度は土と石でゴーレムを作ってドア開け役にする。ヒロイがジャンク屋で買った鉄板を魔法で強化して盾にする。


 そして、その間にあのぷかぷか浮かんだ幽霊銃を撃ち落とすのがハジキの仕事だ。


 敵の数が減ってくれば、オトメも部屋に突撃し、「リ・バース・アンデッド」の魔法であの付喪神たちをあの世に送り返すという二次案も立てているが、それはあくまで最終的な仕上げに過ぎない。


 ユメがゴーレムの操作で他の攻撃魔法の同時行使が難しい以上、この作戦はハジキ頼りだ。


 ヨルには作戦中の後方警戒と、扉の奥に危険がないと判断されたときに真っ先に飛び込む役目がある。これは扉の奥に更に進むべき道を見つけたときに真っ先に突入できるようにする、素早い彼女にしか任せられない役だ。


 さて、さしたる脅威もないまま、件の遺跡付近まで近づいたユメたち。


「待て。馬車を停めろ」


 不意にヨルが口を開いた。


 そう言われて、御者を務めていたヒロイが馬の走りを止めにかかる。


「洞窟の入り口近くに誰かいる」


 馬車をゆっくりと近づけながら、その“誰か“に気取られないぎりぎりの箇所で荷台から降りたユメたちは入り口を窺った。


 どうやら冒険者の一団がいるようだ。


 数は五人。


 見たところでは人間とモンスター、そして男女が混じっているように見える。


 服装からしてユメたちと同じく、前衛後衛に分かれて戦う、戦士魔法使いの混成だ。


 さて、ここでユメたちは決めなければならなくなった。


 あの冒険者たちと事を構えて、元の作戦通りに扉の奥を調べるか。


 それとも冒険者たちのお手並みを拝見してみるか。


 サガがあの後自分たち以外の冒険者に情報を売ったのだと時間的な辻褄が合わないので、あの場所を調べる権利は自分たちにある。そう思えた。


 すると、唐突にパン!と乾いた音が響き渡った。


 ハジキが、冒険者の一人の脳天を、持っていたマスケット銃で撃ち抜いたのだ。


「おーおー、あたし好みの展開に無理やりしてくれちゃって」


 ヨルがハジキの行動に嬉しそうに前に出て行く。


「あいつらの死体、なるべく盾にしたいから魔法でバラバラにしたりすんなよユメ」


 ヒロイもヨルに同意見のようで、のっしのっしと動揺している冒険者たちの方へ歩いていく。


「仕方ないなあ。まあ、予定を阻む者がいたら、排除は基本かあ。ハジキちゃん、できればもう一人減らしといて」


「…………」


 パァン!


 もう一発銃声が響き、うろたえていた冒険者がもう一人、バタリと倒れる。


 撃たれたのは人間のようで、まだ息があるが、額から宝石は発現していない。


「ああ、これでわたくしたち、殺されても文句は言えませんわ」


 一番躊躇しそうだったオトメも、メイスを構えて前へ出て行く。


「あっ、あんたたちね、いきなり撃ったのは!」


 冒険者一行の紅一点がこっちに文句を言ってくる。無理もあるまい。


「私たちはただ洞窟があって、調べようとしてただけなのに、突然仲間を撃つなんて酷い!」


 ユメは相手の言い分は尤もだという思いと、サガが情報を二重に売ったわけではないという二つの思いに胸を馳せていた。


「この洞窟というか、遺跡の情報はわたしたちが情報屋から買ったの。だから無断で調査される前に対策したの」


 正確には、どうするか悩んでいるうちにハジキが発砲してしまったのだが、もう結果は変わるまい。


「このまま立ち去るなら何もしないわ。できればそうしてくれると手間が省ける」


「ふざけるな、仲間の仇!」


 冒険者の一人がユメに向かって切りかかってきた。


 が、その刃がユメに届くことは無く、ヨルが剣で受け止めていた。


「先着順だって言ってるだろ。死体を増やしたくないなら、とっととどっか行けっつってんだよ。さもないと行き先があの世になるぜ」


 ギィン!と敵の剣を弾き、ヨルが牽制する。


 そうしている間に、オトメが白の光の宝石を懐から取り出した。さっきハジキが撃った相手を癒そうというのだろう。


「ハジキさん、急所は外してくれてますわ」


「……ううん、そっちは遠かったから外れただけ」


 そんな会話の間にオトメの手から翳された白い光が冒険者の方の傷を治していく。


「な、なんか知らねえが……こ、こいつら……」


 一人、亜人の冒険者が急に慄き出し、仲間の顔を順繰りに見ていく。


「「「こえーーーーーー!!!」」」


 口が利けた三人がほぼ同時に逃げ出す。それでも怪我をした仲間をきちんと抱えていったのは流石冒険者というべきか。


 最初に脳天を撃たれた男はまず助からないと思うが……、ユメたちはユメたちでやらねばならないことがある。

世界観補足


冒険者は正義の味方ではありません。

報酬のために危険を冒して依頼をこなす、ただそれだけの職業なのです。

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