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猫娘が持ってきた依頼は……死の香り?

できるだけ和風ファンタジーを保ちつつ、色んな武器や魔法を出してみたいんですよね~。

 一先ず危機が去った安心でユメの心には眠気と油断が生じていた。 


 ドヴェルグ五体を瞬殺できる時点でそろそろ自分たちは冒険者としての級をもう少し高めに見積もってもらいたいものだ、とか。


 少なくとも「木刀」「苦無」あたりは脱しているだろう。とはいえ、サガが教えてきた遺跡だか何だかはどれくらいの級の冒険者を想定しているのやら。


 そんなことを考えていたらまた眠気がやってきた。が、それより前に、


「みなさん、お怪我はありませんか?」


 肩の傷を押さえながら、オトメが言う。


「ばーか、怪我してんのはお前一人だ早く治せ」

「はい、キュア・ライト」


 オトメが自分の浅い傷を癒していると、ドヴェルグたちの額から宝石が出て来た。


「C、D、おっ、またC」


 少し強めだったらしく、ドヴェルグ四体はC級宝石を発現させた。


「もうけ、もうけ」


 ユメは眠い目をこすり遠慮なくドヴェルグの額から宝石を奪っていく。そこでヨルが言った。


「なあ、モンスターを倒したとき、山分けして残った分を共有財産にしねえか?」


「あ、それいいね。じゃあこのC級一つが今回の分け前でD級は共有化かな」


「で、誰が共通財産を管理するかだが……、あたしはオトメがいいと思う」


「ええ?」


 名指されて、傷の手当を終えたオトメがヨルの発言に驚く。


「こいつの手持ちの宝石がなくなるのが一番パーティにとってやべえし、オトメはユメみたいにがめつくもねえ」


「そんな、わたし、がめつくないよ」


「いいやがめついね。それにパーティで過ごしてて一番周り見てんのはオトメだ」


「では、僭越ながらわたくしがパーティの共有財産を預からせていただきますね」


「こいつに任せたら服代とか化粧品に消えそうなんだよなあ」


 ヒロイはやや不満があるようだ。


「んまぁ、おしゃれはそれぞれがすることでしょう。最低限の生活費や今回のような情報料に使いますわ、ねえユメさん」


「うん……、そうして」


 ユメは共有財産の管理を任せてもらえなかったことが少しショックだった。そんなに金にがめついと思われているとは。


「どっちにしても、アタイはもう少し見張り続けるから、寝とけ。次はヨルな」


「あいよ」


 そう言って、また見張りを立てつつの浅い眠りについたのだった。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 それから数日、何度かゴブリンなどの雑魚モンスターを退けながら進んだ一行。


 サガの言ったとおりの場所に到着すると、たしかに切り取ったような山肌に、なるほど遺跡とも洞窟ともつかない穴が開いていた。


 あると知っていないと見逃がしそうだ。馬車をその前に止め、外から中を窺う。


「ここか。たしかにあったぜ」


「サガも入ってはいないのかな?」


「さあな、探し屋にとっての『手をつけてない』がどこまでか、なんて計りかねるぜ」


 さて、中はモンスターの巣窟になっているかもしれない。死体だらけかもしれない。


 すぐさま飛び込んでいくにはやや勇気が必要だ。


 ユメはパチンと指を鳴らして簡単な魔法を唱えた。


「ファイア・フライ」


 行使すると、松明の明かりくらいの火の玉がぼうっと浮かび上がった。今は昼間だが、あの中を調べるのであれば明かりが必要だろう。


「さて、この火の玉に先導させて探索するよ。ついてきて」


「待てユメ、念のため先頭はアタイがやる。アタイならいきなり刺されようが即死はしねえ。ヨルはしんがりを頼む。ユメとオトメはその間な」


「任された」


 ヒロイの提案で隊列を組み、穴の奥へと進んでいく。


 と。

 踏み入れると、いきなり床に転がっている白骨死体が見つかった。


「げ。ま、予想してなかったわけじゃないけどよ」


 何かを抱きしめるように持って倒れている白骨をヒロイが調べると、それが持っているものはどうやら銃のようだった。


 銃。


 火薬を使って弾丸を撃ち出す遠距離射撃用の武器で、剣や弓に比べると比較的近代になって開発された武器だ。


 しかし、戦乱の世で製法が失伝してしまい、場所によっては幻の武具となっている。


「おい、ユメ、これ、戦利品になるか?」


「なると思うよ。ナパジェイじゃ今はあんまり作られてないものだし」


「じゃ、回収だな」


 銃がナパジェイに伝来したのは数百年前、戦乱の時代だ。


 その頃にはまだナパジェイは今のような国家体制を強いておらず、人間しか市民権を与えられない時代だった。


 今から数十年前に戦乱の世に終止符を打った天上帝が亜人やモンスターを差別しない、世界で唯一の国を打ち立てたのだった。


 ただし、忌み子をナパジェイに島流しにする風習はその前からあったと聞く。ナパジェイは元々、呪われた島々だと考えられていたのだ。


「おいおい、ここの死体皆銃を持ってるぜ。ここの兵士には全員支給されてたのか? 贅沢なこった」


「使えそう?」


「アタイにそんな詳しいこと分かるかよ。しかもこの暗闇だぞ。博識なお前ら頭脳労働組が外に出てから一生懸命検分しやがれ」


 合計六丁。使えるか、いつくらいの時代のものかは置いておいて、ヒロイがそれだけの銃を拾ったところで行き止まりにぶつかった。


 ユメが灯した炎の明かりが扉らしき姿を照らしている。


「開けて見て、ヒロイちゃん」


「ああ」


 ギィ……バキューン!


 ヒロイがそっと扉のノブに手をかけると。銃が発射される音がした。

 中に誰かいて、銃撃してきたということだ。


 扉の外は白骨死体だらけなのに、中に生きた誰かがいて、銃を構えていて、警告もなしに発砲した……?

 少し考えにくい状況だ。

世界観補足説明


遺跡:天上帝が数十年前に起こしたナパジェイ建国戦争でそれまで幕府が管理していた設備や施設が破棄され、残っている場合がある。これらを探しだし情報を冒険者や軍に売るのが探し屋の仕事。

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