天上帝の後継者
皆様、今までお付き合い頂きありがとうございました。
おかげで無事完結させることができました。
ユメたちは緊張の面持ちで連れ立ってドアをくぐった。
ドアの向こうはまさしく玉座の間と呼ぶにふさわしい謁見のために作られたような広間になっている。
その部屋の奥には小柄な浅黒い肌の老人が一人、玉座に腰かけている。しかし、それでも発しているオーラはユメたちを圧倒した。
年老いていても背筋はしゃんと伸びており、顔は若い頃はさぞ女性を虜にしたと思わせる美形な若者の面影を感じさせる。
種族は、人間に見えるが、人間にしては肌の色が魔族に近い。
顔がはっきり見える距離まで近づくと、老人は口を開いた。
「こんな老いた男がこのナパジェイを治めていたとは思わなかったか?」
「い、いえ……」
ユメは知らぬ間にひれ伏し、臣下の礼を取っていた。ヒロイたちもそれに倣い、一様に目の前の老人にひれ伏す。
「そうひれ伏さずともよい。面を上げよ、冒険者。我こそが天上帝、ノブナガ・オリ・キヨス、である。歳は今年で四十七になる」
「へっ……?」
ユメは思わず顔を上げた。
改めて天上帝ことノブナガの顔を見てみたが、とても四十代には見えない。いいところ八十代かそこらだ。
百歳だと言われても納得できる。
「驚くのも無理はない。我は人間の父と魔族の母を持って生まれた。本来であれば寿命は二百年程度であるからな」
「陛下は理想の国づくりのため、ナパジェイで敵と戦い続けたのよ。それこそ、寿命を削ってね。そうして、半魔半人の身で魔王となられた」
トモエが、そう付け足す。
「まさか、宝石を……」
「飲んだ回数はもはや数えておらぬ。だがおかげで我のような半端者の居場所となれるこの差別のない国を作ることができた。まあ副作用のせいで余命いくばくもないがな」
「そんな……、天上帝がお隠れになったら誰がこの国を治めるのです? 皇子か皇女様でもいらっしゃるのですか」
そこで天上帝はくつくつと喉を鳴らし、笑った。
「我の血縁はそこのチャーチャただ一人よ。従姉姪にあたる」
「え……、いとこめい……?」
「ただ一人、我の血縁で争いと無縁で育ち、生き残った者だ。育てるのはほとんどトモエに任せてしまったがな」
「では、チャーチャ様が次の天上帝になられるのですね」
「うむ……。そうなのだがそれはまだ経験不足に過ぎる。だからそなたらに冒険の経験を積ませてやって欲しいのだ」
「……って、そんな唐突な」
「実を言うと、我に謁見できるほどの冒険者を待っていたのだ。そなたらはナパジェイでいくつも偉業を成した。そしてこれからも成すだろう。そのとき、傍にチャーチャを置き、世界を見せてやって欲しいのだ」
「チャーチャ様はまだ幼過ぎます!」
「そこなクォーツとクリスの娘は十二歳で立派に冒険者をしていたと言うではないか。チャーチャは十一ぞ。一つしか違わぬではないか。それにチャーチャは魔族と吸血鬼の血を引いている。魔法も拙いながら使える。足手まといにはなるまい」
「うっ……」
「元々はみ出し者だらけのPTだ。もう一人くらい変わり者の小娘が加わっても変わらんだろう。なあ、チャーチャ」
「はい! 陛下!」
「よろしくお願いします。チャーチャ様」
「チャーチャ、で、いいよ。敬語もいらない。だってこれから仲間として色んな冒険をして行くんだもの!」
それから数年後、天上帝の死がナパジェイ全土に向けて報告され、「冒険女帝」の異名を取る冒険者の幼き女帝が即位することになる。
その「冒険女帝」は先代のように存在を秘匿されることなく、冒険者として仲間と共にわずかな年数で数々の功績を成したことからそう呼ばれた。即位後も仲間たちと数々の武名を馳せた稀有な皇帝である。
しかし、その仲間たちの名はいくつかの冒険譚に語られるのみ。
特に、魔法少女のユメはコンサド島へ渡り、カムイの巫女として冒険者を続け、いくつものの冒険譚を残した。
それらの冒険譚を誰かが読み、己もこのように語られたいと願う限り、これからも物語は続いてゆくのだろう。
この差別なき、常識にとらわれない、弱肉強食のセカイで――
ある魔法少女が、差別なきセカイではみ出し者だらけのPTを集めて冒険者として生き抜く物語 完
これにて「ある魔法少女以下略」の物語はおしまいです。
番外編の案がいくつかあるので気が向いたら今後はそちらを書いていこうと思っています。
またそのうちマイページの活動記録に後書き的なものを書きたいです。
では、ありがとうございました!




