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異世界転移

異世界転移、男主人公、一人称俺の小説が書きやすくて感動してます。


後書きに本編に対するキャラのコメントを書く予定です。

本編に入らず、番外編にもならない小ネタを突っ込みたくて。。。


 カチカチとマウスをクリックする。


「お世話になっております。SS社)佐藤です」


 メールを書きながら、ぶつぶつと文章を読み上げる。誰も居ないオフィスだから別に気にしない。


 俺、佐藤祐也(さとうゆうや)は納期遅延1カ月目の炎上プロジェクトをがむしゃらに火消ししていた。


 最初から自分が携わってた仕事ではなく、遅延発覚の少し前にうっかり参画しただけなのに、だ。


 今の俺は何故か責任を追及される立場に追いやられていた。多分、入れ替わりで出て行ったプロジェクトリーダーのせいだと思っている。いや絶対そのせいだ。間違いない。

 元々いたメンバーは若手社員ばかりで、プロジェクト配属してから、いろいろ質問しまくって仕事をしていたら、あれよあれよという間に有識者に仕立て上げられた。


「でもなぁ、若手ばかりで可哀想だろ」


 自分の経験年数が中堅程度だったこともあり、風除けになっている。


 そんなわけで、顧客に怒鳴られ、上司にいびられ、イロイロすり減りながらプロジェクト完遂を目指して走り続けていた。


「終電行ったか。あー今日も始発で帰るのかぁ」


 ちらりとスマホの画面を見ると、メッセージが入っている。


「なになに。"全然繫がらないし会えないし、私達もう終わりね"」


 それは返信をせずに放置し続けた恋人からのメッセージだった。驚くなかれ、これが最初で長いスクロールバーが出てるんだぜ?


 読まずにスクロールして、最後の文を確認する。

「"私達、別れましょう"か」


 疲れすぎて、寝たいとゆう気持ちしか湧かない自分は最低の恋人なのだろう。取り繕っても会う時間が取れないから、放置したらこの結果だ。


 俺はパソコンを閉じて、ふらふらと仮眠室に向かった。

「まだ仕事したいけど、いろいろきついわ」


 霞む目をこすりながら始発まで寝ようと仮眠室に移動する。認証カードをかざして廊下に出れば真っ暗だ。その真っ暗な廊下の真ん中に薄ぼんやりと光を放ち、手が一本おいでおいでをしている。


「またかぁ」


 ここ一週間くらい、一人になるとこのホラー現象が現れる。

 俺だって健康的な生活を送っていたら、除霊にい行こうか悩んだと思う。でも今は炎上プロジェクトのなんちゃってリーダーだ。過酷な労働環境は正常な判断力を低下させる。


「いくら手招きしても、その手は取らないよ」


 実はこの手は喋るのだ。だから話しかける前に答えを返してやっただけだ。


『貴方様は、我々にとって必要な方です。どうぞ我々を救うと思って、この手をお取り下さい』


「だーかーらー、むーりー」


 慣れすぎて普通に会話する自分もびっくりだが、どんだけ断っても現れるこの手のお化けにもびっくりだ。


「ひと眠りしたいから邪魔しないでね」

 そう言って、手を跨ぎながら仮眠室へ向かった。



 始発で帰り、風呂に入って、洗濯機を回してベットに倒れ込む。


(朝の5:30だから9:00まで寝て、客先へ直行し・・・)


 ベットに横になれば、暗闇に引きずり込まれるように意識が沈んでいく。


『どうか、我らの手をー』


 部屋の何処かに居るであろう、ホラー現象の声が遠くに聞こえたが、眠すぎて無視した。


 □□□


「一体どうなってるんだ!」


「大変申し訳ありません!」


 腰を直角に曲げて謝罪するが、お客様の怒りは治まらない。


「大体、君に変わる前の人、何で来ないの?変わりに寄越すのが、さらに若い人とかふざけてるの?」


 おっしゃる通り過ぎて弁解できない。兎に角ペコペコ頭を下げて、相手の気がすむまで誤り倒す。

 ちなみに居なくなった前の人の上司は、この後、俺をチクチクいびるのが仕事だと思っているので、ここには来ないんです。


「本当に申し訳ありませんでした」


 なんとか打ち合わせを終えて、僕は自社へと向う。自席に戻れば、プロジェクトメンバーが不安そうな顔で近寄ってくる。


「佐藤さん、お客さんどうでした?」


「大分怒られたけど、なんとか一週間延ばせてもらえたから、最後の追い込み頑張るぞ!」


 安心させるように、わざと明るい声で話す。


「あの佐藤さん、この計算結果がおかしくて」


「どれどれ。ああ、ここの数式間違ってる。たしか先週変えたはず。仕様書の修正は?」


「あ、サーバーのドキュメント差し替え忘れてました」


 方々から、雑な仕事の結果を聞かされ正直イラつく。


(いくら若手でも、この位ちゃんとしてくれないと、いくら時間があっても終わんねぇよ)


 そんな年寄り地味たことを考えて、自分の仕事に取り掛かろうと資料の束をめくる。


「佐藤君、何処に行ってたんだ!ちょっと来なさい」


 俺をいびるのが仕事の上司が現れた。


「午前中は客先だって昨日言いましたよね。外出先一覧にも書いてありますよ」


 そんなことは、どうでもいいとばかりにら睨まれる。 

「この状況を、君はどうするつもりなんだ!」


「それはですねぇーーー」


 正直貴方の相手が無ければ、とっくに終わってるんですよ!とは口が裂けても言えないサラリーマンである。


 やっとこ解放してもらえれば、夕方の進捗確認会まであと十五分しか無かった。


(俺、今日何もやってねぇ)


 朝までコース確定のお知らせである。

 俺はいろいろ諦めて、休憩室に珈琲を飲みに行くことにした。


 奥の人目につかないところで、思いっきり死んだ顔しながら、珈琲をすする。


(そういや昼飯食べてなかったわ。カフェインが胃に染みるわぁ)


 ずるずるとソファーに倒れ込み、虚無状態で回復を待つ。

 ガチャリと扉を開ける音がして人が入ってきた。


(あー、今の姿、人に見せらんねぇわ。早く出て行ってくれー)

 そんな自分勝手な事を考えながら、息を殺してやり過ごす事にした。


「しかし、後一週間で終わるのかな」

「そしたら、佐藤さんがまた謝って延長するだろ」

「だなー。課長の相手も、あの人に集中してくれて助かるよな」

「ホントソレ。正直リーダーが居なくなったときどうなるかと思ったけど、あの人が居てくれて、マジ助かったわ」

「難しいって言ったら、すぐ巻き取ってくれるしな」

「なんかチョロいよな」

「こっちは、ありがたいけどなー」

「でも、俺ああはなりたくないわー」

「わかるー俺も俺も」


「あ、そろそろ進捗確認会の時間だ。行こうぜ」


 ガヤガヤと、多分、いや確実に自分の配下のメンバーが去って行った。


「キッツい、わぁ」


 俺も進捗確認会に行かねばならない。

 でも体が動かない。何か力入んないし、なんなら目から水が流れてる。


 そんな俺の目の前の床がボンヤリと光りだし、ゆっくりと手が生える。


『どうか我らをお助け下さい。貴方様は素晴らしい才能をお持ちなのです』


 顧客に嫌われ、上司にいびられ、部下になめられ、恋人に振られた四面楚歌な俺が素晴らしいわけないだろ。


『そんな!貴方様は我らの救世主なのです!』


 もう、目の前のホラー現象しか俺に優しくないとか、ふざけてる。


『どうか、どうか、私の手をお取り下さい』


 手しか見えないけど、その必死さが、今朝までの自分と重なって見えたせいかもしれない。




 俺は、初めて、その手を握り返した。




 瞬間、激しい光が放たれて、何も見えなくなってしまった。

【小ネタ】

ゆーや:あ。洗濯物干忘れてたー。はぁ。

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