友人の失恋話を聞く男
「昨日、彼女に振られた……」
目の前で絶望感溢れる顔をした友人が、呟くようにそう言った。
「またか。今回は何ヶ月持った?」
「またって言うのやめろよ! 付き合ってちょうど半年だよ!」
「半年か。結構持ったな」
「だから、人を何度も振られてる憐れな奴みたいに言うなって! ……まあ、俺もよく持ったなって思わなくもないんだけど」
友人が深いため息をついた。
こいつは昔から、女の子と付き合っては半年以内に別れている。
別にこいつがクズ野郎で女の子を取っかえ引っ変えしているわけではなく、女の子の方から振ってくるのだ。
「俺の一体何がいけないんだろ……?」
「バカだからじゃないか?」
「あー、なるほど……じゃねえよ! 普通に悪口じゃないかそれ!」
「はははっ」
「くそ、自分がイケメンでモテるからっていい気になりやがって!」
友人が不機嫌そうにスマホを開き、いじり出す。
「あーあ、どっかに良い女の子がいないかなぁ」
「お前また女の子泣かせる気か?」
「俺は泣かせてるつもりねーよ。てか、泣かされてんのは俺の方だって」
再びため息をつく友人。
きっと今、こいつは他の友人に頼んで女の子を紹介してもらおうとでもしているのだろう。
――全く、こいつは本当に。
「……本当に、バカだなぁ」
そんなことをして付き合ったとしても、どうせ女の子に振られるのに。
女の子がお前を振ってくれるように、俺が女の子を脅しているのだから。
「バカってなんだよ」
「別に。ただ、無駄な努力してるなって思っただけさ」
ああ、でも、そういう努力をしてもらわないと困るな。
だって、そうじゃないとお前は絶望に満ちた顔をしてくれないからな。
笑った顔も好きだけど、俺はこいつのそういう顔の方が好きだ。
いつもはヘラヘラと笑っているのに、彼女に振られた時に見せる悲痛な表情が愛おしくてたまらない。
「無駄とか言うな! 今に見てろよ、絶対可愛い彼女と長続きしてやる!」
「そうか。楽しみにしてる」
可愛い彼女と付き合ってくれた方が別れた時のショックが大きいだろう。
こいつがまた女の子と付き合い始めたら、その子について調べないと。
どんなに品行方正な人物でも、脅すためのネタはいくらでもある。
無いのであれば、作ればいいだけだしな。
「今度は半年以上付き合ってやるぜ!」
「……目標が低いな。まあ、頑張ってくれ」
さて、次の子は半年持つかな?
しかし、今回の女はなかなかにしぶとかった。
揺するネタはあったが、余程こいつのことが好きだったのだろう。
どんなに嫌がらせをしても、絶対に別れてくれなかった。
結構激しい嫌がらせもしたんだがなぁ……。
あんなことされても付き合っていたいと思う女の子と、こいつは出会えていたのか。
こいつがその事実を知ったら、一体どんな顔をするだろう?
きっと、さぞかし可愛らしい絶望に満ちた顔をしてくれるに違いない。
でも、それを伝えるということは、俺がやっていることをバラすことになるからな。
まあ、いずれはバレてしまうだろうが、今はまだこの状況を楽しみたい。
ああ、早く彼女を作ってくれ。
そしてまた、振られて俺に泣きついてくるといい。
「……楽しみにしてるよ。お前に彼女ができるの」
「おう! 楽しみにしててくれ!」
次にこいつの可愛い顔が見れるのはいつになるだろう。
それを楽しみにしながら、俺はこいつに彼女ができた後にやるべき事を思案していた。