第九十七話 定まる方針、そして
「五人……」
焔さんから告げられた、力を得る事が出来る最大人数。聖戦とやらは焔さんを含めた六人で挑む……ということになるのか?
「聖戦は私、蒼貞、榊が五人に力を与え、その三ヶ月後に戦いが始まる。天使達五人が私達が戦う戦場を作る時間が必要らしくてな」
「三ヶ月……そんだけありゃ力を貰っても慣らす時間はあるわけだ」
「そうだな、迅太郎。力を得ただけで勝てるような戦いではないだろう。向こうも条件は同じだからな」
「慣らす時間も必要ですが、対策を考える時間としても使えそうですね。蒼貞さん達と戦うのは出来るだけ避けたいですが……いざ戦うとなったら楽な相手ではないでしょうし」
その通りだ、と焔さんは頷く。
確かに、蒼貞さんの支部の強さはよくわかる。蒼貞さんは言うまでもなく、遠阪さんの能力も万能に近い。
氷堂さんの圧倒的な火力も、まともに相手すれば厳しいだろうな。
「榊ほどではないにしろ、蒼貞の所はメンバーの層が厚い。遠阪や氷堂はほぼ確実に入ってくるだろうし、対策を練らねば厳しい戦いになるだろうな。……現状、五人を選ぶにあたって一番選択肢が少ないのは我々だ。今、ここにいない真達を加えてそこから私を除けば計六人。誰を選ぶ……というよりは誰を抜くか、だな」
「ちょ、ちょっと待ってください焔さん。アタシも選択肢に入ってるんですか!?」
驚きのあまり立ち上がる一色さん。非戦闘員であることは焔さんや一色さん本人も語っていたから当然の反応だ。
「うん。それほどまでにゼロが与える力と言うものは強大なモノだ。楓が選ばれる可能性が全く無いとは言いきれない」
「そ、そうなんですね……戦うこと自体に恐怖はありませんが、面食らってしまいました」
「でもさ、マコトとシズカの能力のこと考えたらやっぱりカエデは選ばれないんじゃないの? シズカはともかくとして、マコトの能力にはシズカが必要だし」
とアキラは話す。真の能力発動条件は静さんが近くにいること、だったか。元々は静さんを守るための力だしな。
「真か静のどちらかだけ選び、力を渡す……なんてパターンもあるよ。二人一組の形だけ取れればそれで問題無いだろうから」
「え、それってつまり……選ばれなかった能力者も戦いに参加するってこと……?」
「あぁ。力を授かった能力者からすれば並の能力者など相手にはならないが……多勢に無勢なのは間違いない」
「や、ヤバいじゃん……」
アキラはため息とともに椅子にもたれた。
ここにいるメンバーと、療養中の二人……たったそれだけの頭数で組織全員と蒼貞さん達と戦わねばならない、というわけか……?
「悪いことばかりではないさ。数で不利なのは蒼貞も変わらないからそこは協力を仰げるだろうし、普通の能力者も参加できるということは━━」
「……そうか、感染者対策本部や他の支部と一緒に戦えるのか!」
「その通りだ迅太郎。だから聖戦などと仰々しい名前こそ付いていても、やることは感染者対策本部と組織の決戦、という形になるだろう。決して、勝ち目のない戦いではないさ」
なるほどな。話がかなり分かりやすくなった。結局のところ、組織を倒すことに集中するって訳だ。
「良し。まずは真達の療養が終わると共に力を渡す五人を決め、決戦の時まで鍛える。私や楓はその合間に他の支部や本部と話を付けて決戦までの下地を整える。残された時間は長いようで短い。━━もしものことがあっても良いように、後悔が無いように各々過ごしてくれ」
━━もしも。
その言葉で、全員に緊張が走る。
今までもそうだったが、今回も生きて帰れる保証は無い。組織との全面戦争……今までの戦いが小競り合いに見えるほどの物になるだろう。
……ただの高校生だったのに、なんて運命なんだろうか。
「レイラ。ナツキに会ってきなよ」
「……!」
ふと隣にいたアキラからそう言われた。
「ただし、遺言はダメだよ。ちゃんと帰ってくるって約束しなきゃね?」
「……はは、そうだな。その通りだ。お前もだ生き残れよ、アキラ」
「ふん、当たり前じゃん」
アキラが差し出した拳に、こちらの拳を当てた。
※
「……ふぅ」
もはや見慣れた、病室の前。夏希が眠っている場所だ。
しかし……なんだ、この違和感。
嫌な緊張感を感じながら、ドアを開けて部屋に入る。
すると、そこには
「━━やぁ、月星レイラ君」
「……は……?」
優しい声色で、敵意の無い顔付きの男が、夏希の側でイスに座っていた。
「はじめまして、かな。私は『榊 正剛』。組織の、ボスです」
「━━━━テメェ!!!」
反射的に、拳を出現させていた。




