第百五話 再戦
「━━ここは?」
舞台へと降り立ち、すぐに周囲を確認する。
……大きいビルとビルの隙間みたいだな。人影も無く、静かだ。いい場所に転送されたみたいだな、落ち着いて戦況を見られそうだ。
最大限警戒をしながら、建物の隙間を縫うように走っていく。いくらビルの隙間とは言え本来なら人がいそうな場所なのに誰もいない。やっぱり不気味だな。
しばらく進んだ後、大きな交差点が見えたので建物の影に潜んだ。人影は相変わらず無いが、かなり目立つところだ。なるべく通り抜けるのは避けた方がいいか?
「━━こちらレイラ、大きい交差点の前に着きました。皆は無事ですか?」
インカムで仲間に連絡を入れる。
すぐに連絡が返ってきた。
『アキラだよ~。こっちも問題なし。場所はよく分かんないな、市街地っぽいけど』
『梶だ。こっちも無事だが、ビルの屋上に転送されちまった。このままだと狙われそうだから一旦中に入るわ』
『一色です。飲食店ぽい所に来てますね。視た感じ、誰も来ていないかもです』
『真と静です。たまたま二人とも近くだったので合流出来ました、本当に運が良かったです。場所は交差点の近くですがレイラの見ているとこと同じかは分かんないですね』
『焔だ。約束通り上空に向かう。近い者は合流しようか』
全員の無事を確認し、胸を撫で下ろす。
ひとまず安心だな。後はこの場で焔さんが飛ぶのを待つか?
息を潜めながらその場に隠れていると、突然内臓を殴られるかのような衝撃が辺りに走った。
「な、なんだっ!?」
すぐにその場から離れ、身近な建物へと能力を足場にしながら駆け上がる。建物の屋上へと立ち、衝撃があった方向を見ると
「な……!」
クレーター。そう、クレーターだ。まるで隕石が落ちたかのようなクレーターが遠くに見えていた。黙視できるギリギリの距離ではあるが、その中心には大きな武器を担いだ人影が見えた。まさかあれは……焔さんや遠阪さんが戦った鋼って奴か?
なんつーパワーだよ……! 恐らくアイツも力を貰ったってことだよな。
あからさまに誘ってやがるな。俺はここにいるぞってか? どうする。
『皆、聞こえたな? だが私達がアイツの挑発に乗る必要はない』
「え……?」
ふと聞こえた焔さんの声と、鋼の元へ向かう人影達を見て理解した。
なるほど……再戦ってワケか。
※
「━━よォ、久しぶり」
鋼は自分の元へと寄ってきた二人に、気さくに挨拶をする。昔の知り合いに会うかのような気安さで。
「相変わらずの馬鹿力だねぇ。挑発の仕方もお前さんらしいと言うか」
「全くだ。で、どっちがやる? 遠阪」
鋼の元へとたどり着いたのは、蒼貞と遠阪だった。たまたま近くにいたからだ。
「俺ぁ二人同時でも構わねぇぜ? たまたま因縁もあるみたいだしよ」
「バーカ、この戦いで一人に対して二人当てちゃ勿体ねぇだろ。━━蒼貞さん、良いか?」
「おう。わかった、任せるよ」
蒼貞は遠阪の肩を叩き、その場を離れた。
離れていく蒼貞を見た後、鋼は遠阪の方を向いた。
「リベンジマッチ、だな。お前も選ばれたんだろ?」
「『も』ってことはアンタもか。まぁ流石にアンタの強さで選ばれてなかったら困るんだけどよ」
遠阪は普段とは違い、武器を取り出さずに構えた。その様子に鋼は疑問を抱く。
「お前……分身と武器はどうした? まさか温存して俺に勝つつもりか?」
「まさか。アンタ相手に手加減するほどの余裕はねぇさ」
「そうかよ。何考えてんのか知らねぇが━━」
鋼はたった一歩で遠阪との距離を縮め、構えた斧を振り下ろす。
「っ!」
「一撃で終わっちまうぞ! オラァ!!」
遥かに威力を増した斧が、遠阪へと迫る。
躱すことも防ぐことも不可能な純粋な暴力。当時の遠阪ならどうすることも出来ない可視化した殺意。
ソレを、遠阪は
「フンッッ!!」
「な━━!?」
あろうことか鋼の手首を右手で受け止め、斧を自身に当たる寸前で停止させた。
振り下ろした斧の余波が辺りの建物を激しく揺らす。
「てめぇ……!」
「ハァ!!」
斧を手放し、遠阪は素早く鋼の懐へと潜り込み
溝尾に強烈な拳を打ち込んだ。
「ガハッ!?」
鋼は大きく仰け反り、びしゃびしゃと血を吐き出す。筋肉を強化する能力を持つ鋼の肉体にすらダメージを通したのだ。
「~~かってぇな! 鋼鉄でも殴ったのかと思ったよ」
「く、てめぇ……! パワーが上がってやがるな……! 何をした?」
腹を抑えながら鋼は立ち上がり、それを見て遠阪は再び構えた。
「何、大したことはしてねぇさ鋼。オレの能力と向き合った結果って奴だよ」
「ハ、求道者にでもなったつもりかよ? ……似合わねぇぞ遠阪ァ!!」
再び、二人の漢がぶつかり合う。
戦闘が━━始まった。




