第百二話 決定
お待たせしました。
「理央が……!?」
「あァ。理央が戦うまでもなく勝ったがな」
氷堂達が襲われてから数日後、焔と蒼貞は今後のことを話すために喫茶店にいた。
そこで焔は初めて氷堂が襲われたことを蒼貞から聞いた。
「そうか、無事で何よりだ。……しかし、タイマンか。進化者を殺すことが目的ならタイマンに拘る必要もない。武人気質……なんてこともないだろう」
「奇襲しといて武人気質もクソもないわな。捕まえた襲撃犯から話を聞いた所、組織のボスから言い渡された試練らしい。タイマンで進化者を倒すことで資格を得るんだと」
「資格……まさか」
「そのまさかだ。奴は進化者を倒した奴を聖戦のメンバー候補にするつもりだろうな」
「やはりか……なんとも強引なやり方だ」
蒼貞はコーヒーを一口飲み、ため息をつく。
「……あわよくば進化者を増やそうって目論見もあるんじゃねぇかな。格上との戦いは進化を促す。感染者の生存本能みたいなもんだろうよ」
「そうだな。……もし兵隊が負けても構わない。ここから先の戦いはただの能力者じゃ厳しいだろうからな。戦力の増強と聖戦のメンバー探しの両方を同時に行える手だ。効率的ではあるが……」
「少なくとも俺や焔ならやらねェ。榊はこういう手段も平気で使えるとんだ狸ジジイってわけだ」
そういうことだな、と一言話し焔は腕を組んで椅子に深く腰掛けた。
「……潮時だな、お互い」
「あぁ。進化者を狙ってくるんなら、こっちもさっさと聖戦のメンバーを決めとかねぇと万が一が有り得るからな。……つーかそれも榊の狙いの一つか、クソッ」
「……進化者を狙うことでメンバー選びの時間を削るつもりでか? なるほど、用意周到だ。感心すらある」
「ケッ。癪だが同感だよ」
二人は同時に立ち上がり、お互いを見つめる。
「約束通り、お互いの聖戦メンバーは本番まで明かさねぇ。無論、組織からなんらかの妨害を受けた場合の情報共有は惜しまねぇが」
「あぁ、それでいい。……恨みっこ無し、だな」
「そうだな。俺達と戦うまで、躓くんじゃねぇぞ?」
「フフ、そっくりそのまま返すさ」
二人は勢いよく拳を突き合わせる。
「さ、帰るか」
「あぁ」
焔と蒼貞は、その場を後にした。
※
「━━と、言うことで。聖戦のメンバーはこの五人だ。文句ある奴はいるか?」
蒼貞はさっそく支部のメンバー全員に話をする。
蒼貞が考えた最強の五人。生半可な強さでは太刀打ちできない精鋭となった。
「……概ね納得だけどさ。一人だけはマジで意外だったよ。それアリなんですか?」
「アリだよ遠阪。条件は満たしてるからな」
「マジかぁ。こりゃ、榊も焔さんも予想出来ねぇかもな」
いやぁ、おっかねぇ。とぼやきながら遠阪は笑う。
「いよいよ、か」
「……理央。改めて言わせてもらうが、俺は仲間には死んで欲しくない。お前が剱持と一対一で戦いたいって気持ちは汲むつもりだが、お前がもし殺されそうになったら絶対に手を出すからな」
「……はぁ、わかりましたよもう。どうせ断っても無駄でしょ?」
「その通りだ。負けたら潔く死ぬなんてなぁ、時代錯誤なんだよ。生きてこそだぜ、何事もな」
「ま、同感ですよ。……でもこちらも改めて言わせて貰いますね」
理央は力強く笑う。
「負けるつもりはありませんよ」
「━━ハッ、そうかよ」
理央の覚悟を見て、蒼貞は必要以上の言葉を止めた。
あとは結果が示すだろうと確信したからだ。
「よっしゃ! 聖戦の日が定まるまでにお前らには力に慣れて貰う必要がある! 躓くんじゃねぇぞ!!」
「応!!」
支部内に元気な声が響いた。
※
「━━今頃、蒼貞は聖戦のメンバーを決めた頃だろうな。そして、私達もだ」
焔は支部のメンバーが全員揃ったことを確認し、服装を正して椅子から立ち上がった。
「焔さん、まさか」
「あぁ。ようやく私も決まったよ」
焔はスタスタと部屋の中央まで歩き、幾つかの書類を中央の机へと置き並べた。
「こ、これが……」
「そうだ、レイラ。これが我々の戦力の中心となるメンバーになる」
書類に記された、聖戦のメンバーを見て
「……やるしか、ねぇ」
レイラは、決意を新たにしていた。




