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欲望の感染者  作者: 影山 コウ
第四章 運命を決める戦いへ
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第百一話 No.3、No.4

「進化者が襲われてる?」

「はい、蒼貞さん。しかも正々堂々タイマンでね、何がしたいんでしょ?」


 遠阪から語られた話は、なんとも不思議なものだった。

 各地の支部にいる進化者を、謎の能力者達が襲っているという話だ。十中八九、榊の野郎の差し金だと思うがそれにしては一対一ってのが引っ掛かる。

 こちらの戦力を減らす目的ならもっと多人数で動くだろうし、そもそもキメラを使うだろうしな。何がしたいんだ?


「で、被害はあるのか?」

「まさか。襲ってくる連中も中々の手練れらしいですけど、進化者にはそうそう敵いませんよ。ただ、進化者が襲われるってことはつまり…」

「……うちの理央や、焔ンとこのレイラとアキラも危ないか」

「そうです。あの三人なら心配いらないでしょうけど……一応焔サンには連絡しときましたよ、構いませんよね?」

「あぁ、助かる。……理央は今日、アイツらとパトロールか」


 ※


「━━『(かさね)』、なにか異常はあった?」


 重と呼ばれた赤髪でショートヘアーの男性は氷堂の方へと振り向き、首を横に振った。


「理央さん。いやぁ、なんもありませんね。平和なもんですわ」


 方言混じりの言葉で喋りながら、手に持った紐状の武器をくるくると振り回す。


「そう。……『音無(おとなし)』、そっちは?」


 音無と呼ばれた背中まで髪の毛を伸ばし、それを結んでポニーテールにしている黒髪の女性は


「ううん。異常無しよ。退屈な音しかしないわ」


 さぞつまらなさそうに腕を組んだ。


「聖戦前だし、組織も大人しくしてるのかな……?」

「どうでしょね。ボクらの常識が通じひん相手やし、何とも言えませんけど」

「まぁね。それに、進化者を狙ってるって話もあるみたいだし……」

「それが本当なら、私達よりも理央が危ないんじゃないの?」

「そうかもね。返り討ちにするだけだけど」


 フン、と鼻を鳴らす氷堂。


 氷堂と共にいるこの二人は、共に蒼貞の支部におけるトップランカー。

 一位は氷堂、二位は遠阪であるが……音無は三位、四位は重となっている。


「ま、仮にそういうんが襲ってきたらボクらでボコりますけどね。理央さんが出るまでも無いでしょ」


 ケラケラと笑う重。

 本名は『(かさね) トオル』。支部内でも若い十九歳で、シンプルで使い勝手のいい能力を用いて安定した成績を収めている期待の若手だ。


「その通りね。何人いようがぶっ飛ばして差し上げるわ」


 そして、丁寧だが荒っぽい口調のこの女性が『音無(おとなし) 言葉(ことは)』。氷堂と同い年かつ昔馴染みの二十一歳。

 扱いが難しく、特殊な技術が必要な能力を持っているが……力を充分に発揮している時の音無はほぼ無敵に近い。氷堂や遠阪と殆ど差がないほどの実力者だ。


「頼もしいわね。もしそういう奴が襲ってきたら頼むわ」

「もち!」

「ええ」


 三人は談笑しながら、パトロールを続けた。


 ※


「━━ええと、こういうのってなんて言うんでしたっけ……()()()?」

「合ってます」


 パトロールから数時間後、人通りの少ない路地にて謎の人間達に囲まれてしまった。


「氷堂理央だな? 悪いが我々と一人ずつ戦って貰うぞ。拒否権は無いがな」

「……本当にタイマンをご所望なのね」

「あぁ。事情があるんでな」


 一人の男が自身の影から身長ほどの長さがある剣を取り出し、切先を氷堂へと向けた。


「いざ、尋常に━━」

「━━待った、待った! お前さんなぁ、ちょっと待ちぃや」


 が、二人の間に重が立ち塞がった。


「いざ尋常にーやあらへんわ。自分の都合ばっか押し付けおってからに。ボクらのこと見えてへんのかい。させるわけないやろ」

「進化者以外に用はない。どけ」

「せやからぁ……」


 重は能力を発動させる。すると


「ぐぁ!?」


 大剣の男は、一瞬にして地に伏せた。


「━━調子乗んなや。ボケが」


 一歩、一歩と近付くに連れて男は地面へと深くめり込んでいく。


「つ、潰れ……!?」

「重いやろ? いくら感染者言うてもふつーの人間より多少頑丈で力があるだけや。やもんでぇ」


 重は持っていた紐状の武器を振り上げ、男の頭に振り下ろす。


「重い物でどつかれたら、キツいで」

「ギェ!?!」


 軽いはずの紐の一撃は、男の頭部を完全に地面へとめり込ませた。辺りに地割れが拡がるほどの威力だ。


「『NN/SS(センターオブジアース)』。かっこええ名前やろ~? 友達に名付けてもろてん。意味はよう分からんけど。んで、この能力はボクが触った物や近くにあるものを重くする。何倍でも、何十倍でも、何百倍でもな。こんな紐でも立派な鈍器になるってワケ」


 くるくると紐を回し、肩に掛ける。

 瞬間的に重さを操り、紐が敵に当たる瞬間だけ紐を何百倍も重くしたことにより見た目より遥かに重い一撃を放っていた。


 ざわつく組織のメンバーを見ながら、今度は音無が理央の前へと歩いてくる。


「ほとんどトオル君に言われちゃったけど、そういうことね。一対一を望むだなんて、一見正々堂々に見えるけれど……襲いかかってることに変わりはないわ。不愉快よ。……だから」


 音無は息を吸い込み、笑う。


「吹き飛びなさい。━━『ドカン』」


 音無が擬音を口に出した瞬間。周りにいた組織のメンバー全員がその場で爆発した。


「がは!?」


 全員死んではいないものの、気を失いその場で倒れた。

 氷堂と重は音無を見ながら苦笑いを浮かべていた。


「うひゃあ、おっかねぇ」

「同感ね。相変わらず恐ろしい能力だわ」


 ━━音無の能力、『音から演出は産まれる(サウンド・テスト)』。

 口に出した擬音を現実に再現する、という能力。ドカン、と口に出せば対象を爆破させ、バキ、と口に出せば対象の骨を折る。

 能力は音であることから耳を塞げば多少は威力を落とせるが……戦闘中に耳を防ぎ続けるなど不可能に近い上、耳を防がれた時用の対策も練っている。

 音無本人があまり動けないことを踏まえてもとてつもなく理不尽な能力である。


「さ、取っ捕まえて話を聞き出しましょう」


 音無は上品に、笑った。





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