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欲望の感染者  作者: 影山 コウ
第四章 運命を決める戦いへ
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第百話 選択はいかに?

「……さて」


 誰もいない夜の事務所で、メンバーの詳細を纏めたファイルを捲っていく。

 進化者が二人に増えるとは、昔は思いもしなかったな。これもレイラのおかげかもしれない。

 彼が来てから、私達の物語が動き出した……そう思えるほど話が進んだ気がする。


 そんなレイラを、選ばない理由は何もない。

 レイラなら聖戦も大いに役立ってくれるはずだ。能力を一時的に無効化する力が私の力を与えることでどれほど強化されるのか検討も付かないな。


「……ん、リョーコ……起きてたんだ」

「アキラ。すまない、起こしたか?」


 すると、物音で起きたのかアキラが寝ぼけ眼のままふらふらとこちらへ歩いてきた。


「んーん、たまたま起きただけ。ふぁ……あ、これ聖戦のメンバー決めてるの?」

「そうだ。レイラとアキラは確定だよ」

「へへ、やったね」


 両手でピースサインを作るアキラ。……呑気なものだ、一緒に死地に来てくれと言っているというのに。


「あと三人かぁ……どうすんの?」

「正直、迷っているよ。単純な実力順なら次点は迅太郎だろう。だが、能力の貴重さならば静や楓も候補になる。条件が必要にしろ安定性なら真がずば抜けている。……いくら力を授かってもあまりに多勢に無勢だと負けもあり得る。だからこそ多くの相手を見据えることが出来る編成にしていきたい」

「あ~……僕やレイラはやれることがシンプルだから使()()()()()よね。他の皆は結構特殊だもんなぁ」

「……あまり使うとか使わないとか人間相手に言いたくはないが、そういう事だな」


 ……どうにもアキラは、私が言いにくい事を平気で言える精神力があるな。

 それに助けられている事も無くはないが……複雑だ。


 気を紛らわせるために咳払いをする。


「……先に他のゼロが誰を選ぶかの予想をするか。蒼貞は単純な男だ。単純故に支部内で()()を作っている。仕事をこなした数だったり、蒼貞の独断による能力の強さ、実力を元に順位を付けているんだ。無論、順位を付けられる事で不快に感じる人間もいるだろうが……類は友を呼ぶと言うべきか、蒼貞の支部にそんな奴は一人もいない」

「はは、雑なあの人らしい」

「私もそう思うよ。だが、序列を付けたことにより支部内での対抗意識が育ち結果的に全員の強さの底上げに繋がった。そんなルールを作り上げた蒼貞が、今回の聖戦で誰を選ぶかなんてとてつもなく分かりやすい」

「……まず間違いなく、支部内での上位ランクを選んでくるよね」

「だろうな。なんなら初めからそのつもりで序列を作っていたのかもしれない」


 蒼貞の支部における上位ランカー……氷堂(ひどう)理央(リオ)遠阪(とおさか)影人(かげひと)は間違いなく出てくるだろう。前者は進化者かつ攻防一体の氷の能力者。

 後者は自分の分身を十体まで出現させ、視界の共有まで行える超がつくほどの万能能力者だ。

 もし榊を下したとしても、次に戦うのは蒼貞達だと考えると……厳しい戦いは避けられないだろうな。


「と、なると……やっぱネックになるのは」

「組織……というより、榊だ。私と蒼貞の支部のメンバーを総動員しても榊の戦力の()()にはとても敵わない。組織と傭兵がズブズブの関係なのも拍車をかけた」

「誰を選ぶか……とか予想出来っこないね。知らないヤツのが多そうだ」


 苦笑するアキラ。

 実のところ私は、ある人物の顔が浮かんでいた。


「……一人だけ、聖戦に選ばれそうな能力者に心当たりはある」

「え、マジ? リョーコが戦った相手とか?」

「私は戦っていないが、戦うところを見たことはある。━━蒼貞の()部下。蒼貞の次に強かった男だ。名前は━━」


 ※


「ぐ……く、くそ……!」

「フゥ。ここのところ多いね。命知らずのチャレンジャーが」


 無数の銃弾を受け、地に伏せる男。

 銃弾を放ったのはレイラ達に手助けをしたこともある進化者……美浜 伊久佐(みはま イクサ)

 所持しているエアガンは、彼女の能力により本物以上の威力を誇る武器と化している。


「急所は外した。死ぬことはないよ。痛いだろうけどサ」


 後処理をし、その場を去ろうとする美浜の眼前に侍のような男が突如として現れた。


「━━何者だ?」


 尋常ではない殺気と、針のように鋭い視線。美浜は凄まじい手捌きで咄嗟にエアガンを二丁構えた。

 美浜の力、物騒な玩具箱(トイ・ボックス)は玩具を武器に変える力。

 玩具の種類によっては性質が大きく変化する。

 ただのエアガンであっても、能力を使うと本物の拳銃以上に強力になり弾切れも無い。


 しかし、今回の美浜が左手に構えているのはエアガンより更に威力のある()()()()だ。本来ならガスの威力でエアガン以上の威力を出す玩具だが、能力を使ったことにより大砲並の威力を保有することになった。


「━━なに、この間の戦いだけでは物足りなかったのでな。ついでだ、死合おうか」

「それは分かったけどさ、名乗りなよ。どうせこっちのことは調べた上で襲ったんだろ? そっちだけ知ってるなんて不公平じゃないか」

「……ふむ、たしかに」


 侍は服を正し、名乗った。


「我が名は『剱持 燕(けんもち つばめ)』。強者と死合いたく、ここに参った」

「剱持……? 聞いたことあるような……まぁいいや、ご丁寧にどーも!」


 美浜は豪快に笑い、銃口を向けた。





100話です。


これからもよろしくおねがいします!

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