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ディザイアゲート  作者: M.O.I.F.
第2部
36/39

第三十一話 新たな始まり

どうも、Make Only Innocent Fantasyの三条海斗です。

更新が非常~~~~~~に遅れて申し訳ありません!!

第1部を書き終わった直後に、少し体調を崩していまして……。なんとか更新できた感じです。

なので、中身のクオリティは期待しないでください!

(もとからそんなに高くないとか言わないで……)

ここから第2部の開始です。三十一話~三十三話まで一気に更新します!

それではどうぞ!!

宮城 夏美がこの学園を去ってから、1週間がたった。

文化祭の模擬店は綺麗サッパリ片付けられ、なんの変哲もない校舎に戻っていた。

祭りの後の寂しさを時折感じるものの、あの日々はかけがえのない大切な思い出だ。

俺にとっても、裕香にとっても。

裕香は、過去を無事に克服することが出来た。

俺は、麻弥と再開して自分の原点を思い出すことが出来た。

得たものは多い。

だが、祭りの後には決まって楽しくないことが待っているのも、また、決まり事である。

「……定期考査、ねぇ……」

「成績決める試験だし、補修も受けてる佐伯くんは頑張らないと」

「とはいってもなぁ……」

図書室の窓際、向かいの席に座る裕香に愚痴る。

なんで補修も終わっていないのに、定期考査を受けなくちゃいけないんだか。

「雨音さん、絶対楽しんでるだろうなぁ」

「あぁ……うん。でも雨音さんのテスト、ちゃんと授業の範囲内でやってくれるよ」

「別に授業の範囲外から出てもいいんだが、あの人が楽しんでるのが気に食わない」

「まぁまぁ。試験の範囲だけでもやっておこう?」

「……わかったよ」

文化祭のあとの気だるさがまったくないわけじゃない。

それに、俺達の次の対戦相手もすでに決まっている。

正直言って、勉強よりもそっちの方が気になってしまう。

楓が勝てなかった相手……か。

対戦相手のタイプは、楓や辰巳のような攻撃を得意とするようなタイプではなく、由真たちのような知略を尽くすタイプなんだろう。

さて、どうしたものか……。

「さ、え、き、く、ん?」

ふと、真正面から聞こえてくる、明らかに怒気のこもった声。

恐る恐るみてみると、そこには般若面のような形相をした裕香がいた。

おそらく鉛筆を持っていたら、瞬く間に木っ端微塵にしていたであろう。

「な、なんでしょうか」

「やろう、ね」

後ろからどす黒いオーラを放ちながら、満面の笑みでそういう裕香に俺は反論もできず、ただこう返すことしかできなかった。

「……はい、申し訳ありませんでした……」

それからしばらく、俺は裕香に怯えながら試験範囲の勉強をしていく。

そういえば、こういう勉強みたいなことを一緒にしたのは、この学園に入ってから初めてじゃないか?

少し前までは宮城 夏美の一件もあったし、俺も裕香も全然余裕がなかった。

こうした時間を過ごせるようになったのも、すこしづつだが打ち解けてきた証だろう。

それは嬉しくもあることではある。

「だけどなぁ……」

やはり勉強というものはそれほど好きではないので、テストは嫌だったりする。

まぁそんな事を言っても仕方がないので、渋々やるのだが……。

ふと、寒気を感じて身震いをする。

図書室の空調が効きすぎているというわけではない。

ゆっくりと、そして何気ない感じに、前を見てみる。

まず見えたのは鈍器。

よくギャグ漫画とかで横に「100t」と書いて有りそうな形状をしている。

認めよう……超巨大な金槌が目に入ってきた。

まぁそれだけであれば、驚くだけなのだが、寒気の原因はそれではない。

俺とは全く関係のない男子学生が顔を真っ青にして震えているので、それは明白だろう。

たぶん、そろそろ、その原因が……。

「どうしたのかな、佐伯くん」

「……まずは平和的な解決を望みたい。歴史の偉人の言葉を借りるなら、『話せばわかる』」

「それを言った人は直後にどうなったのか、わかっていっているのかな?」

「あは、あはは……」

乾いた笑いしか出てこない。

まぁ当の本人の顔なんて、般若の形相をしているため直視することもできず。

「最期の言葉は?」

……覚悟を決めるか。

「『板垣死すとも自由は』……」

ああ、テスト勉強(しかも歴史の範囲)をやりすぎて、こんな言葉しか出てこねえなぁ……。

だが、俺の言葉を遮ったのは、裕香のハンマーでもなく、俺の命が尽きたのでもなく、俺達の机に振り下ろされた分厚い辞書だった。

「えっと、お二人様。ここは図書室です。理解していますか?」

辞書を振り下ろしたのは、右腕に『図書委員』の腕章をつけた女子学生だった。

「ええ……」

裕香は100トンハンマーを振り上げたまま、図書委員に答える。

というか、怖いからしまってくれないかな、そのハンマー。

「貴方は?」

「も、もちろん」

両手をあげたまま答える形になってしまったが、俺の言葉を聞いて彼女は深い溜め息をついた。

「であれば、ここではどうすればよいか、わかりますよね?」

「「はい、すみませんでした……」」

図書委員の見せた、静かな怒りに俺たちは顔をひきつらせながら謝った。

というか、さっきからこんな目にしか合ってないなぁ……。

それからはもう二の舞はゴメンだったので、素直に勉強に勤しんだのだった。


* * * * * *


夕方、中庭で木刀を振り回していると、楓が近づいてきた。

「やあ、訓練か?」

「まあな、すこしでも体を動かしておかないとな」

本音はずっと座りっぱなしが辛かっただけなのだが。

「そうか、それは良いことだが……場所を移せないだろうか? 」

「はい?」

「とにかくこっちに来てくれ」

「ちょ、楓!?」

俺は楓に引っ張られて、校舎の隅に連れて行かれる。

放課後の夕暮れ、校舎の隅。

そして、目の前には無理やり連れてきたのに、もじもじしている女の子(年上)。

これは……まさか―――。

「その、実は……」

「……」

「他生徒から苦情が来ているのだ、中庭で木刀を振り回す不審者がいると」

「……」

ですよねー。

まぁ、楓がそんな話をするとも思えないしな……。

「そうか、不審者か……」

俺、ここの学生なのになぁ……。

「まぁここならば問題あるまい。それに、私も訓練に付き合えるしな」

「本当か? それは、助かるよ」

「ああ、遠慮なく来い」

そういうと楓は、あの鎧を身にまとう。

確かに、その格好だと遠慮する必要もないよな。

だって、それ俺が一方的にボコられるやつだし……。

「さあ、来い!」

「ええい、行くぞっ!!」

30秒後、俺は天を仰いでいた。

「なんだ? もう終わりか?」

「か、勝てるかっ……!!」

アビリティ使った相手に生身で挑むなんて、超巨大ロボット相手にバズーカ一つで挑むようなものだ。

いや、それで勝ったやつがいないわけでもないが、さすがに違いすぎる。

「まったく、情けない……」

楓はやれやれ、といったふうに首を振る。

「いや、お前な……」

「次の相手、手強いぞ」

楓は、急に真面目な声でそう告げる。

「そんなに強いのか?」

「いや、私と違って戦闘に向いた能力は持っていないはずだ」

「そういう相手なら、お前のその鎧のほうが……」

「あいつの能力の恐ろしさは、そこにあるんじゃない」

「どういうことだ?」

「あいつは……」

楓から聞いたその言葉に、俺は唖然とするしかなかった。


* * * * * *


「よし、いくか」

「うん」

青白く光るゲートの前に立つ。

頭の中には、楓から言われた言葉が頭の中に残っていた。

「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

「これが終わったら、テストだね」

「嫌なことを思い出させるなよ……」

「大丈夫だよ、相手がどんなのであろうと私達なら」

どうやら、裕香には見透かされていたようだ。

「ああ、そうだな。それじゃあ行くぞ!!」

気合を入れて、俺達はゲートの中へと足を踏み入れた。

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