第二十一話 観戦
どうもMake Only Innocent Fantasyの三条海斗です。
現状、休載していた分の遅れを取り戻すため、日々精進しております……。
最後までおつきあいお願いします。
それではどうぞ!
放課後、俺は裕香と共に職員室を訪れていた。
「それにしても……文化祭って、何をするんだろうな」
「私も初めてだから、よくわかんないんだよね……」
文化祭ならやっぱり、クラスの出し物とかあるんだろうな。
でも、この人数でかぁ……。
あまり盛り上がらないような気がするのは気のせいだろうか。
「まぁなんとかなるか」
とりあえず、ドアをノックして職員室へと入る。
いつもの席に、雨音さんは座っていた。
「雨音さん、書類を撮りに来ましたよ」
「あ、佐伯君に裕香ちゃん。ありがとう、ちょっと待って」
雨音さんはパソコンを少し操作した後、プリンタの元へと向かう。
そして3枚ほど書類を手にすると、こちらに戻ってきた。
「はい、これ」
「これは……?」
「文化祭実行までのスケジュールかな。準備にいろいろあるのよ」
雨音さんの言う通り、紙にはいつまでに何の書類を提出する必要があるか、いつ実行委員会が開かれるのかなどがかかれていた。
「それでね、来週までにクラスの出し物を決めなくちゃいけないの」
「この学校の総生徒人数でやれるものなんですか? なんか一学年につき、一つくらい……とかになりませんか?」
「ん、ああそのあたりは大丈夫。ランクが固まってるのって一年だけなのよ。だから2年と3年で結構いい感じにばらけるの。まぁAランクは5人しかいないからBランクに統合されちゃうんだけど」
そうなると、2学年で6個くらいにはなるってことか。
まぁそれくらいなら何とか文化祭としての体裁は保たれているって感じか。
……まぁ三年にもDランカーがいるってことにはなるが、こればっかりは向き不向きもあるだろうからな。
「とりあえずはクラスの出し物か……」
「方向性だけでも決めた方が意見出してもらった方がいいかもしれないね」
「そうだな。雨音さんどっかで……」
「今週の水曜とかなら時間とれると思うわ。それでいい?」
俺達の会話から事情を察してくれた雨音さんが、先に告げてくれる。
こっちとしては時間が取れれば問題ない。
「それで大丈夫です」
「それじゃあ、水曜日ね~。あ、そうそう」
もう話は終わったと思っていた時、雨音さんが何かを思い出したように声をかけてきた。
「今朝の子、今日アリーナで戦ってるけど、観ていく?」
「「今朝の子……?」」
俺と裕香の声がハモる。
俺にとっては心当たりがあり過ぎて、裕香にとっては何のことか心当たりが全くないといったところだろう。
「ほら、風紀委員の楓さん。今日、あの子の防衛戦よ」
「そうなのか……」
楓の戦い方は参考になるかもしれない。
これからの戦いに備えるのなら、見ていて損はないだろう。
「見れるものなんですか?」
「ええ。アビリティアリーナの全試合は観戦できるわよ?」
そうなのか……。
そういえば確かに、辰巳は対策をしてきたと言っていた。
由真・蓮花戦の時も、あの時の女子学生がいたな。
みんな見ていたということか。
これからの対戦を考えると、事前のリサーチは必要ってことだろうな。
いつもは裕香に教えてもらっていたが、これからは俺も動かなくちゃいけなくなる。
「見ていきます。どこで見れますか?」
「体育館に行けば見れるわ。時間は……もうそろそろ試合開始かな」
「わかりました、ありがとうございます」
雨音さんに礼を言って、職員室を後にする。
隣で裕香は「今朝って何のこと?」っていう顔をしている。
体育館に向かう途中で不良に絡まれたこと、それを風紀委員の楓に助けてもらったことを伝える。
話を聞き終えた裕香の第一声は「怪我しなかった?」だった。
* * * * * *
体育館につくと、すでに人がいてスクリーンに映し出された映像を見ていた。
なるほど、あれが今回の舞台というわけか。
外観はコロシアムのようにも見える。
今朝の彼女の動きから察するに、楓は近接戦闘タイプだろう。
そんなことを考えていると、裕香に袖を引っ張られる。
裕香が指さす方にはあいている席があった。
俺達はそこに腰掛ける。
こうしてほかの試合を見るのは初めてだな……。
感覚としてはスポーツ観戦をしているかのような気分だ。
「あ、映ったよ」
裕香がそう指さす方には、今回の対戦相手なのだろうペアが映っている。
あれ、もしかして由真・蓮花戦って、こんな感じで見られていた訳か……?
ただ、音は聞こえてこない。
だけど、どうやってゲートの向こう側の映像を流しているんだろう……。
そんなことを考えていると、スクリーンの映像が二つに分かれる。
一方は対戦相手、そしてもう一方は―――。
「楓だ」
「あの女の人? 上級生なんだね」
「ああ、めちゃくちゃ強かったんだ」
楓の隣にいる女子学生が彼女のパートナーなんだろう。
それからすぐに画面上にカウントダウンが始まる。
数字はやがて0になり、試合開始を告げた。
「始まるぞ……」
自然と前のめりになってしまう。
それくらい、楓の戦い方とアビリティに興味があった。
* * * * * *
コロシアムの中央、パートナーと何かを相談した楓は、一つ深呼吸して目を閉じた。
対戦相手は目の前にいないが、戦場でその行為は自殺行為である。
だが、彼女にはそれが自らを危機に貶める行為だとは思っていない。
彼女にとってそれは、自らの能力を発現するための準備であるからだ。
やがて、彼女の体はひとりでに宙に浮く。
ある程度の高さまで上がると、彼女の体が光に包まれる。
光がおさまると、そこには全身を甲冑に包んだ戦乙女がいた。
* * * * * *
「あれが楓の能力か……」
光に包まれているところを見ると、今朝見た光もアビリティを一瞬だけ発動させた光だったのかもしれない。
それにしても全身を甲冑で包む能力か。
おそらく斎藤・武藤のような自己強化系の能力なんだろうが……。
俺はもう一度、楓の姿を見る。
なぜだろう、どうしてこんなにも見惚れてしまうのか。
楓の姿は、美術館にある絵画や彫刻のような凛々しい美しさを持っていた。
―――綺麗だ。
ただ、その一言しか出てこない。
たぶんそう感じてしまうのは、今朝の彼女の笑顔を見てしまっているからだろう。
笑ったあの顔といま映っている顔は、全然違う。
別々の顔も、彼女の顔なのだと理解する。
だからこそ、俺は……得体のしれない違和感を覚えてしまった。
なぜだろう。
彼女のはこんな凛々しく綺麗なのに……どこかで崩れ落ちそうな、そんな危うさを感じるのは。
* * * * * *
楓は遠くの方を見ると、助走をつけて跳躍する。
それに反応するかのように鎧が輝き、背中から天使のような羽を出現させる。
羽は鳥が飛んでいるかのように羽ばたき、楓を空へと連れていく。
コロシアムの外、すでに廃墟と化した街を見下ろす楓。
やがてゆっくりと右手を空にあげる。
楓が何かをつぶやくと、彼女の右手に光が集まり、やがてそれは銀色の槍へと形を変えた。
楓はそれをつかむと、町に向かって急降下する。
それは、一瞬という表現が課題ではないと思えるほどの速度で地面へと向かい、標的を発見する。
住居の一つに隠れていた対戦相手をみつけると、槍を構えてまっすぐ向かっていく。
それは猪のように、わき目もふらずただまっすぐと。
対戦相手は一つ、不敵な笑みを浮かべると自身の能力を発動させる。
すると地面からいくつもの槍が出現し、彼女の向かって伸びていく。
それを彼女は意にも介していないようで、素早い速度で対戦相手へと飛来する。
そして、一人を左手の盾で殴り飛ばすと、もう一人を右手の槍で貫く。
そのまま彼女は空へと再び飛び、槍を大きく振って対戦相手の体から槍を抜いた。
槍から抜けた対戦相手の体は地面へと落ちていき、自分が仕掛けた土の槍でその体に無数の穴をあける。
―――彼女の勝利。
それは誰の目から見ても明らかだった。
それに同意するかのように、彼女の目の前に『YOU WIN』の文字が浮かび上がったのだった。
* * * * * *
「空を飛べるのかぁ」
思わず漏れてしまった一言に、裕香は「飛んでみたいの?」とだけ聞いてきた。
「羽が生えて空が飛べたら楽しそうだなぁとは思うが……」
多分、必要になるまでは試そうと思わないだろう。
……落ちたら痛いどころじゃすまないからな……。
「それで、どうだった?」
「やっぱり強い、圧勝だったな」
「そうだね。それに楓先輩、格好良かったね」
同じ女子から見ても、やっぱり楓の姿は印象的だったのだろう。
実際、戦場であんな姿の兵士が味方にいたら……おそらく士気は高かったに違いない。
そう考えると、最期はどうであれジャンヌダルクみたいな存在は偉大なのだと思う。
「なぁ裕香」
「なに?」
「俺、あの人と戦ってみたい」
唐突に告げるその一言。
自分でもなぜ突然そんな言葉が出てきたのか、不思議だった。
「それじゃあ、いつにしようか」
意外と軽い感じで答える裕香。
その様子から、楓と戦うことに異論はないみたいだ。
「これから考える、とりあえず目先の目標はできた」
文化祭だけじゃない。
俺達がやらなくてはならないこと。
このアビリティアリーナで、もっと上に行く。
願いを叶えるために。
麻弥を助けるために。




