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ディザイアゲート  作者: M.O.I.F.
第1部
22/39

第十九話 風紀委員

どうもMake Only Innocent Fantasyの三条海斗です。

ランクアップも終わり、バトルは次のステージへと進みます。今回(と次回)はインターバルですかね。

バトルが始まるのはもうすこし後になると思います……。

それではどうぞ!

ランクアップ戦が終わり、俺達は晴れてCランクとなった。

ランクが変わったからといってクラスが変わるわけでもなく、いつも通りの席についていた。

「あ、佐伯君じゃないか。ランクアップおめでとう」

「ありがとう……って珍しいな、お前が学校にいるなんて」

「まぁ、最低限の出席日数はないといけないからね。蓮花はずっと寝てるだけだけど……」

そう言って由真が視線を向けた先には、ものすごく気持ちよさそうに眠る蓮花の姿があった。

由真が能力を使っていないというのは、爆睡しているのが蓮花だけなのでわかっているが……あんなにも気持ちよさそうに眠れるものなのか……?

快眠法があるのなら、教えてほしいくらいだ。

「それにしても、開戦してからまだ1カ月も経っていないのに、もうランクアップとは信じられないね」

「まぁとんとん拍子で進みすぎだなとは俺も思うが、別に信じられないことでもないだろう?」

「そうかな。最初の順位は予選会での成績がもとに決められてる。同じランク内で多少の変動はあってもランクが変わるっていうことは滅多にあることじゃないんだよ」

由真は「それこそ、限界を超えるくらいじゃないと駄目なんだよ」と、付け加える。

確かに、何度も行われた予選での成績で決められた順位だ。

そう簡単に変わるものじゃないんだろう。

「君たちの噂は聞いてる。あまり、目立ち過ぎない程度にしなよ。素行の悪い生徒がいないわけじゃないんだから」

「不良ってやつか?」

「さあね」と言いながら、由真は自分の席へと向かった。

あれは由真なりの忠告で、彼女なりの優しさなのだと思う。

「面倒事、か……」

まぁ慣れているかと言われると、全く慣れていないのだが。

こんな学校で本当にあるのか……なんて考えてると、そういえばいつも絡んでくる男子学生の姿を思い出した。

そういやあ、あいつ一体誰だ?

名前も知らないが……まぁいいか。

授業開始まですこし時間があるな……。

気晴らしに外へ出るか。

そう思い、教室を後にする。

校舎の外に出てみると、晴れていたこともあって、それなりに気分がよかった。

……そろそろ戻ろう。

そう思って、引き返そうとすると、俺の行く手を阻む影が3つ。

「おいおい、今頃登校かァ?」

「荷物も持たずぅ?」

「いけない子だねぇ?」

「……誰だ、こいつら……?」

そうこぼした途端、目の前の3人組の目の色が変わった。

「「「あぁ!?」」」

これは……まずいな。

口は禍の元というが……実感したくはないな。

「一年のくせに生意気いってじゃねえぞ! あぁ!?」

「上級生に対するぅ、敬意ってもんがねえのか!?」

「いけない子だねぇ! えぇ!?」

いや、ほんとこいつらなんなんだ……?

とりあえず、「ぁ」がつくのを不良A、「ぅ」がつくのを不良B、「ぇ」がつくのを不良Cとしよう。

あ、こいつらさっき由真が言っていた噂の不良ABCか?

なんて冷静を装ってみても、状況や心理的な物が好転するわけでもなく。

「なんか言ったらどうなんだぁ!?」

「やってまうぅ?」

「痛い目にあいたくはないよねぇ?」

「はぁ」

何だろう、迫力はあるんだけど……こう、ちょっと引いてしまうのは。

あれか、言葉か?

どうこたえようか、悩んでいるとチャイムが鳴り響く。

噂の不良ABCは、そんなことは意に介していないようで、俺に詰め寄る。

いや、ただでさえ単位がないのに、授業に出ないのはちょっと……。

「まぁいい機会だぁ、ここでしめちまおう」

「おうぅ、そうしよう」

「そうだねぇ」

どうする……。

アビリティは……使えないな、手持ちに懐中電灯もボールもエアガンもない。

噂の不良ABCは手をゴキゴキと鳴らし、近づいてくる。

そのまま後ずさる俺の背中に、なにかが当たる。

この網みたいな感触は校庭のフェンスだな。

逃げ場、なくなってしまったな……。

ここは教室の死角になる場所だ。

……狙ったな、たぶん。

となると、こいつら……相当慣れている。

「参ったな……勘弁してくださいよぉ」

とりあえず口調をまねて、答えてみる。

「あぁ? なめてんのかぁ!?」

「そんな言い方でいいと思ってるぅ?」

「いけない子だねぇ!」

もう、なんなんだ……。

あと、不良Cはさっきから「いけない子だねぇ」ばっかり言ってやがるぅ! レパートリーねえのかぁ!? えぇ!?

……ホント、何なんだ……。

「そこの3名! 何をしている!!」

噂の不良ABCの背後から聞こえる、凛とした声。

声の雰囲気から、女子学生だということはわかるが、年上なのか同い年なのかは区別がつかない。

「「「あぁ!?」」」

噂の不良ABCはその声の方へと顔を向ける。

「誰だァ?」

「邪魔していいと思ってるぅ?」

「いけない子だねぇ」

噂の不良ABCは少しずつ俺から離れ、さきほどの女子学生の元へと歩いていく。

奴ら、本気だな……。

「風紀委員の楓だ。授業時間内だぞ、おとなしく教室に戻れ」

「んだとぉ!? 何様だァ!?」

「はぁ……またこれか」

なれているというか、風紀委員ということもあって、こういう連中の相手をする機会もあるのだろう。

だが3対1じゃ分が悪い……!

「その口、二度と聞けなくしてやらぁ!!」

「殺してやるぅ!!」

「死ねえええええぇ!!」

噂の不良ABCが、楓に向かって襲い掛かる。

楓はすこし息をすうと、噂の不良ABCに対して構え、先陣を切る不良Aの腹部に掌底を叩き込む。

「ふっ!!」

「っごぉ……!」

楓の攻撃をまともにくらった不良Aは、その場にうずくまる。

そのあとに続いていた不良Bと不良Cは、その光景に驚いていた。

「邪魔だ、あっちでおとなしくしていろ」

そういうと楓は、不良Aを校舎に向かって蹴り飛ばす。

一瞬何かが光ったように見えたが、不良Aはまるでサッカーボールのように飛んでいく。

そして、校舎にぶつかった不良Aは何回か痙攣したのち、動かなくなった。

……さすがに死んでない……よな……?

「次はどちらだ? お前か、それともお前か?」

「なめやがってぇ!!」

不良Cは楓につかみかかろうと、間合いを詰める。

だが、楓はそれすらも許さなかった。

「ふぐっ!!」

不良Cの体が真上へ飛んでいく。

何が起きたのか確かめるため、楓の姿を見ると、まるで勝利を宣言するかのようにこぶしを突き上げる姿があった。

どうやら、不良Cに強烈なアッパーを繰り出したようだ。

地面に落ちた不良Cは幾度か痙攣したのち、ガクッと頭が横に向き動かなくなった。

なぁ、本当に死んでないよな……!?

「最後は……お前か」

「ひっぅ!」

息をのむという表現が適切かのような、不良Bの声。

楓はゆっくりと不良Bに近づく。

それに伴って、後ずさる不良B。

距離がどんどん近づいてくるよ……。

とりあえず、距離をとろう……。

すこしずつ横にずれていくと、先ほどまで俺がいた場所に不良Bが立った。

背中にフェンスの感覚がして逃げ場がないと悟ったのか、顔色がどんどん青くなっていく。

ああいう状況には、なりたくないな……。

「覚悟はいいな……?」

楓は、すごく低い声で不良Bに告げる。

それはまるで、極道が一般人を脅迫しているような画だった。

「ひぃぅ……! ひっぅ……!」

不良Bはもう声すらあげられていない。

ただ恐怖に震える動物のように、ただただ首を横に振るだけだった。

「そうか、なるほど」

一体、何に納得したのだろう。

楓は、ひとり合点すると不良Bから離れる。

不良Bはそれを見て、すこしだけ希望を感じたようだ。

「お前、死にたいのだな」

「どうしたらその結論にたどり着くんだよ!?」

……しまった、思わず突っ込んでしまった。

「いや、私の問いに答えないから」

「ああ、そういう……」

俺があきれていると、不良Bはこれ幸いと、楓から逃げていく。

その背を見せながら。

「ふっ!」

「かはっ……」

楓は不良Bに振り向くことなく、正確にチョップを繰り出した。

走ろうとしていた勢いのまま、不良Bは倒れこむ。

ああ、絶対顔からいったな……。

「これで片付いたか。まったく、たるんでいるな」

「……強いな」

「これでも、鍛えているのでな」

そういうと楓は気さくに笑う。

……なんだ、笑うと普通の女の子じゃないか。

「怪我はないか?」

「ああ、助かった……助かりました」

ネクタイの色が俺達と違うことに途中で気づき、あわてて敬語にする。

そりゃ、この学校の大半が上級生だよな。

「ああ、気楽にしてほしい。敬語は苦手なんだ」

「……えっと、それじゃあ改めて。ありがとう、助かった」

「これも風紀委員の仕事だからな。君は……一年の佐伯 一弥君だね」

俺はうなづく。

転校生っていうことで、すこしは顔を知っているのだろう。

「私は2年の楓 未貴、ランクはCだ。これからよろしく頼む」

「こちらこそ。ところでこいつらは……」

俺が倒れている噂の不良ABCに視線を向けると、楓は「ああ」とつぶやく。

「こいつらは2年のDランクで、自分より上の下級生に絡んでいる奴らだ。本当は4人組だけど、1人は謹慎処分中だ」

なるほど、それで3人組……か。

「そろそろ教室に……いや、私も行こう。事情を説明した方が良いようだ」

楓が「自分の後ろをみろ」とばかり、指をさす。

振り返ってみると、そこには……きらきらとした目でこちらを見ている、教師(雨音さん)の姿があった。

ホント、今日は一体なんなんだ……。

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