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ディザイアゲート  作者: M.O.I.F.
第1部
21/39

番外編 雨音さんの補習授業「オリエンテーション」

どうもMake Only Innocent Fantasyの三条海斗です。

番外編、今回も世界観の説明です。

興味があればという感じです。どこかで説明以外の番外編がやれたらいいなぁ……。

それではどうぞ!

辰巳と香耶との戦いから一夜明け、俺は休日の学校に来ていた。

それにしても……雨音さん、久しぶりな気がする……。

毎日学校で顔を合わせていると、ほんの数日顔を合わせないだけで、長い間あってないような気分になる。

そんなことを思いながら雨音さんを待っていると、今日は時間通りに扉がひらいた。

「今日は時間通りですね」

「あ、嫌味~?」

頬をぷくっと膨らませる雨音さん。

見た目が子供の香耶と違い、雨音さんは大人のまま顔がいいから、絵になってしまう。

見た目が綺麗ってずるいな……。

中身が駄目だけど。

「佐伯君、なんかひどいこと考えてない?」

「いや、今日のスイーツはなん……」

「そんなひどいこと考えてないわよね! ごめんね!!」

あ、半泣きだ。

さすがにやり過ぎたかもしれない。

「それじゃあ今日の補習を始めます……」

「お、お願いします……」

やばい、あんなにしょんぼりとした顔をされると、こっちも罪悪感が……。

いや、雨音さんだし、大丈夫か……?

あ、ちらっとこっちを見た。

あれ演技だな、うん。

っていうか、生徒相手に何してんだ……あの人……。

「といっても、今日は補習じゃなくてオリエンテーションを行います」

「オリエンテーション?」

「そう。ほら、転入の時いろいろあったでしょ?」

「まぁ……そうですね。きょ……」

「それで!」

パンと手を叩く雨音さん。

ああ、この人……俺を脅迫したことをなかったことにしようとしてるよ……。

「この学園のこと、何も説明してなかったなぁって。補講の単位にはなるから、ちょうどいいかなって」

「入学説明会ってとこですか?」

「うん、そういう感じ」

なるほど、そういうことなら都合がいい。

話を聞くだけならそこまで大変じゃないし、この学園のことを知るにはいい機会だろう。

「それじゃあ、まずはこの学園……天ケ瀬学園について。世間用の表側と内部用の裏側があるけど、世間用はつまらないから省くわね」

……先生、生徒に向かってつまらないからっていう理由、ぶっちゃけっちゃって大丈夫なんでしょうか……。

「裏側の方。この天ケ瀬学園は、アビリティ保持者を保護するための学園です。全寮制なのもそのため。

青春時代を寮で過ごすっていうのも、ちょっとかわいそうかなぁと思うんだけど……。外で能力が暴走しちゃうと、取り返しがつかないことになる可能性もあるからね。

それを防ぐためにも、保護するってことが大事なの」

……麻弥みたいに……暴走する可能性もないわけじゃないのか……。

「ある程度、制御できるようになればそんなんことは起こらないんだけど、普通はそんな簡単に制御できないからね。それを制御できる訓練施設も必要になってくる。

保護もできて、訓練もできる。その両方を持つためには学園という形は理想的だった。そういう理由で、この学園はつくられたの」

まぁ捉え方によっては監禁と抑制とも受け取れるが……真実はわからないか。

「学園自体、古くからあるわけじゃなくって、今の校長がこの学園を作ったの。まぁ表向きの理由を考えるのに苦戦したみたいだけど」

そういうことなら、この学園もあまり古くはないか。

校長も、そんなに歳を取ってないように見えるしな。

「まぁ、そんな理由で作られた学園でも、教育機関という建前もあって、教育要綱みたいなのを守らなくちゃいけなくって……」

ああ、なんだかんだで雨音さんも大変なんだなぁ……。

「まぁ、つまらない話はここまでね。次は学園行事ね。大体一年間の学園行事はこんな感じ」

そういうと雨音さんは黒板に、文字を書いていく。

それは、この学園の年間スケジュールだった。

「4月はまぁ入学とか進級とかあるから、行事自体はないわね。5月は球技大会。

6月に中間テスト、7月末に期末テスト……8月に夏休みって、ここまで1学期だから、佐伯君は来年の話になるわね。

一応、この1学期の間にアビリティアリーナの順位付けが行われる予選会……みたいなのがあるわ。

で、ここから2学期。9月にアビリティアリーナ本選の開催、10月に学園祭と体育大会に、中間テスト。11月は……何もないわね、12月に期末試験で、冬休み。

1月、2月はなくって、3月に学年末試験。寮内でイベントとかもあるから、厳密にはもっとあるんだけど……まぁ、こんなところかな」

「テスト多いな……」

「こればっかりは許して。ほら、この学園……特殊でしょ?」

特殊ゆえに、テストを増やさなくちゃいけなかった……というわけか……。

「直近だと、学園祭と体育大会が近いわね。また近く、クラスで話があるはずよ」

「クラス……そうだ、クラスだ。俺のクラスってどうなるんです? ランクアップ戦、終わりましたけど……」

「変わらないわよ。入れ替えがあるのは、本選が始まる前まで。それからだと、授業とかいろいろ合わせるの面倒なのよ」

め、面倒……。

なんだろう、この雑な感じ……。

「なら俺はDクラスのままってわけか……」

「まぁ最下位からの成り上がりって、なんかワクワクしない?」

雨音さんは本当にワクワクとしている顔をしていた。

「なにを面白がってるんですか……」

「面白いじゃない」

声に出ていたようだ……。

それとこの人、やっぱり面白がってやがった……!

「一応、クラブ活動もあるんだけど……誰もやってないのよね……」

「誰も?」

「みんなっていうのは語弊があるんだけどね、あくまでも好きな者同士が集まってるみたいな感じかな。

たしか裕香ちゃんは料理クラブに、桜井さんはゲーム同好会に所属してるわよ」

裕香は料理クラブ……か。確か、自分で料理するって言ってたな。

「まぁ裕香ちゃんは最近は参加してないみたいだけど……」

「……あの、その……」

……駄目だ、うまく言葉にできない。

「……夏美ちゃんのこと?」

俺は黙って頷く。

気にはなっていた。

だけど、裕香に聞けるわけもない。

「……いずれわかるわ。私の口から言うべきことじゃない」

先ほどとは違い、真面目な顔をする雨音さん。

やはり、何も言ってはくれない……か。

「そうですか……」

沈黙が続く。

それを打ち破るように、チャイムが鳴り響いた。

「はい、これで今日の補講はおしまい」

「ありがとうございました」

雨音さんはいつもと変わらない様子で、教室を後にする。

あの人のほんわかした雰囲気は何なのだろう。

……まさか、このあとのスイーツか? まぁ、いいか。

それにしても……。

「どこかで向き合わなくちゃいけない……か」

麻弥のことも、裕香のことも。

ふと、窓の外を眺める。

空は気持ちがいいくらいに、晴れ渡っていた。

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