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ディザイアゲート  作者: M.O.I.F.
第1部
19/39

第十七話 攻防

どうもMake Only Innocent Fantasyの三条海斗です。

ランクアップ戦もようやく佳境に……! いや、ほんと長かった……。

最後までお付き合いください。

それではどうぞ!

「ん……」

「目が覚めたか」

「ん……ここは……?」

辺りをきょろきょろ見回しながら起き上がる裕香。

まだ少し寝ぼけているのか、すごく眠そうだ。

「まだバトルの最中だ。休戦……といったところか」

「休戦……? っ! そうだ、あの子!!」

「あの小悪党なら、辰巳が……」

「うにゃああああああああああああああああああああああああああ!!!」

叱ってる最中だ、という前に小悪党の叫び声が響き渡る。

……一体、何をしてるんだ……?

恐ろしくて確認できないが、その声を聞いた裕香は何とも微妙な顔をしている。

「まぁ、そういうことだ。もう大丈夫か?」

「うん、あの泡の中……すごいリラックスできたんだよ」

「リラックス?」

「うん、なんていうか……森林浴とは違うけど、そんな感じでリラックスできた」

「ふむ……」

泡……か。

そういえば、水龍が出てくるときは必ず泡が出ていたな……。

先ほどの戦いでは、辰巳は水龍を出さなかった。

二人じゃないと作りだせない……ということか。

となれば、今度は水龍を繰り出してくるだろう。

龍殺し……そのくらいの覚悟を持たないと駄目だろうな。

「……ねえ」

「ん? どうした?」

「何を考えてるの?」

「龍ってどうやったら死ぬんだろうなぁ、って」

素直に答えたら、裕香は一瞬キョトンとした顔をする。

それからすぐに答えに至ったのか、「ああ……」と納得したようにこぼす。

「今度こそ、あの龍を倒さないといけないんだよね」

「ああ……龍殺しの剣でもあれば、話は早かったかもしれないな」

「龍殺しの剣ってよくゲームとか漫画とかに出てくるのにね……」

まぁそういうものが都合よく転がっている方がおかしいわけで。

「ないものねだりはやめて、今ある手持ちで竜を倒すことを考えるとするか」

「そうだね、でも……どうすればいいんだろう? 剣は効かなかったんだよね」

「あの都合のいい体……斬っても手応えがない上に、明らかにダメージを受けてる風じゃない」

「う~ん、温泉は効くんだよね」

「水鉄砲で盾を破れたからな、効果はあると思うが……」

水龍を倒すとなると、水鉄砲なんかじゃ足りないだろう。

水の盾を破った時に、この水量の減り方に驚いた。

盾に穴をあけるだけで半分以上の水が減ってしまっているんだ。

もっと大きな、何かが必要になる……。

「水をお湯にできればいいんだけど……」

「お湯に?」

「うん、だけど難しいよね……」

「お湯……か」

確かに水をお湯にすることができたら、あの水龍を殺すことができるだろう。

考えろ、どうすればいいかを……!

「火にかける……は難しいか。あとは蒸発させるか……」

「太陽光とかでバーン! とかできないかなぁ……」

「さすがに俺も太陽までは……ん、待てよ……」

太陽みたいなの、作ったことないか?

それもごく最近。

「そうだ! エクスプロージョン!!」

「それって、斎藤君と武藤君との時に使ったやつ?」

「ああ! あれを水龍の中でやれば、熱で水は沸騰する!!」

奴の体はボールくらいは飲み込める。

バランスボールくらいの大きさが入るかどうかは微妙だが、ドッジボールくらいの大きさをいくつも仕込めれば……!

「問題は、バレないようにしなくちゃいけないか。それに、なにか対策を講じているかもしれない……」

「それだったら……」

裕香は自分の前に手を合わせて、何かを作り出す。

「こういうのは、どうかな?」

「なるほど……。これだったら!」

希望が、見えてきた。

「いくぞ、裕香……! この戦い、勝つぞ……!!」

「うん!」


 * * * * * * 


「おう、ようやく来たか」

皮の近くに転がっている岩の上に、辰巳は座っていた。

近くの木には、小悪党が木の枝にぶら下がっている。

あの様子じゃ、気絶してるな……。

「嬢ちゃんも、無事見てえだな」

「えっと、ありがとう?」

敵からの言葉に、すこし微妙な顔をしている。

……うん、なんだろう。

「それじゃあ、このクソガキを起こして続きといこうか」

そういうと辰巳は右腕を上にあげる。

すると、水の槍が川から飛び出し、小悪党がぶら下がっている木の枝を折る。

当然、ぶら下がっていた小悪党は、受け身をとることもなく、そのまま地面に落下した。

「うにゃっ!?」

地面にぶつかった小悪党は、しっぽを踏まれた猫みたな声を出す。

それからゆっくりと起き上がってくる。

あ、涙目だ。

いまにも泣きそうな顔をしている。

……こうしてみると、もともとの幼さもあって小悪党がただの子供に見える。

「ねぇ……あの子、大丈夫かな……」

裕香がそうたずねてくるのも、無理はないだろう。

いや、さっきからずっと「うぐっ……えっぐ……」なんていう嗚咽が聞こえてきたら、心配にもなるだろう……。

「なぁ……そこの小悪党……いや、そいつ、いまにも泣きだしそうなんだが……」

「ああ、このクソガキか? 気にするな」

辰巳はすごくうんざりそうな顔をする。

やっぱり……大変なんだなぁ……。

「わ、私はクソガキではないっ……小悪党では……ない……っ! 私は、ちゃんと鷺城 香耶という名があるのだ……!!」

ところどころ涙声で、それでいてクソガキやら小悪党やら、言われるのがちょっとショックみたいな、そんな声で告げる香耶。

それをみた裕香は「ほわぁぁぁ」と息を漏らす。

「香耶ちゃんかぁ……」

ああ、なんかこんな顔を見たことある。

子猫とか子犬とか、そういう可愛いものを見るの顔だ、これ。

……もしかして、母性?

そんなこんなで、裕香は今にも泣きだしそうな香耶にメロメロだ。

まぁ可愛げはあると思うが……でも小悪党だぞ?

香耶本人に言ったら、半泣きになるか、「うぎゃああああ」とか言いながら襲ってきそうだ。

「おら、泣いてんなよ。これから()りあうんだ、さっさと涙を拭け」

「うぐっ……」

涙を拭きながら立ち上がる香耶。

もう、涙はおさまっていた。

「来るぞ……」

「うん……!」

ここは川だ。

水はたくさんあるが、水は流れ続けている。

ここで水龍を使うのは無理なはずだ……。

「無理……だと思ってるな? 俺のアビリティをフルで使えねえと」

「お前の力は、水を使う。だが、それは水の流れがあると使えないはずだ」

「まっ、ある程度はわかっているということか」

辰巳は「やれやれ」と言ったように首を振る。

ここまで読まれているということは、奴もわかっていたということだろう。

「俺単独では、この場所で全力でやることは出来ねえ……。だが、このクソガキがいれば、フルスペックでやることができる」

「なに……?」

「いくぞ……"香耶"」

「うむ!」

「かわいい……」

……ちょっと最後ので雰囲気が台無しになってるぞ……。

「むぅっ!!」

香耶が教会で祈るように手を合わせる。

それから、川から沸騰したような音が聞こえてきた。

「この感じ……! 来るぞ!!」

「食らいつくせ、水龍」

辰巳の声と共に、彼らの背後から水龍が現れた。

「大きい……!」

「これだけ水があれば、な。まぁその分、香耶にも無理をさせちまうんだけどな」

その言葉通り、辰巳の横で香耶がふらふらになっていた。

いまにも倒れてしまいそうだ。

「香耶の能力が必要なのは最初だけだ。あとは、俺だけで()れる」

「面白い……!」

腰の懐中電灯を右手に持って、スイッチを押す。

「ソード」

光が収束して、剣になる。

戦闘準備は万全、あとは仕込むだけだ。

「悪いが、決着をつけさせてもらうぜ」

その言葉の後、水龍が咆えろ。

そして、辰巳を囲うように動くとこちらをにらんだ。

「まずい!」

何が来るかはわからない。

だけど、俺の直感が言っている。

これを防がなければ、俺達は負ける―――!

「裕香! 俺の後ろに!!」

「咆えろ!!」

その言葉の直後、水龍が口から何かを放つ。

水のように見えるが、あれはそんな生易しいものではない。

おそらく、あれに当たれば俺たちは跡形もなく消し飛ぶだろう。

何でもいい、何か―――!

「出てくれっ!!」

懐中電灯を前に出す。

すると、ソードが形を変えて、前方に大きな盾のようなものが出てくる。

そしてそれは、水龍の攻撃を防ぐ。

「っ! これは……盾かっ!?」

「おいおい、そんな隠し玉を持っていたとはな!」

目の前に現れた盾は水龍の攻撃を防いではいるが、気を抜ける状態ではない。

「ぐっ……!」

両手で持っていても、盾が持っていかれそうになる。

ここのまだと――――!

「大丈夫」

「えっ?」

俺の懐中電灯をつかむ別の手。

それは、俺の背後から伸びていた。

「裕香……!」

「大丈夫、私も支えるから」

ただ一人分の力が加わっただけ。

ただそれだけだというのに、なぜこんなにも心強いのだろう。

「ああ……!」

水龍の攻撃が衰えることはない。

だけど、この攻撃は防ぎきることができる。

そんな確信が俺の中にあった。

「耐えるじゃねえか! だったら!!」

水龍の攻撃の勢いが増す。

これがやつの全力―――!

「負ける、もんかああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

声に呼応するように、盾が大きくなる。

「食らいつくせ、水龍!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

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