表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディザイアゲート  作者: M.O.I.F.
第1部
11/39

第十話 油断

どうも、Make Only Innocent Fantasyの三条海斗です。

更新、遅れてしまい申し訳ありません。

なんとか書き上げようとはしているのですが……。早く書けるようになりたいです。

今回はバトル開始です。

それでは、どうぞ!

ゲートをくぐると、そこは依然と同じような闘技場だった。

「またここか」

ぽつりとつぶやいた俺の言葉に、裕香が「仮想世界は防衛側の戦法に有利なフィールドが選ばれやすい傾向があるの」と教えてくれる。

なるほど。

近接戦闘が得意な相手なら、確かにこういう場所の方がいいだろう。

狙撃手が隠れられるような場所もなければ、相手が隠れる場所もない。

強制的に近接戦闘に持ってこれるというわけか。

「ということは、また前回と同じように向こう側から現れるのか」

俺達が立っているゲートの反対側、開け放たれた入場門の向こうから歩いてくる2人の男。

これで壮大なBGMがあれば、様になるだろうな。

姿を現した2人は、前回のような油断は感じられない真剣な表情だった。

「……前と同じにはいかないか」

「さすがに警戒はされてると思う」

裕香の言葉を聞き、エアガンと懐中電灯の位置を確認する。

よし、いつもの場所にあるな。

「裕香、頼んでいたものは」

「いくつか既に作ってある。必要であれば、また作るよ」

そういって、裕香の腰の位置にあるポシェットからカラーボールが取り出される。

見た目はコンビニのレジに置いてあるようなボールだが、これは追跡用の仕組みが施されていない、ただの色がついたボールだ。

受け取ったカラーボールには、ベルトに着けれるように小さなフックがついている。

つなぎ目は脆そうで、強く引っ張ればボールの部分だけが取れそうだ。

「一度に何個作れる?」

「3つずつだけど……少ない?」

「むしろ、ちょうどいい」

うまくいくかどうかは、俺次第だな。

受け取ったカラーボールを腰に取り付けると、縦鼻運動を終えた斎藤・武藤ペアと目があった。

「前回のようにはいかないぞ。なぁ、武藤」

「ああ、斎藤。今度は俺たちが勝つ」

前に秒殺されたのをよほど気にしているのだろう。

まぁ、俺も同じような立場だったら、同じことを言っている気がする。

「今度も俺たちが勝たせてもらうぞ」

俺のその言葉と同時に、目の前に試合開始準備のカウントダウンが浮かび上がる。

いよいよだ。

カウントがゼロになる。

それと同時に、斎藤が飛び出してきた。

「それじゃあ、前回と同じだぜ! バレット!!」

胸のホルスターからエアガンを引き抜き、斎藤に向けて放つ。

前回と同じなら、放たれた弾丸が斎藤の胸を貫いているだろう。

だが、光弾は斎藤の胸を貫かなかった。

「さすがに避けられるか! 下がれ、裕香!!」

凄まじいスピードで迫る斎藤。

その後ろには武藤もいるだろう。

ならば。

「もらったぞ、佐伯ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

斎藤がこぶしを構える。

いくら手数で倒すタイプといえど、何の強化もしていない俺には大ダメージなのは間違いない。

「前と違うのはお前たちだけだと思うなよ!」

俺は裕香からもらったカラーボールを、ベルトから引きちぎり、斎藤に向かって投げつける。

「新技を見せてやる! スタン!!」

その声と同時にカラーボールはまばゆい閃光を放ち、破裂する。

目の前で突然起こった光に、斎藤は止まることができず、光の中に突っ込んでいく。

光の向こうから現れた斎藤は、俺の真横を通り過ぎ、地面に倒れこむ。

「ぅ! 目がっ!!」

「もらった! バレッ……」

「させん!!」

エアガンを向ける前に、武藤が俺に攻撃をしけてくる。

すんでのところで、その攻撃を避けると、俺は距離をとる。

どうやら、斎藤の陰にいたため、スタンの直撃を避けられたらしい。

「大丈夫か、斎藤」

「ああ、武藤。だが、目をやられた」

斎藤に肩を貸して立たせる武藤。

斎藤の目はまだ回復していないようだった。

下手したら失明しているかもしれないな……。

すこしだけ罪悪感を感じるが、ここはそういう戦いだ。

殺し、殺され、殺しあう。

慈悲をかけた方が負けるのだ。

「さすがに、前回と同じように瞬殺とはいかないか」

俺がそう一人溢すと、すかさず裕香が「もうスタンは警戒されてると思う」とつぶやく。

「そうだな。だが、一人はつぶした。これで、1対1の戦いになる」

エアガンをホルスターにしまい、ベルトから懐中電灯を取り出す。

正直、この相手に接近戦は仕掛けるべきではないと思うが、当たらない銃を放つよりはいいだろう。

「そんな単純な話になるかな」

斎藤を離れたところに座らせた武藤は、指の関節を鳴らしながら余裕を含んだ顔で告げる。

『先ほどは油断したが、今度はそうならないぞ』という意味が含まれているのは、すぐにわかった。

「少なくとも、お前ら2人を同時に相手にするよりはマシな状況にはなっているんだ。……勝たせてもらうぞ」

懐中電灯のスイッチを押し、小さく「ソード」とつぶやく。

やがて懐中電灯の明かりは剣の形になった。

「ほう。光の物質化か」

「いくら肉体を強化しているとはいえ、剣で斬れないわけじゃない」

「ふん、どうかな」

直後、武藤は地面を強く蹴り、俺に迫る。

そのスピードは想像よりも早く、避けるには俺の反応速度では遅すぎた。

「くっ!」

光の剣で防御態勢をとる。

「無駄だ」

武藤の声が、やけに冷酷に聞こえる。

そして、武藤が拳を俺の剣に向かって繰り出す。

直後、腕から凄まじい衝撃が体中に伝わる。

砂煙をあげながら、後ろに吹き飛ばされる俺の体。

先ほどの攻撃で、左腕がしびれて動かない。

たしかに、ガードなんて意味がなかったかもしれない。

パワータイプというのは伊達じゃない、ということか。

「裕香、俺の合図でカラーボールを投げてくれ」

「……わかった」

裕香を前線に出すのは好ましくはないが、この状況ではそんなことは言っていられない。

「行くぞ」

動く右手で剣を構える。

実際の件と違って、重さが懐中電灯分しかないのが救いだな。

「裕香!」

「えいっ!」

……えらく可愛らしい投げ方だな。

おそらく、運動そのものが得意でない上に、あまりやっていないんだろうな。

だが、カラーボールはスピードそのものはないが、ちゃんと武藤の目の前に落下する。

「スタン!」

カラーボールがさく裂し、閃光が武藤をつつむ。

さすがに目の前で発生した閃光に、俺自身も眩しさに目がくらんでしまうが、それでも剣を構えて進んでいく。

「もらった!」

剣を突き出す。

だが、胸を貫いた感触は一向に訪れなかった。

「無駄だ」

「なにっ!?」

「ふん!」

背中に強烈な衝撃。

そして、俺の体が地面にたたきつけられる。

「っは……!!」

肺から息が吐きださせられる感覚。

一瞬の呼吸困難がおこり、視界がちかちかする。

「佐伯君っ!!」

「っ!」

裕香の声でハッとして、地面を転がる。

直後、武藤の足が俺が倒れていた地面に穴をあけた。

あのままの状態だったら、確実に殺されていた。

「すまない、助かった」

「まだ!」

裕香の慌てた声。

右から気配を感じて、振り向くと靴の底が視界いっぱいに広がる。

「ぐぅ!!」

気付いた時には、俺はがんを蹴り上げられていた。

ゴロゴロと地面を転がり、裕香に受け止められる。

ぽたぽたと、血が地面に落ちていく。

武藤は俺の目の間にいた。

右から攻撃はできないはずだ。

なら、答えは一つしかない!

「殺気はよくもやってくれたな、佐伯」

「斎藤……!!」

くそっ! 予想よりも回復が早い!!

目の前には肉体強化をした男2人。

こっちは後方支援タイプと戦闘に不慣れな素人。

そうそうに武藤か斎藤を潰して、回復する前に蹴りをつけたかったが……。

「こっから反撃と行こうじゃないか。なあ、武藤」

「ああ。斎藤。さっきまでのお礼をたっぷりとしてやらないとな」

この2人……さすがにDランクのトップだけあるな。

「こっちも、さっきの良い蹴りの礼はさせてもらわないとな」

剣を支えにして、立ち上がる。

しかし、ダメージが大きかったのかよろけてしまう。

ふと、それがおさまったと思うと、しびれていた左腕に温かさを感じた。

隣を見ると、裕香が俺の体を支えてくれている。

前に出るのは怖いはずだ。

その証拠に、俺の手をぎゅっと握っている。

由真・蓮花戦の時に見た、裕香の力強さ。

なら、俺も負けてはいられないな。

「勝つぞ、裕香」

裕香に言う言葉を自分にも言い聞かせる。

麻弥を助けるためにも、こんなところで負けてはいられない。

「うん、負けたくない」

裕香がそう返事をする。

その言葉には、確かに強い意志が込められていた。

「ふん、ふらふらな体でどうしようというんだ。なぁ、武藤」

「ああ、斎藤。勝つのは……」

「いいや、今回も勝つのは……」

2組の言葉が同時に発せられる。

それは、試合再開を告げるゴングのように、フィールドに響き渡った。

「「俺達だ!!」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ